新国立劇場主催「君が人生の時」新国立劇場中劇場
<2017年6月24日(土)夜>
1939年のサンフランシスコの港近くにある安酒場。あまり客も来ないが、店には似合わない金離れのいい男が毎日たむろしている。男の使いっ走りは店にたむろする売春婦にほれている。ピンボールに入れこむ若者、金がなくて仕事のほしいミュージシャンやダンサー、ほら吹きの親父、教養あってあえて港で働く人足夫、仕事が嫌になった警官、恋人に求婚する若者、物珍しさで見物に来た金持の夫婦、売春婦の取締りに血眼な警察。いろいろな人間が出入りする酒場の1日。
実際の初演も同じ年で、名前だけ聞いたことがあっても観たことのないアメリカ芝居。ほとんど出ずっぱりな人物から一場面だけ出て終わりの人物まで総勢25人(子役がダブルキャストなのを数えると26人)の役者で構成される、それぞれの「君が人生の時」のひとこま。宮田慶子演出で期待したものの、残念ながら好みに合わず。
出番の長い役でも背景が完全に説明されることはほとんどなくて、出番の短い役ならなおのこと。出番の長短に関わらず、そのひとこまを見せてみろ、それを的確に表現した上にようやく成立させてやる、という意地悪な脚本なのかと思われる。ただしほとんどの役者がそこまでたどり着いていなかったので、観ていて入り込めず。ほら吹き親父の木場克己と悪徳警官の下総源太朗が素晴らしい仕上がりだったけど、これがぱっと観はよさそうな他の役者の仕上がり不足を浮きあがらせる副作用。人数が多い割に同じようなテンポで場面が進むので統一された雰囲気や一部登場人物の連帯感を感じることもなく、それがあのラスト、登場人物が喜ぶ場面なのに、観ていて雑な展開という印象につながった。美術衣装音楽などスタッフワークがかなり上出来だった分、惜しいを通り越してもったいない。
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