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2018年4月 9日 (月)

シス・カンパニー企画製作「ヘッダ・ガブラー」Bunkamuraシアターコクーン

<2018年4月7日(土)夜>

有名な将軍の娘として生まれ、社交界の華としてもてはやされたヘッダ・ガブラー。父が亡くなって結婚した相手は次期教授の有力候補だが、新婚旅行中も新妻よりも学業調査に熱心で、しかも母代わりに育ててくれた叔母にマザコンの気がある。新居の手配をしてくれた判事からは事あるごとに言い寄られる。今後の生活を考えて倦んでいる新居に、学校の後輩が夫を訪ねてくる。家庭教師として務めていた、夫の友人でありライバルである男性が町に出たまま戻らないため呼び戻すのに協力してほしいという。夫はその頼みを聞き入れるが、その男性はかつてのヘッダの恋人でもあった。

初日観劇。ものすごい悪女の話と聞いていたし、確かにやったことはひどいけど、ヘッダの悩みに寄り添った、ヘッダの置かれた立場に同情的な演出だった。展開を端折り気味なところもあるけど、130年前の脚本なのに設定だけ置換えれば現代でも通じるような話で、さすが「人形の家」を書いたイプセンの脚本。やることなすこと食い違っていく後半の展開などさすが。

夫役の小日向文世と後輩女性役の水野美紀が初日から快調な仕上がり。ヘッダ役の寺島しのぶがやや固かったけど、これからよくなっていく気配十分。時代物なので衣装が丁寧なのも嬉しいポイント。細かいところで、庭のスペースを造るために横に回転しているのに廊下はまっすぐという美術の力技もよい感じ。まだ観ていないならここで一度は観ておきたい芝居。

不思議だったのは、休憩含めて2時間30分と劇場にも貼られていたのに、カーテンコール含めて終わってみたら2時間5分しか経っていなかったこと。何か理由があって直前で丸ごと飛ばした場面でもあったのかと疑われるけど、観た印象では展開は端折り気味でも特につながりに不自然さは感じられず。どうなんだろう。

<2018年4月10日(火)追記>

感想書いてから思いついたのは、イプセンは後輩女性のほうに新世代に「脱皮」した女性らしい行動力を描いて、ヘッダに旧世代の女性の絶望を体現する役割を振ったんだろうなということ。で、男性側は新世代が悲劇に見舞われて旧世代がなぜか居場所にはまって生延びるという皮肉な構造。いい芝居だった。

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コメント

観劇録の文章としても、とても巧いといつも羨ましく思っています。

「やることなすこと食い違っていく後半の展開」と書かれると、やはり観に行けばよかったと後悔する。

こちらの観劇評を観て、観に行くことにした芝居もけっこうあります。

匿名さん:

お褒めの言葉ありがとうございます。食い違うというより、ことごとく裏目に出ると書いたほうが正確だったかもしれません。

「ヘッダ・ガブラー」は過去にも上演されていたし将来も上演される有名芝居ですが、いいキャストやスタッフが揃って上演される機会はなかなかないと思いますので、この1ヶ月公演の間に機会があったらいかがでしょうか。チケット販売サイトの売行きを見た限りでは当日券でも行けそうです。

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