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2020年8月25日 (火)

原作者が逮捕されて舞台が舞台の舞台化が流れた話

そういえばメモしていませんでした。朝日新聞デジタル「原作者逮捕の『アクタージュ』 ジャンプで連載打ち切り」より。

 マンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の「アクタージュ act-age」(原作・マツキタツヤ、漫画・宇佐崎しろ)が、11日発売号で連載を終了する。10日、同誌の公式サイトで編集部が発表した。警視庁は8日、女子中学生の胸を触ったとして、原作者の松木達哉容疑者を強制わいせつ容疑で逮捕し、発表していた。

 編集部の発表によると、事実確認や作画担当の宇佐崎氏と協議を経て、連載終了を決めたという。「事件の内容と、『週刊少年ジャンプ』の社会的責任の大きさを深刻に受け止め、このような決断に至りました」としている。

 アクタージュは、俳優を目指す女子高生が才能を開花させる物語。2018年に連載が始まり、コミックが12巻まで発売されている。ホリプロなどが2022年に舞台化を予定していたが、逮捕の報道を受け、主演のオーディションサイトでは、「事実関係を確認中で、オーディション・舞台の今後に関して、改めて報告する」と説明している。

マンガの存在すら知りませんでしたが、役者が主人公のマンガは久しぶりらしく、評判もなかなかよかったようです。そこでこのマンガを原作にホリプロが2022年に舞台化、それに合わせてヒロインオーディションもやっていました。が、企画自体が中止になりました。その公式サイトより。

舞台「アクタージュ act-age ~銀河鉄道の夜~」ならびに
ヒロイン「夜凪景」役 オーディション中止のお知らせ

今月8日に『アクタージュ act-age』の原作担当であるマツキタツヤ氏が逮捕された事を重く受けとめ、関係各所とも協議した結果、2022年に開催を予定しておりました
舞台「アクタージュ act-age ~銀河鉄道の夜~」の上演、ならびに現在進行中のヒロイン
「夜凪景」役 オーディション、双方の中止を決定致しました。

弊社としても舞台ならびに本オーディションがこのような形で終えてしまう事は残念でなりません。
応募者の皆様、そして2022年の舞台を楽しみにされていた皆様には心苦しいばかり
ではございますが、ご理解を賜ります様、何卒宜しくお願い申し上げます。

㈱ホリプロ / ㈱ホリプロインターナショナル

グランプリが主演だけでなく「(株)ホリプロインターナショナルとの専属契約」とあるので、昔からこういう流れで発掘から専属契約までもっていくのが得意ですよね日本の芸能界は。「後援 ワーナー ブラザース ジャパン合同会社」とあるので映画化も視野に入っていたと推測されます。

この中でちょっと意外に思ったのが、脚本演出に松井周をもってきたところ。実力は認めるとして商業演劇まで手を広げるのかと意外でした。何しろ青年団演出部ですから。

それで上記公式サイトをもう少し詳しく読んだら、プロデューサーのコメントに「以前に週刊少年ジャンプ掲載の人気漫画『DEATH NOTE』をミュージカル化させていただきました」「その結果、ミュージカル版デスノートには原作を知らない演劇ファンの皆様にも、普段劇場に足を運ぶことがない原作ファンの皆様にもご支持いただき、5年間で3度の上演を重ね、海外でも上演される作品に成長しています」とあり、そういえば栗山民也が演出だったなと思い出しました。あれもホリプロだったかと気が付くと同時に、オーディションも話題作りだけでなく本気だったことがわかりました。

つまり、舞台に向いていそうで話題になりそうだから、くらいのノリでマンガ原作を決めたのではない。海外上演まで育つポテンシャルがマンガ原作にはあるとデスノートでホリプロは実感して、その第2陣として白羽の矢が立ったのがアクタージュだった。ただし役者が演技を考えるマンガであり、よほどきちんとした体制をとらないと駄目な舞台になることも、舞台事業も長いホリプロはわかっていた。そこで、脚本の実力があり、演出もできて、たまに自分も役者として出演するので役者の仕事もわかる人、で大真面目に探した結果、松井周に決まったと推測されます。

よく考えたら平田オリザも小説を映画舞台に提供して演技指導とかしていましたし(こちらも劇中劇は「銀河鉄道の夜」でした)、最近だと青年団では岩井秀人が活動範囲を広げています。それに比べたら商業演劇に進出するくらいはなんてことはない、と言えます。

この件については、まっさきに検索したのが、ホリプロは「ガラスの仮面」も蜷川幸雄演出で舞台化していたよなと確認することで、するともっと昔に松竹が舞台化していて北島マヤを大竹しのぶが演じていて何それ観たい、とか、それよりガラスの仮面はまだ読んでいなくて完結したら読もうと思っているのにいつ完結するの、とかミーハーな先入観から始まったのですが、裏切られました。

公式サイトには逮捕された原作者と松井周との対談も載っています。

松井 そう言っていただけるとほっとします。舞台版のみでの「こんなキャラクターがいたら面白そう」というのを妄想して、
書いてみたい気持ちも確かにありますね。だけど一方で、やっぱり夜凪や阿良也たちをしっかり存在させるのを第一には考えています。
それは原作ファンへのサービス的な意味合いよりも、舞台の上で何かが起き、その何かに劇場の中を支配させるためです。
それには俳優同士がきちんと『アクタージュ』の世界を想像し、はっきりそこに存在していないと難しい。
『アクタージュ』のキャラクターは、みんながそれぞれいろんなアプローチで演劇に関わり、努力や苦労して何とかスキルを身に着けようとしています。それは生き方に繋がっていて、一人一人の生き方がそのまま舞台に表れてくると思うんです。
とても魅力的な人たちだし面白い世界なので、それをできる限り舞台上に存在させたいと思います。

マツキ 「みなさん夜凪景を待っててください」みたいな事ではないんですよね。
理想を頭の中に作って、答え合わせをしに来てほしいわけではない。ああ『アクタージュ』ってこういう見方があったんだとか、松井さんはこういう見方をしたんだとか、もしかしたら僕はこう思っていたのかもしれないとか。
そういう非常に個人的なものを僕は期待しています。
(中略)
マツキ 夜凪役のオーディションだからといって、夜凪を目指してもらう必要はないのかなって。

松井 はい。こういう人が欲しいと想定している人物像は特にありません。その人独特な「この人じゃなければできない感じ」に、いかに僕らが魅せられるか――つい目で追ってしまうとか、声を聞きたくなるとか、こんな動きをしてもらいたいとか、誰かと合わせた時に
こんな反応するんだとか。そういう具体的な人となりがわかった時に、そこから「この人にこんなふうに夜凪を演じてほしいな」という
アイデアが出てきたりするんです。夜凪自身が自分の器を壊していく、今までの自分を越えていくタイプの人じゃないですか。
そういう伸びしろを大事にしたいですね。

マツキ 原作通りに演じてほしいとは、僕も全く思いません。オーディションを受ける方に関しても、松井さんに関してもそうですが、
今回たまたま『アクタージュ』という素材を使って何を表現してくださるのか。僕が見たいのはそこなので。

松井 でも「原作通りに夜凪を演じよう」みたいな人は、そもそもこのオーディションにあまり来ない気がしますよ。

マツキ そうですかね。

松井 だって『アクタージュ』自体に、「そういう事じゃないよ」というメッセージが明確に入っていますから。自分のままでどうその役をうまく捉えるかという話が原作で丁寧に描かれているから、夜凪をやりたい誰々をやりたいではなく、もし自分にその役と似ている部分があるなら引き出してほしい…って応募してくれる人が多いと思います。『アクタージュ』という作品自体が、オーディションの応募者を
ある程度選定している、基準を作っているように感じます。

こういう会話が成立つ点で、仕上がりも結構期待できたのではないかと推測されます。

だけど強制わいせつは駄目です。日本では性犯罪よりまだ人殺しのほうが同情が集まるんじゃないかという感覚なところ、女子高校生が主人公なのに被害者が女子中学生とか目も当てられません。既刊のマンガが出荷停止になったことには賛否両論あるかと思いますが、連載打切りも、まだオーディション段階の舞台企画が流れるのも、致し方なしです。

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