あうるすぽっと主催「あうるすぽっとでお正月」あうるすぽっと
<2018年01月06日(土)昼>
講談の神田松之丞、落語の桂吉坊、浪曲の玉川奈々福3人揃ってのトークから開始。関所を越えられずに箱根の山中で籠屋と一夜を過ごす宮本武蔵が出合ったのは「狼退治」講談。商家の前に捨てられていた犬が亡くなった飼犬に似ていたからと引取られた先は「鴻池の犬」落語。名人・左甚五郎に小田原にいると噂を聞いて弟子入りしたい江戸の大工が行ってみると「狸と鵺と偽甚五郎」浪曲。最後にまた3人揃ってのトーク。
結構広くて天井も高いロビーでは親子連れが独楽を回したり羽子板で遊んだり甘酒が振舞われたりとにぎやか。さらに開演前にはチンドン菊乃家によるチンドン屋がいろいろ披露してくれてお得感が高い。公演が始まってもロビーで遊び続けられるし、ロビーまでは無料。むしろこの遊びの一環で企画されたという順序が正しいか。干支にちなんで犬の話を選んでほしいところ、たぶん揃わなくて動物に関する話というお題で選ばれた3本。これらの芸能に馴染みの薄い観客にも楽しんでもらえるよう、講談落語浪曲の違いや上演時の特徴をを説明しながらの話芸。
講談はよく出来ていたのだけど、惜しむらくはちょうどこの話だけNHKのラジオで聞いたことがあって重複。あと終盤のこの籠屋が実は何某(名前失念)で、これが誰かはみなさん後で検索してくださいというやり方をしていたけど、志の輔の落語なんかではこういう解説も実に上手に展開するので、もう一歩親切心がほしい。落語も上手だったけどややしんみりする点もある話でもったいない。浪曲はトリを務めただけあって明るさ勢いは一段上だけど人間に恩返しをする狸の話も何となく持駒の中では不得手に分類される演目のように思われる。干支に絡めるのが無理だった時点でめでたい話で揃えるように舵を切ったほうが演目の幅が広がったと思う。もし定番化するなら来年以降の検討課題で。
むしろ最初と最後のトークがみな詳しくて興味深い話が多い。落語はともかく講談や浪曲は演者が100人切っている業界で、そこにわざわざ飛込むのだからマニアな人であるのは当然か。相手の業界についてもいろいろ知っている気配で、トークの時間をもう少し取ってもよかったかも。
あと3本とも話が中心の芸なので目の不自由な人たちが何人か聴きに来ていたけど、普段は芝居ばかり観ているからそういう需要に気がつかなかった。で、その客が入場するときは階段が危ないからロビーのスタッフが横の扉まで誘導して入場させていたのだけど、休憩時間にたぶんトイレで退場するときに自力で同じ扉までたどり着いたらそこが閉まっていてまごついていた。これは最寄の他の観客が階段のある後方の出口に誘導して事なきを得た。一度入ってきただけで道を覚えていた客はさすがだけど、あれは休憩時間だけでも場内場外にスタッフを待機させて誘導できるように見てもらったほうがよい。
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