小田尚稔の演劇「悪について」新宿眼科画廊地下
<2017年9月9日(土)昼>
大学で留年しすぎて仕送りも止められたため学費と生活費を稼ぐうちに学校に行かなくなった学生は刑事事件裁判を傍聴する趣味が高じてますます学校に行かなくなる。その学生がたまに一緒にご飯を食べる数少ない女友達はすでに社会人。それとは別の社会人女性はDV男と付き合った後日談の最中。兄と妹は人に言えない秘密を抱えている。
ごく身近な出来事から見出す悪をなすことと善く生きることについて。相当なエネルギーを使って確信犯で超スローな出だしに、一人語りの多いスタイル。序盤の展開のスローさにはさすがにじれるも、いろんな話がつながり始める後半からぐっと面白くなり、終わってみれば演劇ど真ん中の仕上がり。あるものをなかったことにするのが悪で、自分に問い続けるのが善なら、ラストとそのひとつ手前は善悪の同居でどちらが勝ったのか、深読みすればできるのでどちらとも取れる。観た回ではいろいろ細かい笑いがすべっていたけど、そんなことは気にならない。大学生の芝居っぽい雰囲気だけど、こういうのは好み。
自転車のチェーンから飛ばしてつなげていくホテルの話とか、投げっぱなしの後日談とか、いろいろ力技が発揮されて成立しているのが素晴らしい。出番の多寡はあってもやりがいのある役が多く、キャスティング表がなかったけどご飯友達の役は渡邊まな実かな(間違っていたら失礼)、あのピアスからマイクまでの上がって下がる表情の推移は見どころのひとつ。照明は少ない数で工夫して雰囲気を出していたけど、一部電灯を役者が操作するのに照明オペから舞台が見えないせいか、台詞のないきっかけでタイミングが合っていなかったのはご愛嬌。
制作体制は良し悪しあり。飲食自由なだけでなく、白ワインかウーロン茶をワンドリンクサービスしてくれるのは新鮮。だけど人手が足りないらしく、開場前の受付机は誰も番をしておらず(外階段直結なのに予約表と思しき紙が置きっぱなしになっていた)、チケットも発行していない(直接金額を払って入場)。受付の人間がオペに入っていたのだけど、照明のクレジットがないから土壇場で応援を頼んだか。でも飲食自由なのと、芝居が面白かったのと、実害が(自分には)なかったので、よい。
公演日程が1日増えて、ここから3日間昼夜連続公演が残っているので、せまい劇場ではあるけど、都内の好事家と、募集中の応募(出演だけでなく、演出部と制作部も9/13締切で募集中)に興味のある人はぜひ観てもらいたい一本。
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