Q「妖精の問題」こまばアゴラ劇場
<2017年9月9日(土)夜>
ブスの排除と弱った老人の撲滅を掲げて選挙に元女優が立候補する世の中で、ブスの女子中学生同士がお互いの容姿を貶しあいながら将来に絶望したり希望したりする様子を落語で描く「第1部:ブス」。豚骨ラーメン屋の近くに住んだばかりに繁殖が止まらないゴキブリとの終わりなき戦いを歌い上げる「第2部:ゴキブリ」。健康のためには菌を殺すのではなく適切なバランスで共存させるべきと主張するセミナー主宰者が勧める食品は「第3部:マングルト」。
自分と違った人間を排除すべきとの主張を、誰でも排除したくなる対ゴキブリに視点をずらして、体内菌の共存で多様性を訴える展開はお手本のような正反合。それを演じる格好が、出だしからインパクト強すぎで、しかもそれで最後まで通すとか、エネルギーありすぎ。
ただ演出とスタッフワークには異議あり。ひとつは第2部の歌。膨大な台詞を音に乗せるためか、似た伴奏が似たテンポで続くためさすがに飽きるのと、マイクが声質に合っていないのかキンつく場面あり。あと客席がコの字なのだけど、特に第2部と第3部は劇場入口から見て左奥が正面扱いされて、右手前からは背中だらけになる場面多数。特に第2部は天井からぶら下げた美術が映像を邪魔しないように左奥に配置したと思われるが、そこに照明とマイクスタンドと楽譜台を置いて左奥向きに歌ったため顔は見えてもほとんど横顔。あれは映像のない第2部しか使わないのだから正面に配置して上下させればよかった。これは美術。演出の注文かスタッフの考慮不足かわからないけど、演出が責任を取るべき。あとこれまでいろんな芝居で書いてきたけど、囲み舞台で稽古場の演出家席がわかるような動きは演出家が直すべ。一人芝居(第3部はそうではない)で役者に任せた動きが多そうだけど、直せないなら囲み舞台は使ってはいけない。
全体に、創作意欲(脚本能力)に演出能力(スタッフワークへの目配り含む)が追いついていない。
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