シス・カンパニー企画製作「出口なし」新国立劇場小劇場
<2018年9月23日(日)昼>
扉がひとつだけで窓もなく、椅子と明かりとささやかな調度品だけが置かれた部屋に、3人の男女が連れられて来る。一度閉まると扉は内側から開かない。どうやら死んだ魂が案内されてきたようだが、なぜ集められたのかがわからない3人は、互いに自己紹介しながらその理由を探っていく。
こういう芝居だと大竹しのぶが俄然映える。ねちっこい台詞回しもそうだけど、多部未華子に迫るときのあの興奮の仕方の危なさがすごい。その向こうを張る段田安則は「ヘッダ・ガブラー」もそうだったけど、あの声は悪い場面に実に似合う。多部未華子は見とれるような完璧な横顔で綺麗なだけではない綺麗どころの役を熱演。「オーランドー」より出ていた声がよい感じだけど、発声お化けの2人に対抗するにはあと一歩。
観終わって、これだけ密度が高い芝居なのに80分しか経っていなかったのがまず驚き。世の中の芝居は長すぎる。結構激しい言葉が飛交っていたけどそれでいて全然台詞が立っていなかったのがまた驚き。あの台詞を全部消化して自分のものにしていたってこと。その後ろには翻訳含めてここまで整理した演出の腕があるだろうとは推測がつく。理屈が必要とされる西洋芝居の演出が小川絵梨子は本当に上手い。
ちなみに三度目の正直でようやく当日券を入手。人気者が出るにはせまい劇場なので当日券の枚数が少ないことはしかたないにしても、並んだ順の当日券販売でキャンセル発券ゼロ枚は長い当日券歴でも史上初の経験。キャンセル待ち番号すらもらえずに説明で事前に帰される人が10人以上。同じシス・カンパニーの「子供の事情」とは規模が違うけど、それでも毎回抽選にしたほうがよかったのではないか。
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