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2018年5月 9日 (水)

劇場とか劇団とか

劇場がブランド化している」と以前書いたエントリーを見つけたので、自分の場合はどうなのか調べてみた。期間:2012年から2017年の6年間、これは元エントリーが2010年に書かれていて、2011年はいろいろあったのでその翌年からとする。対象はその間に観た185件。これを劇場別で数えて、2桁(10回)以上のものを並べたら以下のような結果になった。

・東京芸術劇場 29回(プレイハウス4回、シアターウエスト6回、シアターイースト19回)
・世田谷パブリックシアター 22回(世田谷パブリックシアター8回、シアタートラム13回)
・Bunkamuraシアターコクーン 19回
・PARCO劇場 14回
・こまばアゴラ劇場 13回
・下北沢本多劇場 13回
・新国立劇場 10回(小劇場6回、中劇場4回)
・神奈川芸術劇場 10回(ホール2回、大スタジオ8回)

185件中130件が以下の8劇場に集中して、自分の好みが偏っていることがはっきりわかる結果が出た。このうちPARCO劇場は建物ごと建替中なので、そうでなければもっと伸びていたはず。

ちなみに、何を持って同一劇場とするのかは難しい。運営母体中心で考えると、国立劇場を新国立劇場と同じと見なせば1回追加、東急シアターオーブをBunkamuraと同じと見なせば1回追加、下北沢本多劇場はザ・スズナリと駅前劇場がそれぞれ2回ずつ追加になるし、ランク外ですが吉祥寺シアターと三鷹星のホールが同一だと5回と3回で計8回、紀伊国屋ホールと紀伊国屋サザンシアターが2回と4回で計6回となって、ますます寡占傾向が強まる。今回は同じ建物の劇場を同一と見なして上の結果でよしとした。世田谷パブリックシアターとシアタートラムは、一括計画で建設されたものだから同じとみなす。

これだけ見れば自分にとって面白い劇場のことはわかる。ただ、これで劇場がブランド化していると言えるかというと、ちょっと微妙になる。

たとえば実力ある演出家に人気の役者を集める辣腕のシス・カンパニーが、シアターコクーンで5回、新国立劇場で3回、世田谷パブリックシアターで3回入っている。やれば客が入る企画を立てるから少しでも大きい劇場でという制作と、自主制作で年中埋める余裕がないので貸劇場公演を混ぜて稼働率を上げたい公立劇場側の事情とが一致してそういうことになる。もっとすごいのになると神奈川芸術劇場が一番大きいホールを劇団四季に5ヶ月貸している。建設計画時の青写真でどれだけ盛ったのか気になる始末。

PARCO劇場は単体共催両方あっても全部パルコが絡んでいた。自分の記録が雑なのだけど、シアターコクーンはシス・カンパニー上演時も共催の体を取っていたかもしれない。むしろ一部民間劇場のほうが制作体制が整っていて、新国立劇場は頑張っているほう、とも言える。

貸劇場については、本多劇場のことを「ナイロン100℃と大人計画と阿佐ヶ谷スパイダースだけ順番に上演するのが役目のように思える」なんてけなしたけど、今は阿佐ヶ谷スパイダースの代わりにM&Oplaysが入って事情はあまり変わらない。ただ、公立劇場で200席規模のところ、上演側が一番やりやすくて劇場側が儲からないため民間劇場の手薄なところは、ほとんど貸劇場化している。具体的には東京芸術劇場のシアターイーストとシアターウエスト、世田谷パブリックシアターのシアタートラム、神奈川芸術劇場の大スタジオ、吉祥寺シアターなど。民間劇場が減ったのもあるけど、ここから大きい劇場に行かない団体が多い。

以前だと大きくなる劇団は本多劇場か紀伊国屋ホールか紀伊国屋サザンシアターか青山円形劇場かスペースゼロを経由して、サンシャイン劇場かシアターアプルかさらに頑張って青山劇場に行って、そこからたまにシアターコクーンやPARCO劇場に呼ばれていた。これがスペースゼロが振るわなくなって、青山円形劇場と青山劇場が閉鎖されて、シアターアプルが無くなって、サンシャイン劇場は東宝があまり冒険せずキャラメルボックス以外は新感線のチャンピオン祭りすら見かけなくなった。赤坂ACTシアターはできたけどあそこもTBSのプロデュース劇場で、新国立劇場の小劇場と中劇場も劇団がおいそれと借りられる劇場ではないから、結果、劇団が成長するための出口がなくなってしまった。

こういうことを書くと劇場すごろくとかケチがつくのだけど、大勢集められる劇団が小さい劇場で上演するのと、小さい劇場で細々と上演するのとでは全然違う。1公演で全国回って3万人以上を集められてこそ一般にもようやく知られるようになるのであって、そのためには600人以上入る東京の劇場で1ヶ月回せないといけない。なのに上演側でそのキャリアパスを描けない。ひたすら貸し館で上演するキャリアパスが無効になるとは書いたけど、淘汰の圧力が強くなるとも予想したけど、それを跳ねかえして自力で大人気劇団になって人気者が生まれるパスがつぶれるところまでは考えが回らなかった。集客力があって劇団に一番近い形はTEAM NACSだと思うけど、あれも半分プロデュース公演化しているみたいだし。

これほんと、今後はどうするんでしょうね。劇団がないとプロデュース公演への人材供給パスもつぶれると思うけど、そこは個人単位で実力者がオーディションを勝ち残っていくようになるのか、新劇の養成所や劇場の研修所が脚光を浴びるのか。新国立劇場は新芸術監督の企画で全員オーディションとかこつこつプロジェクトとか、いろいろやるみたいだけどちょっとまだ見えない。日本はアメリカみたいに世界から人が集まってくる国ではないから、どこかに人材育成の仕組がないと死ぬはずだけど。

劇団のブランド化の話からだいぶそれて長くなったので本日はこれまで。

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