松竹製作「秀山祭九月大歌舞伎 河内山」歌舞伎座
<2018年9月8日(土)昼>
幕府の御数寄屋坊主を勤めているものの、裕福な商家にたかるようなこともしている河内山。たかり目的で寄った質屋で親戚一同相談中の事情を聴くと、大名屋敷に奉公に上がった娘が殿様の目に留まり妾になれと言われている、すでに結婚の約束を交わした相手もいるので断るも殿様からは手打ちにする、それならされると明日をも知れぬ身だという。助け出す知恵の湧かない質屋の内儀に、前金百両、無事に救い出せたらもう百両の話を取付けた河内山が、大名屋敷に乗りこんで一芝居打つ。
一幕見席で見物。一芝居打つと言ってもそこまでひねったものでなし、大名相手にやり込めて、追加の賄賂も巻き上げて、最後に見破られるものの開き直って啖呵を切って押し返すまでの一連の流れは実に素直。筋を楽しむより、わがままな武家を懲らしめるという展開が、当時の町人受けを狙ったもの、その背景として当時の町民は武家にそういう感情を持っていたのだろうなと推測。吉右衛門の啖呵が聞かせてくれるけど、愛嬌が多くて格好よすぎるのがこの話には難。筋が素直な分だけ、もう少し全体に生臭さも増やして、毒を以て毒を制す感じが出ていたほうが個人的には望ましい。
久しぶりに歌舞伎を観たけど、現代で観るには演技がゆったりしすぎと感じるのはいつも通り。自分には遅すぎると感じるけど、あれでないと昔の雰囲気が出ないと反論されるのはわかる。ただ場面転換はもっとスピーディーにならないかとは思う。盆を回すのにあれだけ時間がかかるのは舞台が広くてしょうがないにしても音や照明で工夫してほしいし、音も流さないで幕を閉めて場面転換するなんて論外。余所の芝居を観に行かないのかな。それにしたって「鼠小僧」その他で間近に観ているだろうに。
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