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2019年2月12日 (火)

タカハ劇団「僕らの力で世界があと何回救えたか」下北沢小劇場B1(若干ネタばれあり)

<2019年2月10日(日)夜>

かつて漁業が主要産業だった海辺の町。誘致合戦に勝抜いて建設された素粒子研究所が稼働を始めるのを記念して、科学イベントが開催される。そこにトークイベントの参加兼この町を舞台にした小説の執筆を依頼されたでライトノベル作家がやってくる。取材先の学校では、科学らしい企画を頼まれた無線部OBやその先輩OGたちが企画に頭を悩ませていた。そこで何気なく電源を入れた無線に、ラジオのジングルが聞こえてくる。かつて無線部のメンバーが自主的に流していたもので、それを知っている人間は当時の無線部のメンバー以外にはありえない。そこで話は、唯一この場にいない、かつてのメンバーについての話となる。

劇団初見。いないメンバーは実は事故で亡くなっているはずで、それを防げなかった責任の一端は自分にあると苦にしている無線OBが市長の息子で、他のOBが働き始めたり大学院に通ったりしているなか、いろいろ学校に通っても中退して上手くいかない、というのがメインの話。この背景に、漁業が廃れた町の存亡をかけて誘致にこぎつけた市長と、素粒子研究所は危険だから今でも反対する人間がいる、という設定は原発そのもの。事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している「マンデラエフェクト」という現象を振っておいて、後半、亡くなっているはずのメンバーの声が聞こえるのは素粒子研究所の施設稼動に伴って、あったかもしれない複数の並行世界が混線しているからだ、という話がSFというかライトノベルっぽい。ここに、東日本大震災がなかったという登場人物も出してくるあたりが、10年経たずに何事もないように過ごそうとする日本社会への作者の主張だとは思う。

それはそれとして、東日本大震災のような単語をチラ見せするのではなくダイレクトに出してしまうとか(その後の鼻血が止まらない登場人物というのは東日本大震災を想定させる出来事の中でも悪手)、無線部OBとその先輩のOGの過去や現在の情報がほとんどないとか(市長からOGに協力を強要させる情報がそのとき初公開とか)、脚本の情報の出し方がまずかったのがひとつ。

あと、いない(亡くなった)メンバーへの思いの精算に話が集約されてしまっていたけど、それが弱くて終わってしまったのがもうひとつ。何と言うか、話の大きな筋は足し算ではなく掛け算で働くので、弱い小さい筋を掛けるととたんに全体が小さくなってしまうから注意が必要。かつ、原発や東日本大震災は(この芝居の通り)なかったことにしたい意識が働くテーマなので、よほどしっかりした筋をあの手この手で掛け算しないと成立しないのだけど、そこまで手が回っていなかった。

薄味だった仕上がりが、ライトノベル作家を登場させて、ライトノベルっぽい設定で、仕上がりもライトノベルっぽく、というところまで狙ったのかどうかは不明。ただ、昼に観た「るつぼ」が超重量級で、次の日に観た「過ぎたるは、なお」がまさに原子力の話題を扱いながら笑いも含めていろいろな設定を混ぜて気をそらさなかったのに比べると、不満。まして、原発(を想定させる設定)や東日本大震災を扱ってこの仕上がりか、と残念な気持ち。

役者は健闘。ただ、背景もその背景を想像させる台詞も多かった市長の松永玲子と、ライトノベル作家のもたい陽子を除くと、健闘にも限度がある。

この回はアフタートークがあって、脚本演出の高羽彩とゲストはミナモザの瀬戸山美咲。これはよほど原発寄りの話になるかと想像したらそこは避けたのか、脚本成立の話。いろいろあったけどメモが遅れたら大半を失念した。無線については相当勉強や取材をしたらしい。最後のQ&Aで、劇中の無線のコールサインはどのように決めたのかという質問に、コールサインは前半が地域を後半が個人を表す、地域は自分の出身地として静岡県という設定にした、個人は無線部の4人が同じ時期に試験を受けて合格したと想定して末尾1番違いで割振った、他に団体用のコールサインもあるがそれも団体用になるようにした、実在のコールサインと重ならないように気をつけた、これらには早稲田大学の無線部に取材してお世話になった、とのこと。

<2019年2月23日(土)追記>

感想を清書。

<2019年3月6日(水)追記>

国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致」なんてことを実際にやっているのですね。それならなおのこと、原発と結びつけた話にするのはよくない。この施設が危険だと批判するならこれ単体の危険性を批判してほしい。

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