さいたまゴールド・シアター「薄い桃色のかたまり」彩の国さいたま芸術劇場インサイド・シアター(若干ネタバレあり)
<2017年9月30日(土)昼>
福島県。原発事故による避難区域指定が解除された地域。戻ってきた住人達は家の片づけを行なうが、電車の線路は復旧半ば。復興業務を委託された会社に協力する形で住民たちも線路の敷設工事を手伝うが、イノシシが出没して怪我を負ったり、家族に不幸があったりして一筋縄では進まない。その地域にある日若い女性が東京からやってきた。地震の翌日に色がわからなくなったとメールで連絡を受けたきり、消息の知れない恋人を探しにやってきたという。
さいたまゴールドシアターにさいたまネクストシアターのメンバーが協力した、岩松了の新作。原発事故の直接の話よりも、影響を受けた人と生活の雰囲気を控えめにかつ確実に漂わせながら、復旧を目指す地域の話が進んでいく。不思議な透明感と力強さを残す話。
いろいろ隠すことの多い岩松了の脚本に、ネクストシアターのメンバーがついていくのもすごいけど、ゴールドシアターのこなれてきた女性陣と、まだゴツゴツしたところが残っている男性陣とが、上手さとか粗さとかを超えた存在感で芝居を立上げる。台詞の多寡はあっても脇役のない脚本が大勢の登場を成立させ、それが仕上がりに厚みを持たせる。服を使って互いの距離を縮める場面の技術はさすがだし、ごくシンプルな展開で最後に転結させて見せたあのラスト、線路の延伸を未来に見立てたのは美しさと相まって、観終わったこちらに力強さを与える素晴らしい場面。
台詞の多い妻役を演じた上村正子がさすが、ネクストシアターの堅山隼太、内田健司、佐藤蛍が好演。だけどこの結構凝った上演を実現できるメンバーを、スタッフを含めてここまで育てた蜷川幸雄の功績はいまさらだけどやっぱりすごい。
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