インプレッション企画制作「謎の変奏曲」世田谷パブリックシアター
人間嫌いで知られ、北の孤島に一人暮らしをするノーベル賞受賞作家。恋人との往復書簡の体裁をとった新作が評判を取るなか、とある地方紙のインタビューの申込にだけ応じ、自宅に招待する。新作は作家が実際に交わした手紙でモデルがいるのではないかと問うインタビュアーと、それは作り話だと応じる作家とのインタビューの行方。
大人の洒落をいっぱいに詰めた脚本。偏屈な情熱を持ちながら上から物申したり下手に出たりする作家に橋爪功のキャスティングがいかにも似合って適任。後から思い返して気が付く、長さを感じさせない長台詞はさすが超ベテランの技。それを相手に丁々発止に持込む井上芳雄も好演。少しの笑いも交えながら押し引きを続けて最後の場面まで飽きさせない。ネタばれしたらつまらないのでこれから観る人はよけいな検索はしないほうがいい。
背の高い劇場に組まれた背の高い美術もさすがの仕事だったけど、窓を大きく取った美術の向こうに「北欧が昼から夜に変わる年に一度の日」の抜けるような昼の空から夜までを再現したホリゾントは、シルエットや夜間の室内照明と併せていままで観た中で一番美しい照明。緊張の途切れない2人芝居の向こうを張って拮抗した佐藤啓の照明と伊藤雅子の美術のタッグ。これは絶賛したい。
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