青年団「思い出せない夢のいくつか」こまばアゴラ劇場(若干ネタばれあり)
<2019年3月6日(水)夜>
歌手とマネージャーと付人が、営業先に移動するために夜中の電車に乗っている。煙草を吸いに行った別の車両では、妙な乗客に話しかけられて辟易とする。車中のこととてたいしたことができるわけでもなく、取りとめもなく交わされる会話の数々。
あれと言えばこれと返せるくらい話が合う付合いの長い歌手とマネージャー。別の人間と結婚数ヶ月で破綻した歌手はマネージャーにひそかに好意を寄せているが、独身のマネージャーは歌手がいないときに「夫婦が似るって本当ですか」と聞く若い付人に懸想する。それを察していながら知らん振りして若い付人を遠くへやれないか考える歌手。三角関係の事情がわかるにつれて、何気ない会話が手に汗握る牽制に見えてくるのが見所。別の車両の乗客に銀河鉄道の夜の登場人物を引いて先行きの不安を醸しだしながら、見方のわからない星座盤でこれからの混乱を暗示する手際。
静かな演劇に見えて内面は全然穏やかではない脚本は、これが新作ならさすがベテランと書くところ、初演は1994年2月で25年前。その次が「東京ノート」という初期絶好調時代の1本。なおタイトルは俵万智の短歌から無意識に引用した(気がついて後日許可をもらった)と当日パンフの弁。
ポーカーフェイスのマネージャーを演じた大竹直、付人で歌もいい藤松祥子も好演だったけど、歌手を演じて久しぶりに出番の多かった兵藤久美がいわく言いがたいけど実に良い感じ。
今回の「平田オリザ展」は観たことのない芝居ばかり3本観たけど、どれも夫婦とは何ぞや、という芝居ばかりだったのは偶然か狙ったのか単に少人数芝居を選んだらそうなったのか。あとこの大量の芝居を交代で上演するために美術は共通化して簡単に入替えられるようにしているなと思っていたけど、今回の1本はいきなりごつい美術になっていて、壁や線路をどんなパーツで構成していたのかが気になる。あの狭い劇場でそんなに簡単に入替えられるのか。
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