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2020年7月15日 (水)

抗体検査に意味はないと思ったら歌舞伎までやっているし文化庁の補助金対象にもなっていた

クラスター感染が発生して有名になっている舞台ですが、主催者側の発表に「7月4日に1名の方から申告をいただきましたが、抗体検査の実施の結果、陰性であったことと、検温の結果がガイドラインの規定の範囲内であったことから、ご本人とご相談の上、ご出演となりました。」という記載があり、「ただ、抗体検査は今まさに感染しているかどうかの判定に使えるのでしたっけ。まあPCR検査の結果で翌日まで待つのもつらいところではあります。」とそのときはコメントしました。

なんでそんなコメントができるのか、どこで情報を見たのかと探したところ、とりあえずここは誰が見ても大丈夫そうな忽那賢志「抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?」で読んだのだと思います。

しかし、この図を見てお分かりのとおり発症して間もなくは抗体を測定しても検出されない方が多いので、新型コロナの抗体検査が陰性であっても発症して2週未満であれば「新型コロナではないとは言えない」ということになります。
(中略)
つまり、今感染しているかどうかを知るためにはPCR検査と抗原検査が向いており、過去に感染していたかどうかを知るためには抗体検査が適しているということになります。
(中略)
では抗体検査はどのように使用するのが適切なのでしょうか。

「抗体検査」東京の献血で0.6%陽性、結果にばらつき

例えば、こちらのニュースでは東京で行われた献血の検体を用いて抗体検査をしたところ0.6%が陽性であったというものです。

このように、PCR検査などで確定診断された患者以外に、診断されていない(主に無症状~軽症の)症例がどれくらいあるのかを把握する上では長期間陽性が続く抗体検査が適しています。

この結果をそのまま解釈すれば、東京都の人口927万人のうち0.6%である55620人が新型コロナに感染していたということになり、実際に都内で診断されているよりも約10倍の感染者がいるということになります。

このように、抗体検査は個人個人の診断というよりも、感染症の全体像を把握し、公衆衛生上の対策に役立てることができます。

しかし、抗体検査の結果の解釈には注意が必要です。

さきほど、東京都の人口927万人のうち0.6%である55620人が新型コロナに感染していたということになり、実際に都内で診断されているよりも約10倍の感染者がいるということになる、と述べました。

しかし、抗体検査キットについては現時点ではどれくらい正確なのかに関する情報がまだ十分ではありません。

公演前や公演中は、いままさに感染しているかを調べたいので、抗体検査は不適切です。せめてこれが陽性だったら、何週間か前に感染したことがわかりますが、陰性だとそれすらわかりません。

ちなみに、一度かかったら抗体がずっと維持されるかというとそんなこともありません。日刊スポーツ「コロナ感染ふあんくん抗体消滅を発表『急に不安に』」です。

ふあんくんは3月28日に39・6度の高熱を発し、PCR検査によって新型コロナウイルス陽性と判定され隔離入院した。軽症のため1週間でホテルに移動し、4月18日にPCR検査で2度目の陰性となり退院した。

退院後、5月22日に抗体検査を受け抗体保持を確認していたが、6月30日に簡易検査キットによる検査で陰性となった。11日の医師による検査でも抗体の消失が確認された。

検査キットで2回連続ハズレを引いたんじゃないのと言われるとその可能性もわずかに残っていますが、まあ、そう言われたらここから先は読んでも無駄です。

とりあえず読んでくれる人に向けて続けますが、その適切でない抗体検査を歌舞伎でもやるそうです。テレビ朝日「『八月花形歌舞伎』関係者全ての抗体検査実施」より。

 約5カ月ぶりの興行となる歌舞伎座8月公演「八月花形歌舞伎」の製作発表記者会見が13日、東京・中央区の歌舞伎座で行われ、松竹の安孫子正副社長が再開への取り組みについて説明した。
(中略)
さらに「出演者だけでなく歌舞伎座のスタッフや従業員など全ての関係者に抗体検査を実施し、状況を判断した上で公演を行う」と説明。対象は約500人で、すでに1回目の抗体検査はクリア。現在、2回目の検査を実施中で、結果は2、3日中に判明するという。また同興行の採算は非常に厳しい状況というが、「歌舞伎、演劇の火を消してはいけないので、こういう時こそ収支が万全ではなくても、やることによって良い方向へ頑張っていきたい」と語った。。

抗体検査に間違ったイメージを持っているのか、開催しないと干上がるからとりあえずそれっぽい検査しておけば世の中は納得するだろうと見切っての確信犯なのか、判断に迷うところです。どちらかというと後者のほうが救いがあります。

ここで話が文化庁に飛びます。予算が取れたようで、「文化庁令和2年度第2次補正予算事業 文化芸術活動の継続支援事業」を募集しています(募集案内のPDF)。関係者にとってはありがたい企画で、第1次募集が「令和2年7月10日~7月31日」とこれからですが、

本補助事業では、令和2年2月26日から令和2年10月31日までの事業に発生した経費のみが補助対象経費として認められます。ただし、団体が行うトライアル公演については、事業実施期間を令和2年12月6日まで延長することを可能とします。

という記載があるので、今やっている公演もさかのぼって対象になります。その補助対象になる経費に、以下の記載があります(募集案内の16ページ)。

◎公演前後の会場内除菌作業、PCR検査・抗体検査費、その他事業を行うにあたり第三者と締結した請負契約若しくは委託契約(印刷製本、舞台装置等の運搬等を外注する場合)への支払い等

抗体検査の話がいつごろから話題になったかは把握しきれませんが、公演が続いたり中止したりしていた3月はPCR検査が受けられないことが話題で、抗体検査の話はほとんど出ていなかったのではないかと思います。そうすると、7月以降に再開となる公演で抗体検査を実施することを想定しているように読めます。

これから察すると、どうも演劇関係者は主催者も文化庁も抗体検査が有効であると考えているように見えます。繰返しますが、上演団体に必要なのは公演を続行していいかを決めるために「今まさに感染しているかどうかを判定するための方法のはずです。文化庁の補助対象になっていると「抗体検査も有効なのか」と誤解を生むので、対象から外したほうがいいのではないでしょうか。

それでもなお抗体検査を受けたいケースがあったら誰か教えてください。

<2020年7月16日(木)追記>

文化庁の補助対象から抗体検査の文言が外れました。7月15日付で「『募集案内』の修正について(PDF)」が掲載されました。修正後は以下のようになっています。

◎公演前後の会場内除菌作業、PCR検査等の新型コロナウイルス感染症関係検査費用、その他事業を行うにあたり第三者と締結した請負契約若しくは委託契約(印刷製本、舞台装置等の運搬等を外注する場合)への支払い等

理由についても詳細に記載してあります。

○本事業では、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに即した取組に係る経費として、各ガイドラインに直接記載のある取組のほか、関係者が独自に創意工夫しながら行う感染拡大予防の取組も幅広く対象とすることとしています。
○現在、文化芸術関係者において、公演等を行う際に出演者等にPCR検査を行う事例があり、これに係る経費も対象と整理しています。また、これまで自費でPCR検査を受けるに当たり、前もって抗体検査が行われていた場合があったという実態を踏まえ、これに係る経費も対象とするという趣旨で「PCR検査・抗体検査費」と記載しておりました。
○一方、これまでのところ、新型コロナウイルスの抗体検査を用いて現在の感染の有無を診断できるとの十分な医学的な知見は確立しておらず、国内で診断薬としての薬事承認を得た抗体検査はありません。
○この点、「PCR検査・抗体検査費」の記載については、抗体検査があたかもPCR検査と同様、現在の感染の有無を診断できる検査であるという誤認を与えるおそれがありましたことから、その点お詫び申し上げるとともに、上記のように募集案内を修正させていただきます。なにとぞ御承知くださいますようよろしくお願いします。
なお,以下関係資料のQ&Aも更新していますのであわせてご覧いただきますようお願いします。

<参考>厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症に関する検査について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00132.html

厚生労働省のリンク先は、冒頭で私が引用した内容と同等なので、引用は省略します。

これは文化庁の現場の実務担当者にはやっかいな問題です。抗体検査が適切でないことは把握している。だけど、実際の文化芸術関係者にはPCR検査の前に抗体検査も行なうことが広まっている。それを、不適切として補助対象外にするか、現状広まってしまって出費を強いられているならそれも込みで補助するか。私が修正を読んで受けた印象は「黙認して補助する、でももっと騒ぎが大きくなったら拒否できるよう準備しておく」です。

霞が関文学と言うなかれ。普段から助成金その他で補助する側の文化庁が、継続支援事業として予算を確保したのは支援したいからで、担当者としてそういう思いが強いほど、対象者の実費の負担を減らせるようにしたいと考えるのは自然なことです。

今回の件は、影響範囲が文化庁だけでなく厚生労働省も絡むような範囲になるので、抗体検査は対象外です、まで踏みこんで修正してもよかったと個人的には思います。ただ、大は抗体検査に関するあれこれとか、小は最初に起草した人の面子とか、きっと厚生労働省だけでは済まないようなことがたくさんあって、こういう落としどころになったのだと推測します。

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