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2017年10月 1日 (日)

日本のラジオ「カーテン」三鷹市芸術文化センター星のホール

<2017年9月30日(土)夜>

周辺国と緊張の続く某国。近隣の島国を戦場とした戦争で一時併合し、今も島国に軍隊を駐屯させているため、島国からは本土と呼ばれる。島国の巫女の一家を担いで独立を目指す武装組織が、本土の国立劇場の上演中に、多数の観客と関係者を人質に取って劇場を占拠して、投獄中の仲間の釈放が要求した。その劇場内の、武装組織メンバーと人質の話。

劇場を使って劇場占拠事件を上演したいというアイディアから発展させたと思しき一本。音響照明なしが許される設定で公演ハードルを下げる代わりに、演じていない役者に人質を兼務させて実質出ずっぱりにさせて上演ハードルを上げる挑戦的な芝居で、個人的には好みのアイディア。MITAKA "Next" Selectionに選ばれただけあって、一定水準を満たした役者を多く集めて成立させていた。人質の日本人と武装集団の撮影係との間で苦心する通訳とか、島の雰囲気が嫌で出てきたという劇場職員とか、大学の同級生同士の会話とか、細かいやり取りからドライに終わるラストとか、90分のコンパクトな中にいろいろ見どころあり。

ただ脚本演出の工夫が行き届いていないところが散見。上に挙げた見どころは違う立場のやり取りに由来するところが多いけど、15人の役者(ダミーの人質人形でもう少し多く見せていた?)のうち10人を武装集団に割当てたせいで(立場や考え方の相違はあっても)仲間内での進行が多くなってしまったのは設定ミス。当日パンフレットに書いた以上の劇中世界を広げる機会がつぶれた。劇場占拠のリアリティを求めて見た目も声も地味な演技が多くメリハリに欠けたのは演出ミスで、それと思わせることができれば別に大声で話しても問題はなくて、実際、通訳を介して人質のわがままな日本人演出家が興奮する場面は成立していた。初めてのナレーションが中盤からだったため唐突な印象を受けたとか、もっといるはずの人質への言及がなく劇場スペースが余ったように見えてしまったとか、島の言葉と本土の言葉の使い分けがいまいち伝わらないとか、細かいところでは他にもあり。日本を皮肉に見て書いたであろう設定ももうひと押しほしい。伸びしろのある脚本なのでブラッシュアップして再上演に挑戦してほしい。

ただ最大のミスは、あのドライなラストを台無しにした脚本演出家(?)の終演アナウンス。物販だけでなく後半日程の予約状況からくるSNSへの宣伝依頼など、しかもそれがぐだぐだになって、余韻を台無しにするにもほどがある。アンケート記載依頼と役者挨拶の案内は終演後でもいいけど、少なくともこのラストなら、物販とチケット宣伝は開演前に回して手際よく済ませてほしい。あれで個人的には評価を下げた。

でも中々見られないスタイルでもあるし、次回は王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭で評判をとったという「ツヤマジケン」でこまばアゴラ劇場登場なので、演劇フリークは今のうちに観ておいてよい1本。10月4日以降がガラガラなようなので、当日券でもふらっとどうぞ。

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