トライストーン・エンタテイメント/トライストーン・パブリッシング主催「少女仮面」シアタートラム(若干ネタばれあり)
<2020年1月28日(火)夜>
宝塚にあこがれる少女と老婆は、宝塚の元スターが経営する地下にある喫茶店「肉体」をたずねる。おかしな客とおかしな店員にあしらわれながら、どうしても会いたいと懇願する少女を元スターは見初める。そこから繰広げられる「嵐が丘」の一節は演技指導か幻か。
唐十郎の1969年初演の岸田國士戯曲賞。女が男を演じる宝塚のお約束や、腹話術師と人形の主従関係といった「見て見ぬ振り」から、敗戦の焼け跡の記憶を「見て見ぬ振り」して地下鉄工事が進む世相を一刀両断させ、そこから満州まで話を飛ばす飛躍力はさすが元祖小劇場の唐十郎。適当なようではっとさせる台詞がたくさんあって、アングラと片付けられない説得力があるのはさすが受賞作。水道水を求める喫茶店の来店者の台詞を聞くと、野田秀樹の「パンドラの鐘」はこれが元ネタだったのではないかと思わされる。
この時代にこの脚本を選んだのは慧眼だけど、アングラ要素の多い脚本をそのまま演出してもつらいだろうし、かといって現代的に演出しすぎると脚本が死ぬ。結構頑張っていたけど、肉体と幻のほうに力点が置かれていた模様。あと、オリジナルはもっと猥雑だったであろうところ、ずいぶん上品に演出したなという感想。劇場がシアタートラムで上品さに輪が掛かったたのが惜しい。
伝説の宝塚の元スターに若村麻由美をキャスティングしたのが実にはまった1本。やけにそれっぽいので、真面目なのか笑うところなのか微妙に迷うところが「見て見ぬ振り」の脚本にはまる。もったいなかったのは腹話術師と人形を演じた武谷公雄と森田真和のパートが妙に上手なため独立したパートのように見えてしまったことで、もう少し本編に寄っていたらよかった。
ずいぶん台詞が多かったけど、これで1時間40分なのだから、昨今の長時間芝居の人たちは見習ってほしい。
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