神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」神奈川芸術劇場ホール
<2018年11月18日(日)昼>
1950年代のアメリカ。セールスマンのウィリーは、60歳を越えて成績不振から歩合制にされ、なおかつ車で数百キロ以上走る田舎の担当に回される。妻は励ましてくれるが、最近はまったく収入がなく、家や家財のローンがあと少し残っていて辞められない。自慢だった2人の息子も長男は職が定まらず全米を放浪し、次男は近所にアパートを借りて女遊びにうつつを抜かしている。数ヶ月ぶりに長男が家に帰って家族4人が揃うが、心身ともに疲労しているウィリーはふがいない息子に説教をし、それに反発する長男と衝突する。とりなした次男のアイディアで起業の準備を進めることになり、家族に平和が訪れたように思われたが・・・。
千秋楽。タイトルがすでにネタばれで、オープニングの演出もネタばれなのだけど、そこに至る過去と現在を休憩はさんで3時間20分でこれでもかと描く。観なければよかったかと一瞬思わせるくらい重たい前半から、父と長男の立場や長年の心境の変化を解いてみせる後半まで、きつくて、いたたまれなくて、どこにも正解なんてなくて、でもそれだけでは終わらない話は有名なだけのことはある。それを直球ど真ん中の演出で隅々まで明確に立上げた長塚圭史の力作。
疲れすぎて神経がまいって危ない父親の風間杜夫と、まったく笑わせない山内圭哉の2人が軸としてしっかりしているけど、周囲もとにかく素晴らしい。この日の出来のよさでいったら健気を絵に描いたような妻役の片平なぎさが一番。あと近所の友人役の大谷亮介の柔らかさと、その息子で長男の同級生役は加藤啓であっているかな、あの整った感じは記録しておきたい。少し迷ったのは芸達者なのにチャラい演技で通した次男役の菅原永二で、実際チャラい役どころだけど脚本上はもう少し幅を求める役で、あれは風間杜夫や片平なぎさが重量級の分だけ演出が全体のバランスを調整したか。
有名な話というだけでなく、脚本がよすぎて演技演出に求められるハードルも高いのにクリアしているというまたとない座組。横浜千秋楽だけど関西で公演があるから、そちら方面で興味のある人にはぜひお勧めしたい。ただし体調は整えて。
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