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2018年5月27日 (日)

赤坂ACTシアタープロデュース「志の輔らくご」赤坂ACTシアター

<2018年5月26日(土)昼>

なぜ歌舞伎の忠臣蔵は登場人物の名前が史実と異なるのかという疑問から始まって大序から11幕までのあらすじを浮世絵とともに説明する「仮名手本忠臣蔵のすべて」、下積から名代まで引立てられた役者に与えられた最初の役はいい役がたくさんある忠臣蔵の中で斧定九郎の一役のみという嫌がらせを引受けて一世一代の大勝負に「中村仲蔵」。

話だけでは難しいところ、各幕ごとの浮世絵を探してきてビジュアルを駆使して説明する懇切丁寧な前半。抜群に有名な代わりに長いので通しで演じられることの少ない演目を解説されて、始めて理解した。後半の落語のために全体を説明するのは「牡丹燈籠」と同じ趣向だけど、1時間ほどにまとまっているのでまずます観られる。
ただし後半の「中村仲蔵」は今回3回目だけど(1回目2回目)、よく言えば一番親切悪く言えば一番もたついた。昔は役作りに苦心して最初に披露する仲蔵の緊張と、引立てた団十郎の知ってはいるが見守るしかない立場からの感心と、名人の心情に絞ってテンポよくまとめていた。今回は仲蔵の生まれを足して、仲蔵の師匠の出番を足して、蕎麦屋の浪人とのやり取りを伸ばして、たぶん忠臣蔵のおかるを説明した一環だと思うけど女房とのやり取りも伸ばして、長い。「定九郎はあんなじゃないと思っていた」の説明もご隠居と団十郎とに繰返し説明させたのは工夫か間違いか判別しかねる。もともと5幕は弁当幕で云々と説明を足しているのに、さらに説明が増えて冗長に過ぎる。前半説明していればこそ、あるいは前半に説明を回して、後半は省略と洗練の極みで攻めることを望む。

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2018年5月13日 (日)

さいたまゴールド・シアター「ワレワレのモロモロ」さいたま芸術劇場NINAGAWA STUDIO

<2018年5月12日(土)昼>

役者に持寄ってもらった不幸なエピソードを構成する岩井秀人の「ワレワレのモロモロ」シリーズ。壊れかけた冷蔵庫の代わりを探すが、ほしい冷蔵庫について妻と夫との微妙な意見の食い違い「わが家の三代目」、中学で出会い高校で亡くなったかつての友人の記憶がよみがえる「友よ」、ゴールドシアターに入団して初めて台詞をもらえたのがうれしくて「無言」、夫が亡くなってから家にやってきた猫を飼う「パミーとのはなし」、軍人一家の末っ子が予科練に入隊する「荒鷲」、長姉と長兄は出かけて母と次姉と家に残っていた日の話「その日、3才4か月」。

岩井秀人は上手い役者を発掘してきて超絶妙なタイミングと演技が求められる芝居を作る人という印象で、さいたまゴールドシアターとの組合せも以外だったけど、素晴らしい成功例だった。今回で完全に見直した。

年配の役者ばかりだから亡くなる話が多くなるのは想定内のところ、冷蔵庫の話から始まって、でもその後の高校生で亡くなった女子高生や、誰か来てくださいという台詞の練習や、どうしようもない軍隊の実態など、いろいろな話が原爆投下直後の一家の姿に重なって、さらにその戦後の貧しかったころに米軍の大量の物資を見た記憶が海外製の大きい冷蔵庫をほしがる理由にまでつなげて最初に戻る。どうでもいい話から始めてどうでもよくない理由に戻る展開は見事の一言。

もともと動きや台詞の危ういゴールドシアターのメンバーだけど、この日は風邪で声が出ない役者がいて、マイクを使ったり急遽他の役者で台詞を分担したりとさらにアクシデントが加わったのだけど、まったく問題なしだった(ちなみに出来のよい回だったとのこと、トークショー参照)。緊急事態で役者の集中力が高まったのかもしれないけど、上手いとか下手とかお約束とか風邪をひいて声がでないとかどうでもよくなると思わせるくらいよくできた構成とががっちりかみ合った成功作。その理由はやっぱり一にも二にも脚本で、多少の出来不出来ではびくともしない構成があってこそ。岩井秀人は構成が持味というよりは、場合によって構成の強度や役者への依存度を調整した脚本を書き分けられるという印象。場所が遠いけど時間があったらぜひお勧めしたい。

以下、当日のトークショーのメモ。岩井秀人と、徳永京子と、渡辺弘。ずいぶんぺらぺら話すのだと思ったけど、作り上げるまでの苦労がつい口を滑らせたように見えた。一番面白いところはカット。誰がどの話をしたか、どの順番で話したかはずれている可能性あり。メモなので間違っていたらその責任はこちらにあるので申し訳ない。アフタートークは当日の晩くらいまではたいてい覚えているのだけど、このときは面白い話が目白押しでそこまで覚えていられなかった。

徳:蜷川幸雄の三回忌としてトークショーを開催します。
渡:午前中に御遺族と三回忌の法要に出席してきました。本当は他の方を呼ぶ予定だったのですが都合が合わず・・・。
岩:言わなければわかりませんから(笑)。
徳:蜷川さんと一緒にずっとやってきた方です。今は事業部長でしたっけ? 本当に凄い人なんですよ。
渡:今回初めてゴールドシアターを観た人は挙手をお願いします。・・・お、半分くらい。
徳:じゃあ岩井さんの芝居を今回初めて観た人は。・・・これも半分くらい。
岩:ありがとうございます。
渡:ずいぶん初めての人が多いですね。
岩:もともとゴールドシアターは演劇の幅を広げてきたというか(笑)、いろいろな常識が通用しない(笑)。

岩:今回はこれまでで一番感動的な回でした。
徳:風邪で声が出ない人はマイクを使っていました。
岩:本番45分前くらいに病院から戻ってきたら「先生、声が出ません」と蚊のような高い声で言われて(笑)。
徳:若者にだけ聞こえるというモスキート音のような(笑)。
岩:それで時間もなくてどうしようかと思いましたけど、ピンチのときは最初に思いついたことをやり遂げるしかなくて。演劇の幅を広げることにもなるしいいかなと(笑)。そうしたら周りの出演者が関係ない台詞を自主的に引取るようなサポートも本番中にしだして。ゴールドシアターは毎回仕上がりが変わるんですけど、今回は感動的な仕上がりになりました。

渡:以前から岩井さんとは一緒にやりたいと思っていたので、こういう形で実現しました。
徳:出演者に自分の不幸な出来事を書いてもらって、それを元に岩井さんが構成しています。岩井さんはこのフォーマットで公演もしているし全国でワークショップを何回も行なっています。最初にこのフォーマットを考え付いた経緯を。
岩:演劇ってまったく違う他人のことを上演するじゃないですか。それはやっぱり素人にはハードルが高いです。もともと自分の引きこもり体験を芝居にして上演していたので、素人が演劇を上演するなら、まずは自分の話を上演するのが一番いいと思っています。あと最近は、書いてもらった話の中で、できるだけ演劇らしくないものを選ぶようにしています。
徳:それはどういう理由で。
岩:演劇らしい話だと仕上がりが見えてしまってつまらないんですね。それよりは一見関係なさそうな話、それこそ今回のように壊れた冷蔵庫を買換えるような話のほうが、仕上がりが見えない分だけ可能性があると思って。それで不幸な話を書いて提出してもらったんですけど、みなさん手書きで、まずそこからか、と(笑)。それを劇場のスタッフがPCに入れてくれるのだけど「達筆で読めません」とか(笑)。それで面白かった人と話して詳しい話にする。
渡:横から見ていて、みなさんの話を引き出すのが非常に上手だったので感心しました。
岩:稽古に入っても一筋縄ではいかないことばかりで。最近のゴールドシアターの公演は、ネクストシアターの若手が入って手助けしながら公演していますけど、「せっかくだからゴールドシアターのメンバーだけでやります」と断ったんですね。そうしたら稽古初日から「ネクストシアター来てくれー」と何度も思いました(笑)。
渡:みなさん年を取って丸くなるかというとそんなことは全然なくて。
徳:初回公演(船上のピクニック)を岩松了さんに書いてもらったときに、本人に本読みをやってもらったら、岩松さんに「てにをは」の駄目出しをしていたとか(笑)。
渡:岩松さんが読んでいるときに、「そこは『が』じゃなくて『は』じゃないの」とか(笑)。あと、オーディションが終わった後に当代一流の講師を招いて1年間座学を設けたんですね。そうしたら「俺はそんなことやりたいんじゃない」と出席しない人もいて(笑)。
徳:私が聞いたエピソードは、公演の合間にだれるとかわいそうだからと、蜷川さんが伝手を頼ってピナ・バウシュ劇団にいる日本人ダンサーを呼んでムービングの講座を開催したんですね。そうしたら「俺はそんなことがやりたいんじゃない」と出席しない人がいたという(笑)。もぉっっったいない。
岩:ムービングの講座は受講者を一般公募して金を取りましょう(笑)。取れるくらい面白いでしょう。

渡:そういうメンバーばかりだから公演するごとに蜷川さんは病気をしていました。本当に、公演ごとに体調が悪くなって。
岩:聞いた話をまとめる段階でどうしても切らないといけない話が出てくるんですけど、切られた人は「あぁん?」(笑)。最後は「俺がそうまとまった話を観たいから、俺がそのほうが面白いと思うから切ります」と宣言してまとめました。
徳:すごいよく出来た話でした。

岩:蜷川さんが亡くなったあと、ゴールドシアターを解散するかという話はあったんですか。
渡:亡くなって1年くらいはどうしようかと本当に毎日悩んで。岩松さんと一緒にやることだけは決まっていたのでそれを頼りに続けて。今となってはそのタイミングがすぎたから解散できないです。ノゾエ征爾さんと「1万人のゴールドシアター」をやって、岩松さんと「薄い桃色のかたまり」をやって。いま活躍している中堅どころの人とも積極的に脚本演出をお願いしようと探して、岩井さんに依頼しました。
岩:自主的に退団した人はいるんですか。
渡:いません。亡くなった方と、病気でもう出られないから仕方なく退団された方だけです。
岩:うかがった話では、認知症で退団した方が、翌日うっかり稽古に来てしまったとか(笑)。
徳:オーディション時は55歳以上で募集していたましたけど、いま考えるとそれはずいぶん若くて。結成から12年経ったので平均年齢もだいぶ上昇しています。
渡:いまはネクストシアターがサポートしながら公演する形になって、それで「鴉よ、俺たちは弾丸を込める」と「リチャード二世」で世界まで行ってしまいました。蜷川さんが用意したものが10年経って花開いた成果です。
徳:「鴉よ、俺たちは弾丸を込める」は、裁判所で撃ち殺された老人が若くなって生まれ変わる話ですが、ネクストシアターの出演者はその場面まで待機しながらゴールドシアターのメンバーを助けていました。
岩:それ凄い話ですね、誰が書いたんだ(笑)。って、清水邦夫さんですね。
渡:ネクストシアターが作った映像がありますのでここで紹介を。劇場の25周年記念で、蜷川さんの舞台をいつも撮影していた写真家の写真に、ネクストシアターのバンド有志が歌をつけた、ゴールドシアターの紹介映像です。
(上映)
岩:これを自主的に作ったってすごいですね。
渡:客席の後ろにネクストシアターのメンバーが2人いますね。
徳:「いやいやそんなもんじゃない」って顔をしています(笑)。
岩:無理矢理作らされたとか(笑)。
渡:まあまあ(笑)。

岩:20代30代ってのし上がってやる、っていう気持ちが一番強い年代なのに、それがゴールドシアターのサポートをするって凄いですね。学校で蜷川さんに習っていたんですけど、周りはこの有名人を喰い物にしてやれって人たちばっかりでした。
渡:幅広い年代のメンバーが揃って、蜷川さんは晩年は「大家族ができた」と喜んでいました。
岩:最初にゴールドシアターを作ろうとよく考えましたね。
渡:最初は自分のお父さんとお母さんに、ハムレットとオフィーリアの格好をしてもらって写真を撮ろうとしたんです。そうしたら断られた(笑)。でもそこから、年をとった人でも何かできるんじゃないかと考えて、ゴールドシアターになりました。
岩:ネクストシアターのメンバーも、もっと有名になりたいとかあったんじゃないかな。でも蜷川さんはそういう欲望を肯定していて、もっと自分を踏台にして有名になってもらって構わないというスタンスだったんですよね。
渡:それで蜷川さんに怒られたと。
岩:いや、それは違って。品川幸雄っていう役を登場させた芝居を書いたんですけど(笑)、それを誰かが蜷川さんに伝えたんみたいなんですよ。それで後日蜷川さんに会ったら「お前、俺の悪口を書いて稼いでいるらしいじゃないか」って(笑)。話がだいぶねじ曲がっている(笑)。
徳:教え方も厳しかったんですか。
岩:いや、当時は人の襟首をつかんで「お前はっ!」って怒鳴るような講師が主流でしたから。それに比べれば蜷川さんのほうがずっとロジカルでわかりやすかったです。でもそのころは「大家族ができた」って喜ぶような人ではなかったですね。
渡:蜷川さんはこれまで劇団を作っては潰してしまってきた人だから、嬉しかったんじゃないでしょうか。

渡:蜷川さんはシャイな人。だから自分が怖い演出家とか灰皿を投げるとか、そういう評判も含めて演じていました。それで打解けるともっと深い話をしたり。
徳:埼玉県の川口市の出身で、町工場がたくさんある町で。
渡:その人たちが日常的に「バカヤロゥ!」って使うから自分も同じように使って。そういう人たちの立場で、蜷川さんは徹底的に生活者目線で作っていました。昔は歌舞伎だったところに演劇が入って、それが西洋からの借り物なのに現代は無自覚で使っているという問題意識をもっていて。それで、生活者目線の、借り物でない演劇を作ろうと苦心していました。

渡:岩松さんにゴールドシアターの初回公演をお願いしたとき、時間がない中で引受けていただいたのですが、やっぱり何十人分の役を書くのは難しくて、10人くらい難民A、難民Bという役で、どこの言葉かわからない役の人が出来てしまったんですね。次にKERAさんにお願いした「アンドゥ家の一夜」のときは、3日おきくらいに稽古を撮影した映像をKERAさんに送っていて、それを観ながらKERAさんが全員分の役に役名と台詞を書いてくれたんですよ。そうしたらみなさんとても喜んで。それを聞いた岩松さんが、次の「ルート99」では全員に役名を書いてくれました。

岩:「アンドゥ家の一夜」ではプロンプターがいましたけど、プロンプターのせめぎあいも面白かったですね。「ん、台詞が遅い、けどもう少し待ったほうがいいか、もうプロンプ出したほうがいいか」みたいな(笑)。
渡:これは確実なんですけど、人間は演劇をやると活性化します。ゴールドシアターのメンバーで、歩けないのに歩けるようになった人もいます。
徳:今日出演していた方ですね。
渡:演劇をやると元気になるということをどうにかして証明したい、というのが私のライフワークになっています。
岩:ゴールドシアターのメンバーは舞台上で無防備になれるのが凄いですよね。みなさん、「舞台の奥まで走って」ってお願いするとそこまでは動けるんですよ。でも奥について次に何をやるかわからなくなったときの無防備な背中(笑)。ネクストシアターのメンバーだってどうやったらあんなに無防備になれるんだろうって、気になりますよね(笑)。
渡:年をとったら自然にそうなりますよ(笑)。
岩:でもあれを意識的にできるようになりたいじゃないですか。

岩:今後はどうするんですか。
渡:もともと蜷川さんという重石があって収まっていたのがいなくなって。いろいろな人に頼みたいですね。
岩:ノゾエ征爾さんは裸の役者を天井からつるしておしっこさせながら台詞を言わせるような滅茶苦茶な演出家なんですけど、最近は丸くなって(笑)。ゴールドシアターは大変ですけど、岩松さんに去年お願いして引受けてもらえたのなら、それだけの魅力が何かあるってことだから、いろいろな人にお願いできるのでは。
渡:岩松さんの演出は去年が最初です。
岩:でも初回公演の脚本も引受けてもらっていますし。
渡:そこにたどり着くまでにどれだけの人に断られたことか。初演のときにそれこそ何人も断られ、もう時間がないという状態で岩松さんに引受けてもらって、あそこからよく脚本を書いていただいたという。これは声を大にして言いたいのですけど、日本の脚本家はせまい世界の知合いの役者に当て書きだけしていて外に出てこない。あれが日本の演劇界の悪いところですよ。
岩:でも40人はさすがに多くないですか(笑)。
渡:まあ多いですが。

渡:じゃあ次は再来年くらいでどうでしょうか。
岩:よろしくお願いします。

なお渡辺弘がどんな人なのか検索してみたら本当にすごいキャリアの人だった。脚本家や演出家は騙して1回は連れてこられるかもしれないけど、スタッフ部門のこういう力量実績のある人の後任者のほうが問題になるんじゃないのか。

<2018年6月27日(水)追記>

全面更新。

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2018年5月10日 (木)

演劇の契約について

蓬莱竜太がオーディションについてツイートしていました。

オーディション終了。勝手に台詞を創作する若者が多い。自分の間を埋めるために、自分の感覚によせるために。相手はやりにくそう。与えられた台詞だけで成立するように書いてる。無くされるより足されるのが嫌だ。いらないから書いてない。まずは与えられたもので成立させるのが演劇の契約だと思うよ。

言われてみればその通りだし、実際どんな感じだったのか気になるけど、何よりも「演劇の契約」って言葉がいいですよね。さすが脚本家。

誰か「演劇の契約」で1本書いてくれないかな。業界あるあるみたいになったりして。

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2018年5月 9日 (水)

劇場とか劇団とか

劇場がブランド化している」と以前書いたエントリーを見つけたので、自分の場合はどうなのか調べてみた。期間:2012年から2017年の6年間、これは元エントリーが2010年に書かれていて、2011年はいろいろあったのでその翌年からとする。対象はその間に観た185件。これを劇場別で数えて、2桁(10回)以上のものを並べたら以下のような結果になった。

・東京芸術劇場 29回(プレイハウス4回、シアターウエスト6回、シアターイースト19回)
・世田谷パブリックシアター 22回(世田谷パブリックシアター8回、シアタートラム13回)
・Bunkamuraシアターコクーン 19回
・PARCO劇場 14回
・こまばアゴラ劇場 13回
・下北沢本多劇場 13回
・新国立劇場 10回(小劇場6回、中劇場4回)
・神奈川芸術劇場 10回(ホール2回、大スタジオ8回)

185件中130件が以下の8劇場に集中して、自分の好みが偏っていることがはっきりわかる結果が出た。このうちPARCO劇場は建物ごと建替中なので、そうでなければもっと伸びていたはず。

ちなみに、何を持って同一劇場とするのかは難しい。運営母体中心で考えると、国立劇場を新国立劇場と同じと見なせば1回追加、東急シアターオーブをBunkamuraと同じと見なせば1回追加、下北沢本多劇場はザ・スズナリと駅前劇場がそれぞれ2回ずつ追加になるし、ランク外ですが吉祥寺シアターと三鷹星のホールが同一だと5回と3回で計8回、紀伊国屋ホールと紀伊国屋サザンシアターが2回と4回で計6回となって、ますます寡占傾向が強まる。今回は同じ建物の劇場を同一と見なして上の結果でよしとした。世田谷パブリックシアターとシアタートラムは、一括計画で建設されたものだから同じとみなす。

これだけ見れば自分にとって面白い劇場のことはわかる。ただ、これで劇場がブランド化していると言えるかというと、ちょっと微妙になる。

たとえば実力ある演出家に人気の役者を集める辣腕のシス・カンパニーが、シアターコクーンで5回、新国立劇場で3回、世田谷パブリックシアターで3回入っている。やれば客が入る企画を立てるから少しでも大きい劇場でという制作と、自主制作で年中埋める余裕がないので貸劇場公演を混ぜて稼働率を上げたい公立劇場側の事情とが一致してそういうことになる。もっとすごいのになると神奈川芸術劇場が一番大きいホールを劇団四季に5ヶ月貸している。建設計画時の青写真でどれだけ盛ったのか気になる始末。

PARCO劇場は単体共催両方あっても全部パルコが絡んでいた。自分の記録が雑なのだけど、シアターコクーンはシス・カンパニー上演時も共催の体を取っていたかもしれない。むしろ一部民間劇場のほうが制作体制が整っていて、新国立劇場は頑張っているほう、とも言える。

貸劇場については、本多劇場のことを「ナイロン100℃と大人計画と阿佐ヶ谷スパイダースだけ順番に上演するのが役目のように思える」なんてけなしたけど、今は阿佐ヶ谷スパイダースの代わりにM&Oplaysが入って事情はあまり変わらない。ただ、公立劇場で200席規模のところ、上演側が一番やりやすくて劇場側が儲からないため民間劇場の手薄なところは、ほとんど貸劇場化している。具体的には東京芸術劇場のシアターイーストとシアターウエスト、世田谷パブリックシアターのシアタートラム、神奈川芸術劇場の大スタジオ、吉祥寺シアターなど。民間劇場が減ったのもあるけど、ここから大きい劇場に行かない団体が多い。

以前だと大きくなる劇団は本多劇場か紀伊国屋ホールか紀伊国屋サザンシアターか青山円形劇場かスペースゼロを経由して、サンシャイン劇場かシアターアプルかさらに頑張って青山劇場に行って、そこからたまにシアターコクーンやPARCO劇場に呼ばれていた。これがスペースゼロが振るわなくなって、青山円形劇場と青山劇場が閉鎖されて、シアターアプルが無くなって、サンシャイン劇場は東宝があまり冒険せずキャラメルボックス以外は新感線のチャンピオン祭りすら見かけなくなった。赤坂ACTシアターはできたけどあそこもTBSのプロデュース劇場で、新国立劇場の小劇場と中劇場も劇団がおいそれと借りられる劇場ではないから、結果、劇団が成長するための出口がなくなってしまった。

こういうことを書くと劇場すごろくとかケチがつくのだけど、大勢集められる劇団が小さい劇場で上演するのと、小さい劇場で細々と上演するのとでは全然違う。1公演で全国回って3万人以上を集められてこそ一般にもようやく知られるようになるのであって、そのためには600人以上入る東京の劇場で1ヶ月回せないといけない。なのに上演側でそのキャリアパスを描けない。ひたすら貸し館で上演するキャリアパスが無効になるとは書いたけど、淘汰の圧力が強くなるとも予想したけど、それを跳ねかえして自力で大人気劇団になって人気者が生まれるパスがつぶれるところまでは考えが回らなかった。集客力があって劇団に一番近い形はTEAM NACSだと思うけど、あれも半分プロデュース公演化しているみたいだし。

これほんと、今後はどうするんでしょうね。劇団がないとプロデュース公演への人材供給パスもつぶれると思うけど、そこは個人単位で実力者がオーディションを勝ち残っていくようになるのか、新劇の養成所や劇場の研修所が脚光を浴びるのか。新国立劇場は新芸術監督の企画で全員オーディションとかこつこつプロジェクトとか、いろいろやるみたいだけどちょっとまだ見えない。日本はアメリカみたいに世界から人が集まってくる国ではないから、どこかに人材育成の仕組がないと死ぬはずだけど。

劇団のブランド化の話からだいぶそれて長くなったので本日はこれまで。

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2018年5月 7日 (月)

小劇場のポスターを見てもまったく訳分からん人の意見

Twitterでこんな意見を見かけました。メインの人の前半部分を引用しておきます。

あまり小劇場を見ない友人から「小劇団見てって誘われても、ポスターのあらすじも作者のおもんないポエムみたいなん多いしポスターも抽象的で、全く訳分からんのに短くない時間も安くないお金もはたいて気軽に見に行けん、皆なんであんな分かりづらくするん?決まり?」って言われてぐぬぬってなった

合わせて「そらポスター見てもSNS見ても中身まったく訳分からんから(わざと隠してるんか知らんけど)、そんなん名前が売れててすでに固定客ついてる有名劇団か売れっ子タレント使ってる所以外の作品には、そらキャスト繋がりの身内しか来やんやろ」って言い放っててぐうの音も出ねぇぜって…

友人は商業メインだけど演劇好きで「単純に今時ようわからん作品のポエムとかポスターだけ見て行こってなる程金と時間持て余してる奴少ないし何が目玉も伝え切れんと"頑張るので来てください!"って。誰がそんなお情けで金払えるかよ」って言っててお前は前世で演劇人に村でも焼かれたんかって思った

そうなんですよっ!生で見る舞台やからこそ極力ネタバレしたくない制作陣側も分かるし、情報が全くない中でチケットを買おうか不安になる消費者側の気持ちも分かるし…友人は演劇自体は好きで色んな所に足を運ぶ人なんでその人からの言葉は説得力ありました…

詳しくは聞いてませんが「出演者も"おもろいです"とか"頑張ります"じゃなくていっぱしに表現者名乗るんやったらもっと書き方個性出したらええのにね」とか「パッと見て何の情報も伝わって来ないポスターってポスターの意味成してなくない?見る人がおってこそのデザインやろ」とは言うてた気が…

どこかで読んだことがあるような気がしたら自分でも似たようなことを書いていました。やっぱりそうだよなあと観客の立場でうなずきながら読みました。一点だけ反論するとしたら、ネタばれしたくないのではなくて、脚本が完成していないどころか粗筋があればいいほうだからチラシ作成の段階でアピールすべき内容がわからないケースはかなりの数に上るのではないかと推測します。

初期の五反田団みたいに確信的に貧相なチラシを入れていたところは別として、チラシが駄目でも内容がよかったという公演はあるんだろうか。そもそもそういう公演に足を運ばないのでわからないけど、ないんじゃないか。

最後に繰返しの繰返しになるけど、脚本家、演出家、役者に勝る観劇判断材料はない。

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2018年5月 4日 (金)

新国立劇場主催「1984」新国立劇場小劇場

<2018年4月30日(日)昼>

世界が3つの国に分かれた世界。主人公の属する国では「ビッグブラザー」による管理が行き届いており、国民の行動と思想を監視してから数十年が経過している。公務員の主人公は「ビッグブラザー」から合わないと判断された人間を過去の記録や写真から抹消していなかったことにするのが仕事である。それが行き過ぎていったい今がいつなのかもわからなくなった主人公は、監視カメラから隠れて禁止された日記をつけ始める。ある日、食堂で職場の女性から偶然を装って手紙を渡される。国に忠実を誓っているように見えた女性が実はそうではないと知り、2人は愛し合うようになる。それが犯罪とされていることを知りながら、監視カメラのない民間人の部屋を借りて2人は逢瀬を重ねていたが・・・。

原作の小説は読んでいて、あの長いディストピア物語のどこを芝居にまとめるのかと思ったら後半重視。若干の希望は足しているけど、観て楽しくなる芝居ではなく、現実が小説を追越したかどうかという今の社会を見つめたい人向けであり、洗練された舞台が好きな人向け。

いろいろなインタビューで「あの長い小説をよくここまでまとめた」ってコメントが多かったけど、小説を読んだ身としてはまとめきれていないという感想。2時間に収めるにはしょうがないけど、今がどんな監視社会なのかを説明する前半がものすごい駆足。職場の女性から手紙をもらうまでや、上層部のオブライエンから声を掛けられるまでや、古道具屋の主人との会話など、対人関係に警戒する様子や警戒せざるを得ない背景を小説では丁寧に語っているところ、そこはだいぶ端折っているので展開が唐突。その代り後半のきつい場面がきっちり入っている。

このきつい芝居がきつい内容に集中して観られるのは洗練された演出とスタッフワークの賜物。映像とライブカメラを組合せた展開や、スムーズに切替わる舞台美術、芝居によって差が出がちな衣装をきっちり押さえている。照明が珍しい印象だったのは客席側からの明かりをほとんどつかわないせいで、あれが舞台側の箱をきっちり形どってシャープな印象を与えるだけでなく、きつい場面で客席を巻込むための布石にもなっている。音響だけ、悲鳴の効果音が嫌だったのだけど、効果を考えると狙い通りか。このくらい丁寧にやらないと成立しないラインを軽々とクリアしているのはさすが新国立劇場の主催公演。

主人公の井上芳雄は熱演。上層部のオブライエン役を大杉漣の代役となった神農直隆が好演していて、M.O.P.で観たことあったかと調べなおす始末。個人的にはともさかりえに一番期待していたのだけど、演出の希望か洗練が行き過ぎていて、もうひと踏張り野性味がほしかった。

いちおうラストで希望が見えるような枠組みに収めていた脚本だけど、人間は非力なものだと観客に思い知らせるところは小説と同じなので、体調を整えてから観に行きましょう。

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