新国立劇場演劇研修所「るつぼ」新国立劇場小劇場
<2019年2月10日(日)昼>
1962年、アメリカの片田舎であるセイラム。娘や姪たちが夜の森で踊っているのを牧師が見つけたところ、娘が寝込む。姪がかつての勤め先の主人と不倫していたが振られて解雇されたのを恨んで、近所の少女たちを集めてその妻を呪い殺すための儀式を行なっていたのだが、驚いて寝込んだままの娘のことを魔女だという噂が広がる。姪はそれを隠すために、悪魔に取りつかれたと嘘の告白を行なうが、それを信じた村人たちの誤解を逆手にとって、何でもない村人たちを次々と魔女扱いで告発していく。
ロビーや当日チラシに書かれていたけど、魔女裁判の実話を扱った超重量級の脚本。「面白い脚本を面白く演じるのは難しい」のが舞台だけど、これを鑑賞に耐える水準を超えて脚本に対抗しうるところまで仕上げた力作。
立場も心情もばらばらな登場人物が絡んだりすれ違ったりするのを描くのは、場面ごとの役者の方針を合せつつ、最後まで役の方針も筋を通さないといけないけど、観た感じでは全員成立していた。全員は挙げないけど夫妻、2人の牧師、姪、家政婦などを演じた12期生や、夫妻の友人や副総督を演じたヘルプの修了生など、活躍している役者が多い。1幕最後の嘘の告白をする絶妙のタイミングや、2幕で引いた伏線をきっちり見せる3幕の裁判所の場面など、観ていて惹きつけられる。あと今回の上演は、場面転換時に賛美歌は歌っていたけど、効果音はあってもほとんどBGMはなかった。つまり演技で何とかしないといけないけど、それであそこまで仕上がったのは技量とエネルギーと両方あってのこと。
演出の宮田慶子が当日パンフに、この難しい脚本にするか迷ったけど一度は体験しておいてほしいから選んだと書いていた。でも、この脚本でもこのメンバーならいけるかもと思わせる何かがあったからこそ選んだのだと思う。舞台こそ簡素だけど衣装照明音響などスタッフ面の心配はなかったのも後押ししたかもしれない。そしてその賭けには勝った。長丁場のシリアスな芝居だったけど、タイムリーな要素を数多く含んでいたこともあって楽しめた。
願わくはこの修了生たちがより多くの機会をつかみ取れますように。
<2019年2月19日(火)追記>
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