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2018年12月15日 (土)

新国立劇場主催「スカイライト」@新国立劇場小劇場

<2018年12月14日(金)昼>

ロンドンの、治安がよくない地域でアパートに独り暮らしをする女性の元に、かつて一緒に暮らした一家の息子が訪ねてくる。女性が出て行き、母が亡くなってから父の様子がおかしいので会ってほしいと言う。息子が帰ったあと、父である男性が訪ねてくる。女性は実家を出て男性が経営するレストランで勤務し、その一家に見込まれて一緒に住んでいたが、男性と不倫関係にあり、関係が妻に知られてから姿を消していた。話は近況の報告からお互いの価値観、そして過去の出来事と様々に進む。

小川絵梨子の芸術監督就任後初演出。ほぼ出ずっぱりの蒼井優と浅野雅博が、とにかくしゃべる。その会話の内容がいかにもイギリス芝居っぽい。相手をしゃべらせて、非難して、その言葉から相手を非難し返して、仲直りして、またしゃべらせて、がなんども続く。同じ出来事に対してこれだけ違う見方を提示しながら会話を続けるのは立派。1995年初演らしいけど、それにしたって浅野雅博演じる男性は余計なことを言い過ぎで、あれでよくひっぱたかれないなという脚本。ラスト15分ごろ、タクシーを呼ぶところからの蒼井優が突然いい感じになって、この人は高い声を普段無理して出しすぎで、もっと低い声のほうが楽に発声できるのではないか。

劇場の中央横に舞台を置いて、舞台を挟む席とギャラリーを囲む席の配置だったけど、役者の顔はやっぱり正面席優遇の感は否めず。今回入って奥側で観たけど、台所から食卓までの導線が正面向くようになっていたけど、それなら椅子や床に座ったときで顔の向きの按配を調整してほしかった。何度も書くけど、囲み舞台をやるなら稽古場の演出家席がわかるようなバランスはやめてほしい。あと入って正面から見て下手側の席だと、上手側と比べて窓が内よりに配置された舞台美術で、あれが役者に重なってストレス。床から上がる玄関を配置したのと、窓から差込む光を照明で作るために位置と距離を稼ぎたかったのが理由だと思うけど、あれでS席として同じチケット代ってことはないだろう。座席の不満が大きくて感想が薄い。

<2018年12月16日(日)追記>

寝て落着いたから思い出したことを若干ネタばれで追記。

表向きは不倫していた2人が過去や互いのよかったこと悪かったことを振返る話だけど、その振返る内容のかなりの部分に貧富の問題が含まれていて、そちらが本筋ではないかと思う。特に、治安のよくない地域からレストラン経営で身を起こして一代で富裕層になった男性と、弁護士の娘に生まれて大学を優秀な成績で卒業したのに治安のよくない地域に住みながら教育に力を注ぐ女性との対比は、役の基本背景として隅々まで行き渡っていてほしかった。それが最後に、あなたはどんなときでも現状では満足できない人、君は自分の身を他人に預けることが出来ない人、のすれ違う台詞で締めくくるような脚本になっていたはず。

この線でいくと、寝室を豪華に作ることが罪滅ぼしになったと考えていた男性と、もう花は見たくないと言った男性の妻とのすれ違いもあって、そこに貧民にも成金にも共通な軽蔑される要素を描くという、いかにもイギリスっぽい、ある意味嫌味な面もあったはず。

そんなことをつらつらと考えると、男性を演じた浅野雅博が紳士すぎた。人に命令しなれて、見下して、成功がさらに自意識を拡大して、でも飽くなき上昇欲を持ち、創業者ならではのエネルギッシュな魅力を放出して、少なくとも料理については唐辛子を先に入れる以外にも豪華な朝食を食べるなど一家言あり、それらが今はぺしゃんこになっているけど認められないという、少なくとも紳士ではない面をもっと見せてほしかった。相手を非難するときも、言葉の割に攻撃感が少ないというか。

もうひとつ違和感があったのは、ワンルームが広すぎたこと。囲み舞台にしたせいで壁を立てられなくて台所やストーブでしかボロさを出せなかったのはわかる。でもその場合にどこで貧しさを感じるかといえば日本人としては広さで、貧しい地域とはいえ1995年でロンドンで手ごろな家賃であの広さが借りられるのか。いや舞台美術なのはわかっているけど、それでも手狭さを出せなかったものか。

あと芝居とはまったく関係ないけど、終演後のカーテンコールで蒼井優のお辞儀に感じた真剣味というか深刻さというか、あれは何だったんだろう。単に少し長くお辞儀しているのがそう見えただけなのかな。

<2018年12月17日(月)追記>

何でろくに知らないイギリスの芝居にこんなコメントが出てきたのかと自分で疑問だったけど、これだ。「イギリスでは労働階級出身だと芸能人になれないらしい」ってエントリーを書いていたんだ。

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