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2020年8月30日 (日)

今後は芝居を観に行く動機をいかに見つけるか

9月と10月のメモをまとめながら感じたことです。

今回、できるだけ今までと同じ目線でまとめました。以前なら「観られるものなら観たいけど金と時間と体力は有限なので縁がなかった」と考えられたラインナップです。ところが今回は本当に観たいか自問して、「いや実はそんなに観たくない」と自答していました。

観劇習慣が抜けてきたとか、「赤鬼」で今までと違うことが体験できていろいろ考えたとか、やっぱり感染が怖いとか、いろいろ理由はつけられます。ですが、何より「そこまで面白そうに思えない」のが一番です。何て表現するのがいいんでしょう、芝居の魔法が解けたというか。

新型コロナウィルス騒動でいろいろ日常の環境と行動が影響を受けて嗜好にも影響があったのと、一連の騒動で芝居業界に対する失望を覚えたのと、両方ありますが、多分それだけではありません。

これだけ世界中が影響を受けているところに、中止や延期などのスケジュール変更はあるにしても、なぜ今まで通り芝居が上演されるのか。消毒だマスクだ1席飛ばしだと製作の苦労はありますが、数年前から企画されていたというだけでそのまま上演するなら企画が現実に負けます。

別に演目を変えろとか、新型コロナウィルスに関連する演出を入れろとか言うのではありません。このご時世で芝居を上演するにあたって、新型コロナウィルスを一時でも忘れられるような娯楽を提供しますとか、新型コロナウィルスの世の中でも戦っていけるように背中を押す芝居を作りますとか、その上演団体の新型コロナウィルスに対する向きあいかたが見えないと、上演案内を見ても輝いてくれません。そこを飛ばして芸術です文化です、紅旗征戎と新型コロナウィルスは我が事ではありませんと無視されると、芸能の魔法が生まれなくなります。以前紹介した横内謙介の覚悟は今も有効であり、これに対する回答を出した団体は寡聞にしてまだ知りません。

そして横内謙介の覚悟は客側にも問われています。「なぜわざわざ劇場に芝居を観に行くのか」と自問して、名残惜しい演目をあと何本か観ておきたい以上の自答ができないのであれば、劇場からおのずと足は遠くなります。そして今のところ私はまだそれ以上の回答を持合せていません。

以前は「新型コロナウィルス後に芝居を上演するようになってもすぐには観に行けない」と書きましたが、今は「芝居を観に行く動機が見つけられなくなっている」状態です。

2020年9月10月のメモ

だいぶ数が戻ってきました。と書いたら休漁期後の魚を想像してしまいまいした。大半は以前から企画されていたものですけど。

・松竹製作「鷺娘」2020/09/01-09/26@歌舞伎座:4部制の九月歌舞伎の第四部に玉三郎が一人で踊るので少しだけ観るのにちょうどいいかも

・シス・カンパニー企画製作「わたしの耳」2020/09/09-09/18@新国立劇場小劇場:ピーター・シェーファーの3人芝居連作前半でこれはマギー演出

・ケムリ研究室「ベイジルタウンの女神」2020/09/13-09/27@世田谷パブリックシアター:緒川たまき主催のユニット1本目でKERA脚本演出

・シス・カンパニー企画製作「あなたの目」2020/09/22-10/01@新国立劇場小劇場:ピーター・シェーファーの3人芝居連作後半でこれは寺十吾演出

・Q「バッコスの信女 - ホルスタインの雌」2020/09/24-09/27@神奈川芸術劇場大スタジオ:市原佐都子の岸田戯曲賞受賞作だけど初演があいちトリエンナーレ2019なので首都圏初上演、であっているかな

・五反田団「いきしたい」2020/09/25-10/05@こまばアゴラ劇場:「コロナに全く関係のない個人的な出来事」だそうです

・劇団青年座「ブルーストッキングの女たち」2020/09/26-10/04@東京芸術劇場シアターウエスト:宮本研のわりと上演される1本だから本当は観たいのだけど

・SerialNumber「All My Sons」2020/10/01-10/11@シアタートラム:アメリカを舞台にした重苦しい家族を描いたアーサー・ミラーのデビュー作

・新国立劇場主催「リチャード二世」2020/10/02-10/25@新国立劇場中劇場:新国立劇場のシェイクスピア王朝シリーズの完結編

・パルコプロデュース「獣道一直線!!!」 2020/10/06-11/01@PARCO劇場:ねずみの三銃士企画の4本目で、宮藤官九郎脚本と河原雅彦演出も継続

・青年団プロデュース「馬留徳三郎の一日」2020/10/07-10/11@座・高円寺1:4月に上演予定で中止になった演出だけ平田オリザで脚本は髙山さなえの1本

・東京芸術劇場企画制作「真夏の夜の夢」2020/10/15-11/01@東京芸術劇場プレイハウス:シェイクスピアを野田秀樹が潤色して海外の演出家日本の役者で演じるややこしい1本

・CHAiroiPLIN「三文オペラ」2020/10/17-10/25@三鷹市芸術文化センター星のホール:再演らしいですが初演の写真を観た瞬間に正解度高いと感じたのでピックアップ

・木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」2020/10/22-10/26@あうるすぽっと:以前当日券に挑戦して目の前で売切れた1本

・Bunkamura企画製作「フリムンシスターズ」2020/10/24-11/23@Bunkamuraシアターコクーン:松尾スズキの新作ミュージカルは長澤まさみと秋山菜津子と阿部サダヲを中心に

・新国立劇場演劇研修所「尺には尺を」2020/10/27-11/01@新国立劇場小劇場:まだ観たことがないシェイクスピアを「子供のためのシェイクスピア・シリーズ」の山崎清介演出で

とりあえず書いてみましたが、ちょっと感覚が変わってきたので別エントリーに書きます。

2020年8月25日 (火)

接触確認アプリをインストールしていたら開幕しても電源オン、機内モードオン、Bluetoothオン、音は鳴らないように

この前「赤鬼」を観に行ったときに、接触確認アプリをインストールしているけど電源を切ったものか、と書きました。そうしたら、新国立劇場は電源を入れたままにするようアナウンスしていました。「新国立劇場における新型コロナウイルス感染拡大予防への取り組みと主催公演ご来場の皆様へのお願い」に書いてあります。

〇新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」のインストール、ご利用のご協力をお願いします。

厚生労働省が提供しているアプリをご利用いただきますと、陽性者と接触した可能性が分かることで、検査の受診など保健所のサポートを早く受けることができます。詳しくは厚生労働省のウェブサイト別ウィンドウで開きますでご確認ください。
なお、ご観劇中は、スマートフォンの電源は切らずに、音、振動が出ないように設定をお願いいたします。また、劇場設備に障害が出る恐れがあるため、WiFiをOFFにしてくださいますようお願いいたします。

以前調べたときには記載がなかったので、後から追加したようです。

「COCOA」は近くのスマホとBluetooth通信で接触を確認するので、電源を切ったら接触確認できないし、でも電源を入れていたらいろいろな通信でスマホが鳴るかもしれないし、どうするのかと思ったら、Bluetoothだけオンにしておく方法は用意されていました。検索すれば出てきますけど、とりあえず検索して出てきた「機内モードのままWi-FiとBluetoothを使う方法 iPhone、Android対応版」のリンクを載せておきます。どこでどんな通信が動くのかわからないので、機内モードを有効にして全部の通信を無効にしてから、Bluetoothだけ有効にするのがよさそうです。

これから芝居見物に出かける人は「COCOA」をインストールの上、事前にこの操作に慣れておきましょう。そして通信と関係なく音が鳴る可能性もつぶすために、音量もゼロにしてうっかり鳴らないようにしましょう。

これを推し進めていくと「携帯電話、スマートフォン、時計のアラームなど音の出る機器は、電源からお切りください」のアナウンスを変更することになりますが、これをどうアナウンスにするかがセンスなので、上演側は頑張ってください。「COCOA」をインストールしたスマートフォンは電源入れたままにする、だけどBluetoothだけを有効にする、を上手に説明する定番のアナウンスを生みだせるよう頑張ってください。

日本文化はフィルタリングシステムという話

11年前の掲載ですけど佐々木俊尚「個人の狂気を見い出すフィルタリングシステム」という記事を見つけました。業界人には知られた話なのでしょうか。読んでとても関心したので、大半ですけど引用します。

 世界を代表する三つの国の映画産業――アメリカ映画とフランス映画、そして日本映画の違いって何だろうか? そういう問題提起がある。

 観点はさまざまにあるから単純化しすぎるのは危険かもしれないが、こういうひとつの切り口がある。「アメリカ映画は物語を描き、フランス映画は人間関係を描き、日本映画は風景を描く」。ハリウッド映画は完璧なプロットの世界で、物語という構造を徹底的に鍛え抜いて作り上げ、導入部からラストシーンまで破綻なく一本道を走り抜けられるように構成されている。

 フランス映画の中心的なテーマは、関係性だ。夫婦、父と子、男と愛人、友人。そこに生まれる愛惜と憎悪をともに描くことによって、人間社会の重層性を浮かび上がらせる。

 日本映画は、風景を描く。自然の風景という意味ではない。目の前に起きているさまざまな社会問題や人間関係の葛藤、他人の苦しみ、さらには自分の痛み。われわれにとってはそれらはすべて「風景」だ。どんなに深く関わろうとしても、しかしどうしてもコミットしきれない所与のものとして、われわれのまわりの事象はそこにある。だから日本映画には、向こう側に突き抜けられないことによる透明な悲しみが漂っていて、それがある種の幽玄的な新鮮な感覚として欧米人に受け入れられている。
(中略)
 しかし日本は違う。日本にも縄文時代に村落をゼロから作った時もあっただろうし、戦国時代や明治維新のような内乱の時代もあった。だがたいていの人々にとって、権力装置は自分でゼロから力を合わせて作り上げるものでなければ、血で血を争う暗闘の果てにつかんだ血塗れた旗でもない。私たちにとって権力というのは、「世間」「空気」のような言葉に代表されるなんだかわからない軟体動物のようなベタベタとした空間で、しかしこの空間はわれわれを絡めとって離してくれない。いったい何が敵なのかということさえ可視化されていない。

 これは言ってみれば、最強の権力構造でもある。この暴力的な権力構造は所与のものとして私たちの前に立ちはだかっていて、私たちは社会に直接向き合うことさえ許されてこなかった。

 人々は決して、その権力構造を作る側には立てない。権力構造はつねにそこに存在しているのであって、民衆はその構造に組み込まれる「お客さん」にすぎない。そういう社会に生きるということは、だからそこにひとつのあきらめ感を抱えながら生きていくということだ。もちろんそういう構造から突き抜けて生きていける一部の人はいるし、そのような人は尊敬されるかもしれないけれど、しかし多くの人にとってはそうではない。
(中略)
 こういう日本という国で生まれる文化は、軟弱だ。軟弱で、冷笑的で、一歩つねに傍観者的に引いている。でも軟弱であるがゆえの洗練はすばらしく、その洗練のゆえに日本文化は世界の中で尊敬され、賞賛されてきた。手先の器用さは、構造というビッグビジネスに立ち向かえないがゆえのチマチマした自己憐憫でしかなかったのかもしれないが、しかしそれが「俺たちが社会を作るぜ」ビッグ構造文化には持ち得ない、極端な洗練を生み出したのだ。だからわれわれは、すぐれて洗練された器用な文化を生み出しながらも、でもつねに冷笑的で傍観者的な立ち位置を保ち続けている。

 もっとぶっちゃけた極論を言えば、こういうことだ――どうせ構造をつくるような雄々しいことはできないんだから、暇つぶしにいろんなことをやってみようよ。

 そうやって日本の世間には権力側には行けないバカと暇人があふれ、枕草子を書いたり源氏物語を書いたり、歌舞伎や浄瑠璃や私小説を生み出してきたのだ。

 もちろんそうやってバカと暇人の膨大な集合体のなから、歴史に名の残るような芸術を生み出せた人はごくわずかである。たいていのバカと暇人は、先駆者の作ったコンテンツをただ消費するだけだったり、すばらしいコンテンツを揶揄して皮肉るだけだったり、バカだ荒らしだと批判されながら、衆愚の道をつねにまっしぐらに進んでいった。日本人が衆愚化しているのなんて別にいまに始まったことではない。江戸の昔から、歌舞伎オタクに身を持ち崩して財産を失い、乞食になって死んじゃうようなバカはいくらでもいたのである。

 しかし日本文化はそういうノイズに塗れた中から、秀逸なひとにぎりのクリエイターを生み出してきた。そういうフィリタリングシステムを作り上げてきたのである。全員が力をそろえてひとつの構造を作り上げるのではなく、バカや暇人が好き勝手なことをやってただコンテンツ消費をしているだけの中から、フィルタリングしてわずかひとにぎりの天才クリエイターを生み出すというただそれだけのことを、日本文化は綿々とやってきたのだ。

 日本の文化は、つねに社会のメインストリームとは外れたところから生み出されてきた。圧倒的な男の漢文社会の中から生まれた枕草子や源氏物語がそうだったし、武家社会の中で生まれた町人文化である歌舞伎や浄瑠璃がそうだったし、明治維新の富国強兵の中から生まれた近代に批判的な目を向けた夏目漱石もそうだった。どうでもいい個人的な話を延々と描き続けた私小説なんて、その最たるものである。

 だから日本では、社会のメインストリームと最も優秀なカルチャーはつねに一体化しないのである。つまりは古代から現代まで一貫して、日本の文化を担う中心軸はサブカルチャーだったのだ。ここに来て急にニコニコ動画やアニメのようなサブカルチャーが「日本の誇るコンテンツで海外に輸出しなければ」と言われて変に気恥ずかしい思いになってしまうのは、そういう歴史的背景がある。しょせんサブカルなんだから、気持ち悪いからそっちから歩み寄って来ないでよ……というわけだ。
(中略)
 前に日本テレビで「電波少年」を作ったプロデューサーの土屋敏男さんとあるシンポジウムで同席していたとき、彼がこう言っていたのを思い出す。「ぼくの仕事は、いかにすごい『個人の狂気』を見つけ出すかということなんです」。バカや暇人と、すぐれたクリエイターの間にある境界は、ある種の「狂気」ということなのだろう。そういう狂気こそがバカと暇人文化における「玉」なのである。

 だから日本の優秀な雑誌編集者やテレビプロデューサーは、大衆文化のプラットフォームを作る側にたっているのにもかかわらず、みんなマーケティングがあまり好きではない。マーケティングではなく、個人の狂気たる自分の生理的直感によって勝負することが最上だと考えているのだ。
(後略)

「だから日本では、社会のメインストリームと最も優秀なカルチャーはつねに一体化しないのである」というのが、とてもしっくりきました。私は「不要不急で無駄だからこそ芝居は文化たりうる」と書きましたがそれは日本の話で、海外だとメインストリームになりうるということ、そしてアメリカとヨーロッパとではまた違うこと(アジアやアフリカや南米の各国でも違うのでしょう)を、はっきりした言葉で読めて少し頭が整理できました。

クラシックやバレエの世界だとがっちり作られた育成システムがありますが、あれはやっぱり欧米風システムですよね。富国強兵以来、日本でもそういうシステムを軍と学校を中心に育ててきましたが、やっぱり日本は一子相伝、盗んで覚えるが基本だと思います。確立された育成システムのない、売れたものが支持されて残っていく日本の演劇界というのは、ある意味もっとも日本らしい業界とも言えます。

原作者が逮捕されて舞台が舞台の舞台化が流れた話

そういえばメモしていませんでした。朝日新聞デジタル「原作者逮捕の『アクタージュ』 ジャンプで連載打ち切り」より。

 マンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の「アクタージュ act-age」(原作・マツキタツヤ、漫画・宇佐崎しろ)が、11日発売号で連載を終了する。10日、同誌の公式サイトで編集部が発表した。警視庁は8日、女子中学生の胸を触ったとして、原作者の松木達哉容疑者を強制わいせつ容疑で逮捕し、発表していた。

 編集部の発表によると、事実確認や作画担当の宇佐崎氏と協議を経て、連載終了を決めたという。「事件の内容と、『週刊少年ジャンプ』の社会的責任の大きさを深刻に受け止め、このような決断に至りました」としている。

 アクタージュは、俳優を目指す女子高生が才能を開花させる物語。2018年に連載が始まり、コミックが12巻まで発売されている。ホリプロなどが2022年に舞台化を予定していたが、逮捕の報道を受け、主演のオーディションサイトでは、「事実関係を確認中で、オーディション・舞台の今後に関して、改めて報告する」と説明している。

マンガの存在すら知りませんでしたが、役者が主人公のマンガは久しぶりらしく、評判もなかなかよかったようです。そこでこのマンガを原作にホリプロが2022年に舞台化、それに合わせてヒロインオーディションもやっていました。が、企画自体が中止になりました。その公式サイトより。

舞台「アクタージュ act-age ~銀河鉄道の夜~」ならびに
ヒロイン「夜凪景」役 オーディション中止のお知らせ

今月8日に『アクタージュ act-age』の原作担当であるマツキタツヤ氏が逮捕された事を重く受けとめ、関係各所とも協議した結果、2022年に開催を予定しておりました
舞台「アクタージュ act-age ~銀河鉄道の夜~」の上演、ならびに現在進行中のヒロイン
「夜凪景」役 オーディション、双方の中止を決定致しました。

弊社としても舞台ならびに本オーディションがこのような形で終えてしまう事は残念でなりません。
応募者の皆様、そして2022年の舞台を楽しみにされていた皆様には心苦しいばかり
ではございますが、ご理解を賜ります様、何卒宜しくお願い申し上げます。

㈱ホリプロ / ㈱ホリプロインターナショナル

グランプリが主演だけでなく「(株)ホリプロインターナショナルとの専属契約」とあるので、昔からこういう流れで発掘から専属契約までもっていくのが得意ですよね日本の芸能界は。「後援 ワーナー ブラザース ジャパン合同会社」とあるので映画化も視野に入っていたと推測されます。

この中でちょっと意外に思ったのが、脚本演出に松井周をもってきたところ。実力は認めるとして商業演劇まで手を広げるのかと意外でした。何しろ青年団演出部ですから。

それで上記公式サイトをもう少し詳しく読んだら、プロデューサーのコメントに「以前に週刊少年ジャンプ掲載の人気漫画『DEATH NOTE』をミュージカル化させていただきました」「その結果、ミュージカル版デスノートには原作を知らない演劇ファンの皆様にも、普段劇場に足を運ぶことがない原作ファンの皆様にもご支持いただき、5年間で3度の上演を重ね、海外でも上演される作品に成長しています」とあり、そういえば栗山民也が演出だったなと思い出しました。あれもホリプロだったかと気が付くと同時に、オーディションも話題作りだけでなく本気だったことがわかりました。

つまり、舞台に向いていそうで話題になりそうだから、くらいのノリでマンガ原作を決めたのではない。海外上演まで育つポテンシャルがマンガ原作にはあるとデスノートでホリプロは実感して、その第2陣として白羽の矢が立ったのがアクタージュだった。ただし役者が演技を考えるマンガであり、よほどきちんとした体制をとらないと駄目な舞台になることも、舞台事業も長いホリプロはわかっていた。そこで、脚本の実力があり、演出もできて、たまに自分も役者として出演するので役者の仕事もわかる人、で大真面目に探した結果、松井周に決まったと推測されます。

よく考えたら平田オリザも小説を映画舞台に提供して演技指導とかしていましたし(こちらも劇中劇は「銀河鉄道の夜」でした)、最近だと青年団では岩井秀人が活動範囲を広げています。それに比べたら商業演劇に進出するくらいはなんてことはない、と言えます。

この件については、まっさきに検索したのが、ホリプロは「ガラスの仮面」も蜷川幸雄演出で舞台化していたよなと確認することで、するともっと昔に松竹が舞台化していて北島マヤを大竹しのぶが演じていて何それ観たい、とか、それよりガラスの仮面はまだ読んでいなくて完結したら読もうと思っているのにいつ完結するの、とかミーハーな先入観から始まったのですが、裏切られました。

公式サイトには逮捕された原作者と松井周との対談も載っています。

松井 そう言っていただけるとほっとします。舞台版のみでの「こんなキャラクターがいたら面白そう」というのを妄想して、
書いてみたい気持ちも確かにありますね。だけど一方で、やっぱり夜凪や阿良也たちをしっかり存在させるのを第一には考えています。
それは原作ファンへのサービス的な意味合いよりも、舞台の上で何かが起き、その何かに劇場の中を支配させるためです。
それには俳優同士がきちんと『アクタージュ』の世界を想像し、はっきりそこに存在していないと難しい。
『アクタージュ』のキャラクターは、みんながそれぞれいろんなアプローチで演劇に関わり、努力や苦労して何とかスキルを身に着けようとしています。それは生き方に繋がっていて、一人一人の生き方がそのまま舞台に表れてくると思うんです。
とても魅力的な人たちだし面白い世界なので、それをできる限り舞台上に存在させたいと思います。

マツキ 「みなさん夜凪景を待っててください」みたいな事ではないんですよね。
理想を頭の中に作って、答え合わせをしに来てほしいわけではない。ああ『アクタージュ』ってこういう見方があったんだとか、松井さんはこういう見方をしたんだとか、もしかしたら僕はこう思っていたのかもしれないとか。
そういう非常に個人的なものを僕は期待しています。
(中略)
マツキ 夜凪役のオーディションだからといって、夜凪を目指してもらう必要はないのかなって。

松井 はい。こういう人が欲しいと想定している人物像は特にありません。その人独特な「この人じゃなければできない感じ」に、いかに僕らが魅せられるか――つい目で追ってしまうとか、声を聞きたくなるとか、こんな動きをしてもらいたいとか、誰かと合わせた時に
こんな反応するんだとか。そういう具体的な人となりがわかった時に、そこから「この人にこんなふうに夜凪を演じてほしいな」という
アイデアが出てきたりするんです。夜凪自身が自分の器を壊していく、今までの自分を越えていくタイプの人じゃないですか。
そういう伸びしろを大事にしたいですね。

マツキ 原作通りに演じてほしいとは、僕も全く思いません。オーディションを受ける方に関しても、松井さんに関してもそうですが、
今回たまたま『アクタージュ』という素材を使って何を表現してくださるのか。僕が見たいのはそこなので。

松井 でも「原作通りに夜凪を演じよう」みたいな人は、そもそもこのオーディションにあまり来ない気がしますよ。

マツキ そうですかね。

松井 だって『アクタージュ』自体に、「そういう事じゃないよ」というメッセージが明確に入っていますから。自分のままでどうその役をうまく捉えるかという話が原作で丁寧に描かれているから、夜凪をやりたい誰々をやりたいではなく、もし自分にその役と似ている部分があるなら引き出してほしい…って応募してくれる人が多いと思います。『アクタージュ』という作品自体が、オーディションの応募者を
ある程度選定している、基準を作っているように感じます。

こういう会話が成立つ点で、仕上がりも結構期待できたのではないかと推測されます。

だけど強制わいせつは駄目です。日本では性犯罪よりまだ人殺しのほうが同情が集まるんじゃないかという感覚なところ、女子高校生が主人公なのに被害者が女子中学生とか目も当てられません。既刊のマンガが出荷停止になったことには賛否両論あるかと思いますが、連載打切りも、まだオーディション段階の舞台企画が流れるのも、致し方なしです。

2020年8月23日 (日)

新型コロナウィルスに関する公演中止のパターンいろいろ

すでに終わってしまった話ですが、今後のためのメモです。全部追いきれないので目についたところだけ。

(1)スタッフが感染して中止になったケース

東宝「ジャージー・ボーイズ イン コンサート」は「ジャージー・ボーイズ」のコンサート版として7月18日から8月5日まで上演+配信予定だった。これが初日前の7月16日に東宝関係者の1人がPCR検査陽性。出演者や接他のスタッフとの接点が少ない部署の人だったけど、7月18日から7月21日までの公演を配信だけに変更。関係者にPCR検査を実施、陰性を確認して、7月22日の休演日をはさんで7月23日から観客を入れての公演になった。

東宝が説明ニュースを削除してしまったので詳細を思い出せないけど、たしか票券管理スタッフと言っていたような記憶がある。このニュースの掲載先が、東宝のサイトではなく、開示情報サービス会社のリンクだったから最初はあっているのかなと怪しんだ記憶がある。

参考サイト。
東宝演劇部お知らせ用Twitter

同じケースが新国立劇場でもあって、演劇ではないけどバレエ「竜宮」の上演中に業務委託者1名の陽性が7月29日に確定。こちらは7月30日、7月31日の公演が中止になって千秋楽が早まった。

参考サイト。
新国立劇場「【重要】新国立劇場に勤務する業務委託者の新型コロナウイルス感染とバレエ『竜宮 りゅうぐう』7月30、31日公演の中止について

ちなみに歌舞伎でも関係者が微熱になった。8月5日の、これは4部制のうち第3部だけが中止になったけど、PCR検査陰性がわかったので、8月6日からは再開した。これは初の4部制を組んで影響を最小限にしようと考えた松竹の方針が、いきなり有効であることが認められたことになる。4部制、役者スタッフも1部のみ参加、の方針は当面継続されそうです。すでに発表されている九月歌舞伎も同様の体制になっている。ひょっとしたら(2)のケースかもしれないけど、わからないのでこちらに入れておく。

参考サイト。
松竹「歌舞伎座『八月花形歌舞伎』 8月5日(水)第三部『吉野山』公演中止のお知らせ
松竹「歌舞伎座『八月花形歌舞伎』 8月6日(木)以降の公演についてのお知らせ

(2)出演者が感染して中止になったケース

日本テレビ企画製作「巌流島」が、そもそも7月31日に明治座初日で9月10日まで、東京、仙台、新潟、金沢、名古屋、高松、大阪、福岡で全国公演予定だった。このうち新型コロナウィルス騒動で東京が8月6日から8月11日に日程変更、仙台、新潟、金沢が中止になっていた。

それで進めていたところ、宮本武蔵役の横浜流星が抗原検査陽性で7月20日から入院。この時点で東京公演の中止が決定された。ところが主演の濃厚接触者として、佐々木小次郎役の伊藤健太郎も、PCR検査は陰性だったが、8月4日まで自宅待機となった。他も推して知るべしということで、7月29日に全公演の中止が発表された。

参考サイト。
ステージナタリー「横浜流星主演の舞台『巌流島』東京公演が中止に
ステージナタリー「横浜流星主演の舞台『巌流島』全公演中止に
スポニチアネックス「伊藤健太郎 PCR検査も陰性 8月4日まで2週間の自宅待機 舞台『巌流島』で横浜流星と共演
公式サイト「舞台『巌流島』新スケジュール決定/チケット払い戻しのお知らせ
公式サイト「舞台『巌流島』東京公演 中止のお知らせ
公式サイト「舞台『巌流島』名古屋公演・高松公演・大阪公演・福岡公演中止のお知らせ

(3)感染対策と演出が両立できずに中止するケース

帝国劇場で9月2日から9月26日まで上演予定だった「DREAM BOYS」は、もともと脚本演出がジャニー喜多川で、ジャニーズが多数出演して1-2年間隔で再演されていた演目。ボクシング場面やフライング演出などを使った公演が多かった。このため「本作の演出上の特性や新型コロナウイルス感染症の現状も鑑みて、今般の状況下では、『DREAM BOYS』の目指す本来の表現ができない」との理由で、公演が中止になった。

東宝「帝劇9月公演『DREAM BOYS』公演中止のお知らせ

(4)関係者が来日できずに公演中止になるケース

ロベール・ルパージュの劇団であるEx Machina「HIROSHIMA、太田川七つの流れ」はカナダからの来日が難しく、7月10日から7月12日までの上演予定だったのを、5月29日で中止決定。これは出演者含めてほとんど海外のケース。

東急文化村「【重要】『HIROSHIMA 太田川七つの流れ』 公演中止およびチケット払い戻し方法のお知らせ

これとは別に、出演者は日本人だけど演出やスタッフの一部(美術と衣装)を海外から招聘するケースだったのが同じBunkamuraの「アンナ・カレーニナ」。8月7日から9月3日までの東京公演、9月10日から9月13日までの京都公演、ともに5月29日で中止決定。

東急文化村「【重要】『アンナ・カレーニナ』 全公演中止およびチケット払い戻し方法のお知らせ

いろいろなケースがありますけど、(2)のケースは稽古すらできないという厳しいケースで、関係者としても無念と思われます。そして(4)のケースは、DISCOVER WORLD THEATREと銘打って海外演出家に力を入れていたシアターコクーンが結構厳しそうと見ていたのですが、9月11日から10月4日までの「十二人の怒れる男」はここまで中止が発表されていないので、どうにかやりくりがついたと推測されます。

2020年8月17日 (月)

東京芸術劇場企画制作「赤鬼」東京芸術劇場シアターイースト

<2020年8月14日(金)夜>

嵐の後に浜辺に打上げられたのは、村から舟で逃げたはずの「あの女」たち。だがせっかく助かったのに「あの女」は身投げしてしまう。一緒に助けられた少し頭の足りない兄が説明する、「あの女」の身投げの理由と赤鬼をめぐる一連の騒動。

チケット購入に手が動かなかったところ、当日券で観た人による購入手続き説明付きの感想をうっかり読んでしまう。読んだ瞬間に、この日に行けば引けるという当日券の神様のお告げが聴こえて、ここまでクラスターになっていないし東京久しぶりだしと理由をつけて出かけて、引いた。

Dチーム。若手もいればそれなりに長くやっているベテランもいた回だったけど、ずいぶん若い芝居に仕上がっていた。よく言えば早口の台詞で勢いがある。反対に言えば緩急に欠ける。ところが、仕上がりはどこからどう見ても「赤鬼」だった。理由を考えると、第一には脚本の良さ。エネルギーを切らさず最後まで走り抜けられればある一定の仕上がりに達することができる、すでに古典の風格がありながら古びない脚本。

演出は昔のタイバージョンとそんなに変わっていない。村人が赤鬼への対処を相談する一場面だけ、村人がマスクをして、マスクをしていない兄に「何でマスクしてないんだよ」とツッコミをいれる演出が入っていた。今の新型コロナウィルス騒動に重ねて、一般人が未知のものを過剰に怖がる様子と自粛警察がはびこる様子とを短時間で表現していた。あの一場面だけでそういう見立てを伝えたのは見事。だけど新型コロナウィルスに直面した演劇業界のことをいろいろ書いた自分は、村人が演劇業界人で、赤鬼が一般人とか行政とか専門家会議の専門家とかでも成立つんじゃね、と思った(公演を自粛してほしいと希望する側に、何でだよ補償しろよドイツだよと演劇業界人が反発するイメージ)。2020年8月現在、すでに市中感染のレベルになって誰でも感染しうる状況で、小規模な公演でも大規模な公演でも実際にクラスターが発生した後で観ると、1か月前に固めたであろう演出がすでに古い。

そういう余計な考えを除けば、やっぱりどこを見ても「赤鬼」なので、久しぶりに観られて満足した。もったいなかったのは、会場の空間が芝居の広がりに対してやや狭い。もう少し広い会場で観たかった。あと、トータル95分だったけど、前に観たときはもう少し長かった記憶がある。新型コロナウィルス対応で、できるだけ短い時間に収める制限を設けたのか、減った客席をダレさせないための判断か。その中で緩急をつけるのもプロの技かもしれないけど、せめてあと5分追加できたらという惜しさは残った。ミズカネ演じる吉田朋弘が通してよかったけど、フクを演じた北浦愛の、最後「フカヒレって、言ったよね」からの気迫も「あの女」感が出ていてよかった。

そしてカーテンコール。四方向挨拶の動きに懐かしさを感じたけど、観客数の少なさを実感したのもここ。1席飛ばしの客席では満席でも拍手がまばらになって、拍手の塊感が出ない。熱演に拍手が届かなかった。

以下メモ。

・囲み舞台で1席飛ばしの自由席。客席とアクティングエリアの間はビニールシート。照明が入れば視界への影響は最小限だったし、(舞台中央だったけど)強い言葉で唾が飛ぶのが見えたので、やっぱりあってよかったと思う。ただ最前列はビニールシートが目の前(前の座席の背もたれまでくらいの距離)なので避けた。あれは好みで選べばいいと思う。

・ロビースタッフや客席誘導スタッフは全員マスクに加えてフェイスガードも装着。当日券購入時には連絡先記載。入場はチケットの番号順に1人ずつ呼んで入場。入場時は順に検温、チケットの目視確認(その後に自分でもぎり)、当日パンフは自分で任意にピックアップ、最後にアルコール消毒。手がふさがるのでアルコール消毒を前に持ってきてほしいけど、チケットを手に持っていたら変わらないか。退場はエリア別に順に退場。

・スマホには接触確認アプリをインストールしているけど、上演中は電源を切った(念のためスタッフに聞いたけど切ってくださいとの返答)。接触時間が長ければ判定になるので、電源入れっぱなしのほうがいいと思うけど、それは無理か。通信機能抑止装置を入れたらBluetoothもダメになるっぽいし。せめてと思って、開演ギリギリまでひっぱってから電源を切ったけど、あれはどうするのが正解なんだ。

<2020年11月21日(土)追記>

接所確認アプリの話は「電源オン、機内モードオン、Bluetoothオン、音は鳴らないように」がよいという結論になりました。

2020年8月 9日 (日)

宝塚のコロナ受難メモ

本家の大劇場が花組「はいからさんが通る」で7月17日から9月5日まで再開。しかも7月中は1日1公演に減らしての対応。

ところが8月2日に関係者の体調不良で当日の公演中止、その晩に8月4日まで中止を決めてPCR検査。結果、感染者が出たので8月16日までの公演中止を決定。

8月7日の発表で、出演者73人スタッフ164人のうち、出演者8人スタッフ4人の計12人の感染が明らかになった。これで県からクラスター発生と認定される。このスタッフは観客に直接対応しないとのことなので、舞台スタッフと推測される。

ここまでが兵庫の話。参考にしたのは以下。
・ステージナタリー「宝塚歌劇団花組『はいからさんが通る』、本日の公演中止
・ステージナタリー「宝塚歌劇団花組『はいからさんが通る』新人公演含め8月4日まで公演中止に
・ステージナタリー「宝塚歌劇団花組『はいからさんが通る』当面の間、公演中止に
・日刊スポーツ「宝塚歌劇団の花組公演で出演者3人ら感染 上演中止
・日刊スポーツ「宝塚歌劇団で新たに7人感染、クラスター発生と判断
・宝塚「花組宝塚大劇場公演『はいからさんが通る』当面の公演中止について(追)

その後、他の組の関係者にも検査を実施。

東京では星組「眩耀の谷」を7月31日から9月20日までの予定で公演開始。ところが兵庫の結果を受けて東京でも検査したところ、8月6日に1人の陽性が確定。これを受けて8月20日までの公演中止を決定。一応、この1人だけでおさまった。

また梅田芸術劇場で宙組「FLYING SAPA」8月1日から8月11日までの予定で上演中だけど、こちらは大丈夫だった。

ところがその後に続けて雪組「炎のボレロ/Music Revolution」が8月17日から8月25日まで上演予定だったけど、これは8月8日に出演者1人の陽性が見つかって、上演するかどうかを検討中。

参考にしたのは以下。
・ステージナタリー「宝塚歌劇団星組『眩耀の谷』明日から公演中止
・ステージナタリー「宝塚歌劇団星組『眩耀の谷』8月20日まで公演中止
・日刊スポーツ「陽性1人で中止の東京宝塚、141人が検査結果待ち
・デイリースポーツ「宝塚歌劇 星組の残り88人は全員陰性 これまでの時系列は…
・宝塚「星組東京宝塚劇場『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』当面の公演中止について(追)
・梅田芸術劇場「宝塚歌劇 雪組梅田芸術劇場メインホール公演『炎のボレロ』『Music Revolution!-New Spirit-』 出演予定者の新型コロナウイルス陽性判定について

複数の組があちこちで同時上演するから大変。こんな時、やっぱりトップが陽性の出演者に、コロナが悪くてお前が悪いんじゃないから気にするな、療養に努めろよ、とかメッセージで励まして、はい、ありがとうございます! とか返したりするんだろうか(全然宝塚知りませんので適当です)。

それはさておき。

兵庫の件は、初日から2週間経っての話なので、仕込みも考えると稽古場で感染したよりは、初日以降の感染のほうが可能性が高い。副業をやっている人もいないだろうし、お茶会禁止は2月から継続だと信じている。だとすると、最初の誰かは市中感染か家族感染で、そこから公演で感染が広がったことになる。出演者の倍以上のスタッフがいて、関係者237人っていう大所帯がまずびっくりだけど、これだけの人数がいたら対策にも限度がある、ってことでしょう。

正直に発表した宝塚も偉いし、観客への感染もないし、宝塚なら熱心なファンほどお体お大事にと願いそうだから、劇団ブランドへのダメージはほとんどない。けど、宝塚でこれなら、大掛かりな公演は当面無理なんじゃないのと思わざるを得ない。

その、大掛かりな公演とそうでない公演との境目は、何がどうなんだってのがわからなくて観客として困っているんですが。

<2020年8月25日(火)追記>

東京の星組「眩耀の谷」は8月21日から公演を再開。これは中断14日の、今の最小限で済んだ。梅田芸術劇場の雪組「炎のボレロ/Music Revolution」は8月29日から9月6日に日程を振替えて公演。この日程が確保できたのは8月28日から8月30日まで上演予定だった「巌流島」が公演中止になったという偶然のため。

ところが本家の花組「はいからさんが通る」は待機中の関係者1名に症状がでてPCR検査で陽性が確認された。これが8月15日なので、中断期間を8月31日まで延長。公演が9月5日までの予定なので公演の大半が中止になった。9月の予定も今は未定。

体力(金策)が厳しいと思うけど、そこは阪急グループ(電車と百貨店も影響大ですが)と抜群のブランド力で何とかしてもらって、もう今回は実験公演と割りきって、大規模公演の何がダメでクラスターが発生したのかの分析に全力を振って、今後の対策に生かしてほしい。

参考。
宝塚「星組東京宝塚劇場公演『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』 の公演再開について」(8月18日付)
宝塚「雪組梅田芸術劇場メインホール公演『炎のボレロ』『Music Revolution!-New Spirit-』振替公演実施について」(8月21日付)
宝塚「花組宝塚大劇場公演『はいからさんが通る』当面の公演中止について(追)」(8月15日付)

<2020年9月8日(火)追記>

調べるのが遅れたら古い情報が見つからなくなってしまいましたけど、「はいからさんが通る」は払戻しが9月1日までとなっていたので、9月2日から9月5日までは上演したみたいです。そして東京公演は、元の予定がわかりませんが、10月9日からに東京初日がずれた模様です。

本件を受けて、宝塚では追加の対策を公開しました。新人公演中止やトーク中止はわかるのですが、その中に差入辞退があって、このご時世にまだ差入を受付けていたのかと驚きました。手紙は劇団が受取るとあって、これはたしか宝塚のファンクラブ制度に絡んだ独特の風習だったと思います(応援したい役者に直接手紙を送って「私設」ファンクラブにつないでもらう、というのがあったはず)。ただ食べ物禁止はさすがに今更で、むしろ熱心なファンほど差入は控えそうなものですが、どうなんでしょう。それともこのご時世でもなかなか風習が改まらない業界関係者やOGからの陣中見舞があって、公式に防がないといけなかったとか。これは推測の域を出ません。

そして定期的なPCR検査の実施が出てきました。発症直前くらいからでないと検出率が期待できないのは、これは誰が読んでも大丈夫な専門家の忽那賢志「抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?」を以前も引用しましたが、効果があるのか心配になります。

検査の費用は、症状が出て医者が必要と判断すれば保険適用で数千円ですが、自主検査は個人なら3万-4万円です。規模が大きければ割引方法もあるかもしれませんが、出演者スタッフで200人を超える規模の公演で検査回数を増やせばばかになりません。座席半数の宝塚でもS席1万円を超えて1000人が入るなら、週に1回検査しても1人3万円として600万円、1か月公演で2、3ステージ分は飛ぶけど、クラスターが発生して2週間も3週間も公演中止になるよりはマシ、という算盤を弾いたのかもしれません。

ただ、PCR検査は100%正しいわけではありません。仮に陽性になったとして、偽陽性の可能性もあります。症状が出ていないけど公演中止に踏みきることができるでしょうか。興行の観点から見ると、むしろ自分たちの判断と行動を縛って混乱を招く行為で、自主申告のほうがよいと素人には思えます。そのくらいは宝塚だってわかっているはずで、それでもなお定期的な検査にするということは、まっとうな理由を推測すれば、今回のクラスター発生は自主申告が機能しなかったと宝塚が判断したということです。無症状の人か、症状に心当たりがあっても自主申告できなかった人が最初にいて、そこから広まった後に自主申告する人が出てきた、という経路をたどったから、宝塚が定期的に検査しないと駄目と判断したのでしょう。

今回の追加対策は記録しておきます。1本目は8月27日付「感染予防のための更なる取り組み強化について」より。

2020/08/27

宝塚歌劇では、7月より各公演を順次再開させていただいておりましたが、このたび、複数の公演関係者の新型コロナウイルス陽性判定にともなう公演中止により、お客様には大変ご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます。
7月からの公演再開にあたりましては、政府や自治体のガイドラインを踏まえた感染予防対策に取り組んでまいりましたが、改めて管轄の保健所のアドバイスもいただきながら、お客様と公演関係者の安心・安全を最優先に考え、以下のとおり、感染予防対策を一層強化してまいります。何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

○公演関係者の体調管理並びにPCR検査体制の強化
公演の開催にあたっては、公演関係者全員の検温及び体調確認を毎日実施し、体調に変化があった場合は、直ちに自主的なPCR検査を行う態勢をとってまいりましたが、今後は、これらに加えて、出演者等に対する定期的なPCR検査を実施するとともに、軽微な体調の変化にも注意を払い、公演関係者の体調のケアと早期段階での感染拡大予防に努めてまいります。

○公演の運営における感染予防策の強化
公演の運営においても、出演者の減員や演出の一部変更、オーケストラの録音演奏などの対策を講じてまいりましたが、更なる感染リスクの低減のため、当面の間、宝塚大劇場・東京宝塚劇場ともに新人公演の実施を見合わせることといたします。あわせて、宝塚友の会会員様限定特別イベント「ステージトーク」「トークスペシャル」につきましても、当面の間、開催を見合わせます。
新人公演を楽しみにしていただいているお客様には心よりお詫び申し上げます。

○各劇場の販売座席について
宝塚歌劇では、政府や自治体のガイドラインに基づき、座席の最前列席は舞台前から十分な距離を取り、また、感染予防に対応した座席配置を行っておりますが、改めて各地域の状況や管轄の保健所のアドバイスも踏まえながら、劇場ごと・公演ごとに販売座席を決定し当ホームページにてご案内いたします。   

2本目は8月28日付「出演者への差し入れ辞退について」より。

2020/08/28

日頃より、宝塚歌劇に温かいご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
このたび、政府および自治体等による新型コロナウイルス感染拡大予防のためのガイドラインに基づき、施設内の感染予防対策の徹底を図るため、すべての劇場の宝塚歌劇公演において、食べ物をはじめとする全ての差し入れの受け取りを辞退させていただきます。
なお、お手紙につきましては拝受いたしますが、すべて下記の宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)まで、ご郵送いただきますようお願い申し上げます(各劇場での受け取りは辞退しております)。

2020年8月 6日 (木)

稽古場の評価指標が作れないか想像して限界があると思い至る

稽古場はカラオケボックスのようなものと書きましたが、そもそもマスクなしで近接して長時間会話する時点で、稽古場の環境条件なんて微々たるものです。が、それでも稽古中はマスクをつけたり、演出で出演者同士の距離を設けたり、飲食中の会話も自粛したり、毎日消毒もするから、なんとか稽古できないか、と嘆く演劇関係者がいると想像した場合、どういう方法が考えられるでしょうか。

消毒と換気のうち、消毒は人間の行為なので、おそらく何とかなります。今すぐとは言いませんが、おそらく年月を経て、何をどう消毒するかはノウハウが溜まると思います。急ぐなら保健所なりなんなりの専門家を、典型的な稽古場に招いて、消毒指南をしてもらい、それを文書にまとめればいいです。

換気は、環境であり設備です。巨大送風機を用意するとか、設備に対する補強は考えられますけど、たとえば窓がなかったらそれだけで限界があります。あるいは、稽古に参加する人数によって、求められる換気の能力も変わってきます。ならばせめて、その稽古場の換気の良し悪しをどうやって評価するか。

どの程度の有効度はわかりませんが、私が思いついたのは以下の2つです。

・スモークを焚いてから換気能力を全開にして排気時間を測定する

その稽古場の基本換気能力を測定する方法です。演劇関係者ならスモークを作る機材の手配はできるでしょうから、一度窓を閉めて換気を止めてスモークを充満させて、そこから窓を全開にして換気もフル稼働させて、何分で排出させることができるか。これが何分以下なら何人まで参加可能、何分以上ならその稽古場は駄目、などの指標が作れないでしょうか。何分以上、の指標は、劇場に求められる換気能力の計算方法で代替します。

この方法のいいところは、スモークが目に見えるので、換気能力が偏っている場合でも把握できることです。入口付近はいいけど奥がいまいちなら、入口付近を稽古エリアにして換気を多めにする、などの相談ができます。あるいは本当に換気能力の足りない場所なら、ここでは稽古ができないと諦めがつきます。

欠点は、スモークを作る機材の手配が有料なこと、稽古場ジプシーをする場合に稽古場ごとに測定していられないこと、事前に稽古場に相談しておかないと火事と間違われて大ごとになること、でしょうか。あと、劇場ほどしっかりした換気した設備を備えた稽古場がそうそうあるわけではないので、劇場向けの換気能力の計算方法をどのくらい割引けるのかを考える必要があります。

・二酸化炭素測定器を複数設置して二酸化炭素濃度を測定する

稽古中の換気の悪化を測定する方法です。ウィルス濃度は測定できない前提で、何を代わりに測定すればよいか。つばは呼吸の一環で飛ぶのだから、呼吸で一緒に出てくる二酸化炭素を測定することで代替できないか。二酸化炭素の測定器を複数買って、稽古場のあちこちに置いて、濃度が一定以上になったら1時間を待たずして休憩して濃度が下がるのを待つのはどうでしょう。

この方法のいいところは、値段はピンキリですが、二酸化炭素の測定器は一般にも売っていますから、入手性はよいです。あちこち持って歩けますので、一度買ってしまえば、稽古場ジプシーになっても有効です。

欠点は、測定のノウハウが難しいことです。演出家席などはいいかもしれませんが、アクティングエリアのど真ん中に置かれたら稽古している出演者の邪魔になるので、どこに置けばいいか。濃度は稽古開始前からの相対値で決めるのか、絶対値で決めるのか。日によって出演者やスタッフの人数が変わる場合にどのように値を見ればいいのか。

・3つ目

うまくいったら稽古場ミシュランでも作れないかと、せめて3つくらいは思いつきたかったのですが、2つしか思いつきませんでした。まあ、頭の体操です。そもそも窓がある稽古場でも、開けたら外の相応がうるさい、自分たちがうるさいと外から苦情が来る、という場所もあるでしょうから、開けられるとは限りません。評価指標作成の道のりは遠いです。

新国立劇場のガイドラインは、完全自前の稽古場があり、それをメンテナンスする人たちもいればこそ、稽古場ごとの対策も具体化可能でしょう。今読んだらこれでも粗いと感じたので、ひょっとしたら、これより細かい現場担当者向けチェックリストみたいなものを作っているかもしれません。そしてそういう稽古場を長期間継続して借りられるならまだしも、自分たちが借りた、稽古場にも使える貸スペースでどの程度の対策が実現できるかというと、やはり難しい。

余談ですが、稽古場の評価方法や消毒方法が必要なら、それをまとめるのは業界団体の役目だと思います。やっている情報があるなら教えてほしいです。ただ、劇場の団体はあっても、稽古場を持っていない規模の劇団の業界団体はそもそもないでしょう。自前の稽古場を持つ大手団体が、独自で評価して対策を練ることはあるでしょうが、一般的な貸スペースに対する評価を検討している例はないと推測します。

<2020年10月23日(金)追記>

その後に調べたらまとめられました。間違っていたのは稽古場単体を評価しようとしていたことです。三密は人間同士の話なので、この稽古場ならこの条件まで大丈夫、という形でまとめる必要があったことに気が付きました。

2020年8月 2日 (日)

新たに稽古場でクラスターが発生した記事を見て稽古場はカラオケボックスと同じという感想に至る

新宿の公演で発生したクラスターは、出演者は稽古場でのクラスター発生があっただろう、と自分なりに結論づけたばかりです。そうしたら別の芝居でもクラスターが発生しました。こちらは公演前だったので観客には影響ありません。先に日テレより

新型コロナウイルスの感染者が過去最多の367人となった東京都内で、演劇関係者20人以上が集団感染していることが分かりました。

東京都によりますと、都内の演劇集団でこれまでに出演者2人の感染が確認されたため、濃厚接触者としてスタッフを含む4、50人の検査を行ったということです。その結果、30日、演劇関係者20人以上の感染が確認されました。10代から50代までの男女だということです。

この舞台は、公演が始まる前で客は入れておらず都内の劇場で稽古を続けていたといいます。都はクラスターが発生したとみて、保健所と詳しい状況を調べています。

これだけでは様子がわからないのですが、日刊スポーツが取材していました

舞台の稽古中の演劇関係者20人以上が新型コロナウイルスに集団感染していたことが31日、分かった。

7月末の公演に向けての稽古中に、出演者2人の感染が判明。濃厚接触者として、出演者41人とスタッフなど計56人の検査を行った結果、31日までに23人の陽性が確認されたという。そのため、公演は延期(時期未定)したほか、陽性者の同居人なども検査を受けており、その結果を待っている状態という。

公演の代表者は本紙の取材に対し、稽古場には換気扇、空気清浄機をつけていたほか、除湿機で湿度調整もし、稽古場入り口も開放するなど、風通しを良くするようにしていたなどと答えた。さらにアルコール消毒液やハンドソープも稽古場に十分に配置。1日おきに掃除もしていたほか、稽古後の飲み会自粛を出演者、スタッフに要請していたという。稽古時間も昼食後に設定したほか、稽古場での飲食も最低限にするように気を付けていたという。

日テレの記事も日刊スポーツの記事も公演名などが載っていないのは、公演前に発覚して公演延期になったのだから観客に周知する必要はなく、載せることで望ましくない反響が出るのを防ぐためでしょう。よい判断だと思います。そして公演直前で検査を行なって、損失確実な状況にも関わらず延期を判断した関係者の英断は認められるべきです。さらに取材に対して稽古場の状況を説明した対応も適切です。今後のためには何がよくて何がダメか、情報を共有するべき段階だからです。

そこは前提で、稽古場の状況がどうだったか。どのような稽古場かはわかりませんが、換気扇という単語が出てくるあたりで、専門の稽古場施設ではないのだなと想像はつきます。入口を開けていたとしても、換気がないよりはまし、という環境だったのでしょう。飲み会や飲食も自粛していたようですが、そうだとしても稽古による環境の悪化のほうが上回っていたのでしょう。空気清浄機は新宿の公演の話にも書きましたが、それで済むなら新型コロナウィルスでこんな騒動にはなっていませんし、ひょっとしたら悪化の可能性も考えられます。雨だらけの7月に全国で感染が広がっているので、除湿器も同じです。

ここで記事を3本引用します。ひとつめはBuzzFeedの記事で、8割おじさんで有名になった西浦博の4月10日のインタビューです。

「8割の自粛」というのもコミュニケーションがしっかりできていません。家の周りや外でどういう工夫ができるかということも時間がない中で宣言が出たので、十分伝わっていないでしょう。

北海道で緊急事態宣言が出た時の話をみなさんとも共有したいのですが、北海道で知事の発表後に面会して、「外出自粛と呼びかけるのは、むしろ逆効果の可能性がある」と押谷先生がアドバイスしたのです。

つまり、外出を控える代わりに、お友達と会って家飲み会が始まったり、家族の夕食会があったりしたら元も子もないわけです。

自粛というのは、接触を削減してもらうことだというのが、正確に伝わらないといけません。

ふたつめは医療サイトm3.comの記事で、専門家会議メンバーの押谷仁による4月18日「クラスター解析からCOVID-19の疫学と対応策」講演の記事。たしか元の講演も例外的にYouTubeで公開されていたはず。

 誰にも感染させていない人は、密閉した環境にいない。多くの人に感染させた人は密閉された環境にいたことが分かった。クラスター、特に患者の集積が起きる環境では、人が密集している。密接した関係で発話がある。これが「3密」の条件。さらにクラスターを解析すると、換気量が増大するような活動、特に初期の段階で目立っていたのは、スポーツジム。大声を出す、歌う、ライブハウスやカラオケなど。接客を伴う飲食業、一人が不特定多数の人に接触するような環境。これらがクラスターが起きる非常に重要な条件だと考えている。

 クラスターを起こしたプライマリー・ケースを見ると、咳、くしゃみ、明らかな発熱はない例が多かった。特に多かったのは、咽頭痛。咳、くしゃみがないので、通常の飛沫感染は考えにくい。何らかの別のメカニズムがないと、起きているクラスターの多くは説明できない。

 接触感染は起こり得ると考えている。これがマジョリティーを占めることはないと思うが、例外的には起こり得る。クラスターが起きた場に、翌日行って感染した例が見られている。これは恐らく接触感染だろう。

最後が朝日新聞から7月10日「微粒子による空気感染、WHO『可能性排除できない』」です。

 世界保健機関(WHO)は9日、新型コロナウイルスの感染について報告書を発表し、空気中の微粒子がある程度の距離を漂って感染を起こす空気感染について、換気の悪い場所など一定の環境で発生する可能性を「排除できない」とする見解を示した。

 WHOは、せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)感染か、物の表面を触った手にウイルスが付き、鼻や口に伝わる接触感染が主な感染経路だとしている。空気感染は、病院での気管挿管時などを除き、立証されていないとしてきた。

 今回も基本的な考えは変えていないが、空気感染の可能性を示す複数の研究に新たに言及。医療現場以外でも、合唱の練習、レストラン、フィットネスジムといった場所で「混雑して換気が悪いなどの特定の室内環境で、感染者と長時間一緒にいた場合」に、近い距離の空気感染が起こる可能性を排除できないとした。また、この分野ではさらなる研究が必要だとした。

 空気感染をめぐっては各国の専門家が6日に公開書簡を発表し、飛沫が微細になると長く空気中を漂って遠くへ運ばれると指摘。「予防的な措置が取られるべきだ」と注意を促していた。

これらの記事から私が理解したのは以下です。
・人が接触こと(会話すること)には感染の可能性があること
・3密は多くの人に感染する可能性を高くするが、2密も1密も感染の可能性があること
・大声を出す環境は感染の可能性を高くすること
・これらの理由として、飛沫感染、直接感染以外に、空気感染の可能性があること(日本では初期のころにエアロゾル感染という単語がありましたが、空気感染と呼んだほうがすっきりするようです)

もっと平たく書くと、通常の会話より大声で発声する以上、稽古場はカラオケボックスと変わらない環境であり、誰か感染した人がいたらクラスターが発生する可能性が高い、です。どのくらいの広さの稽古場にどのくらいの人数がいたのかはわかりませんが、アクティングエリアを決めて稽古するでしょうし、出演者同士が至近距離での発声は多数あったと推測します。よほど外気との換気の整った場所で距離を確保しない限り、感染は発生するものだと考えたほうがよさそうです。密閉という言葉からはすべてのドアや窓を閉め切った環境を想像しますが、複数のドアや窓を開けて体感で部屋中の空気が流れていることがわかるような環境でない限り、密閉空間と同等と認識したほうが近いのでしょう。

そこから導き出される結論は、非常に残念なものですが、「整った稽古場を用意できない公演はクラスターが発生しうるので、観に行くのはしばらく控えたほうがいい」です。緊急事態宣言解除後の芝居の上演が始まっていて、でも一部は公演中止になったりもして、いろいろありますが、一観客としては様子見を延期したほうがよいとの個人的判断です。

自由自在な声の役者が逝く

立石涼子のことです。朝日新聞より。

 立石涼子さん(たていし・りょうこ=俳優、本名立石凉子〈たていし・りょうこ〉)が2日、肺がんで死去、68歳。葬儀は近親者で営む。

 長崎県出身。76年から14年まで演劇集団円に所属。確かな演技力で幅広い役柄をこなし、蜷川幸雄演出作など多くの舞台に出演した。04年に「エレファント・バニッシュ」などで紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞。ドラマ出演や声の吹き替えも多数。

「エレファント・バニッシュ」に出ていたのは記憶があるけど、自分が認識したのは「春琴」の語り。読み直したら絶賛していた。そこから飛んで「ガラスの動物園」も覚えていて、これは登場人物の少ない芝居とはいえ、やっぱり絶賛していた。

今さら知ったのは、演劇集団円の出身であること。新劇と呼ばれる劇団出身のベテランは芸達者が多い。日本の芸能界の、ある種の芸の系譜を、具現化していた役者だった。

合掌

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