東京芸術劇場制作「父」東京芸術劇場シアターイースト
<2019年2月3日(日)昼>
パリに暮らす父と長女。長女が在宅の介護士を手配するも、3人雇って3人とも介護士を追い出してしまい、次女は優しいのにと長女に当てこすりを言う。ところが長女の言うことが毎回違う。どうやら父には認知症の気配があるようだが、父は自分の症状を認めない。
演技がこなれすぎていて、登場人物の名前や室内靴履きなど一部小道具以外は日本の脚本なのではないかと疑われる仕上がり。介護の問題を真正面から扱っているけど、軽い種明かしとしては、認知症の父の視点から見た場面と、長女の立場から見た場面が混在している芝居。大筋はわかっても詳細がどんどんずれて、認知症の人から見えている世界はこうなんだろうなと思わせる展開。
橋爪功の(文字通り)ボケかたに説得力があったけど、今回は追詰められる長女役の若村麻由美がその向こうを張ってさらに素晴らしい出来。脇を固めるメンバーも、相対的に出番は少ないけど手抜き一切無し。ラスト場面の柔らかさが見事だった女優は全然知らなくて、控えめに演じているのに存在感が強くて背も高くて、日本のどこにこんな女優がいたかと壮一帆を調べたら元トップだった。宝塚侮れん。
終演後のロビーで「認知症の父の視点から見た場面と、長女の立場から見た場面が混在している芝居」という点を同伴者に説明している人多数だったので、そこだけ承知して臨めばいろいろ感じるところのある芝居。まもなく介護される人も介護経験者も、年齢や経験を積んだ人ほど観てみては如何。当日券はまだあったけど、会場前方端だと見切れるので注意。大して広い劇場でもないので、選べるなら最後列端のほうがよい。
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