遊園地再生事業団「14歳の国」早稲田小劇場どらま館
<2018年9月15日(土)昼>
とある中学校の3年生の教室。体育の授業中で生徒はいないが、教師が集まっている。中学生が最近起こした事件に触発されて、生徒を理解し危険を防ぐための持物検査を行なうためだ。ただし生徒には伝えられておらず、反対の意思を示した一部の教師にも内緒で行なわれている。授業時間内に終わらせないといけないのだが、教師の間で息が合わず、なかなか検査ははかどらない。
ネタばれしすぎたらつまらないので大雑把に書くと、いわゆる酒鬼薔薇事件を背景に、すでに大人になって長い教師から見た中学生のわけのわからなさと、そんな事言ったって大人のほうがわけがわかっていないではないか、という話。ある教師から話題が出たら、他の教師が必要以上に混ぜっ返していくあたりの展開は不条理劇っぽいラインぎりぎりを責めつつ、最後に不条理劇で一気にもっていく展開は見事。
ただその見事さ以上に、これが20年前の芝居とはとても思えないところが意外。酒鬼薔薇事件なんてすでに今の中学生が生まれる以前の事件で、実際に芝居の中では直接言及はされていない。それにも関わらず、登場する教師たちの、自分達は生徒の持物をこっそり検査してもよいという発想と、それでいて後ろめたいことをしている自覚と、なのに誰も止められないという展開。あれは舞台が中学校以外でも、今の日本として十分成立する。それを象徴するのがあのラスト場面とも言える。不条理劇なんだけど不条理に見えないというか、現実のほうが不条理というか。
教師役の5人がまた全員上手くて、特に疑わない筆頭の教師役の谷川清美の、近くに居そうな人物という雰囲気が、普通は上手いというと褒め言葉なんだけど、この芝居に限ってはそこに気持ち悪さが混じる。5人中唯一生徒寄りの美術教師役の踊り子ありは、こういう先生が居てくれたらもう少し救われる思わせつつ、あっさり生徒を裏切ったり、ラストの役回りも酷く、別の意味でわけがわからない大人の役が非常によかった。感想を無理矢理まとめると、丁寧で上等な後味の悪さを堪能させられた芝居。
ほぼ正方形の劇場に、一回り小さい教室を斜めに設置して座席を三方に配した美術は、どこから観ても見やすいというより、どこから観ても等しく損する場面がある模様。ただ思いっきりかさ上げされた舞台で、後列でも十分至近距離なので、前列よりは後列のほうがまだ見通しがよさそう。あと学校のチャイムから作った音楽がとてもよかったけど、それ以上に音響設備と音源がよかったのか、狭い劇場の音響がよかったのか、劇場ではこれまでで有数のハイファイな音響。いい音はいいものだと再認識。
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