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2017年3月31日 (金)

シス・カンパニー企画製作「令嬢ジュリー」Bunkamuraシアターコクーン

<2017年3月28日(火)昼>

収穫祭の夜。領主の館で祭が催されている。主人は外出していて留守だが、令嬢は祭に参加している。召使の男と料理人の女は婚約しているが、令嬢は料理人に犬のえさの調理を命じ、召使とダンスで盛上がる。ダンスが終わって地下の厨房に戻ってきた男を令嬢は追いかけて、寝室に下がった料理人をよそに誘惑する。最近婚約破棄をしたばかりの令嬢を相手に召使は説得を試みる。

ダウントン・アビーを髣髴とさせる地下の調理場の舞台。時代と親の教育方針とで歪んだ自我を持つに至った令嬢と、今の境遇から抜け出すチャンスをつかもうとする召使と、それまでのしきたりを微塵も疑わない料理人の3人による衝突。古いようで今も古くない脚本を現代的に作った一本。

やりがいのある脚本だしよく出来ていたと思うのだけど、もう一押しほしかった。表向きは貴族と召使の話、そこに自由平等の時代が到来した人間の葛藤が重なる。だから上下関係がめまぐるしく入替わっていくのが脚本の見所のひとつだとにらんだけど、そこが弱かった。令嬢の貴族っぽさがあってこそ召使に命令する場面も映えるし、落ちていく落差も際立つので、小野ゆり子にもう少し貴族っぽさがあってほしかった。何が貴族っぽいかなんて聞かれても困るのだけど。あと召使の城田優も料理人の伊勢佳世も背が高くて顔もはっきりしているので、見た目も不利があった。カナリアの場面なんかははまっていたのだけど。

料理人のクリスティンは主人が尊敬できないといけないという点。芝居としても成立しつつ、「死の舞踏」で妻に怒鳴られて辞めてしまった(名前しか出てこない)召使としてのつながりもつけて、両方観た人へのサービス。上の階と下の階をつなぐ伝達管も、同じ時代の同じような館の話であることを連想させて、上が上なら下も下、という混乱した時代の象徴になっていてよい感じ。

張出し舞台で客席との距離は近くて観やすい。中2階から階段をおろした美術が地下室感を出すために絶妙。「死の舞踏」の反対側であることを想像するのが難しいくらいがらっと変えた舞台で、明かり取りの窓の半円がつながりを感じさせるけど、それも位置が微妙に違っていた気がする。ひょっとして後ろの壁の部分は毎回つるしなおしているのか。だとしたらかなり手間をかけた美術で、両作品とも雰囲気の構築に与って力があった。

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KAJALLA「裸の王様」天王洲銀河劇場(若干ネタばれあり)

<2017年3月25日(土)夜>

小林賢太郎を含めた5人組によるコント集。

粗筋すら知らないで観たほうが面白いので、それは末尾で。観る予定がある人は読まないほうがいいです。この後ツアーで、東京にも戻る予定あり。

とてもよくできていた、というと語弊がある。ある程度強引につなげてみせたほうがコントとして面白くて、でも最初から強引につなげるのは急なので、きれいにまとまったコントから入ってすこしずつ強引感を増やして、後半に強引なコントを集めて、最後はきれいに終わらせる、という全体の展開をとても意識した構成だった。笑ってやるもんかと思っていたけど強引な後半のネタにはさすがに笑わされた。

5人とも体がよく動く上に美声の持主で、台詞が飛んだりもしていたけど、演技も上手。よくぞ集めたという精鋭メンバー。中でも辻本耕志の振り幅と自由度の大きい演技は素晴らしかった。

急遽気がついたので観劇したのだけど、何で気がついたかというと小林賢太郎の本をたまたま本屋で見かけて、読んだら面白かったので何かやっていないかと検索したら見つかった次第。本が非常に面白いのでその感想は後日。

ちなみにネタリストは以下。タイトルは適当。何か抜けていたり順番が違っていたりするかも。

自分が王様の世界があったらそこには何がある「俺ランド」。親方が留守の最中に毒に手を出すなと言われれば見たくなるのが人情「鍛冶屋」。やることなすこと馬鹿ばっかり「バカ部長とバカ部下」。舌を噛みそうなくらいの仕事が「さぎょうがたくさん」。終業間近のオフィスで仕事に励む同僚のキーボードの音に誘われて「丘を越え行こうよ」。ひとつ考えるとそこから連想が始まる悩み「考える人」。再就職で警備会社の面談に来たら担当者はなぜかウサギ耳のカチューシャをつけていて「バニーガード」。3連覇の王者に挑戦者が挑む大会は「日本リフージン選手権」。仕立屋が4人の王様に呼ばれて国を訪問する「裸の王様」。

ラーメンズの「アリス」でもバニー部というネタをやっていたし、客席の反応からするとおそらく前回もバニーネタをやっていたっぽい。バニー好きだな小林賢太郎。

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鳥公園「ヨブ呼んでるよ」こまばアゴラ劇場

夢の中でいつも同じ男性と会う女性。現実では子供を抱えて稼ぐのもままならず兄からも援助を受けているが、そのたびに責められることに耐えかね、援助を断る。兄は仲間を連れて妹の説得に赴く。

貧困や依存や育児放棄など話を重ねて、それを聖書の一節で表しつつ、圧力を逃がすような笑いもはさみつつ、痛いところを正確な言葉で刺してくるあたりは当日パンフの挨拶にたがわない仕上がり。

藁だらけの舞台はキリストが生まれた馬小屋の連想だと思うけど、別に神様は登場しない。ただ、急転直下のラストで、登場人物によって、何でもないと思う人と、吐気を催す人と、幸せを感じた人とに分かれるあの場面は、神様って単語が似合う。タイトルが「ヨブ」なのでこの後はハッピーエンドだったと信じたい。

演出形式は小劇場スタイルだけど、取扱っている話題とその飛ばし方がちょっと珍しく、他の小劇場芝居でも、もちろん商業演劇でも見かけない。無理に分類すれば海外芝居の脚本のほうが近い印象。こういう芝居を上演するならこまばアゴラ劇場だよな、よく似合っていたなと思うし、こういう芝居を上演する劇場のステータスを上げて懐の深さをアピールしてくれるような芝居。前回観たときから格段に違う。藁の舞台で埃を気にしてマスクを配った制作の配慮もよかったのでメモ。

こまばアゴラ劇場らしかったけど、こういう懐の深さをもった劇場のままキャパシティを増やしたいなら次はシアタートラムが似合うと思うので如何。

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シス・カンパニー企画製作「死の舞踏」Bunkamuraシアターコクーン

<2017年3月19日(日)夜>

軍の拠点として要塞が建築されている島。ここに赴任している大尉と、元女優である年の離れた妻。2人の子供は学校に通うため島を離れている。食糧のツケを払う金にも困る貧乏な生活のなか、軍人としては先がない夫と、単調な生活から逃れて華やかな世界に戻りたい妻とは事あるごとに反目して離婚を考えている。ある日、妻のいとこが島の研究所の所長として赴任する。この機会に島を逃れたい妻と、それを邪魔したい夫との間で、いとこを巻きこんだ互いの喧嘩がますます大きくなる。

多少緩めるところはあっても、砂を噛むような冷え冷えとした夫婦関係が最後まで続く。これまでの人生を賭けた夫とこれからの人生を賭けた妻との夫婦喧嘩は、一応最後に救いはあるけど、こんなに殺伐としたものなのかというくらい。よくこんな脚本を書いたし、よくこんな演出をしたと思う。夫役が池田成志だからきっところでもまだ緩和されたほう。一応これでも褒めて書いているけど、これに驚くか理解を示すか共感するかは観る側の人生経験が問われるような、1時間45分でここまでできるんだという大人の芝居。

それを助長するのが特別舞台で、大きな窓と壁とでプロセニアムアーチをふさいで、普段の舞台側に挟み舞台を用意したもの。プロセニアムアーチの上まで舞台から8メートルくらいか、一番後ろの席だったけどそれより高いところまで窓と壁があって、バトンで天井を同じくらいの高さで揃えていた。至近距離でこのくらい大きい窓が用意されていると迫力と圧迫感がすごくて、それが行き場がなく閉じこめられた夫婦の設定に一役買っていた(脚本中の設定では元監獄を改装して住んでいる)。窓は実際に開いて、普段の客席側へ声が実際に広がる微妙な開放感もある。実際の客席側は「令嬢ジュリー」の舞台だけどそんなことは微塵も感じさせない。これは舞台美術に拍手。シアターコクーンの舞台が天井も袖もあんなに広いとは思わなかった。この舞台の形式は今後もっと活用されてほしい。

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PARCO Production「不信」東京芸術劇場シアターイースト

<2017年3月18日(土)夜>

引越してきた夫婦。中庭をはさんで向かいの家にも夫婦が住んでいる。挨拶に行ったところきつい臭いに閉口して、付合いはほどほどにしておこうと気をつける。そのうち、隣町のスーパーで買物中の妻が、向かいの家の妻の万引きを目撃する。夫に訴えても人違いではないかと言うのだが・・・。

上手な4人によるサスペンス。誰が誰に不信を抱いているのかを変えながら最後の落としどころに持っていく展開。複数の不信の話を並行で仕込むあたりは「刑事フォイル」を彷彿とさせる。古畑任三郎の脚本家の面目躍如。なのだけど、個人的には釈然としない。

展開はよくできた脚本なのだけど、いろいろ移っていく場面で、4人のうちの誰かか、夫婦か、4人全員を外から観ているのか、どの視点から描いたのかがよくわからずに没入しづらかった。偉そうに言うと観客の視点が誘導できずにぶれていたのだと思うけど、何が原因でそうなったかはわからない。

情報量のバランスも問題。人物の背景に関する情報が大幅に制限されている上に、大切な情報が後半に突然ストレートに出てきたりするので、観ながら登場人物に想像を働かせるのが難しく、観ていて唐突感がある。

役者だと向かいの家の妻を演じた戸田恵子、見るからに不審な演技で始まって、後半は落着き気味の演技になるけど、この違和感が最後までとれなかった。推測では、観客側の邪推を誘発させようと三谷幸喜が演出したのだと思うけど、そうだとしたらもったいないの一言。あんなに上手な役者なのだから、普通を装ったほうがよほど怪しくなったのに。

あのラストを生かすためにはどうすればよかったのか、考えたのだけどわからなくてこんな文章になった。

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2017年3月20日 (月)

おくやみ申し上げます

早かった。短いので申し訳ないけどステージナタリーより全文引用。

悪魔のしるしの危口統之が、本日3月17日に逝去した。42歳だった。

危口は昨年末に公式サイトにて肺腺ガンを患っていることを発表し、note上の「やまいだれ日記」に日々の思いをつづっていた。通夜は明日3月18日18:30より、告別式は翌19日13:00から14:00に、危口の出身地である岡山・倉敷の、アーバンホール中庄にて執り行われる。

危口統之は1975年岡山県倉敷市生まれ。大学時代から演劇活動を開始し、2008年に「悪魔のしるし」を設立。「搬入プロジェクト」や、実父と共演した「わが父、ジャコメッティ」などで注目を集めた。最後の舞台となったのは2016年10月に上演された「歌舞伎町百人斬り」。なお、危口が原案を手がけた「蟹と歩く」は、予定通り3月25・26日に岡山・倉敷市立美術館講堂で上演される。

合掌。

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2017年3月 1日 (水)

2017年3月4月のメモ

2月に強引に駆込みで5本観たら3月がもっと詰まっていて、しかも前半から飛ばしていて、観切れない。

・OFFICE SHIKA PRODUCE「親愛ならざる人へ」2017/03/02-03/12@座・高円寺1:奥菜恵も久しぶりだけど久世星佳を連れてきたところが偉い

・新国立劇場制作「白蟻の巣」2017/03/02-03/19@新国立劇場小劇場:三島由紀夫が苦手なんだけどどう仕上がるか

・オフィスコットーネプロデュース「The Dark」2017/03/03-03/12@吉祥寺シアター:イギリスの比較的近年ものの日本初演で興味が湧いたのでピックアップ

・世田谷パブリックシアター企画制作「炎」2017/03/04-03/19@シアタートラム :初演と同じキャストでの再演、初演を観た自分がこの2ヶ月で1本だけ選べと言われたら全力をもってこれをお勧めする

・PARCO Production「不信」2017/03/07-04/30(03/04-03/06プレビュー)@東京芸術劇場シアターイースト:三谷幸喜の4人芝居だけど会場が狭いのでチケット争奪が

・西尾佳織ソロ企画「2020」2017/03/09-03/12@「劇」小劇場:鳥公演に先んじて個人企画

・シス・カンパニー企画製作「令嬢ジュリー」「死の舞踏」2017/03/10-04/01@Bunkamuraシアターコクーン:3人芝居の同時上演に小川絵梨子演出で挑戦、2本立てではなく昼夜でかわりばんこに1本ずつ上演するので注意

・鳥公園「ヨブ呼んでるよ」2017/03/16-03/22@こまばアゴラ劇場:旧約聖書が元ネタらしい

・燐光群「くじらの墓標 2017」2017/03/18-03/31@吉祥寺シアター:1993年初演の再演モノ

・青年団・こまばアゴラ演劇学校無隣館「南島俘虜記」2017/04/05-04/23@こまばアゴラ劇場:毎年楽しみな青年団と無隣館の合同公演、追加公演パズルにも注目

・劇団☆新感線「髑髏城の七人」2017/03/30-06/12@IHIステージアラウンド東京:新劇場こけら落としにして4つの座組みで3ヶ月ずつ1年間上演という日本ではあまりみない試みに鉄板の演目で挑戦するトップバッター

・ONEOR8「世界は嘘で出来ている」2017/04/02-04/09@ザ・スズナリ:比較的最近評判がよかった芝居の再演

・世田谷パブリックシアター企画制作「狂言 唐人相撲」「MANSAIボレロ」2017/04/05-04/09@世田谷パブリックシアター:これは1公演で2本上演だけど初日に限り唐人相撲がトークになるようなので日程注意

・松竹製作「赤坂大歌舞伎 夢幻恋双紙」2017/04/06-04/25@赤坂ACTシアター:蓬莱竜太の新作で生まれ変わりモノに中村屋が挑戦

・劇団青年座「わが兄の弟」2017/04/07-04/16@紀伊國屋ホール:マキノノゾミ脚本宮田慶子演出でチェーホフ伝とのこと

・テレビ朝日、産経新聞社、パソナグループ、サンライズプロモーション東京主催製作「フェードル」2017/04/08-04/30@Bunkamuraシアターコクーン:大竹しのぶ主演栗山民也演出のフランス古典らしいけどこの相乗りぶりは何とかならんのか

・KAAT×地点共同制作「忘れる日本人」2017/04/13-04/23@神奈川芸術劇場中スタジオ:よくわからない勢いを感じたのでピックアップ

・さいたまゴールド・シアター×さいたまネクスト・シアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」2017/04/14-04/16@さいたま芸術劇場:見逃していた公演なので観たいけど3日間3ステージだけとか

・SHATNER of WONDER「破壊ランナー」2017/04/21-04/30@Zeppブルーシアター六本木:まさかの西田シャトナー作品再演だけど、これは再演できるのか

・こまつ座「化粧」2017/04/25-04/30@紀伊國屋ホール:何度も上演している井上ひさしの一人芝居なので観ておきたい

・カンパニー・エルザッツ「思い出せない夢のいくつか」2017/04/28-04/30@こまばアゴラ劇場:平田オリザ作品の翻訳を、ベルギーの若手劇団が学生時代の卒業公演で上演して、それが本家の劇場で上演

劇団っぽく書いたものでも提携があったりして、こうやって並べると劇団よりプロデュース公演全盛なのがよくわかる。でもそれが大成功することもあるのでわからない。その大成功の実例が今回再演される。繰返しになるけど「炎」は全力でお勧めするので芝居に興味があるなら立見でもいいから観ておけ。高校生でも中学生でもいいから観ておけ。初演に口コミプッシュを出せずに日和ったのはいまだに後悔している。

<2017年4月12日(水)追記>

2本追加。あと、載せていないけど4月28日からのふじのくに世界演劇祭がちょっと面白そうなのだけど、スケジュールの都合がつくかどうか。

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