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2020年2月16日 (日)

「子午線の祀り」の詩的な語り

2021年に上演が決定したそうです。前回その壮大さを堪能した身としてぜひまた観たい。単に平家物語を現代劇にしただけならそうはならなくて、あの潮の流れを天体の運行から説明する語りが付くことで、壮大さが出てくるんですよね。

ということでその壮大さのおすそ分けを。

晴れた夜空を見上げると、無数の星々をちりばめた真暗な天球が、あなたを中心に広々とドームのようにひろがっている。ドームのような天球の半径は無限に大きく、あなたに見えるどの星までの距離よりも天球の半径は大きい。

地球の中心から延びる一本の直線が、地表の一点に立って空を見上げるあなたの足の裏から頭へ突きぬけてどこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の頂き、天頂。

地球を南極から北極へ突き通る地軸の延長線がどこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の北極。

遠く地平の北から大空へ昇って遥かに天の北極をかすめ遥かに天頂をよぎって遠く地平の南へ降る無限の一線を、仰いで大宇宙の虚空に描きたまえ。

大空に跨って眼には見えぬその天の子午線が虚空に描く大円を三八万四四〇〇キロのかなた、角速度毎時一四度三〇分で月がいま通過するとき月の引力は、あなたの足の裏がいま踏む地表に最も強く作用する。

そのときその足の裏の踏む地表がもし海面であれば、あたりの水はその地点へ向かって引き寄せられやがて盛り上り、やがてみなぎりわたって満々とひろがりひろがる満ち潮の海面に、あなたはすっくと立っている。

もうひとつありますね。

月の二・二分の一の力しかない太陽の引力のことを別にすれば、
誰もがプトレマイオスの天動説を信じてコペルニクスの地動説を誰も信じていなかった十六世紀西欧の劇詩人がいったように、
月の力で大海原は息づき、
海に向かって月の力に従うなということは無駄であり、
つまり潮の満ち干を司るもの、それは今でも月の女神である。
すなわち大空に跨って眼には見えぬ天の子午線を月の女神が音もなく過って行くと、
その真下で海は息づき始めようとする。
だが海水という液体がその形を変えようとするとき流体の内部で働く抵抗のゆえに、
また海を囲む陸地が作るさまざまに複雑な地形との関係において、
子午線を過って行く月を見上げながら海は、
なかなかすぐにその引力に応じて動き出そうとしない。
しかしやがてその地点に向かってあたりの海水は引き寄せられて盛り上がり、
引き寄せられる海水がもし狭い海峡を通るのであれば、
海水は激しい潮流となってその海峡をこちらへ走りぬけてこねばならぬ。
細長い日本列島の上に広々とひろがる天球を月が東から西へ、
角速度毎時一四度三〇分で東から西へ移動して行くにつれて、
さっき海峡を東へ走りぬけた潮は次には西へ流れ、
一日に二度めぐってくる潮の満ち干につれて、
一日に二度潮は海峡を東へ走りぬけ、
一日に二度潮は海峡を西へ走りぬける。

芝居では語り手が読みますが、台詞とかト書きというより散文詩と呼んだほうがしっくりくる文章です。こういうソリッドな文章が書けるようになりたいですが、何に注意したらこういう文章になるんでしょう。

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