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2017年9月26日 (火)

インプレッション企画制作「謎の変奏曲」世田谷パブリックシアター

人間嫌いで知られ、北の孤島に一人暮らしをするノーベル賞受賞作家。恋人との往復書簡の体裁をとった新作が評判を取るなか、とある地方紙のインタビューの申込にだけ応じ、自宅に招待する。新作は作家が実際に交わした手紙でモデルがいるのではないかと問うインタビュアーと、それは作り話だと応じる作家とのインタビューの行方。

大人の洒落をいっぱいに詰めた脚本。偏屈な情熱を持ちながら上から物申したり下手に出たりする作家に橋爪功のキャスティングがいかにも似合って適任。後から思い返して気が付く、長さを感じさせない長台詞はさすが超ベテランの技。それを相手に丁々発止に持込む井上芳雄も好演。少しの笑いも交えながら押し引きを続けて最後の場面まで飽きさせない。ネタばれしたらつまらないのでこれから観る人はよけいな検索はしないほうがいい。

背の高い劇場に組まれた背の高い美術もさすがの仕事だったけど、窓を大きく取った美術の向こうに「北欧が昼から夜に変わる年に一度の日」の抜けるような昼の空から夜までを再現したホリゾントは、シルエットや夜間の室内照明と併せていままで観た中で一番美しい照明。緊張の途切れない2人芝居の向こうを張って拮抗した佐藤啓の照明と伊藤雅子の美術のタッグ。これは絶賛したい。

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こまつ座「円生と志ん生」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

<2017年9月23日(土)昼>

軍属で満州慰問団に参加したものの、敗戦で仕事がなくなり帰国もできなくなった三遊亭円生と古今亭志ん生。帰国を目指して食いつなぎながらも落語の修業は忘れない2人の話。

後半はかなりテンポよくなるも前半は3場中2場に重い話。円生が劇団に属したという事実の時系列上しかたないとは言え配分を間違えた脚本との印象。それを鵜山仁が丁寧に演出しすぎて重さに拍車がかかる。前半途中で抜ける客もあり。大森博史とラサール石井がたぶん本人に似せた話し方をしていたのだと思うけどそれがまたおとなしく、落語の修業は片時も忘れず、という根幹の話が目立たず。モデルは気にせずにやったほうがよかったのではないか。

後半は盛り返して修道院の場面はさすが。女優4人は通して健闘。元トップらしさを抑えて他の3人を支えた大空ゆうひ、上手いだけでなく飛び道具としての冴えを見せた池谷のぶえの2人、特によし。

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2017年9月18日 (月)

1日2公演で共通の出来事がそろったという雑談

ななふく本舗風琴工房の1日2公演の話。

(1)変な客がいて調子が狂った。

何でも拍手したり声を掛けたりするファンと、何をやっても笑う謎の客。演じる側の責任ではないけど、他の客としてはつらい。

(2)中央線沿線劇場

最近は山手線沿線か東急線(井の頭線、田園都市線)沿線の劇場がほとんどだったので、珍しい体験。でも遠いんだ。駅近でも乗換えの分だけ遠く感じるのに、三鷹の駅からの遠さとか。

(3)出演者が全員女性

浪曲は浪曲師も三味線も両方女性。風琴工房は8人出ていたのにテーマもあるけど全員女性。全員男性の芝居は結構あるけど、全員女性の芝居はあまりない気がする。

だからどうしたっていう雑談です。

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2017年9月17日 (日)

風琴工房「アンネの日」三鷹市芸術文化センター星のホール

<2017年9月16日(土)夜>

大手化学メーカーの女性開発員は新型生理用ナプキン開発の追込み真っ只中。リーダーを務める女性に同じチームの同期の女性開発員から、実は普段は自社のナプキンを使っていない、天然素材のナプキンを開発できないかと持ちかけられる。それどころではないと喧嘩する2人に、今は企画部部長の元上司が、会社の「自由研究プロジェクト」を使えばよいと情報をもたらす。元上司のおぜん立てで集まった7人の女性で発足したプロジェクトの初回に、そのプロジェクトを知って混ぜてほしいと総務の女性が直訴に来て始まるナプキン開発と、それに関わるメンバーの生理についての物語。

15年ぶりくらいの風琴工房は、生理を巡る女性の話を、生理の基礎知識説明まで丁寧にしたうえで、あのアングラスタイルはどこに行ったのかというくらいポップかつ正面から描く。トランスジェンダーで性転換手術を行なった役まで登場させて8人8様の初潮の話から開発への思いにつなげる脚本スタイルは「ヴァギナ・モノローグス」を思い出すけど、それよりはもっと、ナプキン開発というテーマで1本の物語にして進めていく。役者も力みすぎず流しすぎず、真面目すぎず茶化さず、観る側が引かないようなラインで演じきっていた。これは脚本を含めた演出家の調整の賜物だと思う。難癖をつければ、8人の所帯で全員同じくらいのテンションで前向きに揃っている点に若干ひっかかるけど、開発者の物語としては満点の出来。観れば何かしら発見があるはず。

でも開発の物語ではない。チラシに生理用ナプキン「開発」の物語とあったので、もっと開発の話が前面に出てくるかと期待していた。でもナプキン開発を通して生理を描くことを通して生理を巡る女心を描いていた。どちらの誤解になるのかはともかく、そこが個人的に残念。

<2017年9月18日(月)追記>

そういえば最後列に何をやっても笑っているおっさんがいたけど、あれはなんだったんだろう。大きな劇場だとたまに見かけるけど、業界関係者か。一応こらえていたつもりなのだろうけど、あのサイズの客席ではつらい(実はかなり近い席だった)。あれだけ頻繁に笑われてもリズムを崩さなかった役者はあっぱれだけど、観ている側のリズムというか入り込み具合は損なわれた。ライブは難しい。

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ななふく本舗「浪曲タイフーン!」カメリアホール

<2017年9月16日(土)昼>

若旦那が泊った宿屋、預けた売掛金が足りなくて責められた宿屋の娘、自害を思いとどめてくれた武士を探しあてたら「赤穂義士伝 貝賀弥左衛門」。静岡は掛川の宿、大納言一行が泊るから宿泊お断りの宿屋に無理やり泊ったのは、名を明かさぬ名人の左甚五郎と、これまた謎の老人、夜中の厠の途中に新築の部屋を見つけた2人の悪戯ごころ「左甚五郎旅日記 (失念)」。家付き娘のお内儀の焼きもちが有名な上方の繁盛している商家、今は所帯を持ったかつての奉公娘が法事に寄ったら、旦那との不義を疑い追い返す始末「(失念)」、いつも酒に酔って金にも困った様子の男が兄上と酒を酌み交わしたいと訪ねたが、あいにく兄は留守で酔っぱらいの義弟を嫌う兄嫁は仮病で引っ込む、しかたなく兄の紋付を相手に酒を飲んだ男が出かけた先は「赤穂義士伝 赤垣源蔵 徳利の別れ」。

人生初の浪曲は玉川奈々福と春野恵子それぞれ2席ずつの4本立て(春野恵子、玉川奈々福、春野恵子、玉川奈々福の順)。聴いているこちらが気持ちよくなるほどの声。落語よりもさらに声を聴かせるスタイルの芸という印象。

日本人ならまず琴線に引っかかる赤穂義士伝が良くできていたのは当然。として、今の気分を表したという名人のいたずら話、他のどの登場人物よりも主人公の恨みがましさから思い切るまでの流れが一押しの話、そちら2本のほうがそれぞれ演者にマッチしていた。

三味線がまた興味深い。春野恵子と組んだ一風亭初月は弾くより叩いて盛上げるスタイルでこれはこれでいいのだけど(恨む女の場面は実に盛上げていた)、玉川奈々福と組んだ沢村豊子の音が太くて滑らかで、右手の撥の動きが弦を撫でるようにまた艶っぽくて、弦楽器を弾くならあんな音を出したいと思うような理想のひとつ。声も三味線もマイクなしでもっと狭い会場で贅沢に聴いてみたい。

客席からの掛声もあったけど、ファンなのか、上手前方にタイミング悪く声を掛ける客がいて、贔屓の引倒し。今後も機会があれば聴いてみたいけど、折込チラシを見た範囲ではだいたい1日限り1公演なので、観る側として日程調整で最優先しないと見逃してしまうのが難。

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2017年9月13日 (水)

本番直前の降板騒動

もう寝ようと思ったときにこんな記事を読んだら寝られないじゃないか。こういうのは後でエントリーが消されたりするので、とりあえずJ-CASTの記事からスタート。

 女優の鈴木砂羽さん(44)が初演出を手掛ける舞台「結婚の条件」で、主要キャストを務める予定だった女優の鳳恵弥(おおとり・えみ)さん(36)と牧野美千子さん(52)が、初演直前に急きょ舞台を降板することになった。

 2人の所属事務所が2017年9月11日深夜、公式フェイスブック上で発表した。事務所側は降板の理由について、演出の鈴木さんによる「人道にもとる数々の行為」が原因だと説明している。一方、劇団側は「事実とは違います」と事務所の主張を真っ向から否定。双方の認識が大きく食い違う事態となっている。

(中略)
 2人が所属する事務所の担当者は12日のJ-CASTニュースの取材に対し、鳳さんのブログに書かれた内容について「すべて事実だと認識している」とした上で、

 「鈴木さんが2人に土下座をさせたことは紛れもない事実です。(鈴木さん側が)どのように主張するかは分かりませんが、言い訳はできないと思います」

と話した。

 一方、今回のトラブルについて、劇団を主宰する江頭氏は12日夕に報道各社向けにファクスでコメントを発表。鳳さんらが「(鈴木さんに)土下座を強要された」などと訴えていることについて、「事実とは違います」と全否定した。

 江頭氏はコメントで、自らのスケジュール確認のミスにより稽古場で謝罪したことはあったが、決して鈴木さんから強要されたわけではないと説明。鳳さんが稽古場の床に座ったまま頭を下げたことは事実だが、

 「その場にいた私が断言できるのは、鈴木さんから土下座をするようにとは決して言っておりません」

と真っ向から否定した。

 また、江頭氏のマネージメント担当者は12日夜のJ-CASTニュースの取材に対し、鈴木さんが独断で代役を立てていたことや、それについて江頭氏が抗議したことについても、

 「まったく事実ではありません」

と否定。その上で、鳳さん側の主張を知った江頭氏の様子については「ただただ困惑しているようです」としていた。

これで一次情報を探す。まず劇団

劇団クロックガールズ・第15回本公演「結婚の条件」に出演予定でした鳳恵弥さん、牧野美千子さんが、諸事情のため止むを得ず降板ということになりました。
出演を楽しみにされていたお客様には心よりお詫び申し上げます。
このような直前での発表となってしまったこと、重ねてお詫び申し上げます。

なお、本件のチケットキャンセル、及び払い戻しにつきましては、XXまでメールでご連絡を頂けましたらご対応をさせて頂きます。
お電話の場合は、XX-XXXX-XXXXまでお願い致します。留守番電話での対応とさせていただきますので、ご予約名と公演日時をお知らせ下さい。こちらから折り返しご連絡させていただきます。

劇団クロックガールズ・主宰 江頭美智留

とある。連絡先はとりあえず伏字。客からすれば劇団が一次連絡先としては適切だからまあ普通の対応かと思いきや、降板した2人の所属事務所のFacebookでは

本年9月13日~18日まで弊社の鳳恵弥、牧野美千子が出演を予定しておりました舞台【結婚の条件】で御座いますが、演出鈴木砂羽氏より二人の受けました人道にもとる数々の行為に対しまして、弊社と主催側で検討をしました結果、残念ながらこれ以上の稽古及び舞台への出演をお受けすることは出来ないと判断し出演をお断りする運びとなりました。

舞台をお楽しみにしておられたお客様には、このような結果にならざるを得なかったことを深くお詫びを申し上げますと共に、何卒ご理解を賜りまして、引き続き鳳恵弥、牧野美千子への応援を賜れますようお願い申し上げます。

なお、本件につきましてはのチケットキャンセル及び払い戻し、また舞台出演に際しましての既に支払いを済ませてしまった交通費、宿泊費、また鳳、牧野お送り頂く予定でしたお花、贈答品キャンセルによりますご損害に関しましては全て、クロックガールズ様がご対応なさるということで御座いますのでXX又はXX-XXXX-XXXXまでご連絡お願い申し上げます。

となり、チケット代はさておき、交通費宿泊費贈答品のキャンセルまで対応すると記載されており、それが本当なら劇団がその条件で結構ですと言ってもしょうがないくらいの出来事だったと推察される。もっとも、交通費とチケット購入手数料については新国立劇場が払戻したこともある。個人的にはあれはやりすぎだと思うけど、当日すでに客が入って開演時間になってから寝坊で公演中止というなかなかない事情だったので。

その後、劇団からは代役をひとりだけ立てて公演続行するアナウンスが出る。

次。降板した2人のうちのひとりである牧野美千子のブログでは

一生懸命挑んでいた舞台を
本番2日前に降板することに
なりました。
同じ事務所の鳳恵弥さんと共に。


事務所に所属した以上
その指示に従うのは当然ですが、

もし、自分がフリーだったら、、
同じ結論を出さなかったかも。とも。
色んなことを飲み込んで
続行していたと思います。


結果的に
事務所は私たちの立場を守ってくれました。


どちらが正解かはわかりません。


稽古当初から
何ともいえない雰囲気のあった
座組ではありました。

とあるので、何か嫌な目にあって降板したと読取れる。それよりもっといろいろ書いているのが鳳恵弥のブログで、

お約束をしていた時間に稽古場を出る日、まさかの事態、演出家と演出助手が揃ってふんぞり返り劇団の代表者であり、脚本家であり、プロデューサーの江頭美智留先生に頭を下げさせている姿、余りにも常軌を逸していて、言葉がありませんでした。

1回目の通し稽古が終わり、私たちは床に座ってダメ出しを受ける中、準備していたかのようにまた始まる罵倒、『2回通し稽古をしたかったのに誰かのせいで出来ない!』尻馬に乗るように演出助手の方が『みんなも2回やりたかったよね?』、そして名指しにされる私たち、先生が後ろから駆け付けてまた頭を下げる、美千子姉さんが『すいませんでした。』と謝る姿に納得せずに『ぬるいわね』と吐き捨て更に追い込もうという演出、作品の稽古とは全く関係ないところで起こる惨状に、私は床に額を擦り付けて謝ることになりました。

その姿に『私たちだけじゃなくてあちらにも』と他の共演者の方にも土下座をするように砂羽さんから促され、頭を下げました。

この状況に砂羽さんの事務所のマネージャーさんも含め、流石に不味いと水入りになりましたが後の祭り。

事務所に報告が入り、私たちは降板も視野にいれた話し合いになりました。

事務所は、『私たちは役者さん、タレントさんには敬意を持って接しています。物じゃない、一人の欠けがえのない人間なんです。』と普段からそうしてくれていることは知っていてもやはり涙が出ました。
その上で、私たちはどうしたいか?をそれぞれからしっかり聞き取り、最終的には私たちは江頭先生が望む形に全てを呑み込んでしようと決めて砂羽さんに任せますと言われて来た江頭先生とお話をした矢先、江頭先生の電話に代役を頼まれたんだけど?という大友さんの連絡。

余りに酷い、と砂羽さんに抗議する江頭先生に向けられた砂羽さんの言葉は『代役でやるとかやらないとか、皆が揃わないと公演を中止にするとかしないとか、そんなのを決める権利はあんたにはない』とのこと・・・

もう、言葉を失いました。
作品に対しての愛はこの人は全くないんだなと確信しました。

いや、自分がセリフが入らないのを脚本のせいにして何度も書き直させていた姿に

いや、稽古場で私はドラマの言うA面の江頭美智留を知っている、舞台というB面しか知らないあなたたちは、と言った時

他にも舞台なんてこんな感じと、稽古場外で自分の味方のキャストを増やすことに終始して、幾度も飲みに誘っては気に入らないキャストや江頭先生の悪口を吹き込んでいる姿

いつでも、気付けたはずでした。
自分が愛する舞台を、ここまで蔑み、悪戯に掻き回しておもちゃにする姿に、何故私は何も言えなかったのだろう。

それは、私だけではない。
今、この時も舞台を愛し、芸能を愛している仲間たち全てへの許されざる冒涜であったにも関わらず、私はこの時、江頭先生に頭を下げさせてしまうまで何も出来なかった。

とあるので、なかなか激しいトラブルがあった模様。なお、鈴木砂羽のコメントは見つからなかったけど、公演日程どおりにやるならコメントを出している余裕なんてないだろう。Instagramに稽古場の写真はあった。ちなみに所属事務所はホリプロだけど、そちらにもコメントはなかった。

で、まだよくわからないので想像を含めて整理したい。

通し稽古の日。稽古場は何時だかまで借りられるので、演出家は2回の通し稽古を行なって仕上げようとスケジュールを組んでいた。が、降板した2人またはその事務所には「お約束をしていた時間」が連絡ミスで短く伝わっており、事務所はその短い時間に従って稽古後に別の仕事をブッキングした。あるいは、その時間の前提でギャラが組まれていた。

それが発覚したのが当日で、いまさら再調整もできず、結果、その日は2人が抜けるため通し稽古を1回しか行なわないことになった。連絡ミスの経緯は不明だが、演出家は劇団主宰者を責め、劇団主宰者はそれを演出家に謝罪した。これは単に頭を下げたのだと思う。

そのうえで通し稽古を1回行なって、駄目出しを実施。写真の通りの稽古場なのでみんな床に座って聞く形になった。が、このタイミングで演出家がスケジュール調整ミスを蒸し返し、駄目出しそっちのけで名指して2人を責める。それをフォローするべく劇団主宰者が自分の責任だと再度謝罪した。これも単に頭を下げたのだと思う。が、劇団主宰者にここまで謝罪させているのを見かねて、牧野美千子が演出家に謝罪。床に座っていたこともあって土下座の形になったが、それでも収まらない演出家を見て鳳恵弥も同じく謝罪。これは額までつけた本当の土下座になった。それで演出家が他の共演者にも謝罪するように言い、少なくとも2人は床に座った形で共演者にも謝罪した。

謝罪に他に言葉があったのかはわからないけど、そこまでされて演出家以外の人間が引いて、そのとき現場にいた演出家のマネージャも割って入ってお開きにした。ここまでが前半。

その後、誰が連絡したかはわからないが(劇団主宰者か演出家のマネージャではないかと推測)2人の事務所に報告し、事務所が2人から経緯を聴取。降板したいところだが劇団主宰者が望むのであればなかったことにする、と方針を決める。演出家は劇団主宰者に一任して、それを受けた劇団主宰者が事務所に来て2人および事務所の社長と話し合う。劇団主宰者は公演中止まで覚悟していて、事務所に来る前に演出家とそういう話を交わしていた。そこで危機感を抱いた演出家が、一任したとは言ったが、代役候補に声をかけた。かけられた側はそんな直前の代役とは何事かと劇団主宰者に電話で問合せて、このタイミングがちょうど劇団主宰者が事務所で話していたとき。

そのとき劇団主催者と事務所との間でどのような話がされていたかはわからないが、一任されていたと信じていた劇団主宰者がその場で演出家に抗議の電話をかけると、「そんなのを決める権利はあんたにはない」と演出家から言われる。電話が終わり、言われた内容をその場で2人に伝える。この時点で2人の事務所の社長が、そこまでされたらさすがに出演はさせられないと決断。その場で劇団主宰者も同意し、2人の降板が決まる。ここからは2人を外して事務所の社長と劇団主宰者との交渉となり、2人に対しては迷惑をかけて申し訳ないと思っている劇団主宰者がキャンセル客への責任分担は劇団側100%、賠償範囲は目一杯との条件を飲む。

その後、演出家と話した劇団主宰者は、真意はともかく公演続行に同意する。ただし当初の代役候補は劇団主宰者から事情を聞いて、また迷惑が及ぶことを警戒した劇団主宰者が促して、代役を辞退。改めて劇団主宰者も一緒に代役を探したものの、公演直前すぎるのと、噂が千里を駆巡ったのと、少なくとも劇団主宰者は知りあいほど迷惑をかけたくなくて声をかけられないのとで、代役がひとりしか見つからなかった。このため、脚本の一部を書換えて、2人の降板をひとりでまかなって、公演に臨んだ。

って感じではないでしょうか。これならつじつまはあっているはず。そこに至るまでの稽古期間でもいろいろあったようですが、ちょっと情報が少ないのと、演出家側の情報が足りないのと、眠いのとで、ここまで。

<2017年9月13日(水)追記>

もう少し情報が出ていて、不明だった情報も載っていたので追記。まずは「土下座」について日刊スポーツより。

 高橋はこの騒動に「土下座土下座って出てますけど、稽古場っていうのは演出家は大体こういう(一段高い)ところに座っていて、演者たちは床に座って台本を床に置いてダメ出しを聞いてるから、自然と最初から土下座してる感じになる。そういう形になっているのが普通の稽古場の形。それで(演出家から)何か言われて『すみません』って(頭を下げたら)それは土下座に見えると思いますよ」と説明し、“土下座”がクローズアップされるのは大げさだとの見方を示した

真相はともかく、これは自分の想像した内容を補強してくれるコメント。そしてなぜか東スポが詳しい。

 騒動の直接の引き金となったのは、9日に行われた通し稽古だ。この日、2人の女優は夜に収録の仕事が入っていたため早抜けすることを、8月の段階で伝えてあった。ところが前日の8日になって突然、演出助手が当初1回の予定だった通し稽古を「明日は2回やるよ」と言い出した。

 2人は抗議したが、9日になり、1回目の通し稽古が終わったところで「2回、通し稽古をしたかったのに誰かのせいでできない」と罵倒され、謝罪を強要されたという。

 関口氏は「8日に助手が2回やると言い出した際、鈴木さんが『エッ?』とつぶやいたので、助手が自発的に言い出したのだと思う。我々はやる気がないわけではなく、前々から決まっていた仕事を飛ばすわけにはいかず、物理的に2回目の稽古ができない状態。それを承知で嫌がらせをされたのだと受け止めている」と指摘する。

 本筋とは関係ない“嫌がらせ”で追い込まれた2人は降板。そこに江頭氏が謝罪に訪れ、同社は対応を江頭氏に一任した。「江頭さんが『戻ってほしい』と言ってくださったので、当社は『わかりました』と返事をした。ところが、すでに鈴木さんサイドが代役を決めてしまっていた。江頭さんが公演中止を検討すると、鈴木さんが『あんたにはそんな権利はない』と突っぱねた」(関口氏)

 関口氏によると、その後、事態を重く見た鈴木のマネジャーが謝罪に訪れ「鈴木はこれまでトラブル続きで、ウチの“お荷物”だった。本当に申し訳ない。ただ会社として謝罪してしまうと、鈴木を守ることになってしまう。会社としては見放しているので、劇団が鈴木を降板させるなり、どうとでもしてほしい」と伝えたという。
(中略)
また鈴木の所属するホリプロは、マネジャーの“お荷物”発言を「ありえないこと」と全否定したうえで「すべては主宰者である江頭さんのおっしゃる通りです」とコメントした。

これによると、稽古を抜けた理由は生放送の仕事が入っていたことで、それは先月の時点で連絡済み。なのに、騒動の前日に2人の事務所の社長も稽古場にいるにも関わらず、演出助手が2回の通し稽古を突然提案している。演出家も驚いたことになっていて、その場で抗議もしたという。で、翌日は2回稽古できないと演出家が率先して、次いで演出助手が、文句を言う形になっている。

演出助手の仕事についてはまったく知らないので検索したらこれとかこれとかこれとか見つかった。専門部署でありつつ何でも屋だけど、共通していたのは「稽古のスケジュール管理」が演出助手の仕事になっていたこと。そこには通し稽古日の決定とそこまでの稽古の流れ、そのための出演者のスケジュール調整まで含まれているとのこと。あと立場上は演出家の味方であること。読んでイメージしたのは小屋入り前の舞台監督で、現場によっては創作(演出家担当)と予算(制作担当)以外のすべてを仕切るくらい重要度の高いポジション。

今回の演出助手は松倉良子となっているけど、検索してみたら小劇場出身者を中心に結構いろいろな演出家と仕事をしていて、それなりに大きな舞台まで経験のある人。そういう経験もあればこそ、初演出の助手も頼まれたのだと思うけど、それだけの経験のある人でもそんな風になるものか。

ものすごく前向きに想像するなら。

演出家が初演出なのに主演も兼ねて、にもかかわらず台詞覚えが悪い状態で、稽古場を仕切る余裕も他の演出家に接する際の余裕もゼロで、自然と演出助手の負担が高くなったので、強気に回していた。そこに演出家が甘えたからいよいよ強気で稽古を回していたが、あまりに仕上がりが悪いから独断で通し稽古の回数を増やそうとしたら、負担が高すぎてスケジュール管理が飛んで、スケジュールの埋まったところに入れようとしてしまった。抗議されたのはもっともだからその日の追加通し稽古案は取下げたけど、ミスを認める心の余裕もないしかといって仕上がりの悪さで演出家を責めることは立場上できないから、仕上がりがいまいちなのは演出家のせいではなく稽古に付きあわない2人のせいだと問題すり替えのようにこぼした。頼りにしている演出助手からそう言われてかばう気持ちが出たのと、てんぱっている演出家兼主演女優が意識的か無意識的か責任転嫁でそれに乗る気持ちが出たのとで、演出家が率先して翌日の騒動に及んだ。その後、降板による公演中止の可能性が発生。演出助手は業界の経験上と仕事柄、公演中止なんてありえないと発想して代役の手配にすぐに意識が及んだ。本番間近の時期で、手配は早ければ早いほうがダメージは少ないので劇団主催者のちんたらした交渉なんて待っている時期ではないと演出家に代役探しを勧める一方、公演中止になったら今後の演出家キャリアが遠のくからここは強気の一手とも伝えて、まるで仕切れていない演出家がそれに丸のりした。

みたいな話になるんでしょうか。全部想像なので真に受けてはいけません。

ちなみに本番は無事開幕したようで、これも東スポより。

教師役の鈴木は鳳から「セリフがしばしば飛ぶ」と指摘されていたが、教材のタブレットを手に教壇に立ち、さらには自らの出番が公演時間の半分程度という“大胆演出”で見事にこなしきった。

 鈴木はカーテンコールで涙を流し、劇団員からハンカチをもらって涙をぬぐった。「いろいろ言葉を考えてきたのに、皆さんの顔を見たら感無量で。しっかりしろ(と自分に気合を入れる)。本当にお騒がせしてすみませんでした。この日を迎えることができて、ありがとうございました。いろいろありましたが、こうしてみんなと初日を迎えられたことが何より良かった。皆さんも素晴らしかったと思います」と思いの丈を吐き出した。

 80分の公演予定が110分になるという大熱演。「いろいろありましたので、何とぞ何とぞよろしくお願い申し上げます」とあいさつすると、何人かの団員も涙を流して感動を分かち合った。最後に鈴木は笑顔で観客に手を振り、投げキスをして舞台を去った。

 関係者によると「実はチケットの売れ行きがあまり芳しくなかった」というが、本紙をはじめとしてメディアの報道で話題を呼び、さらには報道陣が公演を観劇したことで客の入りは約9割の大盛況だった。

 劇場外にはテレビ各局の有名リポーターがずらりと勢揃い。50人以上の報道陣が詰めかけ、鈴木の人気を見せつけた。

タブレットは台詞でも表示していたんでしょうか。80分が110分とか、どれだけ直前で手が入ったのか不明ですが、まあ幕を開けて初日を無事に終わらせたうえに、チケットの売行きが伸びるというおまけつき。創作水準は不明ながらも、公演続行に賭けた側は、ピンチをチャンスに変えてみせて、興行だけなら文句なしの成果です。

今回の騒動は実に難しいところで、長い仕事なら一度ご破算にして練り直すほうがいいケースもあるけど、芸能界で週末公演一発勝負なら誰が何と言おうとショーマストゴーオンを実現させたほうが偉いという見方もできる。むしろ後者の評価をする人のほうが業界には多くて、初日にこぎつけた人たちが予想外の評判を取るかもしれない。

でもそこは間違ってはいけない。燃やして全焼はさすがに駄目で、燃やした火を自力で消せるのはある種の実力ですけど、一番いいのは燃やさずに仕事を終わらせること。そこの優劣は崩してはいけない。煙が立たないと注目されないのはよくあることで、燃やさずに片付けられる人にとっては不幸ですけど、注目されないことに不幸を感じるような人はそもそもそういうポジションにはいないと思うので、これからも火気厳禁に勤しんでほしい。

双方の立場が何となくわかった気になったのでここまで。あと知りたかったのが、初日に間に合わせるためにスタッフがどのくらい忙しかったかだけど、まあ表に出てこないだろうからそこまでは探らない。

<2017年9月15日(金)追記>

事務所の社長から終結宣言が出ました。スポニチより。

 問題となっているのは、鈴木から2人の女優への土下座の強要や罵声があったのか。13日の初日終演後に鈴木が涙ながらに全面否定したが、関口社長は「2人が床に座って謝っているように見えたと複数の人間が証言しているのが根拠」と主張した。

 もう一つの問題は鈴木が怒ったとされる理由。2人が仕事の都合で通し稽古に参加できなかったのが原因とされているが、関口社長は「スケジュールは事前に主催者へ報告していた」と改めて主張した上で「演出上の問題でうちの女優が何を言われても何の文句もないですが、演出と何も関係のないところだったのが降板を決心した理由」と説明した。

 ただ「私は現場に居合わせてはいなかった」と言い「双方の見解の相違ということもある」と対立を回避する意向も初めて示した。

そう、そもそも上で引用した当人のブログに自分から謝ったと書いてあるので、土下座を強要されたという主張は事情を聞いた社長の勇み足だと思われる(ブログは日本語がわかりづらい箇所があったので、勢いに任せて推敲されずに書かれたものと推測され、そのぶん内容は信用できると判断している)。当日の現場にいたのは演出家のマネージャで、それが止めに入ったくらいだから、よほど理不尽に罵られたか時間を越えて詰られたか、それはあると思うけど、自分から土下座して謝ったのと強要されて土下座したのとでは大幅に違う。

それで演出家の事務所から土下座を強要した事実はないと反論されたり、劇団主宰者側から話し合いの場できっつい様子で判断を迫られたという記事が出たり、旗色の悪い泥仕合になりそうだったので、ここで撤収に切替えたのは妥当な判断だと思います。

おまけで書くと、社長がこの騒動の中で、勇み足はしょうがないかもしれないけど、演出家の事務所のマネージャが謝罪してきたことだけならともかく、謝罪の内容までマスコミに公開したのは悪手。大手から高飛車に出られたら小さい事務所がマスコミを巻きこむ戦法もあるけど、本気なのかその場しのぎなのかわからないあんな内容を公開されたら相手だって反論しないわけにはいかない。

まあ芸能界は大変ですね。

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2017年9月10日 (日)

Q「妖精の問題」こまばアゴラ劇場

<2017年9月9日(土)夜>

ブスの排除と弱った老人の撲滅を掲げて選挙に元女優が立候補する世の中で、ブスの女子中学生同士がお互いの容姿を貶しあいながら将来に絶望したり希望したりする様子を落語で描く「第1部:ブス」。豚骨ラーメン屋の近くに住んだばかりに繁殖が止まらないゴキブリとの終わりなき戦いを歌い上げる「第2部:ゴキブリ」。健康のためには菌を殺すのではなく適切なバランスで共存させるべきと主張するセミナー主宰者が勧める食品は「第3部:マングルト」。

自分と違った人間を排除すべきとの主張を、誰でも排除したくなる対ゴキブリに視点をずらして、体内菌の共存で多様性を訴える展開はお手本のような正反合。それを演じる格好が、出だしからインパクト強すぎで、しかもそれで最後まで通すとか、エネルギーありすぎ。

ただ演出とスタッフワークには異議あり。ひとつは第2部の歌。膨大な台詞を音に乗せるためか、似た伴奏が似たテンポで続くためさすがに飽きるのと、マイクが声質に合っていないのかキンつく場面あり。あと客席がコの字なのだけど、特に第2部と第3部は劇場入口から見て左奥が正面扱いされて、右手前からは背中だらけになる場面多数。特に第2部は天井からぶら下げた美術が映像を邪魔しないように左奥に配置したと思われるが、そこに照明とマイクスタンドと楽譜台を置いて左奥向きに歌ったため顔は見えてもほとんど横顔。あれは映像のない第2部しか使わないのだから正面に配置して上下させればよかった。これは美術。演出の注文かスタッフの考慮不足かわからないけど、演出が責任を取るべき。あとこれまでいろんな芝居で書いてきたけど、囲み舞台で稽古場の演出家席がわかるような動きは演出家が直すべ。一人芝居(第3部はそうではない)で役者に任せた動きが多そうだけど、直せないなら囲み舞台は使ってはいけない。

全体に、創作意欲(脚本能力)に演出能力(スタッフワークへの目配り含む)が追いついていない。

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緊急口コミプッシュ:小田尚稔の演劇「悪について」新宿眼科画廊地下

感想はこちら。万人向けの100%お勧め芝居とは言えなくて、どちらかというと応援の意味が大きい。自分の基準で無理に分類すれば娯楽というよりは芸術に寄った芝居だけど堅苦しいところはなく、無料のワンドリンクサービスでワインを飲みながら笑って観てもいい。芝居に慣れた人たちなら楽しめるし、見慣れていない人でも刺さる場面があるはず。

あと出演者、演出部、制作部も9月13日締切で募集しているので、応募したい人は実演を観る機会なので、これを観てから考えてもいい。個人的には手薄すぎる制作体制を誰が応援してほしい。

狭い上演スペースだけど、これを書いている時点で、延長された9月12日火曜日の千秋楽まであと6本あるので、ぜひ。

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小田尚稔の演劇「悪について」新宿眼科画廊地下

<2017年9月9日(土)昼>

大学で留年しすぎて仕送りも止められたため学費と生活費を稼ぐうちに学校に行かなくなった学生は刑事事件裁判を傍聴する趣味が高じてますます学校に行かなくなる。その学生がたまに一緒にご飯を食べる数少ない女友達はすでに社会人。それとは別の社会人女性はDV男と付き合った後日談の最中。兄と妹は人に言えない秘密を抱えている。

ごく身近な出来事から見出す悪をなすことと善く生きることについて。相当なエネルギーを使って確信犯で超スローな出だしに、一人語りの多いスタイル。序盤の展開のスローさにはさすがにじれるも、いろんな話がつながり始める後半からぐっと面白くなり、終わってみれば演劇ど真ん中の仕上がり。あるものをなかったことにするのが悪で、自分に問い続けるのが善なら、ラストとそのひとつ手前は善悪の同居でどちらが勝ったのか、深読みすればできるのでどちらとも取れる。観た回ではいろいろ細かい笑いがすべっていたけど、そんなことは気にならない。大学生の芝居っぽい雰囲気だけど、こういうのは好み。

自転車のチェーンから飛ばしてつなげていくホテルの話とか、投げっぱなしの後日談とか、いろいろ力技が発揮されて成立しているのが素晴らしい。出番の多寡はあってもやりがいのある役が多く、キャスティング表がなかったけどご飯友達の役は渡邊まな実かな(間違っていたら失礼)、あのピアスからマイクまでの上がって下がる表情の推移は見どころのひとつ。照明は少ない数で工夫して雰囲気を出していたけど、一部電灯を役者が操作するのに照明オペから舞台が見えないせいか、台詞のないきっかけでタイミングが合っていなかったのはご愛嬌。

制作体制は良し悪しあり。飲食自由なだけでなく、白ワインかウーロン茶をワンドリンクサービスしてくれるのは新鮮。だけど人手が足りないらしく、開場前の受付机は誰も番をしておらず(外階段直結なのに予約表と思しき紙が置きっぱなしになっていた)、チケットも発行していない(直接金額を払って入場)。受付の人間がオペに入っていたのだけど、照明のクレジットがないから土壇場で応援を頼んだか。でも飲食自由なのと、芝居が面白かったのと、実害が(自分には)なかったので、よい。

公演日程が1日増えて、ここから3日間昼夜連続公演が残っているので、せまい劇場ではあるけど、都内の好事家と、募集中の応募(出演だけでなく、演出部と制作部も9/13締切で募集中)に興味のある人はぜひ観てもらいたい一本。

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2017年9月 2日 (土)

青年団が豊岡市に移転を検討中

公式ブログにも載っていました。決定事項ではなく検討中ですし、東京公演は引続き行なわれるらしいですが、倉庫機能はすでに移転しているとのこと。

 詳細は、明日以降に連載の形で記しますが、とりあえず概要は以下の通りです。

・劇団青年団は、2019年から2020年をめどに、劇団のいわゆる本社機能を豊岡市内に移すことを計画している。これは決定事項ではなく、あくまで計画段階であり、現在、稽古場などの適地を探している。

・劇団移転に先立って、現在の五反田にある倉庫機能の大半をすでに豊岡市日高地区の新設倉庫に移転した。

・移転の規模は決まっておらず、部分移転か全面移転か、またどのようなスケジュールで移転するかは今後検討する。大きなポイントは、一般の企業の移転と同様で、豊岡と東京のどちらに本社を置き、経営の比率を何対何にするかといった極めてテクニカルな事柄になる。
 いずれにしても、ほとんどの稽古は豊岡で行い豊岡から発信する。

・本社機能の移転が決定すれば、平田オリザは豊岡市に移住する。

・劇団員は豊岡在住と東京在住を選択し、東京在住者は、当該作品の稽古期間中のみ、新たにつくる宿泊施設で短期滞在して稽古を行う。
演出部も同様に移転を希望する者は豊岡に移住する。
 なお、豊岡市内には、演劇人が常勤・非常勤で働ける多くの雇用が存在する。

・本格的な移転が実施できれば、その後、2022年を目処に、豊岡市で国際演劇祭の開催を目指す。

・青年団は移転後も、こまばアゴラ劇場、吉祥寺シアターなどで、年に数回の東京公演を行う。

・こまばアゴラ劇場は、青年団の本格移転完了後数年を経て、平田が芸術総監督の座を退く。その後は、運営評議会を構成し、その組織が公募によって芸術監督を任命するといった持続可能な制度改革を行う。
 アトリエ春風舎も同様に、継続して運営を行う。
 支援会員制度も、当面、継続する。

そこで紹介されている神戸新聞の記事もリンクを張っておきます。

 平田さんは同市城崎町にある舞台芸術の制作施設「城崎国際アートセンター」の芸術監督や同市の芸術文化参与を務めている。平田さん監修の演劇を用いたコミュニケーション教育は、市内の全小中学校に導入されている。

 より創作活動に適した場所を探す中で同市への移転を決意。稽古場をつくる場所の選定を進めており、今月下旬には倉庫を借り既に舞台装置などを搬入した。いずれは平田さん自身も豊岡に居住したいという。

 平田さんは「アートや芸術文化、教育などの施策に市が一丸で取り組んでいる情熱に後押しされた。いずれは豊岡で国際演劇祭を開きたい」と意気込む。

どうなんでしょうね。詳細は近々出てくるとのことですが、この検討を始めた理由の予想を立てましょう。といっても上記引用の整理みたいなものです。

・創作への影響力の確保:東京ではどこまでいっても相対的に凄い劇団のひとつ、どちらかというと地味でマイナーなマニア向けの劇団扱いから抜けられない。小中学校全域で自作の教育が取入れられており、また制作施設の芸術監督も勤めている豊岡市ならば、あと10年したら「俺たち全員の受けた授業を作った凄い先生」扱いされて、やりたい企画が実現しやすくなる。今でもすでにある程度そうなっているかも。

・経済的なメリット(1):芸術監督を務める施設や、小中学校のコミュニケーション教育の講師、またそれらのコーディネートなど、数十人程度の劇団員が生活を維持する一定ラインの収入を見込める職業があり、劇団経営の安定化につながる。

・経済的なメリット(2):すでにブランドを確立して都内では一定以上の集客力も見込める状況において、親から(借金と一緒に)継いだ自前物件とはいえ都内の超一等地に拠点を構える必要はない。何も劇場だけでなく、劇団員の普段の生活まで含めて世界有数のコスト高のエリアから撤退すると大幅に収支が改善する。撤退したスペースまで稽古場なり劇場なりにしてもよい。

・創作に集中できる環境:言っちゃ何だけど、日本の大都市からは離れている。他の誘惑から離れて本業に集中できる。一方、必要な情報はインターネットと通販でかなりあっという間に手に入れられるのでその点に不足はない。

・有名な温泉が近い:ちょっとひとっ風呂浴びてくるのに贅沢なだけでなく、温泉とセットのイベントにすることで集客が見込める。日本人だけでなく海外の人間も温泉には弱い。

・海外まで見据えたアクセス:但馬空港が上手く使えると、伊丹空港経由であんがい全国に短時間で移動できる。伊丹空港から羽田空港や成田空港に行けばそこから海外へも行ける。海外の仕事も多数手がけている模様の平田オリザ。渋谷なら成田エクスプレスが出ているとはいえ、都心から成田空港への遠さ面倒くささを考えると、飛行機慣れしているのであれば、この経路でも別にありなのでは。

・地震対策:いま東京に大地震がきたら劇団存続の基盤である劇団員や劇場や客が壊滅的なダメージを受ける。こまばアゴラ劇場がつぶれたら消防署から嫌がらせを受けながら再建にまた億の借金を背負う可能性がある。拠点を移動していれば、取壊して売ってもよし、単に自宅やアパートに建直してもよし、それで対応できる。

豊岡市の詳細を把握していませんが、基本的には山だらけで平地は少ない。駅と空港が比較的近くにまとまっているかわりに、そのエリアのど真ん中を川が流れており昨今の気候を考えるとゲリラ豪雨でやられないかという万が一の可能性も考えないといけない。あと城崎温泉はそこから10kmくらい離れているのかな、その温泉街の先に芸術監督を務める城崎国際アートセンターがある。地図だけ見ると、(1)城崎国際アートセンターを青年団の拠点にする(2)豊岡短大の近くに稽古場となるまとまったスペースを確保できる、などの案でいろいろ前向きにはかどるのではないかと思います。野次馬として詳細を待ちましょう。

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2017年9月 1日 (金)

シス・カンパニー企画製作「ワーニャ伯父さん」新国立劇場小劇場

<2017年9月1日(金)夜>

ロシアの地方の屋敷。父が購入した領地を、母と妹の娘である姪と切盛りして独身のまま歳を重ねた男。妹は亡くなっており、その夫である教授は若い娘と再婚していた。教授の退官にともない最初の妻の実家に戻ってきた夫婦だが、田舎の生活とスタイルが合わず衝突を繰返し、ことあるごとに体調不良を訴えて多忙の医者を呼寄せる。貧しい生活で愚痴と倦怠が屋敷を覆う中、男と医者は教授の後妻に恋慕し、姪は医者に恋焦がれる中にわずかな生活の希望を抱えているが・・・。

かもめ」「三人姉妹」に続くKERAのチェーホフ上演第3弾。これも初見。素直に読めば悲劇だし「三人姉妹」でも笑えそうで笑えなかったところ、今回は冒頭から7割くらいまで喜劇仕立てで妙におかしいのは脚本をねじ伏せたKERAの腕前。四大悲劇のひとつなので最後は悲劇なのだけど、それがまた妙に時勢を感じさせるのは「三人姉妹」と一緒。何度も上演される古典なだけのことはある。

ワーニャの段田安則、教授の山崎一、医者の横田栄司と声の大きいおっさんたちが大きい声で愚痴をこぼしてうっとおしいところ、後妻の宮沢りえと姪ソーニャの黒木華がはなやかにかき回して、それがまたおっさんたちのうっとおしさを誘う。今回は宮沢りえが絶好調で、黒木華と仲直りする夜の場面とか、他の人が話している場面も含めて出演場面の顔芸とか、実に楽しく、こころなしかいつもよりきれいに見える。段田安則の長台詞とか、夜の場面の山崎一の切替の早さとか、黒木華の天国と地獄とか、横田栄司の豹変振りとか、いろいろ見所が多い。脇も隙がないキャスティングでつい目が向くこともしばしば。スタッフだと衣装がさすがで、宮沢りえや黒木華の衣装は一見の価値あり。壁を作らずに斜め配置を増やして見切れを減らしつつ場面転換を容易にした美術もよし。

チェーホフが苦手な人でもこれなら楽しめるし、むしろそういう人ほどこの機会を逃すと楽しいチェーホフを観る機会はない。ミーハーな人であれば宮沢りえと黒木華を観るだけでもよい。一般的には高いチケット代だけど、この座組みがこんな規模の劇場で上演する時点で贅沢な芝居。まだ微妙にチケットが残っているみたいだし当日券も出るのでぜひお勧めしたい1本。この距離なら後ろでも全然問題ないし、顔芸が見所のひとつなので、可能なら後ろでもいいから正面席を選んでほしい。

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2017年9月10月のメモ

小規模から中規模の芝居が多い季節とはいえ、やっぱりもう少し上演時期はずらせないものか。

・シーエイティプロデュース主催製作「CRIMES OF THE HEART」2017/09/02-09/19@シアタートラム、2017/09/22@やまと芸術文化ホールメインホール:中嶋しゅうが企画した芝居で小川絵梨子演出

・文学座「冒した者」2017/09/06-09/22@文学座アトリエ:長塚圭史演出は観たことがあるけど老舗劇団が上演するとどうなるか

・Q「妖精の問題」2017/09/08-09/12@こまばアゴラ劇場:ひとり芝居だそうです

・小田尚稔の演劇「悪について」2017/09/08-09/12@新宿眼科画廊地下:小さいチラシがいつも気になっているので忘れずにピックアップ

・風琴工房「アンネの日」2017/09/08日-09/18@三鷹市芸術文化センター星のホール:現行名義での活動が年内一杯の風琴工房は女性芝居で生理用品の開発物語

・こまつ座「円生と志ん生」2017/09/08-09/24@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:どんなものだか観ておきたい

・ロロ「BGM」2017/09/12-09/19@ザ・スズナリ:最近評判がよいのでピックアップ

・インプレッション企画制作「謎の変奏曲」2017/09/14-09/24@世田谷パブリックシアター:橋爪功と井上芳雄の2人芝居

・さいたまゴールド・シアター「薄い桃色のかたまり」2017/09/21-10/01@彩の国さいたま芸術劇場インサイド・シアター:岩松了が脚本演出を担当してさいたまネクスト・シアターのメンバーも含めた新作

・KAAT×PARCOプロデュース「オーランドー」2017/09/23-10/09@神奈川芸術劇場ホール:個人的に相性の悪い白井晃演出と、何とかしてくれそうなキャストと、どちらが優勢か

・PARCO & CUBE present「人間風車」2017/09/28-10/09@東京芸術劇場プレイハウス:再演を繰返す後藤ひろひとの名作を今回はメインの3人に成河、ミムラ、加藤諒で

・株式会社パルコ企画製作「想い出のカルテット」2017/09/29-10/15@EXシアター六本木:黒柳徹子を観ておけという話

・日本のラジオ「カーテン」2017/09/30-10/09@三鷹市芸術文化センター星のホール:「さわやかな惨劇」がキャッチコピーの劇団、Mitaka "Next" Selection登場でピックアップ

・松竹製作「マハーバーラタ戦記」2017/10/01-10/25@歌舞伎座:青木豪脚本宮城聰演出で昼の部を丸ごと使って歌舞伎座に登場

・国立劇場制作「霊験亀山鉾」2017/10/03-10/27@国立劇場大劇場:片岡仁左衛門が主役の2役を務める通し狂言とのことで、できればこの機会に観たい

・ワタナベエンターテイメント企画製作「関数ドミノ」2017/10/04-10/15@下北沢本多劇場:同時期上演の「散歩する侵略者」とならんで上演数の多いイキウメの脚本がついにプロデュース公演に登場、キャストもいいところを押さえた印象

・世田谷パブリックシアター企画制作「戯曲リーディング『岸 リトラル』より」2017/10/07-10/08@シアタートラム:「」の脚本家の別作品上演に先立ってリーディング実施

・フェスティバル/トーキョー17「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」2017/10/07-10/15@東京芸術劇場シアターイースト/シアターウエスト:柴幸男が隣り合う2つの劇場を使って「同じ時間、二つの場所で紡がれる物語」とのこと、2本別々なので注意

・新国立劇場制作「トロイ戦争は起こらない」2017/10/07-10/22@新国立劇場中劇場:企画したであろうころよりもさらにきな臭い昨今を反映した新シーズンのオープニングは栗山民也を演出に迎えて

・笑の内閣「名誉男性鈴子」2017/10/12-10/16@こまばアゴラ劇場:見た目は淑女、中身はおっさんの女性市会議員が巻き起こす騒ぎ、と聞けばついこのまえ騒ぎになった話を元にしたのかな

・月刊「根本宗子」「スーパーストライク」2017/10/12-10/25@ザ・スズナリ:プロデュース公演に客演にひっぱりだこの根本宗子の、こちらは自分の劇団の本公演

・兵庫県立ピッコロ劇団「かさぶた式部考」2017/10/14-10/15@世田谷パブリックシアター:岩松了が代表の劇団らしいけど今回はノータッチ、秋元松代脚本と画像でピックアップ

・春風亭昇太独演会「オレスタイル」2017/10/16-10/18@下北沢本多劇場:平日3日間

・MTP企画製作「笑った分だけ、怖くなる」2017/10/17-10/22@あうるすぽっと:白石加代子と佐野史郎の、朗読、らしい、たぶん百物語のような企画

・パショナリーアパショナリーア「絢爛とか爛漫とか - モダンガール版」2017/10/18-10/22@シアター風姿花伝:自転車キンクリートの名作4人芝居らしいので観たい、町田マリーと中込佐知子のユニット旗揚げ公演だけど少なくとも4人中2人が結構直前まで別の仕事をやっているのを見かけて、旗揚げ公演なのに大丈夫か

・iaku「ハイツブリが飛ぶのを」2017/10/19-10/24@こまばアゴラ劇場:前回がとてもよかったので

・ヨーロッパ企画「出てこようとしてるトロンプルイユ」2017/10/20-10/29@下北沢本多劇場、2017/11/16-11/19@神奈川芸術劇場大スタジオ:岸田戯曲賞を受賞したのでピックアップ

・牡丹茶房「Maria」2017/10/20-10/29@三鷹市芸術文化センター星のホール:Mitaka "Next" Selection登場でピックアップなんだけどほったらかしの公式サイトはなんとかしてほしいところ

・神奈川芸術劇場企画製作主催「作者を探す六人の登場人物」2017/10/26-11/05@神奈川芸術劇場中スタジオ:イタリア芝居を長塚圭史演出で

・イキウメ「散歩する侵略者」2017/10/27-11/19@シアタートラム:なにか奇跡が起きてる気がする名作の四演目を映画化と併せて上演、「関数ドミノ」はプロデュース公演だけどこちらは本家の上演

・野田地図「表に出ろいっ!」2017/10/29-11/19@東京芸術劇場シアターイースト:勘三郎と上演した芝居の英語バージョン

・シス・カンパニー企画製作「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」2017/10/30-11/26@世田谷パブリックシアター:トム・ストッパードによるハムレットのスピンアウト芝居、でいいのかな、演出は忙しすぎる小川絵梨子

片っ端から挙げてみたらバラエティに富んだ一覧になった。東京ってすごいな。

<2017年9月11日(月)追記>

1本追加。

<2017年10月1日(日)追記>

1本追加。

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