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2019年11月 7日 (木)

キャスティングが大変な世界の演劇事情

主役の渡辺直美を全面に出して宣伝が始まったミュージカルの「ヘアスプレー」ですが、脚本家のメッセージがなかなか考えさせられます。

観客の皆様へ

 『ヘアスプレー』のクリエイターである私たちが、高校やコミュニティシアターにこの作品の上演許可を出すようになったころ、黒人である登場人物をアフリカ系アメリカ人以外が演じるためメイクアップを行うことをめぐり、一部の人から質問を受けました。

 世界中のすべてのコミュニティが『ヘアスプレー』の脚本通りにキャスティングができるような、見事にバランスのとれた民族構成にはなっていない(駄洒落で失礼します)ことは理解していますが、当然ながら出演者の顔に色を塗ることなど(たとえそれが敬意をもって、控えめに行われるものだとしても)許可できませんでした。というのも、やはりそれは結局のところブラックフェイス(黒塗りメイク)の一種であり、いうまでもなく本作品が反対の立場を取っている、アメリカの人種にまつわる歴史の一ページだからです。

 また、肌の色を理由として、俳優がある役を演じる機会を否定することは、たとえそれが “ポリティカリーコレクト(政治的に公平・公正)”であるとしても、それ自体が人種差別になることにも気づきました。

 ですから、本日(注1)ご覧になる『ヘアスプレー』の公演に(エドナ役を代々、男性が演じてきたように)本人の肌の色とは異なる役を演じている出演者がいるとしても、 “不信の一時的停止”(注2)という、いつの世も変わらぬ演劇的概念にのっとり、出演者の人種的な背景(あるいはジェンダー)を見るのではなくストーリーを味わっていただきたいと考えています。そもそもこのミュージカルのテーマは、物事を外見では判断しないことなのですから! 演出やキャストが優れていれば(そうであることを期待しています!)、そういったメッセージは明確に伝わるでしょう。そして観客の皆様には、楽しみながらそのメッセージを受け取っていただけましたら幸いです。

 感謝をこめて。

マーク、スコット、マーク、トム&ジョン

*注1:本メッセージは観劇当日に読んでいただく事を想定して書かれています。
*注2:小説や演劇等における虚構の世界を真実として受け入れること。

野木萌葱が芝居の当日パンフに「赤毛芝居」が好きだ、とを書いていました。昔、西洋の芝居が日本に入ってきたばかりのころに、カツラや付け鼻をつけて西洋の役を演じた芝居のことです。爾来100年以上、それを疑うような芝居がついに日本の商業演劇でも上演されるようになりました。

なお人種ではなく格差に関する似たような似ていないような話はこちら

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