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2018年12月26日 (水)

カタルシツ演芸会「CO.JP」スーパーデラックス

<2018年12月23日(日)夜>

最近よくないことが続く男が訪ねた「霊媒師」、スーパーでつかまった高校生が盗もうとした品がどうもおかしい「万引き」、久しぶりに新刊を出した作家が宣伝で話すインタビュアーの話し方が気になる「インタビュー」、クラスメートからは仲良く構ってもらえるものの不満がある「転校生」、妻が入院して駆けつけた夫に医者が病状を説明する「手術」、引越した友人の家を訪ねたらなぜか取付けられている「ボタン家」、主人が亡くなって犯人を見つける「名探偵」、順調に正解を続けているが「クイズ」、栄えある一等賞に選ばれたものの「メガネ男子」、計画を立てて押しこんだはずだったが「銀行強盗」、日本を救え「ジャパンレンジャー」。

順番とタイトルは一部適当。コントと演劇の境界を探ると銘打ったが「ゴリゴリのコントに仕上がりました」との前口上で始まるコント集。深いことは考えずに笑えるコントが並ぶ。こういうのを観るときは意地悪い気分で笑ってやるものかと身構えるけど、笑わされた。設定の妙に負けた「転校生」とあんまりな展開にやられた「名探偵」が特によい。たまにアドリブが入って共演者が笑うのはわかるけど、あまりにも上手い間がはまって共演者が笑うのはほどほどにとは思う。それも含めて面白かった。こんなにリラックスしていた客席の雰囲気は久しぶり。

横長の舞台を三方から囲むのでサイド席だと表情が隠れる場面もあったはずだけど、顔や仕草に頼る笑いが少なく声でしっかり突込みが入るから、わからなくて笑えないことはほぼない。それは逆にいうと設定と構成がしっかりしていた証拠。他人を馬鹿にするような要素もなく、政治的な話もなく、誰が観ても等しく楽しめる見本のようなコント集。

それとは別の感想として、ゴリゴリのコントとは言っていたけど、出来上がったものは演劇に近い。具体的にはKERAの芝居を観ているような気分になった。不条理劇と呼ばれる分野の脚本を書いて喜劇的に演出するKERAと、理不尽だったり強引だったりする設定やそこへのツッコミで笑いを取る今回の公演と、そんなに差はないことを実感。場面がつながって一本の物語になるか、ならないかだけが違いではないか。あるいは、困った(けどあり得ないことではない)場面に追詰められた登場人物がおかしいのがウェルメイドな喜劇で、理不尽な(本来あり得ない)場面に振回される登場人物がおかしいのが不条理劇で、それが短いコントになっていても長い物語になっていても根は同じではないか。今回のコントが不条理劇風味のラインナップで揃っていたのは、やっぱりコントと演劇の境界を探った成果ではないか。

こんな感想を書くのは、ついこの前「風の演劇」という別役実の評伝を読んだから。この本の中でも三木のり平やKERAを絡めて、不条理劇は喜劇に近いという話が載っていた。よく考えたら別役実は一度も観たことがないけど、コントだと思って機会があったら臨みたい。

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