鳥公園「ヨブ呼んでるよ」こまばアゴラ劇場
夢の中でいつも同じ男性と会う女性。現実では子供を抱えて稼ぐのもままならず兄からも援助を受けているが、そのたびに責められることに耐えかね、援助を断る。兄は仲間を連れて妹の説得に赴く。
貧困や依存や育児放棄など話を重ねて、それを聖書の一節で表しつつ、圧力を逃がすような笑いもはさみつつ、痛いところを正確な言葉で刺してくるあたりは当日パンフの挨拶にたがわない仕上がり。
藁だらけの舞台はキリストが生まれた馬小屋の連想だと思うけど、別に神様は登場しない。ただ、急転直下のラストで、登場人物によって、何でもないと思う人と、吐気を催す人と、幸せを感じた人とに分かれるあの場面は、神様って単語が似合う。タイトルが「ヨブ」なのでこの後はハッピーエンドだったと信じたい。
演出形式は小劇場スタイルだけど、取扱っている話題とその飛ばし方がちょっと珍しく、他の小劇場芝居でも、もちろん商業演劇でも見かけない。無理に分類すれば海外芝居の脚本のほうが近い印象。こういう芝居を上演するならこまばアゴラ劇場だよな、よく似合っていたなと思うし、こういう芝居を上演する劇場のステータスを上げて懐の深さをアピールしてくれるような芝居。前回観たときから格段に違う。藁の舞台で埃を気にしてマスクを配った制作の配慮もよかったのでメモ。
こまばアゴラ劇場らしかったけど、こういう懐の深さをもった劇場のままキャパシティを増やしたいなら次はシアタートラムが似合うと思うので如何。
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