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2020年9月15日 (火)

芝居の客席数の50%制限が9月19日から11月末まで暫定緩和される

いまだにこの手の資料がどこで発表されるのかわかっていないのですが、今回は「【事務連絡】9月19日以降における催物の開催制限等について」という題で内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」ページに載っていました。

厳密にはこれまで

①収容人数10,000人超⇒収容人数の50%
②収容人数10,000人以下⇒5,000人
(注)収容率と人数上限でどちらか小さいほうを限度(両方の条件を満たす必要)

となっていたところ、

〇 得られた知見等を踏まえた業種別ガイドラインの見直しを前提に、必要な感染防止策が担保される場合(別紙3「収容率及び人数上限の緩和を適用する場合の条件について」)には緩和することとし、当面11月末まで、以下の取扱いとする方針とする。
 ①収容率要件については、感染リスクの少ないイベント(クラシック音楽コンサート等)については100%以内に緩和する。その他のイベント(ロックコンサート、スポーツイベント等)については50%以内(※)とする。
 ②人数上限については、5,000人を超え、収容人数の50%までを可とする。

とされました。この中で収容率要件が100%に緩和されるイベントとして

大声での歓声・声援等がないことを前提としうるもの・クラシック音楽コンサート、演劇等、舞踊、伝統芸能、芸能・演芸、公演・式典、展示会等

と演劇が明記されています。たいていの劇場の収容人数は5000人以下で、その場合は「収容率と人数上限でどちらか小さいほうを限度」でも、客席数100%のほうが小さいほうに該当するため、全席販売が可能になります。

この資料は細かいところに注意書きがたくさんあって、私の理解では客席数(収容率)以外は、消毒飲食その他もろもろ何も緩和しませんという内容です。それでもあらゆる団体で一番気になっていた個所が暫定ですが元に戻ったので、上演側には喜ばしい内容でしょう。

私は実験の報告書を読んでもいまいち安心できなかった人なので、もう少し緩和を待ったほうがいいんじゃないかと考えていました。今後の動向に注目です。

2020年9月12日 (土)

緊急要望を出したのにニュースで公開しない演劇業界

前回紹介した「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」報告書を背景に、クラシック音楽公演運営推進協議会が「緊急要望:イベント(舞台芸術公演)における客席の収容率50%制限の撤廃について」を9月10日付で大臣宛に出しています。いろいろ限界や不明点も残っていますが、背に腹は代えられないから早く撤廃してくれ、という立場なのでしょう。それは後で引用する文面に色濃く出ています。

この要望が連名で出されていて、他に「公益社団法人全国公立文化施設協会」と「緊急事態舞台芸術ネットワーク」も名前が載っています。前者は以前調べましたが、国公立の文化会館とか文化センターとか名の付くような施設が参加する協会で、会場側の新型コロナウィルス対策を取りまとめた団体です。クラシック音楽の会場にもなることが多いでしょうから、連名するのはわかります。こちらも同じ要望を出したことを9月10日付で公開しています

で、緊急事態舞台芸術ネットワークです。主に芝居に縁の深い劇場、劇団、スタッフ業界が名を連ねています。「2020年2月26日に政府による突然の自粛要請を受けて以来、公演の中止延期が相次いだ舞台芸術界の損害の実態を把握するため、損害額調査を実施。その結果を受けて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による舞台芸術業界が危機的状況であるとの認識のもと、緊急的に形成されたネットワークです。」と書かれている通り、今回急遽集まった団体です。要望の根拠である実験に芝居業界は何も参加していませんので、少しでも大勢の要望としたかったクラシック業界のお声がけに乗ったのでしょう。

それはそれで構いませんが、この要望を出したことが、緊急事態舞台芸術ネットワークのWebサイトのどこにも載っていません。ニュース一覧のページで私が9月12日16時時点で見ている中で一番新しいニュースは8月31日付のものです。

緊急事態舞台芸術ネットワークの世話人は大物の名前ばかりが載っているので、事務局がどうなっているのかわかりません。そう思って調べたら事務局の情報がほとんど見つからないことに気が付きました。規約の中に「当団体の主たる事務所を東京都豊島区に置く」とあり、世話人の1人が野田秀樹なので、東京芸術劇場のスタッフが兼ねているのかと想像しますが、想像の域を出ません。

事務局仕事も事務局運営ならではの常識やノウハウがいろいろ必要でしょうから、設立から4か月ではなかなか慣れていないのかもしれません。あるいは、世話人が連名することを決めて事務局に連絡を忘れたのかもしれません。ここまでニュースに載っていない理由はさておき、とりあえず名前を連名に載せたからには、要望を提出したことをニュースとして急ぎ掲載したほうがよいです。

そして緊急事態舞台芸術ネットワークの設立趣意には「『緊急事態舞台芸術ネットワーク』は、今回の新型コロナウィルスのような緊急事態にのみ活動します。すなわち、舞台芸術全体が公演中止に追い込まれそうな時、もしくは追い込まれた時においてのみ活動します。主たる目的は社会と共にいかにして舞台芸術の公演を再開していくかにあります。」とあります。一段落したら名前を変えてもいいから、この団体と事務局は維持して、演劇業界を代表する業界団体に育てたほうがよいと思います。離合集散の激しい劇団が長期の参加団体に適しにくく、規模の大きい団体の声が大きくなるかもしれませんが、そうだとしても、劇場やスタッフまで広く職種を横断した業界団体があるのとないのとでは大きな違いなので。

以下が要望の内容です。

令和2年9月10日
新型コロナウイルス対策担当大臣
西 村 康 稔 殿

緊急要望:イベント(舞台芸術公演)における客席の収容率50%制限の撤廃について

公益社団法人全国公立文化施設協会
クラシック音楽公演運営推進協議会
緊急事態舞台芸術ネットワーク

新型コロナウイルス感染症による公演の中止や施設の閉館など舞台芸術関係が被った打撃に対して、国では補正予算を含む多様な支援策を講じていただいており感謝申し上げます。公立文化施設や舞台芸術諸団体としても、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに則った対策を講じた上で、公演や施設の再開を進めているところです。

一方で、国では屋内イベントの客席収容率を一律で50%以内と示され、それを受け感染拡大予防ガイドラインでは「前後左右を空けた席配置」とし、公演再開においても50%以内の収容を厳守しています。しかしながら、多くの舞台芸術公演では、チケット販売における採算ラインを80%以上と見込んで、予算を立て制作されています。このまま収容率50%制限が続くならば、再開しても公演を続ければ続けるほど、赤字が積み上がることとなります。

クラシック演奏、ダンス、演劇、伝統芸能、演芸等の公演において観客は、原則として公演中は、定められた席に着席し、一定方向を向いて、相互の会話も行わずに観劇しています。先般、クラシック音楽公演運営推進協議会が提出公表した科学的検証においても、マスクを着用していれば、隣り合う配席でも、前後左右を空けた配席でも、感染リスクは変わらない結果が立証されております。また、劇場施設は建築法や興行法等により一定規模の空調設備が設置されており、屋内であっても決して密閉空間ではありません。

公演の中には、公演内容や観客層の年齢構成等、収容率において配慮が求められるものもありますが、公演主催者や施設管理者が、感染拡大予防ガイドラインに基づいて設定し、併せて「歓声や出待ちを控える」等の感染防止策を徹底することにより対策は可能です。

このまま不採算公演が続くと関係諸団体等の倒産や廃業、関係者の離職等による文化の継承の断絶等も想定されます。一定の条件下の舞台芸術公演において、感染拡大予防ガイドラインを遵守した上で、客席収容率50%制限の早期の撤廃をお願いいたします。

2020年9月 2日 (水)

読み方が難しい「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」報告書

クラシック音楽の業界団体が音頭を取って実験を行なうと発表していましたが、結果が報告書にまとまって公表されました。クリーンルームで測定して、どのくらい飛沫が飛ぶのかを調べ、今言われているソーシャルディスタンスが本当に必要なのかを検討するためです。丁寧に実験していて、これだけの実験を企画して実現できてしまう日本クラシック音楽事業協会という業界団体の実行力はすごいです。

ある程度の曲を演奏するには演奏する側も密が必要、客席も経済上の理由で密が必要、なのが背景なので、楽器の演奏だけでなく、歌唱と、客席についても測定しているのがポイントです。芝居の参考になる情報がないかと読んでみましたが、これがなかなか難しい。

先に載っているのが客席。クラシック音楽なので「発声したとき」「咳をしたとき」「ブラボーと声を出したとき」の実験が載っています。すべて1分間連続です。向きは前方が90㎝の間隔、横は48㎝の間隔で測定しています。新国立劇場の小劇場の座席スペースが「幅50cm、奥行91cm」、中劇場では「幅52.5cm、奥行95cm」なので、あの客席のサイズを想像してもらえばよいです。

マスクなしで咳をしたときの数値はやばいだろうというのは飛沫感染を警戒されていることからわかります。全般にマスクなしは論外です。ただ、マスクなしの発声と、マスクありの咳とが、倍くらいの差しかありません(マスクなしの発声のほうが大きい)。至近距離で15分間しゃべり続けても感染の可能性があるので、そこから半分になったとして、これが大丈夫か気になります。

というのも、1分間咳が続いたらちょっとロビーで水飲んで来いよと本人も思えますが、芝居だと「笑ったとき」があり得ます。1分間続けてとは言いませんが、短く笑いをつなげて爆笑に持っていったら、断続的に1分間というのはあり得なくはありません。これが「咳をしたとき」「ブラボーと声を出したとき」のどちらに近いか。笑い方にもよりますが、私の直感では咳をしたときに近いと思っています。これがどのくらい影響があるのかわからない。

それは「本実験の限界」として記載もされています。「新型コロナウイルスの感染をきたす微粒子の大きさや数についての明確な情報がなく、微粒子数が少ないことで感染リスクがないと言い切ることはできない」。その通りですが、その通りだからこそ微妙な実験結果が出てしまったなと思います。

そして歌唱についてです。口元が一番多いのは誰が考えても予想通り、マスクなしで咳をしたときと同等です。他の測定個所は、100㎝前方を含めて「少数」となっているので最大2桁ですが、口元の測定値が大きすぎて他の測定値が読めません。口元以外の測定値が、マスクありの咳の前方とどちらが大きいか気になります。

歌ったのは3曲ですが、日本の童謡が2曲、海外の曲は第九の1曲です。この第九が原語か訳詞かがわかりません。西洋言語は唾が飛びやすいから感染しやすいと言われていたので、それを確かめたかったのですが、記載が見つかりません。もし追加実験を行なうことがあったら、日本の歌と西洋の歌と別々に試験してほしいと願っています。

芝居では動いて発声することが多いので、それでどうなるかは今回の実験では不明です。考察にも「より長時間あるいは複数名での歌唱による変化や、体の動きを伴ったり移動したりしながら歌ったりしたときの影響、マスクの効果など、さまざまな実験パターンの検討、追加実験の実施が必要である」と書かれています。

思い出すと、芝居を観ているとき、照明の加減で唾の飛沫が見えることがありますが、目に見えるくらい大きい飛沫はたいてい放物線ですね。上は目の高さくらいから下はあごの先くらいまで広がって、あとは下に落ちる。だいたい手を伸ばしたくらいの距離かもう少し先くらいで落ちていました。それなら全部そうかというと、普通の発声で飛沫がもっと小さい目に見えないときがわからない。今回の実験にある客席の「発声したとき」を当てはめていいのか、役者の発声はまた違った特徴を持つのか。動いて発生したり、換気の流れに乗るような小さい軽い飛沫だとどうなるのか。

あるいは、複数の場合にどうなるか。三密の条件でクラスターが発生しやすいことはわかっているので、1人の測定値では大丈夫でも、それが複数人重なると危険な閾値になることは想像できます。それはどのような場合か。

それは本実験の限界に「今回の実験は無風のクリーンルーム内という特殊な条件で行ったものである。コンサート会場や演奏場面では、空調や換気、複数の演奏者の相互の影響など、さまざまな要因が加わることに留意し、総合的に感染対策を検討することが望ましい」と記載があります。上演条件や環境が違いすぎるので、すべてのパターンを測定できるものではありません。それは承知の上で、上演の前提として、何か線引きできるような実験方法や、実用的な上演条件を考えられればよいのですが、今のところ思いつきません。

なお客席実験の結果を受けて総論に「マスク着用下であれば『1席あけた着席』でも『連続する着席』でも、飛沫などを介する感染のリスクに大きな差はないことが示唆された」と載せています。これは少なくとも芝居の客席については、私は不賛成です。上演中は静かにしていることが普通のクラシック音楽のコンサートの客席と、笑うこともあり得る芝居の客席とはすんなり比べられません。

あと、連続する客席を認めることによる誤ったメッセージを観客に伝える可能性があります。GoToキャンペーンで旅行して陽性になった人のコメントで「旅行に行こうか迷ったがGoToトラベルが始まったので大丈夫かと思い」というのがありました。そういう0か1かの判断で行動する人は世の中に一定数います。私も芝居以外の分野ではそういう行動をきっとどこかでとっている。観客の判断力を当てにした結果、マスクなしの客やおしゃべりする客を誘発することを懸念します。

何でそんなに心配をするのかというと、「赤鬼」を観たときにいたんですよ、マスクを外してお連れの方と話す老婦人の観客が、客席に。芝居が始まる直前にマスクは着けてはいましたけど。暑い中来場して疲れていたのかもしれませんが、それならロビーで休むなり、マスクを外しても話さないなり、あの時期にわざわざ劇場までやって来る観客にはそういう行動を期待したいじゃないですか。でもいたんですよ。入場時にマスクをチェックされる、上演時にはマスクを着ける、でもその間はマスクを外して話しても構わないと考えてしまう観客が。あるいは新型コロナウィルスの前の「芝居は友達と出かけて、待機時間はおしゃべりするもの」という行動様式が抜けない観客が。連続した客席を認めるとこういう観客がもっと増えると予想します。

上演側は観客を選べませんし、100人を超える利害関係の一致しない人間に、強制力なしで同じ行動は期待できません。少なくとも期待できない前提で運営を考えるべきです。その場合、自由席なら今よりもう少し幅を詰めるのはありだと思いますが、物理的に客席の距離を離しておくのは、興行がつらいところを申し訳ありませんが、感染防止への協力を呼掛けるのに有効な手段になっていると考えます。

報告書を読んで参考になりそうな情報を探していたのですが、むしろ悩みが深くなりました。

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