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2018年9月 7日 (金)

野田地図「贋作 桜の森の満開の下」@東京芸術劇場プレイハウス

<2018年9月6日(木)夜>

古代ヒダの国の王が3人の彫刻職人を呼寄せる。夜しか起きない姉の夜長姫と昼しか起きない妹の早寝姫との2人の姫の成人に祝いに、3年の期限で仏像を彫ってほしいという。が、そのうち一人目は誤って自分で亡くなった師匠の弟子が、二人目は職人を道中に襲って殺めた山賊の頭が、それぞれ成りすましている。極端な性格の夜長姫は一人目の男の耳を奴隷に切取らせたのを手始めに、何かと困らせる一方、美しい顔に引かれた早寝姫に近寄られた三人目の職人は、ヒダの国の丑寅に封印されている鬼のことを調べている。その動きを知った二人目の男は、それを種に手下の山賊たちとともに接近を図る。

当日券をもぎ取って、2001年の新国立劇場版、2017年の歌舞伎座版に続いて3度目の観劇。夢の遊眠社時代にも2回上演されているから、野田秀樹の中でも上演頻度の高い脚本のはず。ただ何と言うか、うーん、低調だった。

先に褒めるところを書いておくと、今回観て、脚本のよさに今さら気がついた。いかにもあったかもしれないように描かれる古代の謎と、今の時代ならもっと減らしたであろう、過剰と言える言葉遊びで挑むところ。演技力より何より上演にはまず気合が大前提の壮大な話は、野田秀樹でしか観られない。

それを上演する隙のないスタッフ陣。美術も照明も音楽もいいけど、微妙にポップなひびのこづえの衣装がよく似合う。歌舞伎座版で鬼の面に批判的な感想を持ったけど、今回そこまで気にならなかったのは衣装で中和されていたからだと思う。あとコロスの面々の切れのある動きとぴたっと止まる身体がスピード感を出していた。少しだけど台詞もあって悪くなかったし、ひとり表情の変化がすごい女性コロスがいたけど誰だろう。

ただ主力メンバーが軒並み低調。まず天海祐希の演じた三人目の職人オオアマ。美しさ格好良さはさすがだけどこの役に必要な悪い面が全然見えない。歌舞伎版を幸四郎のオオアマは観たときには感心しなかったのだけど、実は結構いい出来だったのだと思い直した。古田新太の二人目の職人マナコ。長丁場で省エネ運転なのは劇団☆新感線の出演も含めて最近の傾向だけど、切れがないから省エネが手抜きに見える。唯一新顔で早寝姫の門脇麦。溶け込んでいたのはさすがだけど、あと一歩ほしい。夜長姫の深津絵里は結構頑張っていたけど、七之助の夜長姫を見た後ではまだいけるのではと期待してしまう。一人目の職人で耳男の妻夫木聡と、ヒダの王を演じた野田秀樹が頑張っていたほう。他のベテラン勢は控えめに徹してあまり遊びも仕掛けず。

2日前に大阪で台風、当日早朝に北海道で大地震と大規模停電、ひょっとしたら身内に被害があってあまりはしゃぐ気分ではなかったのかもしれないけど、大枚はたいた客としてはもう少し何とかならなかったかと望みたい。

あと穿った見方をすると、今回はフランス公演を控えて、現地で誰か倒れても公演に穴を開けないで済むよう、バックアップを見据えたキャスティングだった可能性がある。天海祐希(野田秀樹主演の三谷幸喜芝居で宮沢りえにバトンタッチされたのは記憶に新しいところ)か古田新太なら池田成志か大倉孝二が、深津絵里か門脇麦なら村岡希美が、妻夫木聡なら野田秀樹がスクランブル、銀粉蝶と秋山菜津子も場合によっては調整、まさかの野田秀樹なら藤井隆が、それぞれ後詰めして、開いた役はコロスから抜擢。普段はこの贅沢なキャスティングが遊びを仕掛けて盛上げるのだけど、今回は字幕公演対応のためか実直な場面が多く、贅沢が無駄遣いに見える。そのくらいの理由を考えないと納得できない。

そしてバックアップで対応できるくらいの能力を持ったキャスティングにした結果、エネルギーに欠けるというか、こういっては何だけど年寄り臭い舞台だったともいえる。周りのコロスはみんなダンス経験者なのか、動きに切れがあったのでなおさらそう見えたのがひとつと、もうひとつ意外だったのが、滑舌が悪くて聞取りづらい台詞多数。3倍速で台詞を言っても聞き取れるのが野田秀樹の舞台じゃないのか。

フランス公演が終わって、自然災害が落着いて、もう遠慮しなくていい状態になった凱旋公演で出来ればもう一度確かめたい。

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