五反田団「偉大なる生活の冒険」アトリエヘリコプター
<2019年7月28日(土)夜>
40歳の男は写真の仕事をしていたこともあったが今は無職で、元彼女の家にやっかいになっている。元彼女はスーパーのバイトをしながら、職場の男性と付合っているらしい。元彼女がバイトの間にゲームをやったり隣人とおしゃべりをしたりして過ごしているが、最近は昔なくなった妹の夢を見るようになった。
11年前の芝居を今のほうが切実と再演、というだけの前知識で観たら本当に切実な1本。それを、これしかないという必殺の間合いで笑いに変える役者陣の技量はさすが。その粛然とするしかない場面を笑いに変えた中に「俺もそれを見たことがある、そっち行っちゃ駄目だ」って値千金の台詞が混ぜているのは見事の一言。ゲームの扱いが巧み。10年くらい前の人を食ったような顔より今のほうが表情は若く見える前田司郎と、この芸達者な5人の中でも一段上に見える内田慈のコンビはさすが。
観終わったあとで客同士が「笑えない場面でみんな間違って笑っていましたよね」って話しているのを耳にしたけど、この話に笑いがないと悲惨の一言で終わってしまうので、笑うのは正しい。笑えないけど思わず笑ってしまうのも正しい。この範囲の中でできる限りの結末がそれか、という話なので観る前には体調をよく整えて笑えるようにのぞんでほしい。
すごい久しぶりにアトリエヘリコプターで観たけど、工場街だったはずなのに周りの建物が軒並み高層ビルやマンションになっていて、アトリエヘリコプターだけがぽつんと残っているのに時代の流れを感じた。あれだけマンションがあって休日なのに人がほとんど歩いていない、都心なのに新興住宅地で不思議な雰囲気だった。
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