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2020年8月17日 (月)

東京芸術劇場企画制作「赤鬼」東京芸術劇場シアターイースト

<2020年8月14日(金)夜>

嵐の後に浜辺に打上げられたのは、村から舟で逃げたはずの「あの女」たち。だがせっかく助かったのに「あの女」は身投げしてしまう。一緒に助けられた少し頭の足りない兄が説明する、「あの女」の身投げの理由と赤鬼をめぐる一連の騒動。

チケット購入に手が動かなかったところ、当日券で観た人による購入手続き説明付きの感想をうっかり読んでしまう。読んだ瞬間に、この日に行けば引けるという当日券の神様のお告げが聴こえて、ここまでクラスターになっていないし東京久しぶりだしと理由をつけて出かけて、引いた。

Dチーム。若手もいればそれなりに長くやっているベテランもいた回だったけど、ずいぶん若い芝居に仕上がっていた。よく言えば早口の台詞で勢いがある。反対に言えば緩急に欠ける。ところが、仕上がりはどこからどう見ても「赤鬼」だった。理由を考えると、第一には脚本の良さ。エネルギーを切らさず最後まで走り抜けられればある一定の仕上がりに達することができる、すでに古典の風格がありながら古びない脚本。

演出は昔のタイバージョンとそんなに変わっていない。村人が赤鬼への対処を相談する一場面だけ、村人がマスクをして、マスクをしていない兄に「何でマスクしてないんだよ」とツッコミをいれる演出が入っていた。今の新型コロナウィルス騒動に重ねて、一般人が未知のものを過剰に怖がる様子と自粛警察がはびこる様子とを短時間で表現していた。あの一場面だけでそういう見立てを伝えたのは見事。だけど新型コロナウィルスに直面した演劇業界のことをいろいろ書いた自分は、村人が演劇業界人で、赤鬼が一般人とか行政とか専門家会議の専門家とかでも成立つんじゃね、と思った(公演を自粛してほしいと希望する側に、何でだよ補償しろよドイツだよと演劇業界人が反発するイメージ)。2020年8月現在、すでに市中感染のレベルになって誰でも感染しうる状況で、小規模な公演でも大規模な公演でも実際にクラスターが発生した後で観ると、1か月前に固めたであろう演出がすでに古い。

そういう余計な考えを除けば、やっぱりどこを見ても「赤鬼」なので、久しぶりに観られて満足した。もったいなかったのは、会場の空間が芝居の広がりに対してやや狭い。もう少し広い会場で観たかった。あと、トータル95分だったけど、前に観たときはもう少し長かった記憶がある。新型コロナウィルス対応で、できるだけ短い時間に収める制限を設けたのか、減った客席をダレさせないための判断か。その中で緩急をつけるのもプロの技かもしれないけど、せめてあと5分追加できたらという惜しさは残った。ミズカネ演じる吉田朋弘が通してよかったけど、フクを演じた北浦愛の、最後「フカヒレって、言ったよね」からの気迫も「あの女」感が出ていてよかった。

そしてカーテンコール。四方向挨拶の動きに懐かしさを感じたけど、観客数の少なさを実感したのもここ。1席飛ばしの客席では満席でも拍手がまばらになって、拍手の塊感が出ない。熱演に拍手が届かなかった。

以下メモ。

・囲み舞台で1席飛ばしの自由席。客席とアクティングエリアの間はビニールシート。照明が入れば視界への影響は最小限だったし、(舞台中央だったけど)強い言葉で唾が飛ぶのが見えたので、やっぱりあってよかったと思う。ただ最前列はビニールシートが目の前(前の座席の背もたれまでくらいの距離)なので避けた。あれは好みで選べばいいと思う。

・ロビースタッフや客席誘導スタッフは全員マスクに加えてフェイスガードも装着。当日券購入時には連絡先記載。入場はチケットの番号順に1人ずつ呼んで入場。入場時は順に検温、チケットの目視確認(その後に自分でもぎり)、当日パンフは自分で任意にピックアップ、最後にアルコール消毒。手がふさがるのでアルコール消毒を前に持ってきてほしいけど、チケットを手に持っていたら変わらないか。退場はエリア別に順に退場。

・スマホには接触確認アプリをインストールしているけど、上演中は電源を切った(念のためスタッフに聞いたけど切ってくださいとの返答)。接触時間が長ければ判定になるので、電源入れっぱなしのほうがいいと思うけど、それは無理か。通信機能抑止装置を入れたらBluetoothもダメになるっぽいし。せめてと思って、開演ギリギリまでひっぱってから電源を切ったけど、あれはどうするのが正解なんだ。

<2020年11月21日(土)追記>

接所確認アプリの話は「電源オン、機内モードオン、Bluetoothオン、音は鳴らないように」がよいという結論になりました。

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