東京芸術劇場主催「お気に召すまま」東京芸術劇場プレイハウス
<2019年8月9日(金)昼>
兄である元領主が弟である現領主に追放された領地。娘の願いで姪だけは除名して館に住まわせていたが、開催したレスリング大会で兄の忠臣の息子が優勝し、その戦いを見物していた姪と互いに一目惚れする。現領主は男の出自を知り殺そうとするが召使いの機転で脱出し、追放を命じた姪は男装して娘と道化と一緒に領地を去る。2組が目指すのは元領主が命を永らえているというアーデンの森。
粗筋を書くと格好よさそうだけど、森の出来事は男同士の乱交騒ぎといった趣で、シェークスピアの中でも強引な展開による喜劇。演出もそれを強調して格調とは縁がない。ただ、シェイクスピアは役者のキャラで客席狙いするようなところが多々あって、四大悲劇のほうが例外的というか、十六世紀の芝居はそっちが標準ではないかと最近考えている。だから客席も多用した今回の演出は何となくオリジナルに近づけることを目指したのではという印象を受けた。
という前提で、それにしては正統派の役者を集めたなあ、そして正統派の役者も結構はっちゃけるんだなあ、と余計なことを考えながら観ていた。とりあえずシェイクスピアなら中嶋朋子出しとけ、という理由で呼んだのではないことは「おそるべき親たち」以来の縁だろうからわかるけど硬軟使い分けていたし、山路和弘や小林勝也や久保酎吉のベテラン勢も結構ノってみせていた。むしろ道化役の温水洋一がちゃんとした喜劇を目指そうとして遊びが足りなかったし、広岡由里子は出番が少なくてもったいなかった。
ヒロインの姪役の満島ひかりが、一言で言えば華があった。言い方が難しいけど、演技で言えば観られるけどそこまで上手ではない。ただ、一番伸びやかに演技していた。ニンに合った演出だったのか、観客を信用していたか、自分がしゃべれば客は納得するだろうという売れっ子の自信かはわからないけど、あれは主役にふさわしい態度だった。これまでよさそうな芝居に出ているみたいだから、そろそろ劇団☆新感線とか登場しそう。相手役の坂口健太郎はちょっと真面目すぎ、満島真之介は出番が少ないのがもったいない王道演技だった。
もうちょっとだけキャスティングを入替えて、演出方針を徹底できていたら、もっと面白くなっていたはずだけど、惜しい。
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