株式会社パルコ企画製作「想い出のカルテット」EXシアター六本木
<2017年10月7日(土)昼>
音楽家ばかりが余生を送るホーム。特に仲がよいテノール歌手、バリトン歌手、アルト歌手の3人。そこにソプラノ歌手だった女性が入居する。彼女はバリトン歌手の元妻だった。4人はかつてカルテットで組んだこともあったので、秋に計画されているホームのイベントでトリを依頼されるが、ソプラノ歌手は拒否する。他の3人は何とかしてカルテットでイベントに参加できるように苦心する。
黒柳徹子の毎年恒例の海外喜劇。脚を骨折したとのことで、車椅子での出演。ソプラノ歌手は元気がない役だったけど、黒柳徹子がその通り元気がなさそうに見えて、ああこれで見納めかと思っていたら、上演後のトークショー(今回たまたまその日だった)では実に元気にしゃべり続けて、あれは演技だったのだなと後から納得。ただ上演中は演技か素かわからず、観ていてはらはらした。喜劇でこんな状況を作り出すのはよくないので、演出でもっと元気な造形にしてもよかったのではないかと思う。演出家が亡くなって、いまさら誰も提案できないんだろうな。
男同士はあまりお互いの秘密を伝えないのに、女同士は具体的に秘密を打明ける点に笑った。役者では、最初は声よしタッパよしのバリトン団時朗がいいなと思ったけど、ずっと観ているうちにテノール鶴田忍がいいなと思えた。どこがいいと上手くいえないけど、何だろうあのよさは。
トークショーのメモ。いつも時間が延びると言われて注意しながら話していても予定を10分オーバー。もちろん録音なんてしていない、記憶だけなので間違いご容赦。
・杉村春子は人のことを刺すような悪口を言ってしかも自覚がないからフォローしない人。唇の大きい人が口紅を塗らないで舞台に上がったら「何で口紅を塗っていないのか、あ、唇が大きいからいらないのか」と言って、しかも何もフォローしないから言われた方はたまらない(笑)。ところが自分も言われたとおっしゃる。劇団で初めて舞台に出演することになって先輩がメイクをしてくれることになって、いざメイクとなったら「あんたこんなまずい顔で。メイクどうしよう。これから女優をやっていくのにどうするの」と言われたと恨んでいた(笑)。なのに自分が刺すようなことを言っている自覚はない(笑)。
・杉村春子は黒柳徹子より前の時代の人。海外の芝居でも、初期のころは洋服の下から腰巻が見えるような衣装で頑張っていた。そんな格好でもあの人たちの世代が頑張ってくれたので日本の(現代の)芝居が始まった。
・今は全然着物を着ている人がいない。黒柳徹子の、まだ追放される前の小学校時代(笑)の写真を見ると、自分の母親は洋服だったが、他の子どもの親はみんな着物を着ている。でも着物はいいものなので世界ふしぎ発見では毎週着物を着ている。最初は、クイズ番組で間違えて馬鹿がばれると困るから変装のつもりで着ていた(笑)。あれは毎週違う着物を着ていて、当初はXXさんという染織家の人(名前失念)にお願いして、その後はそのお弟子さんの着物をお願いしている。
・芸人殺しと呼ばれている。徹子の部屋にお笑い芸人が出演して披露してくれても「ほう」とか「どういう意味ですか」と聞いてしまって、意味が分かるころには説明しているほうもつまらなくなっている(笑)。自分は説明が必要な笑いが好き(注:喜劇のような伏線のある笑いのことと推察)。
・(間があって)トークショーは面白いことを話さないといけないと考えながらしゃべるので間ができるのだけど、そうするとぼけたのかと心配されるのでなるべく間をあけないようにしないといけない(笑)。芝居は台詞が全部あり、脚本家が書いてくれたものなので、当然覚えている。生放送の時代はひどかった。
・どういうわけか女性は台詞を覚える。覚えないのは男性に多い。覚えないからあちこちにカンニングペーパーを用意する。書けるところには何でも書く。電柱のセットがあればそこに貼るけど、何かの拍子に電柱が回ってしまうと自分のカンニングペーパーがどれかわからなくなって、犬のように電柱の周りをぐるぐる回って探すことになる(笑)。もっとすごいのは白菜やネギや豆腐にも書いている(感嘆)。だから鍋物に入れる場面なのにそこは入れられない(笑)。
・小沢昭一だったか。全部台詞が飛んだので自分が全部しゃべったことがある(笑)。「こうでしょう、そうするとあなたはこう考えるわね、そしたらこうよ」と繋げた。あとで「あの時はありがとう」とずいぶん感謝された(笑)。(注:テレビドラマではこのエピソードは三木のり平になっていたけど、このトークショーでは小沢昭一と言っていた)
・三木のり平もひどかった。机の上の映らない場所にカンニングペーパーを用意しているが、「おう君はXX君か、えーと君の場合は」とカンニングペーパーが多すぎてどれがどれだかわからない(笑)。
・生放送時代はいろいろなハプニングがある。
・例1。刑事もので、オープニングで刑事が犯人に手錠をかけて、その後で刑事の家庭や取調室の場面が続くドラマだった。が、手錠の鍵が見つからない。仕方ないから刑事の家庭の場面では犯人がテーブルの下に潜ったり(笑)、取調室の場面で手錠を隠しながらつづけたりしようとしたけど、途中で打切られた(笑)。
・例2。時代劇で、オープニングで戸を開けると「ない!」と厨子が盗まれている、最後に取戻す、というドラマだった。が、リハーサルで置いた厨子を片づけ忘れて、戸を開けたら「ある!」となってしまった(笑)。そうしたら、赤い帽子をかぶったスタッフ(スタッフが見分けやすいようにそのころは赤い帽子をかぶっていた)がこそこそ厨子を片づけるのだけど、時代劇なのに帽子をかぶった人が映るのはおかしい(笑)。これも途中で打切られた。
・例3。左卜全が亡くなって棺桶に収まっている仏の役で、刑事役が森繁久弥。棺桶前で刑事が話す場面と他の場面が交互に映るドラマだったが、出番が終わったと勘違いした左卜全が途中で帰ってしまった(笑)。森繁久弥がつなげようと工夫するのだけど、さすがの森繁久弥でもつながらず、やっぱり途中で打切られた(笑)。
・途中で打切ってどうするかというと、「しばらくお待ちください」と表示して、そのうち次の番組になる。
・後年、ベストテンも生放送だったが、あれは一位が後ろに来るので何としても時間通りに進めないと一位が漏れてしまう構成。でも間に合わない場合も多々あった。化粧しながら出てきた女性歌手もいた(笑)。
・郷ひろみが登場する回で、同じ局のドラマで浅野匠之守を直前まで撮影していた。楽屋入りしたと連絡があったので安心していたら、時代劇の衣装を脱いで歌手の衣装になってメイクも直さないといけない。「どうぞ!」とやったら誰もでてこない。久米宏が中を覗き込んで「いない!」(笑)。久米宏は生放送の経験が(当時は)少なかったのであわてていたが、自分は慣れていたので「コマーシャルにしますか」とスタッフに訊いていた。
・自分の例。黒柳徹子が田舎から東京に出てくるドラマで、田舎のセットと東京のセットが同じスタジオに組まれていた。田舎の場面は縁側で、庭をニワトリが歩いている。次に東京の場面になって家族あてに手紙を書く場面で、部屋の中をニワトリが横切る(笑)。慌ててスタッフが取押さえた。そのあとでまた田舎に帰った場面になるが、ニワトリがいないので雰囲気がでない、と思ったら、縛られて動けないニワトリが放り込まれて、「ぐえっ、ぐえっ」と苦しそうに鳴く(笑)。思わず大笑いしてしまったら後で「あの笑いがよかった」とほめられた(笑)。普段出演しているときは笑わない。最近は出演者が笑うことも多いけど、自分は笑わない。
・毎年喜劇を上演しているけど、笑えば観終わった人が元気になるから。最近ますます欝になっている世の中で、せめて観ている間だけでも笑ってほしいと願っているから。悲劇なんて簡単でちょっと「(悲しげな声で)お母さん・・・」とか言えばみんな泣きますから(笑)。笑わせるのは難しい。
他にもあったと思うけど、とりあえずここまで。
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