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2017年9月 1日 (金)

シス・カンパニー企画製作「ワーニャ伯父さん」新国立劇場小劇場

<2017年9月1日(金)夜>

ロシアの地方の屋敷。父が購入した領地を、母と妹の娘である姪と切盛りして独身のまま歳を重ねた男。妹は亡くなっており、その夫である教授は若い娘と再婚していた。教授の退官にともない最初の妻の実家に戻ってきた夫婦だが、田舎の生活とスタイルが合わず衝突を繰返し、ことあるごとに体調不良を訴えて多忙の医者を呼寄せる。貧しい生活で愚痴と倦怠が屋敷を覆う中、男と医者は教授の後妻に恋慕し、姪は医者に恋焦がれる中にわずかな生活の希望を抱えているが・・・。

かもめ」「三人姉妹」に続くKERAのチェーホフ上演第3弾。これも初見。素直に読めば悲劇だし「三人姉妹」でも笑えそうで笑えなかったところ、今回は冒頭から7割くらいまで喜劇仕立てで妙におかしいのは脚本をねじ伏せたKERAの腕前。四大悲劇のひとつなので最後は悲劇なのだけど、それがまた妙に時勢を感じさせるのは「三人姉妹」と一緒。何度も上演される古典なだけのことはある。

ワーニャの段田安則、教授の山崎一、医者の横田栄司と声の大きいおっさんたちが大きい声で愚痴をこぼしてうっとおしいところ、後妻の宮沢りえと姪ソーニャの黒木華がはなやかにかき回して、それがまたおっさんたちのうっとおしさを誘う。今回は宮沢りえが絶好調で、黒木華と仲直りする夜の場面とか、他の人が話している場面も含めて出演場面の顔芸とか、実に楽しく、こころなしかいつもよりきれいに見える。段田安則の長台詞とか、夜の場面の山崎一の切替の早さとか、黒木華の天国と地獄とか、横田栄司の豹変振りとか、いろいろ見所が多い。脇も隙がないキャスティングでつい目が向くこともしばしば。スタッフだと衣装がさすがで、宮沢りえや黒木華の衣装は一見の価値あり。壁を作らずに斜め配置を増やして見切れを減らしつつ場面転換を容易にした美術もよし。

チェーホフが苦手な人でもこれなら楽しめるし、むしろそういう人ほどこの機会を逃すと楽しいチェーホフを観る機会はない。ミーハーな人であれば宮沢りえと黒木華を観るだけでもよい。一般的には高いチケット代だけど、この座組みがこんな規模の劇場で上演する時点で贅沢な芝居。まだ微妙にチケットが残っているみたいだし当日券も出るのでぜひお勧めしたい1本。この距離なら後ろでも全然問題ないし、顔芸が見所のひとつなので、可能なら後ろでもいいから正面席を選んでほしい。

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