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2017年6月29日 (木)

新国立劇場主催「君が人生の時」新国立劇場中劇場

<2017年6月24日(土)夜>

1939年のサンフランシスコの港近くにある安酒場。あまり客も来ないが、店には似合わない金離れのいい男が毎日たむろしている。男の使いっ走りは店にたむろする売春婦にほれている。ピンボールに入れこむ若者、金がなくて仕事のほしいミュージシャンやダンサー、ほら吹きの親父、教養あってあえて港で働く人足夫、仕事が嫌になった警官、恋人に求婚する若者、物珍しさで見物に来た金持の夫婦、売春婦の取締りに血眼な警察。いろいろな人間が出入りする酒場の1日。

実際の初演も同じ年で、名前だけ聞いたことがあっても観たことのないアメリカ芝居。ほとんど出ずっぱりな人物から一場面だけ出て終わりの人物まで総勢25人(子役がダブルキャストなのを数えると26人)の役者で構成される、それぞれの「君が人生の時」のひとこま。宮田慶子演出で期待したものの、残念ながら好みに合わず。

出番の長い役でも背景が完全に説明されることはほとんどなくて、出番の短い役ならなおのこと。出番の長短に関わらず、そのひとこまを見せてみろ、それを的確に表現した上にようやく成立させてやる、という意地悪な脚本なのかと思われる。ただしほとんどの役者がそこまでたどり着いていなかったので、観ていて入り込めず。ほら吹き親父の木場克己と悪徳警官の下総源太朗が素晴らしい仕上がりだったけど、これがぱっと観はよさそうな他の役者の仕上がり不足を浮きあがらせる副作用。人数が多い割に同じようなテンポで場面が進むので統一された雰囲気や一部登場人物の連帯感を感じることもなく、それがあのラスト、登場人物が喜ぶ場面なのに、観ていて雑な展開という印象につながった。美術衣装音楽などスタッフワークがかなり上出来だった分、惜しいを通り越してもったいない。

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青年団「さよならだけが人生か」吉祥寺シアター

<2017年6月24日(土)昼>

雨の工事現場の休憩所。遺跡が出てきて工事が中断している。発掘の手伝いに来た学生たちや文化庁の職員に建築会社の社員は平身低頭。娘の話題が出て機嫌が悪いおじさんやその日が最後で故郷に戻る人の話題で盛上がる現場のメンバー。休憩所の床は割目が広がっていい加減危なくなっている。見回りした人たちはミイラを見たと言い出す。雨がやまないので休憩所で話すくらいしかやることがないある日の午後の2時間。

遺跡の発掘に頑張る学生たちと早くマンション建てたいので穏便に済ませてほしい建設会社の社員たちの話を縦糸に、結婚したい人たちとまだ結婚したくない人たちの話を横糸にして、遠くに行く人と行けなかった人と行かれてしまった人の来し方行末をいつも通りだらだらとした会話で描く。1992年初演の比較的初期の芝居だけど、すでにスタイルが完成されていて近年の芝居と同じように楽しめる。そこはかとなく色っぽい場面が出てくるのも初期作品っぽい。床の割目に手を入れたら抜けなくなった場面は何の話だったか。

青年団+無燐館で最近観たメンバーも出ていて、出だしはどうかと思ったけど、だんだん馴染んでいた。客席に背を向けて話すのは青年団のたまにやる手法だけど、縄文時代の研究をなぜ目指したのか訊かれて、そのまま突然話が止まらなくなってこれはやばいと思わせる怪演を魅せた文科省の役人、誰が演じたのかと思ったら立蔵葉子だった。手元の過去ログを検索すると「忠臣蔵OL編」とか「サンタクロース会議」とか五反田団の「ふたりいる風景」とか、見た目も声も覚えられない割に出ているといつも気になる演技で魅せてくれる。足場とパイプで組んだ素通しの小屋の舞台、こういう美術もあるのかという発見がある。

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2017年6月 3日 (土)

iaku「粛々と運針」新宿眼科画廊地下

<2017年6月2日(金)夜>

夫が追突事故に遭った夫婦は一戸建てに2人暮らしで、家のどこからか猫の声が聞こえると妻は夫に訴える。母と2人暮らしの長男とすでに結婚して家を出た弟は、入院した母の見舞いで久しぶりに顔を合わせ、実家で今後のことを相談する。粛々と運針を進める2人の女性は、家の裏手にあった桜の木の思い出話をすすめる。

最近評判のよい大阪の劇団。なるほど評判になるだけのことはあった。古くて新しい家族の話題を真正面から放り込んでくる。身につまされる話題満載だったけど、ネタを全部拾って笑う他の観客に助けられた。年齢が高い人ほど味わいが深い話で、たぶん日によって笑いの量の増減が著しく異なると思う。

若干のネタバレ込みで言うと、夫婦は妻が妊娠したかもしれないが、もともと子供はつくらない約束で結婚していたので妊娠していたら堕ろすつもりの妻と、いまさら子供がほしくなった夫との間で話がこじれる。兄弟は入院先で母の新しい恋人らしき相手に出会い、その相手が母に安楽死を願うように刷り込んだのではと疑うが、そこからフリーターで独身の兄と結婚して仕事も忙しい弟との間で話がこじれる。至近距離で出ずっぱりに耐える演技をあてにして、深刻すれすれのネタを混ぜてくる脚本演出の絶妙なハンドリンク。

その周りで針仕事をしている女性2人ののんびりした話で、終盤に全部つながるのが演劇ならではの醍醐味で、小さい劇場を生かした椅子美術も完成させてのラスト。あれだけ深刻な話題満載でそっちに落とすかと思わないでもなかったけど、反対のラストにしたらそれはそれでしんどいので、きれいに終わるほうでよかった。

夫婦や兄弟のどちらに肩入れするかは観る人次第だけど、芝居の出来のよさでは裏切りません。観られてよかった。1時間35分と近年では短い芝居だけど密度は十分。すでに前売完売のようだけど、当日券も若干枚販売なので我こそはと思う人はぜひ新宿まで。

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劇団☆新感線「髑髏城の七人(花組)」IHIステージアラウンド東京

<2017年6月2日(金)昼>

豊臣秀吉が天下統一を目指して関東攻めを準備している戦国時代。が、関東では、天魔王率いる「関東髑髏党」が北条一族を滅ぼして関東一円を手中にし、戦に備えて新たに城を築く一方、領内で狼藉の限りをつくしていた。それに対抗して村人を救った若者集団「関八州荒武者隊」と、通りがかって手助けをした正体不明の浪人捨之助。救った村人を送り届けたのは無界屋蘭兵衛が作り上げた、流れ者の色町として名高い「無界の里」。送り届けたまではよかったが、どうやら捨之助と蘭兵衛は知り合いらしい。やがて関東髑髏党の手は無界の里まで伸びてくる。

粗筋は昔のエントリーのコピペ。以前観たときはあんなに楽しんでいたのに、今回はいまいち盛上がれず。客席の動く劇場といっても、多数の場面転換を含む上演はすでに一般劇場で何度も実現していたところで、それを横に伸ばしても目新しさは感じず、むしろ空間が広がって雰囲気が薄まった。横の広さを生かした映像も厳しいことをいえば物語にはあってもなくてもよかった。小栗旬の主役もセンター後方の席からはマイクの声の大きさに比して見た目が遠い。沙霧役の清野菜名はラスト場面でマイクが飛んでいたけど、その時の音量の落差がそのまま劇場の広さだった。天魔王の成河だけ、単体で劇場に負けない演技をしていて、あれは素直にすごい。

関八州荒武者隊が思ったよりもよくて、何でだろうと考えたら、台詞を揃える場面の声の大きさと勢いが、ようやく劇場に釣りあっていたからだった。たぶんこの劇場はどんなに派手でも普通の芝居で頑張っては駄目で、劇場の広さに見合ったアトラクションというか、専用に組立てられた場面がないとつらい。古田新太がローラースケートで登場する場面が少しだけあったけど、青山円形劇場でローラースケートを履いた劇団☆新感線なればこそ、客席と映像とローラースケートを組合せて回す演出はできなかったものか。

おまけを書くと、真面目な場面が多かったためか、古田新太が出てきたら客席が待ってましたとばかり何をやっても笑う状態になっていた。路線変更ならいいけど、規模が大きくなりすぎておバカをやる余裕がなくなったのであれば残念。

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イキウメ「天の敵」東京芸術劇場シアターイースト

<2017年5月20日(土)夜>

料理教室を主宰し、マクロビオティクスの料理研究家として最近売れている男。料理番組の収録にも出るくらいだが、過去の経歴は不明で、助手に任せて一切調理を行なわない。料理教室に通う生徒は、夫の健康を気遣って教室に参加していたが、医療健康分野の取材を重ねていた夫は経歴不明の主宰者に興味を持って取材を申込む。過去に食餌分野で名を成した医者の子孫ではないかと追及したところ、子孫ではなく本人だと伝えられる。生きていれば120歳を超えているはずの主宰者が話す、食餌医療追及の果てにたどり着いた長寿の秘訣とは。

元は短編を長編に仕立て直したとのこと。役者は好演。スタッフワークも相変わらずよくて、特に整然と作られた料理教室の美術はロングランの賜物か、このくらい作られていると小劇場感が抜けていい芝居を観に来た気になれる。

2役を演じる役者が多くて、助手と主宰者の妻の2役を演じた小野ゆかりがこの前よりもいい感じ。生徒役の太田緑ロランスもよさそうな印象だったけど、戦前からの回想の話が続くため、回想場面で当てられる役が少なくて役不足。話より先にキャスティングを押さえてしまったんだろうと推測。

長寿の秘訣を長年試して絶望する男と、試したばかりで絶賛する関係者とのやり取りは、どこまで意図したかわからないけど、「太陽」を暗示するかのような場面で、イキウメらしさがよく出た作風。最後、取材後の主宰者と取材する夫との隔たりもいい。ただ、主宰者が話すメインの出来事1本だけで2時間超を引張るにはちょっとつらくて、薄味な仕上がり。長編化するなら、並行して別の問題を進めるか、「生きてる時間」みたいに別の立場からの描写を増やすか、もう一工夫ほしかった。

次回の本編は映画化に合せてなにか奇跡が起きてる気がする名作「散歩する侵略者」、他に新作を長塚圭史演出で「プレイヤー」、脚本のみ提供の秀作「関数ドミノ」、と前川友大の活躍は追いかけたいところです。

で、最後に文句。今回は当日券で観たのですが、割当てられたのが追加椅子席の一番端。なのだけど、ひとつ内側の追加椅子席が最後まで空席だった。これと同じことが以前「獣の柱」のときもあった。なぜ内側の席を売ってくれないのか。受付の手元には10枚くらいチケットが残っていたのに選べないし、もちろん一番端だから観やすいなんてこともない。追加椅子席だから事前の指定席販売に含まれていたとは思えない。

今回はチケットサイトで席未定の当日引換券を販売していたから、チケット販売開始時点で観やすい席を当日引換券に優先的に割当てるならわかる。でも自分が開演15分前でチケットを買った時にはすでに誰も並んでいなかった。それなら残っているいい場所から当日券に引当ててもいいだろうに、何でこんな目に合わないといけないんだ。「獣の柱」のときは一応指定席だったから買った観客が来場できなかった可能性もあるけど、2回目に同じ目にあったので偶然とは思えない。急遽芸能関係者や評論家が来場したときに備えて少しでもましな席を用意しておくとかの理由でも、開演15分前に通用する理屈とは思えない。金を扱う場所なので受付担当は手伝いではなく制作メンバーの一人だと思うけど、そんなに当日券客の扱いが低いならチケットは当日引換含めて全部Web販売、当日券販売しない、くらいまで徹底してくれ。

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