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2020年3月 2日 (月)

新型コロナウィルス騒動について野田秀樹の意見書と専門家会議の提言と医者が説明する封じ込め可否の状況

まったく間の悪いことに、野田地図の「One Green Bottle」が2月21日から2月24日まで台湾で、2月29日から3月8日までニューヨークで、海外公演中のため、東京芸術劇場の芸術監督にして国内不在です。副館長もいることだし、野田秀樹の体力が持つ限りは意思疎通は図られていると思いますが、なにぶん現地にいないことのハンデはある。

公演継続を支持する意見書を出しましたけど、芸術監督が芸術を支持する側の意見を表面するのはごく自然な話で、これを非難するものではありません。「意見書 公演中止で本当に良いのか」をこちらにも記録しておきます。3月1日付です。

コロナウィルス感染症対策による公演自粛の要請を受け、一演劇人として劇場公演の継続を望む意見表明をいたします。感染症の専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、予定される公演は実施されるべきと考えます。演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術です。スポーツイベントのように無観客で成り立つわけではありません。ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは「演劇の死」を意味しかねません。もちろん、感染症が撲滅されるべきであることには何の異議申し立てするつもりはありません。けれども劇場閉鎖の悪しき前例をつくってはなりません。現在、この困難な状況でも懸命に上演を目指している演劇人に対して、「身勝手な芸術家たち」という風評が出回ることを危惧します。公演収入で生計をたてる多くの舞台関係者にも思いをいたしてください。劇場公演の中止は、考えうる限りの手を尽くした上での、最後の最後の苦渋の決断であるべきです。「いかなる困難な時期であっても、劇場は継続されねばなりません。」使い古された言葉ではありますが、ゆえに、劇場の真髄をついた言葉かと思います

野田秀樹

「一演劇人として」の表明で、掲載場所が野田地図のサイトというのはややつらい。蜷川幸雄亡き現在、演劇界を代表する一人なのは誰もが認めるところですが、東京芸術劇場は自分が脚本を提供した芝居を含め主催公演をすでに中止にして、貸館の公演は何とか上演できるように調整している状態です。まぜっかえすようなコメントをうかつに載せるわけにもいかず、とても演劇的な葛藤がある、微妙な立場です。その立場でもできる手段を使って意見表明をしたことには敬意を表します。

一方政府の専門家会議では、ライブハウスやクラブなど閉鎖された人が密集する場所を避けるよう求めました。朝日新聞「『若者が感染拡大、密集地避けて』専門家会議が呼びかけ」2020年3月2日 17時36分のタイムスタンプです。

 新型コロナウイルスの感染が国内で広がっていることを受け、政府の専門家会議(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)は2日、10~30代の若者が感染を拡大させているとして、ライブハウスやクラブなど閉鎖された人が密集する場所を避けるよう求めた。北海道での感染拡大や大阪市のライブハウスでの小規模な患者集団(クラスター)の発生をふまえた。

 専門家会議は、厚生労働省のクラスター対策班が調査した、北海道などでの事例を分析した。その結果、8割は他の人にうつしていないことがわかった。だが、ライブハウスやスポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘(じゃんそう)など屋内の閉鎖的な空間で、一定時間を近い距離で過ごした場合にクラスターが発生する可能性があるとした。

 若者は感染しても症状が軽い人が多く、感染に気づかないまま、重症化しやすい高齢者らに感染させている可能性があると指摘。北海道でも、都市部の感染リスクの高い場所に集まった若者が、地方に移動し全域に感染が拡大したと分析している。

 専門家会議は「現時点で適切な行動へ切り替えれば、新たな感染者数は減少していくと見込まれる」としている。このため、「全国の若者の皆さんへのお願い」として、「人が集まる風通しの悪い場所を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます」と10~30代の若者に対して呼びかけた。(北林晃治)

専門家会議の議事録がどこに載るのか不明ですが、厚生労働省のサイトには3月1日付で元になったと思われる情報をまとめた1枚資料が掲載されています。リンク先はPDFなので開くときに不便があったらご容赦。

なんやねん人をバイキンみたいに、そこまでいうなら政府から正式に止めろと言えや、と当事者なら訴えたいところだろうと推察しますが、正式に止めろと言ったら補償問題が出てきますので、うかつに言えないのでしょう。

そして厚生労働省と専門家会議の言っていることがどれだけ重大なのか、判断しかねる状況で、海外の記事を元に説明しているブログがあったので紹介します。たまに芝居の感想も書いている人で、こういうサイトを拾ってくれていたfringeの功績は大きい。「現状の新型コロナウイルスの封じ込め策はどの程度有効なのか?」ブログは3月2日付です。R0に関する説明が載っており、そんなに長くないのでリンク先からぜひご一読を。

the Lancet Global Health誌に2020年2月28日ウェブ掲載された、
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染を、
症状が出現した時点で隔離するという対策で、
どの程度封じ込めが可能かを、
統計的に考察した論文です。
(中略)
ここでは封じ込めの成功は、
初発の患者が見付かってから、
12から16週で新規の患者が発生しなくなる、
ということで定義しています。
この場合の患者というのは、
症状が出現している場合のことです。
そして、5000例以上の患者が特定地域で集積した時には、
この方法による封じ込めは、
最早不可能と想定されます。
(中略)
上記文献の推計では、
週に25から100人の症状のある感染者が出現するのを、
感染のピークとして設定していますが、
中国、イタリア、韓国のケースは、
それを遙かに超えているので、
それだけでもう通常の方法による封じ込めは不可能、
と言って良い訳です。

これはですね、
日本でもかなり難しい局面になっているのですね。

地域によっては数例の患者さんが見付かり、
そこからまた数例が、という段階であれば、
しっかりとした接触者の追跡と隔離を行うことにより、
感染の封じ込めは可能と考えられますが、
北海道のケースはかなり厳しい局面になっていると思いますし、
愛知、東京、神奈川もギリギリのところに来ていると思います。
一方で和歌山は2月29日の新規感染者はなく、
感染者13名のうち8名が回復退院していますから、
封じ込めに成功した可能性が高いですよね。(2月29日現在)
こうした成功例をメディアは報道しませんが、
クラスター化しなければ、
適切な初動で封じ込めが可能だ、
ということを示した意義は大きいと思います。

この2週間が最も重要というのは、
そうした意味で、
この時期において、
現在行われている封じ込め策が、
失敗に終わるか成功に向かうかが、
ほぼ決まると言って良いのです。
(後略)

この1-2週間が極めて重要だからと学校を強引に臨時休業するよう「要請」した理由の裏づけですね。

ライブハウスで感染した事例が報告されましたが、今のところは感染源になったライブハウスも「それで感染するんだ」という扱いで済んでいます。これの潮目がどこで変わるかと考えたら、感染が広まってパンデミックになってあちこちで通常の医療が受けられなくなったときですね。このまま収まればめでたいですが、広まって、目立った数の重傷患者が出てきて、その影響で自分や自分の周囲の医療環境が悪化して、何かあっても受診もままならないとなったときに、「あれだけ言っていたのに」という扱いが出てくるはずです。

いままでいろいろな記事や発表を追うだけ追って、意見を決めかねていましたけど、上記ブログの紹介記事を読んでようやく納得がいきました。金の都合がつく、あるいは諦めがつく金額の範囲なら止めるのが最善というのが3月2日21時時点の私の意見です。

ただそれは単なる観客で当事者でないから言えることです。以前、酔狂で芝居の上演費用を計算したときにはざっと300万円でした。グリングの「ストリップ」で出てきた「主人公である主宰者が逃げ出して公演中止になり、付合っていたヒロインが『肩代わりした借金の額が300万円以上あった』」という台詞に納得がいった経験があるので、うっかり諦めろとは上演団体にはいいづらい。これは最小ラインで、上には上がいる。それにどんな分野の公演を対象にするのか、いつからいつまでの分を補償するのか、今後「要請」期間が延びたらどうするのか、先に中止を決めた団体の扱いはどうするのか、来日中止公演の扱いはどうするのか、など、もう眼をつぶって、えいっ、で決めないとどうしようもないことばかりなので政府にもいいづらい。

難しい問題です。金があれば円満に解決する問題が世の中には多い。多すぎる。

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