2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

« 2017年7月8月のメモ | トップページ | 舞台から転落して中嶋しゅうがまさかの死亡 »

2017年7月 3日 (月)

世田谷パブリックシアター企画制作「子午線の祀り」世田谷パブリックシアター

<2017年7月1日(土)昼>

源平合戦の末期、一の谷の合戦で義経に奇襲をかけられた平家軍が大敗し、阿波民部重能を頼って落延びるところから、源平双方が総力を挙げた舟戦である壇の浦の戦いで、平家が敗れて一族が入水または生捕りにされるまで。平家物語の巻の九後半から巻の十一の源平双方の努力と運命を描く。

初日プレビュー観劇。格好良いタイトルだけ知っていてどんな話かと思ったら、登場人物の心理描写を台詞に託して現代劇風(もう少し古くてシェイクスピアくらいか)にした直球の平家物語。壇の浦の戦いを分けた潮の満ち干きを月の運行から眺めて、併せて世の移り変わりの潮目を描いた大作。堪能した。

片や後手を踏んで講和の道を断たれて追いこまれるも阿波民部重能の助けで最後の一戦までこぎつける平知盛、片や戦上手だが政治に疎く梶原景時と衝突して軍をまとめられない源義経。まだどちらに転んでもおかしくないところを、敗北に転がる平家の下り坂を描いて無駄のない脚本。これを、伝統芸能からも現代劇からも大勢の芸達者を集めることが前提の、ぴたりと決まる構えや迫力ある台詞回し、平家物語の文体をそのまま生かして全員で読む郡読などで魅せつつ引張る。カーテンコールまで入れたら3時間50分の超大作で、キャスティングまで考えると公共劇場でないと演じられない規模。

いい役者ばかりだったけど、その中でも、何と言っても、義経の成河が出色の出来。身軽な身体能力で躍動感を見せてくれるだけでなく、才能が走りすぎて衝突してしまう良くも悪くも若いところを絶妙に演じてくれた。これが今井朋彦の梶原景時と火花を散らす場面とか、長らく小劇場を観てきたこちらの贅沢気分をくすぐることったらない。阿波民部重能の村田雄浩とか、二位の尼の観世葉子あたりも、このまま大河ドラマに投入して活を入れてほしいくらい。声も思慮も余裕大きく貫禄あるところを演じた弁慶の星智也とか、あと名前を確認し忘れたけど、揉める義経と景時を仲裁する三浦介義澄のすっとぼけた味とか、補佐したり諫めたりしながらも地位の上下を固く守って演じた船所五郎正利とか、いいです。とにかく全員声が出るので、群読の場面だけでなく、声を揃えて応じる場面だけでも劇場を声が揺らして気持ちがいい。

惜しかったのは、結構な場面数だけど、野村萬斎演じる平知盛が出る場面。前半は節回しが粘りすぎて重くなってテンポがそがれた。後半はなぜか一人だけものすごい声が小さくなって、他が大きいだけ聞き劣りがひどかった。あと語りの録音は野村萬斎と若村麻由美だけど、低くて篭りがちな言い回しで、二人とも聞取りづらい。子午線の説明が出るのは語りの部分なので、そこが聞取りづらいと芝居の魅力が減る。録りなおすのが理想だけど、それが無理なら音響でもう少し調整できないか。若村麻由美もそうだけど、野村萬斎が自分を演出する場面が全般に他に追いついていなかった。前から思っていたけど、野村萬斎は自分が出演するときは演出を兼ねないほうがいい。

ちなみに潮の流れについては大正時代の調査を元に説明している説がある。自分は海音寺潮五郎を読んで知っていたけど、木下順二も読んでいたかも。

« 2017年7月8月のメモ | トップページ | 舞台から転落して中嶋しゅうがまさかの死亡 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 2017年7月8月のメモ | トップページ | 舞台から転落して中嶋しゅうがまさかの死亡 »