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2019年12月 8日 (日)

Bunkamura/大人計画企画製作「キレイ」Bunkamuraシアターコクーン

<2019年12月7日(土)夜>

日本が3つの勢力に分かれて内戦を続けている時代。死体集めを生業にする一家に、長年誘拐されていたため記憶も知識も欠けている謎の浮浪少女ケガレが保護される。仕事を覚えて色々な人たちと関わるうちに、忘れていた過去をケガレが少しずつ思い出していく。

再々々演ということで初演以来欠かさず観てきて4度目の観劇(再々演)。最初に書いておくとスタッフワークは今回が過去最高。ビジュアル面は予算をかけたのが伝わる衣装美術照明映像に加えてプロジェクションマッピングも若干追加、音楽はオケを入れた以上に音響抜群だったのは劇場設備か音響スタッフの努力か。全方面で質が高く洗練されている。昔はチープなスタッフワークのほうがいいと思っていたこともあったけど、ここまで質が上がるとこっちのほうが絶対いい。

それもあって演出の絵作りが格段に映える。美術の構成はほぼこれまでと同じなのに、その同じ構成で同じ場面をやってこんなにキレイに見えるのかと驚いた。脚本は大筋は変わらないけどやや親切に、歌も追加されていて、役名含めて全体には整える方向で手直しされていた。初演では公演中に長期誘拐の事件が発覚して騒ぎになったけど、昨今の不穏な世情から、今回はむしろ内戦や死体集め稼業などの背景設定のほうがひょっとしてあり得る未来かもと想像させられて、脚本の深さにうならされる。

なのに感想は、役者の違和感も過去最高。ただし下手ではない。断じて下手ではない。だから観終わってからずっと理由を考えていた。以下、とりあえず思いついた仮説。

この脚本は、設定にも展開にも登場人物にも台詞にも小劇場の雰囲気が色濃く反映されている。どれだけ整えても、どれだけ世情とシンクロしても、それは消えないし、消したら別物の脚本になる。だから演出でも演技でも、小劇場の雰囲気が要求される。上手く説明できないけど、物語は物語として遊べるところではネタを仕掛けてくるある種のおふざけ精神だったり、多少強引な展開でも納得させる勢いだったり、ネタはできても真面目な演技は苦手だから頑張るような必死さだったり、そういういろいろが重なってかもし出す怪しさだったり。別な言い方をすると、演出で調整して仕上げないといけない。

だから大人計画のメンバーははまっていたけど(同じ役を経験した役者が多いこともある)、客演陣は脚本どおりのふざけた役をきっちり真面目に作り上げることで脚本と喧嘩した。出ている割合は客演陣の方が高いので、違和感の多い舞台になった。というのが仮説。自分の感想では、客演陣で健闘していたのはカスミお嬢様の鈴木杏で、脚本に真面目すぎたのは青年ハリコナの小池徹平と以外やジュッテンの岩井秀人。あとマジシャンは阿部サダヲだったけど、テンションは高くても健康的な雰囲気で、大人計画のメンバーで唯一違和感があった(もっとも、宮藤官九郎が演じたときでも違和感のあった難しい役ではある)。生田絵梨花/麻生久美子のケガレは健闘していたけど、お互いの同一人物感は前回のほうが上。

公演後半になるともう少しこなれてくるかもしれないけど、4日目6ステージ目の感想はこの通り。あと、今回は公式3時間40分、実測3時間45分で、前より延びているはず。見ていて間延びする場面はないけど、終演時間が気になる人はご注意を。

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