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2018年8月29日 (水)

公演中止と公演延期と公演強行の記録

降ればどしゃ降りというか、同じような時期に3つも揃うのも珍しい。あまり野次馬する元気がないので記録メインで。

まずは公演中止の話。the pillow talkという早稲田出身の旗揚げ3年目という絵に描いたような小劇場劇団。公式サイトは実にあっさりしたもので、

9月に予定しておりました、こまばアゴラ劇場での上演を中止する運びとなりましたことをご報告申し上げます。
楽しみにしてくださった皆様、大変申し訳ございません。

さっぱり事情がわからないのは劇場サイトも同様だけど、ちょっとだけ想像力を刺激する。

9月上旬に公演を予定していたthe pillow talkの『我が闘争。気軽に、(仮)』の上演中止が決まりました。

上演を楽しみにしてくださっていた皆様、特に支援会員の皆様には、たいへん申し訳なく、劇場の芸術総監督としてお詫び申し上げます。

こまばアゴラ劇場としては、最後まで公演を実現すべく支援をして参りましたが、諸事情により中止のやむなきに至ったとのことです。本公演は、劇場の主催公演ではありませんので、これ以上の関与は難しいと考え、その判断を受け入れることにいたしました。

劇場は支援したけど劇団は中止と判断したと。一般的には資金繰り、人間関係、怪我や病気による続行不能、作品の魅力不足からくるごたごた、あたりが思いつくけどどうなんだろう。あとは災害の多い夏だったから、主要関係者がそちらの復旧にかかりきりになった、なんてこともあるかもしれない。

次は青年団から独立しつつ、まだ演出部に所属する田川啓介の水素74%。これは公式サイトで台本遅れと明言している。

2018年8月9日~13日に下北沢駅前劇場で予定しておりました水素74%「ロマン」につきまして、東京公演の上演中止を決定いたしました。
台本完成の遅れに伴い、稽古時間が十分に取れず、皆様にお見せすることが難しいと判断したためです。
このような事態を引き起こしてしまい誠に申し訳ありません。 俳優、スタッフ、その他関係者の落ち度はなにもありません。全て主宰・田川啓介の責任でございます。 改めて出演者及び関係者の皆様にお詫び申し上げます。

平田オリザからも平手打ちが飛んで裏付けは取れています。

また、青年団演出部の田川啓介が主宰する水素74%が、駅前劇場で予定していた公演を中止しました。こちらも独立した団体ですが、田川はこれまでも執筆が遅く、再三にわたって注意をしてきたにもかかわらず、上演を遂行できなかったことは同じ劇団員として情けない思いです。
(中略)
なお、田川と協議し、今回の混乱の責任をとって、以下のような措置を行うことになりました。

・田川啓介ならびに水素74%は、当面活動を停止し謹慎する。
・田川啓介は9月の上演終了時点で青年団を退団する。

明快。ところでこの芝居は東京の後に三重公演も予定されていて、そちらには間に合って、一部キャストの交代はあったけど上演された。そこに先ほどの公演中止が重なる。再び平田オリザ。

 また、すでにこまばアゴラ劇場のHPでは公表しておりますが、アゴラ劇場のラインナップに入っていたthe pillow talkの『我が闘争。気軽に、(仮)』の上演中止も決定しました。HPにも書きましたが、プログラム選定に責任を負う芸術総監督として、支援会員の皆様をはじめ多くの方々にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 さて、上記、二つの上演中止の案件を受け関係者と協議を行い、水素74%が本来、駅前劇場で行う予定だった新作『ロマン』を9月上旬にこまばアゴラ劇場で上演することとなりました。
 一つの劇場をキャンセルし、その一ヶ月後に近隣の劇場で上演を行うのは非常識な行為ですが、駅前劇場様からもご理解をいただき公演を実施する運びとなりました。
(中略)
異例の措置かとは思いますが、俳優たちにとっても、やはり公演はやれるならやるに越したことはなく、どうか関係各位にはご理解をいただければと存じます。

そもそもこんなにタイミングよく公演中止が発生することもないのであまり聞かない措置ですが、融通の利くご近所の民間劇場主同士、話をつけたんでしょう。平田オリザがどんな風に駅前劇場にご理解をいただいたのかに興味はありますが、それは表に出てくる話ではない。公演を延期して上演できた話。

個人的には、劇団☆新感線が「髑髏城の七人」を初演したときの話、ぎりぎりすぎてラスト場面の稽古を何もできないで初日を開いたら、ラストになって「おい、どうすんだよ」と訊かれた古田新太が「いいから後ろを向け」とみんな後ろを向いてラストに収めた話を思い出す。まるで間に合わない場合に適当なところで切りをよくしてとりあえずアウトプットを出す、というのは社会人のスキルとしてぜひ身に付けたい。

最後は公演強行した(劇)ヤリナゲという6年目の劇団。こちらも脚本演出家が原因だけど理由は病気で、そこを資料で構成して作ったとのこと。これは公式サイトにも劇場サイトにもほぼ同じ内容が連名で載っている。ちなみに公式サイトは8月19日の日付。

このたび、越寛生は病気のため、演出を担うことができなくなりました。
そのため、本作品は、構成・演出:(劇)ヤリナゲとして上演を致します。

なお、今回の越の不在による構成・演出の変更を受けまして、相談のうえ、國吉咲貴さん、三澤さきさんは出演を辞退されることになりました。
本公演は國吉さん、三澤さんの代役は立てずに13人で上演致します。
今回の國吉さん、三澤さんの決断は、作品へ向き合う誠実な姿勢であり、お二人に非のある行動ではありません。

越寛生演出による『みのほど』を心待ちにしてくださった皆様、また國吉さん・三澤さんの出演を楽しみにしてくださった皆様には深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありません。

今回の、演出の変更、および國吉咲貴さん、三澤さきさんのご出演取り止めに関しまして、本日より、すべてのご購入者様、予約者様におきまして、お預かりしているメールやお電話に、ご連絡を差し上げます。払い戻しや、ご予約の取り消しに関しましてのご相談は、その際にお伝えいただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

(劇)ヤリナゲ
公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団

劇場サイトだともう少しだけ詳しいのと、最後の部分が少し変わっている。

<お客様へ>

(劇)ヤリナゲ『みのほど』は昨日、8月24日(金)に幕を開けました。
8月18日(土)の発表のとおり、越寛生さんは病気で演出を担うことができなくなったため、本作品は、構成・演出:(劇)ヤリナゲとして上演をしております。今回の『みのほど』は、越さんの執筆時の構想、集めた資料、また過去の越さんの短編作品を中心に、構成し創作した作品です。

なお、上記のような構成に変更されたことと、越さんの不在により、相談のうえ、國吉咲貴さん、三澤さきさんは出演を辞退されることになりました。本公演は國吉さん、三澤さんの代役は立てずに13人で上演しております。
今回の國吉咲貴さん、三澤さきさんの決断は、作品や創作へ向き合う誠実な姿勢であり、お二人に非のある行動ではありません。

越寛生演出による新作本公演『みのほど』を心待ちにしてくださった皆様、また國吉さん・三澤さんの出演を楽しみにしてくださった皆様には深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありません。

公演は9/2(日)まで続きます。出演者・スタッフ一同、誠心誠意最後まで創作を続けてまいります。
より多くのお客様に現在の(劇)ヤリナゲの作品をご覧いただけますと幸いです。ぜひ劇場に足をお運びくださいませ。

2018年8月25日
公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団
(劇)ヤリナゲ

連名の順番も違っているので、少しでも多くの客に来てもらえるようにと劇場側が工夫した跡が見て取れる。初日は8月24日なので、どうにかこうにか開演に漕ぎつけたから、じゃあ次は宣伝、と劇場側が積極的に協力してくれている模様。そもそもがMITAKA Next Selectionの1本だから、劇場の関係者が推薦して、声をかけて、上演してもらう運びになっているはず。それが体調不良で中止になったら推薦した側の立場もなくなるという事情もある。だとしても劇場側の協力体制は見逃せない。こまばアゴラ劇場が支援しても公演中止に至ったという話があるのでなおさら。

世間で有名な話だと井上ひさしが台本が間に合わずに初日遅れどころか公演中止にしたことがあって、後で「公演に間に合わせるためにつまらない芝居を書くとお客さんが離れていってしまうので、台本が駄目なら公演中止のほうがいい」なんてどこかに書いていたけど、あれは井上ひさしの実力と実績と台本が遅いことがネタになるほど知られていたという背景があってこそのギャンブルで、普通は公演中止のほうが信頼は落ちる。だから今回、過去の公演の再演でもなく、いっそ有名で著作権フリーな古典で「ロミオとジュリエット」とかやるでもなく、新作の体裁を整えてきたのは見上げた根性。

でも、初日が8月24日で、病気ダウン発表が8月19日で、別の演出家を立てた台本上演でなく構成創作したということは、それよりだいぶ前の段階から病気が長引いて台本はあがってこない稽古もできない状態が続いていたのではないかと想像する。台本が遅れても本人がいればエチュードその他でネタを作ることもできただろうし。であればもう少し早い時点で代案を用意しておくことはできなかったものか。芝居の台本を1本書くのに3日ということもないだろうから、今後は初日3週間前くらいで対策に動けるように劇団の制作体制を整えておくのがよいのではないか。

仕事にトラブルはつきものなので、期せずしてトラブルに巻込まれた関係者各位は、ある人は一段成長したり、あるひとは日ごろ見せない思わぬ腕をふるって見直されたり、きっといいことがあるはず。とか自分で観る予定のなかった芝居ならいくらでも優しく野次馬でいられる。自分がチケットを買っていて中止とか言われたら「うおおおおおおーいっ」って叫ぶ。

ここまでですでにお腹いっぱいなので、平田オリザのブログには無隣館三期生が家宅侵入の疑いで逮捕されたなんて話まで載っているけど、そこまでは追いません。

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2018年9月10月のメモ

ここで観ておかないと、という芝居が満載なので困る。細かい芝居を見落としている気がするので後で見直して更新。

・野田地図「贋作 桜の森の満開の下」2018/09-01-09/12、11/03-11/25@東京芸術劇場プレイハウス:いきなり本命の1本は「これなら2割安く東京芸術劇場で上演してもらったほうがよい」と書いた通りの公演だけど罰があたってチケットが取れていない

・松竹製作「河内山」「俊寛」2018/09/02-09/26@歌舞伎座:昼の最後が河内山、夜の中が俊寛で、有名な芝居を観ておきたいのと、吉右衛門を本場で一度観ておきたいというミーハー気分による

・俳優座劇場プロデュース「十二人の怒れる男たち」2018/09/07-09/09@俳優座劇場:ちょこちょこ再演してくれるのだけど期間が短い

・ぱぷりか「きっぽ」2018/09/07-09/17@三鷹市芸術文化センター星のホール:MITAKA Next Selectionが始まっているのを見落としていた

・グループる・ばる「蜜柑とユウウツ」2018/09/13-09/23@東京芸術劇場シアターイースト:評判だった芝居の再演で解散、脚本は長田育恵で演出はマキノノゾミ

・小田尚稔の演劇「聖地巡礼」2018/09/14-09/17@RAFT:さいきん気になっているのでピックアップ

・遊園地再生事業団「14歳の国」2018/09/14-10/01@早稲田小劇場どらま館:名前だけ知っている芝居だけど気になるのでピックアップ

・オフィスコットーネセレクション「US/THEM」「踊るよ鳥ト少し短く」2018/09/20-09/27@小劇場B1:海外脚本の日本初演と、ノゾエ征爾の再演ものと、2人芝居の同時上演企画

・KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「華氏451度」2018/09/28-10/14@神奈川芸術劇場ホール:焚書から始まるディストピア小説を、翻訳でなく脚本化から長塚圭史でいいのかな、演出は白井晃

・ゴールド・アーツ・クラブ「病は気から」2018/09/29-10/08@彩の国さいたま芸術劇場大ホール:数百人で上演という何がどうなるのか想像がつかない企画

・株式会社パルコ企画製作「ライオンのあとで」2018/09/29-10/15@EXシアター六本木:黒柳徹子のコメディシリーズのとりあえずの最終回

・国立劇場主催「平家女護島」2018/10/01-10/25@国立劇場大劇場:9月の歌舞伎座の俊寛を観ておくと、ここで通し狂言と観比べることができる

・松竹製作「助六曲輪初花桜」2018/10/01-10/25@歌舞伎座:よく言われる助六というのがこれらしく、仁左衛門で観られるものならここで押さえたい

・新国立劇場主催「誤解」2018/10/04-10/21@新国立劇場小劇場:新芸術監督が就任しての第一作はカミュの翻訳を、文学座の稲葉賀恵演出で

・地人会新社「金魚鉢のなかの少女」2018/10/06-10/14@赤坂RED/THEATER:海外翻訳脚本だけど、気になるキャスティングなのでピックアップ

・東京芸術劇場主催「ゲゲゲの先生へ」2018/10/08-10/21@東京芸術劇場プレイハウス:イキウメ本公演の代わりに気になるゲストを迎えて、前川友大が水木しげるの世界を描く

・パラドックス定数「蛇と天秤」2018/10/10-10/15@シアター風姿花伝:一挙公演の第5弾で、ここまで1本目、3本目、4本目を観ているので期待したい

・青年団「ソウル市民」「ソウル市民1919」2018/10/14-11/11@こまばアゴラ劇場:何度も再演されていて、そろそろ観ておきたい

・こまつ座公演「母と暮せば」2018/10/05-10/21@紀伊國屋ホール:構想だけで映画製作された話を畑澤聖悟脚本で舞台化して栗山民也演出、「父と暮らせば」がいまいちだったけどこれはどうか

・かわいいコンビニ店員飯田さん「手の平」2018/10/19-10/28@三鷹市芸術文化センター星のホール:MITAKA Next Selectionの3本目だけど、設定が上手そうなのでピックアップ

・KERA・MAP「修道女たち」2018/10/20-11/15@下北沢本多劇場:女優演出の上手いKERAが女優だらけの新作なので期待度高し

・文学座公演「女の一生」2018/10/23-10/28@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:名前は有名な演目を鵜山仁演出で

他に「出口なし」が9/24まで新国立劇場小劇場で。

<2018年9月24日(月)追記>

2本追加。

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2018年8月28日 (火)

パラドックス定数「Nf3Nf6」@シアター風姿花伝

<2018年8月25日(土)昼>

第二次世界大戦中、ドイツ内にあるユダヤ人収容所。ナチスの将校が銃殺される寸前のユダヤ人を救って自分の執務室に連込む。2人はかつて大学の数学教師で、共同で論文を執筆したこともある仲だった。数学者として相手の能力に敬意を払って助けたいと考える将校と、相手の能力に敬意を払いつつもすでに家族も殺されてナチスに身を投じた相手を責める囚人。将校の私物のチェス盤を載せた机をはさんで交わされる会話につれて明かされる、互いの過去と立場。

タイトルは「ナイトエフスリー ナイトエフシックス」でチェスの駒の動かし方。相手を探りあいながらも、数学の話題には共通してのめり込む関係。タイトルと設定とラストが格好いい、いかにもパラドックス定数という男2人芝居。

反面、役者の出来がいまいち。2人が共同で過ごした時間を感じさせてくれないし、今いる収容所の様子も薄いし、数学の話も(観ているこちらで内容が理解できないのはともかく)数学者として話しているように聞こえないし、死体を見慣れているようにも思えない。共通の景色が見えないというか、脚本にない部分だからこそ、役者に補ってほしい。将校役には準備不足を感じるし、囚人役も精神状態はともかく健康状態は良好すぎないか。

脚本も、2人のパワーバランスが揺れてほしいところ、最初から最後までほぼ一直線で逆転していくのは物足りない。あと会話の転換点がびっくりするほど追えなかった。数学とか暗号とか、2人に共通の前提がたくさんある設定だけど、脚本が急なのか、演技の詰めが甘かったのか不明。

タイトルとチラシの格好良さで結構期待していて、始まってしばらく、設定がわかるあたりまでの格好良さは期待通りだったけど、その分だけ仕上がりにはがっかりした一本。

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キョードー東京企画招聘「コーラスライン」@東急シアターオーブ

<2018年8月23日(木)昼>

ブロードウェイのオーディション。主要な役ではなくコーラスダンサーのオーディションだが、それでも競争は厳しい。最終候補に残った16人の候補者から採用されるのは半分だけ。何としても仕事がほしい候補者たちに対して、履歴書に書いていない自分のことを話してほしいと演出家は依頼する。ライバルを前に候補者たちが話すのは、自分の子供時代から今の環境まで。

名前だけ知っていて観たことがなかった有名ミュージカル。候補者のスピーチとそれを聞く他の候補者の内心の声とを歌にしつつ、演出家も含めてのあれこれを上手に2時間にまとめる手際のよさ。所々に華やかさはあっても、事前に想像していたミュージカルらしくないというか、全体に候補者の話が暗いというか湿っぽい話に寄っていて、希望を述べる場合もその前提にあまりよくない境遇がついくるような話。いろいろあってもオーディションは厳しい、ましてやコーラスダンサーのオーディションに応募してくる人たちの生活もお察し、というドライな競争世界が極端に日常化したアメリカショービジネス界ならではこそ、ラストのあっさりさも含めて、この湿っぽさが潤いとして成立すると思われる(別に日本が厳しくないというわけではなくて、日本だとさらに湿っぽいほうに偏ると思う)。

構成では、もう少しダンスが多いかと思っていたけど、歌がメイン。歌と演技は上手くて、だいたい台詞の量と役者の力量が比例して、そこにも厳しさを感じる。ただダンスはそこまで感心できなかった。コーラスダンサーだからそんなに上手い設定ではないけど、わざと下手にしたのではなくダンスはそこそこで見切った印象で、そこが不満。あとオケか音響かわからないけど、音楽が薄く、立体感に欠けた。

一度は観られてよかったけど、来日公演とはいえこれでS席13000円は高いという感想。いろいろなパートが、もう少しずつ何とかしてほしかった。

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2018年8月19日 (日)

パラドックス定数「5seconds」シアター風姿花伝

<2018年8月18日(土)夜>

機長による着陸直前5秒前の操縦が原因で墜落した日航機三五〇便。精神病と鑑定されて警察病院に入院中の機長に最初についた弁護士は話が合わず、同じ事務所の若手弁護士に担当替えとなる。心神喪失による無罪を確信しながらも、なかなか話の合わない機長との面会に繰返し訪れて聞取りを試みる。いったい墜落直前の5秒間に何が起きたのか。

初日観劇。これで4演目という、病院の面会室が舞台の2人芝居。逆噴射という単語にうっすら聞き覚えはあってもそれ以上は知らない航空機事故を元に、「その瞬間」を突止められるかどうかの対話が続くサスペンス芝居。実際に起きた事故なだけあって、固有名詞や時刻などの細部に説得力が強い。繰返し上演してきただけのことはある脚本。机と椅子しかない舞台の後方には、場面転換中に準備する小道具などが置かれた場所を用意して、1時間45分出ずっぱりで演じた役者の集中力もさすが。観て損はない仕上がり。

でもこれが正解の方向だったかというと疑問。楽しんだけど、脚本の掘る向きを演出も役者も間違えた印象。若手弁護士の成長物語を強調するような演技は注意深く減らしてほしかったのがひとつ。そこは脚本ですでに完成しているので、控えめにしてもらったほうがより引立ったはず。成長物語を全面に出したドラマに食傷気味だったのもある。

あともうひとつ、声と表情を豊かに演じすぎて緊張感が犠牲になっていた。トレードオフで選んだ結果と言えるかもしれないけど、自分は緊張感とリアリティを優先してなおかつ最後のやり取り開始まで違和感なくつなげてほしかった。わがままな客の注文という自覚はあるけど、でも実際に24人が亡くなった事故の話にしては、ややくだけた雰囲気ではなかったか。精神分裂病の人間がどのくらいリラックスできるのかは知らないけど、そんな事件の担当者になった弁護士があんなに興奮するものなのか。機長が弁護士に向かって「みんな顔がない(あなたにだけはある)」という挿話があるけど、それは抑えた演技と両立するもののはず。

全席自由だけど、ほとんど椅子に座りっぱなしの場面ばかりなので、センター寄りがおすすめ。机より手前にはほとんど来ないので、最前列でもちょうどよかったかも。舞台サイドも席があるけど、あそこに座る場合は、手前の役者はほとんど背中しか見られないことを覚悟。

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