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2017年12月20日 (水)

チェルフィッチュ「三月の5日間 リクリエーション」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2017年12月16日(土)夜>

2003年3月、イラク戦争の最後通牒が突きつけられている夜、ライブで出合った男女が渋谷のラブホテルに泊まり、何となくいい感じになり連泊する。置いていかれた友人はライブに来るかもしれなかった女性のことを考える。渋谷では戦争に反対する人たちが連日デモ行進をしているが、参加者にも温度差がある。何となく緩いノリの若者たちが過ごす渋谷が、普段とは少しだけ違う風景に見えた5日間の話。

2004年初演の芝居。2006年に六本木のSuperDeluxeで上演されたときに観たけど、細かいことは覚えていないので脚本の変更有無は不明。最後の場面が少し長い気もするけど特に変えていないか? リクリエーションと銘打たれたけど以前よりは醒めた感想。率直に言ってすでに古さを感じた。劇場の紹介ページには「もはや"時代劇"とも呼べる本作」と書かれていたけど、時代劇としても現代劇としてもいまいちだった。

それで終わってはあまりなので理由を言葉にする。

・脚本が古い。日本が人も国土も直接影響するかもしれない戦争が起きるかもしれない現在、全部遠い場所で完結したイラク戦争の話は現実に追いこされた。もともと反戦を控えめなトーンで描く芝居ではあるけど、今の時代に対する強度が不足している。

・言葉遣いが古い。サンプルが少ないから実態はわからないけど、今時の25歳以下の若者の大多数は非常に礼儀正しく、ああいう言葉遣いをしないという印象を持っている。世界大会に出場するようなスポーツ選手のインタビューでの受け答えがここ数年で飛躍的に立派になったけど、今の25歳から40歳の間のどこかに賢さの谷間がある。2003年の時代風俗を反映した芝居ではあるけど、その反映が強すぎて今聞くと古い。

・だらしない動きを使った演出が古い。2006年当時、台詞と独立したあの動きは珍重するものではないと自分は批判的だった。けどそのころであれば、あの意味不明な動きやだらしなさがむしろ新しかった。当時の日本人の若者の身体には近いものがあったかもしれないけど、今となっては一時のあだ花になった感がある。

・役者の演技が追いついていない。動きについて言えば、たぶん腰をあまり使っていないせいだとおもうけど、だらしない動きではなくぎこちない演技に見える。MIKIKOがPerfumeの振付について、全身を使った白人黒人のダンスとは違う日本人向けの振付を模索して手先にメッセージを乗せた振付にたどり着いたという話を聞いたことがあるけど、そういうレベルではなく身体が固くて動いていないように見える。あと台詞回しもあのだらしない言葉遣いにに慣れていないように聞こえた。だらしない演技はかなり高度な演技力を求められるものだけど、音響を極力廃して(ひょっとして全然なかったかも)美術と照明を洗練させた舞台には力不足。動きと台詞回しをこなしてさらに役作りまで気が回っていたのは7人のうち渡邊まな実だけだった。あと終盤でデモに抗議するアメリカ大使館の近所の人をやっていたのが他の誰だか失念したけどそこはよかった。

・化粧が今風。自分が当時を覚えている程度には年配だからの違和感だけど、あれは2003年の化粧ではない。

2003年を上演したいのか2017年を上演したいのかがよくわからなく、それが上の否定的な感想の理由の半分くらいを占めるので、脚本を大幅に書換えて、2017年の若者が2003年の若者を演じながら当時の出来事を語る、という枠組みで脚本演出スタッフワークをそろえたほうがいろいろ丸く収まって説得力も増えたのではないか。個人的には分かる人にだけ分かればいいと開き直られたように感じた。それとも自分がイケてないおっさんになったのか。それは否定しない。脚本の構成を読みきれている自信もない(過去と今回の2回観ただけで、脚本を読んだことはない)。多様な芝居が存在することの価値も認める。でも隣の客は寝ていたし、カーテンコールの拍手の熱量も低めだった。この芝居を観て、少なくともこの回を観て、楽しんだり心に深く刺さったりした人が満員の客席にどのくらいいたんだろう。自腹で金と時間を費やして頭から最後まで観た人間として、自分には退屈な芝居だったと書く権利は行使したい。

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