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2020年9月27日 (日)

客席制限緩和で上演側の鼻息が荒すぎて緊急事態舞台芸術ネットワークの呼びかけの意味がわからなくなっている

暫定緩和で劇場では観客席の制限がほとんどなくなったことを受けて、ガイドラインの改定が相次いでいます。緊急要望を出していた団体(なのにアナウンスしなかった団体)でもある緊急事態舞台芸術ネットワークも「『舞台芸術公演における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』(2020年09月18日改定)を公開しました」で改定を行なっています。このお知らせには本文のURLしか載っていませんが、トップページに新旧対照表のURLが載っているので、見比べやすいです。

それとは別に、トップページに関係者への呼びかけが掲載されています。

「座席数の規制緩和」は、私ら舞台芸術界にとって待望の、喜ぶべきことではあります。けれども、依然として「コロナ感染」という、ひとたび人間が抱いてしまった「恐怖心」は拭いさられておりません。私たちの舞台は、観客の心と共にあります。ゆえに、観客が心から安心できる劇場空間を提供することは、「規制緩和」があっても、いまだ喫緊の課題であります。とりわけ、「若き熱き演劇人」たちが正常な劇場に戻りたいと、そのハヤル思いは十分理解しておりますが、今しばらく、安心安全な公演体制を心がけることを、当ネットワークは呼びかけたいと思います。

最初は、クラシック業界のように段階的に客席を増やす方針なのかと思っていました。ところがそのあとの上演側の動きがすごい。全部追いきれませんので思いついたところで。

最初はパルコ劇場。トップページに短くも力強い文章が掲載されています。

当社主催公演におきまして、入場制限緩和に伴い、9月19日以降の全公演で座席を追加販売いたします。
感染予防対策には引き続き万全の体制で臨み、皆様に安心してご来場いただけるよう努めて参ります。

実際に、上演中の「ゲルニカ」は9月19日分から追加販売しています。

舞台『 ゲルニカ』9月19日以降の公演チケット追加販売決定!

9月19日以降の公演は、入場制限緩和に伴い、当初空席としていた座席を追加で販売いたします。
一般発売日:9月16日(水)12:00

Bunkamuraはシアターコクーン分より。上演中の「十二人の怒れる男」ではもともと9月11日から9月22日までを前期、9月24日から10月4日までを後期として販売を分けていましたが、これについては1席飛ばしを維持です。センターステージで追加販売が難しいのかもしれません。

・「11月末までの催物の開催制限等について」(令和2年9月11日付 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長事務連絡)の通り、9月19日以降の催物開催についての制限緩和に記載された十分な距離(舞台から観客の間隔2m)を遵守し、飛沫防止策を講じたうえで座席配置しております。
(中略)
・お客様同士の間隔を空けるため、座席を左右1席ずつ空けて販売いたします。
※本公演は、通常の客席ではなくセンターステージとなります。
※9月11日(金)~10月4日(日)の公演を前期と後期に分けて販売いたします。前後期ともに新型コロナウイルス感染症対策を講じ、左右1席ずつ座席を空け販売させていただきます。
※左右の空席の追加販売は行いません。
※一部、舞台と客席の間に透明のビニールシートを設置し、お客様にはフェイスシールドの着用をお願いいたします。

ただし10月24日から11月23日の「フリムンシスターズ」は解禁しています。念のために書いておくと、芸術監督になった松尾スズキの新作ミュージカルです。

※「11月末までの催物の開催制限等について」(令和2年9月11日付 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長事務連絡)に基づく制限緩和に伴い、「フリムンシスターズ」東京公演では9月19日のチケット一般発売日より、お客様同士の間隔を空けるために売り止めていた席も販売をいたします。(9/17更新)

東宝はシアタークリエで上演中の「Gang Showman」が9月18日から10月3日までですが、座席は1席飛ばしを維持です。

※新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため、座席の間隔を空けております。予めご了承くださいませ。

ただしその次の帝国劇場の「ローマの休日」が10月4日から10月28日までですが、解禁しています。予告通りと言えば予告通りです。

※感染予防対策を鑑み、前後左右1席ずつ座席を空け販売させていただいておりますが、今後の状況によっては当初販売をしていなかった前後左右の空席を追加販売する可能性がございます。
あらかじめ、ご了承ください。
※政府から発表されました入場者制限の緩和方針に基づき、一部のお座席は前後左右を空けずに販売させていただきます。何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。(9.18追記)

劇団四季は10月分までは維持、11月分から解禁です。「11月公演分チケットの販売について【9/25更新】」を公開しています。

劇団四季の11月公演につきましては、政府の制限緩和にともない、新しい座席位置にてチケットを販売させていただきます。

衛生対策のため、舞台前から数列を空けて販売予定です。
現在販売中の9~10月公演分とは座席位置が異なりますので、ご注意ください。
各公演の販売詳細につきましては、下記をご覧ください。

ちなみにこちらのページでは「※『コーラスライン』全国公演では、10月の一部公演につきましても、新しい座席位置にて販売させていただきます。」とあるので、10月分は様子見なのではなく、追加販売に対する混乱回避の面が強くて11月分からの解禁になったと推測します。

ホリプロは赤坂ACTシアターで「ビリー・エリオット」を9月11日から10月17日まで上演中(その後で大阪公演)ですが、1週間遅れて9月26日以降の公演を追加販売しています。

販売座席、追加のお知らせ

「ミュージカル『ビリー・エリオット』東京公演におきましては、政府並びに東京都による9月19日から11月末までの観客数の制限緩和を受け、これまで左右1席ずつ空けて販売していた未販売座席の一部を開放し、以下の要領にて追加販売をさせていただきます。

発売開始日時 9月25日(金)午前11時
発売対象公演 9月26日(土)~10月17日(土)までの全東京公演

上演に際しましては、制限緩和に伴い令和2年9月18日に改定された公益社団法人全国公立文化施設協会「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン改定版」及び緊急事態舞台芸術ネットワーク「舞台芸術公演における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に従い、更なる感染防止策を実施いたします。お客さまにおかれましては、引き続きご理解とご協力をお願い申し上げます。

ジャニーズは東京グローブ座扱いで世田谷パブリックシアターと共同で「エレファント・マン」を10月27日から11月23日で予定していますが解禁です。払戻しを用意しているところが親切と言えば親切。

配席について(2020.9.24更新)

本公演では、新型コロナウイルス等の感染症対策の一環として、前後左右1席空けた座席配置を予定しておりましたが、世田谷区の区主催イベントへの収容率制限が10月1日(木)より当面緩和されることに伴って世田谷パブリックシアター新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン改定を行い、販売席数を見直してチケットの発売を実施いたします。

世田谷パブリックシアターチケットセンターでは、これを受けて本公演の配席を見直した上で収容人数100%以下での追加席を設け、9月25日(金)アーツカード会員先行発売、9月26日(土)に一般発売を行います。

客席は100%以下の席数で販売をいたしますが、劇場ガイドラインに基づき、 舞台と客席の間は余裕を持った客席配置にしております。

すでにご購入されたお客様におかれまして、前後左右1席空けた座席配置ではなくなることへのご不安がある場合、下記の期間限定で払い戻しをいたします。
2020年9月25日(金)~10月9日(金)
『エレファント・マン』払い戻しフォーム

何卒ご了承いただきますようよろしくお願いいたします。

ちなみに現在上演中のケムリ研究室「ベイジルタウンの女神」はキューブ扱いですが、間に合う分は販売するようです。これは空けていた席を販売するだけでなく、販売済みの席も調整するようです。後から買ったほうが良席になるからキャンセルする、という行動を防ぐためかと想像しますが、それにしてもなんと手間な。

★イベント収容人数制限の緩和に関してのお知らせ(9/25 12:00付)
これまで新型コロナウイルス感染予防対策として、政府および自治体等による感染拡大予防のための各種ガイドラインに基づき、座席の間隔を空け、総席数の約50%以下での配席にしておりました。
此度の政府のイベント収容人数制限の緩和に伴い、東京公演の9/26(土)~9/27(日)計3公演に関して、総座席の80%まで上限を引き上げ、追加販売を行います。ただし、舞台との距離を確保するため、今までどおり1階席最前列は配席いたしません。また、感染予防対策も引き続き徹底してまいります。

追加発売を行いますと、これまでに購入されたお客様のお座席に関しましても、多くの席で前後左右にお客様がお座りになることになります。これにより、ご来場に不安を持たれるお客様に対して、当該の3公演におきましては、チケット払戻を下記の時間まで延長して受付いたします。
9/26(土)12:00開演の回→当日9/26(土)8:00まで
9/26(土)18:00開演の回→当日9/26(土)12:00まで
9/27(日)12:00開演の回→前日9/26(土)18:00まで
詳しくはこちらのページをご確認ください。

チケットの追加発売日は下記になります。
9/26(土)12:00開演/18:00開演、および9/27(日)12:00開演の計3公演
→ 9/25(金)17:00発売開始

追加販売のチケットは、下記の直前販売サイトでのみ発売を致します。こちらは追加チケット発売日以降、完売となりましても随時在庫を追加する可能性がございます。まだチケットをお持ちでないお客様は、どうぞこの機会をご利用ください。
https://ticket-every.jp/all/ticket/kemuri_no1

なお、追加販売でご購入されたお席に関しまして、S席は2階席もしくは1階後方席になります。A席はサイドのお席になります。また、制限緩和以前に購入されたお客様で、複数枚購入のお客様におかれましては、隣り合ったお席になるよう調整を進めておりますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

公立劇場つながりで新国立劇場に飛ぶと、「【重要】収容率緩和に伴うチケット追加販売及び11月以降の公演の座席について」を9月23日付で発表しています。

このたび、政府によるイベント収容率の制限が緩和され、東京都の確認も取れましたので、10月以降の下記の新国立劇場主催公演につきまして、間隔を空けるために売り止めていた席を追加販売いたします。

・演劇『リチャード二世』 
・【特別イベント】シェイクスピア歴史劇シリーズ映像上映
・演劇研修所『尺には尺を』
・バレエ研修所「バレエ・オータムコンサート2020」

各演目ともに、下記の追加販売日(アトレ会員先行発売日の前日)までは、これまでどおり「前後左右をあけた席配置(全指定席)」の販売をいたします。順次、売り止めていた席を、下記の追加販売開始日より販売いたします。購入方法等の詳細は各公演の公演情報ページをご参照ください。

この座席追加販売に伴うチケットの変更及び払い戻しはいたしませんが、体調不良や感染予防のためにご観劇を取り止められる場合、チケット代金は払い戻しさせていただきます。詳しくは新国立劇場における新型コロナウイルス感染拡大予防への取り組みと主催公演ご来場の皆様へのお願い別ウィンドウで開きますをご覧ください。

また、オペラ『夏の夜の夢』、バレエ『ドン・キホーテ』につきましても、間隔を空けるために売り止めていた席の追加販売を計画しておりますが、追加販売開始日等詳細につきましては、東京都の確認が取れ次第、後日お知らせいたします。
※追加販売が決定いたしました。詳しくは下記をご覧ください。(9月25日現在)

収容率緩和に伴うチケット追加販売について(オペラ『夏の夜の夢』、バレエ『ドン・キホーテ』)

既にご購入いただいているお客様には、多大なるご迷惑をおかけしますことを謹んでお詫び申し上げます。何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

追加発売日

購入方法等の詳細は各公演の公演情報ページをご参照ください。
公演名 アトレ会員先行発売日 一般発売日
演劇『リチャード二世』 
 10月2日~9日公演 9月28日(月) 10:00~ 9月29日(火) 10:00~
 10月10日~17日公演 10月5日(月) 10:00~ 10月7日(水) 10:00~
 10月18日~25日公演 10月14日(水) 10:00~ 10月15日(木) 10:00~
【特別イベント】
シェイクスピア歴史劇シリーズ映像上映 10月20日(火) 10:00~ 10月21日(水) 10:00~
演劇研修所第14期生試演会『尺には尺を』 10月20日(火) 10:00~ 10月21日(水) 10:00~
新国立劇場バレエ研修所公演
『バレエ・オータムコンサート2020』 10月28日(水) 10:00~ 10月29日(木) 10:00~

クラスターの発生した宝塚はどうだったかというと、これも解禁しています。本家で9月25日から11月1日まで上演予定の月組「『WELCOME TO TAKARAZUKA』『ピガール狂騒曲』」は、舞台から近い場所以外は解禁です。実際にクラスターが発生した花組「はいからさんが通る」は東京公演が10月9日から11月15日ですが、こちらも同様です。思えば、大手で真っ先に上演して真っ先に再中止になったのも宝塚でした。制限が緩和されて我慢するわけがありません。

○感染予防対策として、最前列ならびに花道沿いの座席販売は見合わせます。(座席間隔につきましては、左右1席を空けず通常通りの販売を行ないます)
○販売可能なチケット枚数は、ご観劇者様の把握を目的として、宝塚友の会会員先行販売は「(1公演につき)おひとり様1枚」とさせていただきます。また、先行販売でご購入いただける座席位置は通常の公演時と異なる場合がございます。

そんな中で松竹だけが違う動きを見せて「歌舞伎座へご来場の皆様へ」を公開しています。思いつく理由は、(1)10月の歌舞伎座公演は発表済みだし、新橋演舞場はジャニーズに貸しているし、一拍置いて様子を見る時間がある(2)NHKのニュースで歌舞伎再開が取上げられるくらい影響が大きかったので劇場公演の日本代表として万全を期す(3)観客も出演者も高齢化気味なので安全方面に倒さざるをえない(4)8月に危うく公演中止になりそうな経験をしたためリスク管理のための今の公演形態をしばらく続けたいがそれで満席にするのは無理がある、などが挙げられます。実際にはおそらくこれら全部を考慮したのだと思います。注目は歌舞伎座ではなく新橋演舞場で、スケジュールを変更した大竹しのぶ主演の「女の一生」が11月2日から11月26日まで予定されているので、こちらが解禁されるかどうかでしょう。ここが見送られて50%維持なら本物で、次は1月の新年公演と予想します。

 日頃より、松竹の公演にご来場いただき誠にありがとうございます。お蔭さまで、歌舞伎座は8月より公演を再開することができました。当9月も、引き続き無事に公演を続けさせていただいております。我が国も、いまだ新型コロナウイルス禍のなかにございますが、これも歌舞伎をご愛顧くださる皆様のお蔭と厚く御礼を申し上げます。

 さて、このたび、西村経済再生担当大臣より、イベント人数の規制緩和について発表がなされました。従来の入場人員数の50%以下という規制が解除され、歌舞伎を含めた伝統芸能や演劇界の興行は、100%の座席を使用することが可能になりました。あらたな一歩と存じております。

 この間、政府をはじめ関係機関、各自治体、保健所、医療関係の皆様のご努力に改めて感謝いたします。

 これを受け、松竹といたしましても100%の座席使用に向け、鋭意検討、検証を重ねております。しかしながら、興行再開からまだひと月半あまりの現状を考慮いたしますと、まずは、さらにお客様の安全安心を第一に考え、俳優及び舞台関係者の健康にも万全を期すことを徹底させていただくため、当面の間は、従来の50%の座席使用を維持し、引き続き感染対策を実施して参りたいと思うに至りました。今後もより慎重に、世の中の変化に見合うように劇場座席の規制の緩和を行っていく所存でございます。

 ご来場の皆様には、今しばらくご不便をおかけいたしますが、安心して劇場に足をお運びくださいますよう、何卒、松竹の感染症予防対策にご理解ご協力をいただきますようお願い申し上げます。

松竹株式会社
2020/09/18

ここまで見てきて冒頭に戻ります。「とりわけ、『若き熱き演劇人』たちが正常な劇場に戻りたいと、そのハヤル思いは十分理解しておりますが、今しばらく、安心安全な公演体制を心がけることを、当ネットワークは呼びかけたいと思います」とはいったい何なのか。

緊急事態舞台芸術ネットワークに賛同している団体が真っ先に我れ先にチケット追加販売に殺到する様子は十分見て取れました。緊急要望を出していたからには緩和されたら即座に活用するのも一貫しているといえば一貫しています。ただ、それなら「正常な劇場」とは何なのか。単に消毒や三密回避を表現しているのか。若くないおっさんおばさんなら構わないのか。全体にちぐはぐで、緊急事態舞台芸術ネットワークが、ネットワークとして機能していません。

そもそも設立趣意が「『緊急事態舞台芸術ネットワーク』は、今回の新型コロナウィルスのような緊急事態にのみ活動します」なので、もともと「業界」が存在しない人たちが、フリだけでもまとまった行動を取るのは無理だったのでしょう。むしろそんな人たちはガイドラインだけ提供して相手にせず、メインは個人や小規模な団体を相手に当座をしのぐための手法を整理して提供する、それが緊急事態舞台芸術ネットワークだったと考えるとしっくりきます。

そういう「業界」向けに、一時的な措置と最初から言われて、事務局がどんな方針で運営をしていたのか興味があります。演劇「業界」の新型コロナウィルス騒動を芝居にするなら、この中の人たちを中心にした視点でぜひ作りたいですね。

劇場の換気について劇場から説明が出る

暫定緩和で劇場では観客席の制限がほとんどなくなったことを受けて、ガイドラインの改定が相次いでいます。緊急要望を出していた団体でもある公益社団法人全国公立文化施設協会が「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインの改定」を行なっています。

新旧対照表がないので改定されたガイドライン本文を斜め読みしたところ、5月のガイドラインよりも記載が整理されており、なるほどこれだけ書直したら新旧対照表をつけるどころではないのはわかりました。その中に、劇場の換気についての説明が新たに掲載されていました(一部文字化け修正)。

③マイクロ飛沫感染防止策
 劇場、音楽堂等の公演会場における空気調和設備の機能や方式は、施設形態や建設年代により様々ですが、基本的にはいずれも各種法令等により規定の設備が設置(※)されています。この機能を十全に運用し発揮することにより感染防止を図ってください。
・空気調和設備の適切な点検を定期的に行い、施設が興行許可を取得した際の換気機能(会場内は一人あたりの換気量20m^3/時)を確保してください。
・空気調和設備の適切な運用により、効果的な循環量や換気量(吸気量に対して20~30%以上の外気)を確保してください。
・施設内は、空気調和設備の運用に加え必要に応じて各所の窓や扉の開放等により自然換気を図ってください。

※劇場、音楽堂等の公演会場における空調設備の特徴として、会場に静音性が求められることから空調機が離れて設置されており、間を長いダクトでつなぎ途中に消音器やフィルターが挟まっています。空調機に吸引された空気は、外気20~30%と混合されて、温度調整されて会場に戻されます。法規等で定められている一人あたり20m^3/時は外気分の量であり、全体の空調量としてはその3~5倍が循環しています。仮にマイクロ飛沫が発生しても、吸引されてダクト等を経由する中で、ダクト内のフィルター等に付着し、また希釈されるので、再び戻されるときには、感染リスクは低くなっているものと想定されます。また、一人あたりの空気の循環量としても一般のオフィスや病院等を上回るものがあります。

以前書いた換気の話が、劇場の設備と合わせて説明されています。1時間で2割から3割の空気が新しくなるなら、閉め切った状態だと3時間半から5時間で新しい空気に入替ります。呼吸されて空気が古くなっていく中で新しい空気の定義は何かと言われると難しいですが、私の理解を言葉にするならそういう表現になります。劇場全体では温度湿度調整のため今ある内気(と仮に呼ぶ)を再利用して混ぜて換気していますが、とにかく、外気を常に入れています。外気を取入れる量は以前書いた換気の話にまとめた通り法律で決まっていて、新国立劇場小劇場だと1時間で3回転できるくらいの外気が導入されている。私の再確認した理解を言葉にしなおすとこういう表現になります。

あとは休憩でロビー換気した分がどういう扱いになるかで、ひょっとしたら劇場が小さいとむしろ悪化する可能性がないかが気になりましたが、今回は割愛します。

実際には、フィルターの目の細かさと新型コロナウィルスの大きさとどうだとか、どこから吸ってどこから吐くのかによってマイクロ飛沫の広がり方も違うだろうとか、突っ込みは考えられます。前から知りたかった情報がようやく出てきたという感想ですが、欲を言えばこれは5月のころに出せるとよかった。

ただし、これだけの設備があるにも関わらず、クラスターが発生した実績があります。握手をした観客だけでなく、出演者もスタッフも陽性になっていますし、私もいろいろ推測はしましたが原因の特定には至っていませんし、原因が公表されてもいません。劇場本体の換気設備だけが充実していても不十分であることは、上演側も観客側も肝に銘じて、上演側はできる限りの対策を取ることを、観客側は観に行くからにはできる限り対策に協力することを、継続していくべきです。

<2020年10月11日(日)追記>

換気の話を読んでいたら読み間違えていることに気が付いたので訂正します。室内の空気をどれだけ再利用しても、とにかく外気の確保量が決まっていたらそれは入替ると考えてもいいはず。

自分たちの実験結果をガイドラインに反映させるクラシック業界

暫定緩和で劇場では観客席の制限がほとんどなくなったことを受けて、ガイドラインの改定が相次いでいます。緊急要望を出していた団体でもあるクラシック音楽業界が「屋内イベントの客席収容率緩和を受けて」というコメントを出しました。

今般、クラシック音楽界の悲願でもありました客席収容率50%の制限が撤廃されました。これも、クラシック音楽を愛する皆さまのご支援の賜物と、あらためて心から感謝申し上げます。

この間、私たちもガイドラインに則った公演運営を心がけ、厳密な科学的検証を行うなど、さまざまな取り組みを続けてまいりました。

緩和後は、100%の客席収容率を前提とした公演実施を目指し、段階的に進んでまいりたいと考えております。もちろん、科学的裏付けを得て、国による緩和がなされたとは言っても、元よりゼロリスクはあり得ず、不安を拭えないお客様がいらっしゃることも理解しております。そのためにも、私たちは適切な感染予防対策を徹底することを旨とし、お客様や演奏家と一つ一つ信頼を積み重ねながら前進したいと肝に銘じております。

また、今回の緩和を受けてクラシック音楽公演実施に関するガイドラインは改訂することになっておりますこともご報告申し上げます。

お客様と演奏家が同じ空間、同じ時間を共有して心通わせるクラシック音楽公演のかけがえのない瞬間。それを満場のお客様とともに迎えられる日が一日も早く訪れることを願っています。

一般社団法人日本クラシック音楽事業協会

会長 入山 功一

それでガイドラインの改定が行なわれました。新旧対照表もあるのでそちらをメインに眺めていると、客席緩和の反映だけでなく、その中でクラシック音楽業界は「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」で行なった実験結果も反映させたことがわかります。これまで「適切な距離」とか「十分な距離」と表現してきたところに、楽器別に1m、2m、5mといった具体的な数字が入っています。楽器別ではトランペットとトロンボーンが厳しいです。ただ客席との距離のほうが数字は多いです。芝居にも参考になりそうな声楽だと、

①舞台から客席最前列までの距離について、最低でも水平距離で2m以上の距離を置くよう努める。また、歌唱位置から客席最前列までの距離について、水平距離で最低でも5m以上の距離を置く。これらが困難な場合には、アクリル遮蔽板の設置などの同等の効果を有する措置に努める。
②複数の歌手が出演する公演ではすべての歌手は最低でも2m以上の距離を保持し、近距離で向かい合うスタイルや、体の動きを伴ったり移動しながら歌ったりする演出は避ける。
③合唱については、適切な感染予防対策の在り方を関係者にて引き続き協議を行うこととし、開催については時宜を得た判断を要するものとする。

とあります。生歌や大声だと、たしかに5mはほしいです。芝居だと小さい劇場では距離を三間取ったら客席がなくなるようなところもありますので、これはクラシック音楽の上演ホールを想定したガイドラインです。

緊急で要望を出したのに客席増を段階的に進めていきたいとは、慎重な考えで、最初は観客層が高齢なこともあるからかと考えました。ただ、演奏側で自分たちの試験した結果を取入れて距離を取ると、フルオーケストラのような演奏はまだできない、そこで逸らないほうがいい、という判断なのかもしれません。

クラシック音楽には全然行かないので、どこを見ると販売客席数の傾向が調べられるのかわからないので、実態は不明です。ひょっとしたら隣の芝生が青いだけかもしれません。が、ガイドラインの改定を読む限り、自分たちで調べた結果を適切に反映しているようです。

2020年9月15日 (火)

芝居の客席数の50%制限が9月19日から11月末まで暫定緩和される

いまだにこの手の資料がどこで発表されるのかわかっていないのですが、今回は「【事務連絡】9月19日以降における催物の開催制限等について」という題で内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」ページに載っていました。

厳密にはこれまで

①収容人数10,000人超⇒収容人数の50%
②収容人数10,000人以下⇒5,000人
(注)収容率と人数上限でどちらか小さいほうを限度(両方の条件を満たす必要)

となっていたところ、

〇 得られた知見等を踏まえた業種別ガイドラインの見直しを前提に、必要な感染防止策が担保される場合(別紙3「収容率及び人数上限の緩和を適用する場合の条件について」)には緩和することとし、当面11月末まで、以下の取扱いとする方針とする。
 ①収容率要件については、感染リスクの少ないイベント(クラシック音楽コンサート等)については100%以内に緩和する。その他のイベント(ロックコンサート、スポーツイベント等)については50%以内(※)とする。
 ②人数上限については、5,000人を超え、収容人数の50%までを可とする。

とされました。この中で収容率要件が100%に緩和されるイベントとして

大声での歓声・声援等がないことを前提としうるもの・クラシック音楽コンサート、演劇等、舞踊、伝統芸能、芸能・演芸、公演・式典、展示会等

と演劇が明記されています。たいていの劇場の収容人数は5000人以下で、その場合は「収容率と人数上限でどちらか小さいほうを限度」でも、客席数100%のほうが小さいほうに該当するため、全席販売が可能になります。

この資料は細かいところに注意書きがたくさんあって、私の理解では客席数(収容率)以外は、消毒飲食その他もろもろ何も緩和しませんという内容です。それでもあらゆる団体で一番気になっていた個所が暫定ですが元に戻ったので、上演側には喜ばしい内容でしょう。

私は実験の報告書を読んでもいまいち安心できなかった人なので、もう少し緩和を待ったほうがいいんじゃないかと考えていました。今後の動向に注目です。

2020年9月12日 (土)

緊急要望を出したのにニュースで公開しない演劇業界

前回紹介した「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」報告書を背景に、クラシック音楽公演運営推進協議会が「緊急要望:イベント(舞台芸術公演)における客席の収容率50%制限の撤廃について」を9月10日付で大臣宛に出しています。いろいろ限界や不明点も残っていますが、背に腹は代えられないから早く撤廃してくれ、という立場なのでしょう。それは後で引用する文面に色濃く出ています。

この要望が連名で出されていて、他に「公益社団法人全国公立文化施設協会」と「緊急事態舞台芸術ネットワーク」も名前が載っています。前者は以前調べましたが、国公立の文化会館とか文化センターとか名の付くような施設が参加する協会で、会場側の新型コロナウィルス対策を取りまとめた団体です。クラシック音楽の会場にもなることが多いでしょうから、連名するのはわかります。こちらも同じ要望を出したことを9月10日付で公開しています

で、緊急事態舞台芸術ネットワークです。主に芝居に縁の深い劇場、劇団、スタッフ業界が名を連ねています。「2020年2月26日に政府による突然の自粛要請を受けて以来、公演の中止延期が相次いだ舞台芸術界の損害の実態を把握するため、損害額調査を実施。その結果を受けて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による舞台芸術業界が危機的状況であるとの認識のもと、緊急的に形成されたネットワークです。」と書かれている通り、今回急遽集まった団体です。要望の根拠である実験に芝居業界は何も参加していませんので、少しでも大勢の要望としたかったクラシック業界のお声がけに乗ったのでしょう。

それはそれで構いませんが、この要望を出したことが、緊急事態舞台芸術ネットワークのWebサイトのどこにも載っていません。ニュース一覧のページで私が9月12日16時時点で見ている中で一番新しいニュースは8月31日付のものです。

緊急事態舞台芸術ネットワークの世話人は大物の名前ばかりが載っているので、事務局がどうなっているのかわかりません。そう思って調べたら事務局の情報がほとんど見つからないことに気が付きました。規約の中に「当団体の主たる事務所を東京都豊島区に置く」とあり、世話人の1人が野田秀樹なので、東京芸術劇場のスタッフが兼ねているのかと想像しますが、想像の域を出ません。

事務局仕事も事務局運営ならではの常識やノウハウがいろいろ必要でしょうから、設立から4か月ではなかなか慣れていないのかもしれません。あるいは、世話人が連名することを決めて事務局に連絡を忘れたのかもしれません。ここまでニュースに載っていない理由はさておき、とりあえず名前を連名に載せたからには、要望を提出したことをニュースとして急ぎ掲載したほうがよいです。

そして緊急事態舞台芸術ネットワークの設立趣意には「『緊急事態舞台芸術ネットワーク』は、今回の新型コロナウィルスのような緊急事態にのみ活動します。すなわち、舞台芸術全体が公演中止に追い込まれそうな時、もしくは追い込まれた時においてのみ活動します。主たる目的は社会と共にいかにして舞台芸術の公演を再開していくかにあります。」とあります。一段落したら名前を変えてもいいから、この団体と事務局は維持して、演劇業界を代表する業界団体に育てたほうがよいと思います。離合集散の激しい劇団が長期の参加団体に適しにくく、規模の大きい団体の声が大きくなるかもしれませんが、そうだとしても、劇場やスタッフまで広く職種を横断した業界団体があるのとないのとでは大きな違いなので。

以下が要望の内容です。

令和2年9月10日
新型コロナウイルス対策担当大臣
西 村 康 稔 殿

緊急要望:イベント(舞台芸術公演)における客席の収容率50%制限の撤廃について

公益社団法人全国公立文化施設協会
クラシック音楽公演運営推進協議会
緊急事態舞台芸術ネットワーク

新型コロナウイルス感染症による公演の中止や施設の閉館など舞台芸術関係が被った打撃に対して、国では補正予算を含む多様な支援策を講じていただいており感謝申し上げます。公立文化施設や舞台芸術諸団体としても、新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに則った対策を講じた上で、公演や施設の再開を進めているところです。

一方で、国では屋内イベントの客席収容率を一律で50%以内と示され、それを受け感染拡大予防ガイドラインでは「前後左右を空けた席配置」とし、公演再開においても50%以内の収容を厳守しています。しかしながら、多くの舞台芸術公演では、チケット販売における採算ラインを80%以上と見込んで、予算を立て制作されています。このまま収容率50%制限が続くならば、再開しても公演を続ければ続けるほど、赤字が積み上がることとなります。

クラシック演奏、ダンス、演劇、伝統芸能、演芸等の公演において観客は、原則として公演中は、定められた席に着席し、一定方向を向いて、相互の会話も行わずに観劇しています。先般、クラシック音楽公演運営推進協議会が提出公表した科学的検証においても、マスクを着用していれば、隣り合う配席でも、前後左右を空けた配席でも、感染リスクは変わらない結果が立証されております。また、劇場施設は建築法や興行法等により一定規模の空調設備が設置されており、屋内であっても決して密閉空間ではありません。

公演の中には、公演内容や観客層の年齢構成等、収容率において配慮が求められるものもありますが、公演主催者や施設管理者が、感染拡大予防ガイドラインに基づいて設定し、併せて「歓声や出待ちを控える」等の感染防止策を徹底することにより対策は可能です。

このまま不採算公演が続くと関係諸団体等の倒産や廃業、関係者の離職等による文化の継承の断絶等も想定されます。一定の条件下の舞台芸術公演において、感染拡大予防ガイドラインを遵守した上で、客席収容率50%制限の早期の撤廃をお願いいたします。

2020年9月 2日 (水)

読み方が難しい「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」報告書

クラシック音楽の業界団体が音頭を取って実験を行なうと発表していましたが、結果が報告書にまとまって公表されました。クリーンルームで測定して、どのくらい飛沫が飛ぶのかを調べ、今言われているソーシャルディスタンスが本当に必要なのかを検討するためです。丁寧に実験していて、これだけの実験を企画して実現できてしまう日本クラシック音楽事業協会という業界団体の実行力はすごいです。

ある程度の曲を演奏するには演奏する側も密が必要、客席も経済上の理由で密が必要、なのが背景なので、楽器の演奏だけでなく、歌唱と、客席についても測定しているのがポイントです。芝居の参考になる情報がないかと読んでみましたが、これがなかなか難しい。

先に載っているのが客席。クラシック音楽なので「発声したとき」「咳をしたとき」「ブラボーと声を出したとき」の実験が載っています。すべて1分間連続です。向きは前方が90㎝の間隔、横は48㎝の間隔で測定しています。新国立劇場の小劇場の座席スペースが「幅50cm、奥行91cm」、中劇場では「幅52.5cm、奥行95cm」なので、あの客席のサイズを想像してもらえばよいです。

マスクなしで咳をしたときの数値はやばいだろうというのは飛沫感染を警戒されていることからわかります。全般にマスクなしは論外です。ただ、マスクなしの発声と、マスクありの咳とが、倍くらいの差しかありません(マスクなしの発声のほうが大きい)。至近距離で15分間しゃべり続けても感染の可能性があるので、そこから半分になったとして、これが大丈夫か気になります。

というのも、1分間咳が続いたらちょっとロビーで水飲んで来いよと本人も思えますが、芝居だと「笑ったとき」があり得ます。1分間続けてとは言いませんが、短く笑いをつなげて爆笑に持っていったら、断続的に1分間というのはあり得なくはありません。これが「咳をしたとき」「ブラボーと声を出したとき」のどちらに近いか。笑い方にもよりますが、私の直感では咳をしたときに近いと思っています。これがどのくらい影響があるのかわからない。

それは「本実験の限界」として記載もされています。「新型コロナウイルスの感染をきたす微粒子の大きさや数についての明確な情報がなく、微粒子数が少ないことで感染リスクがないと言い切ることはできない」。その通りですが、その通りだからこそ微妙な実験結果が出てしまったなと思います。

そして歌唱についてです。口元が一番多いのは誰が考えても予想通り、マスクなしで咳をしたときと同等です。他の測定個所は、100㎝前方を含めて「少数」となっているので最大2桁ですが、口元の測定値が大きすぎて他の測定値が読めません。口元以外の測定値が、マスクありの咳の前方とどちらが大きいか気になります。

歌ったのは3曲ですが、日本の童謡が2曲、海外の曲は第九の1曲です。この第九が原語か訳詞かがわかりません。西洋言語は唾が飛びやすいから感染しやすいと言われていたので、それを確かめたかったのですが、記載が見つかりません。もし追加実験を行なうことがあったら、日本の歌と西洋の歌と別々に試験してほしいと願っています。

芝居では動いて発声することが多いので、それでどうなるかは今回の実験では不明です。考察にも「より長時間あるいは複数名での歌唱による変化や、体の動きを伴ったり移動したりしながら歌ったりしたときの影響、マスクの効果など、さまざまな実験パターンの検討、追加実験の実施が必要である」と書かれています。

思い出すと、芝居を観ているとき、照明の加減で唾の飛沫が見えることがありますが、目に見えるくらい大きい飛沫はたいてい放物線ですね。上は目の高さくらいから下はあごの先くらいまで広がって、あとは下に落ちる。だいたい手を伸ばしたくらいの距離かもう少し先くらいで落ちていました。それなら全部そうかというと、普通の発声で飛沫がもっと小さい目に見えないときがわからない。今回の実験にある客席の「発声したとき」を当てはめていいのか、役者の発声はまた違った特徴を持つのか。動いて発生したり、換気の流れに乗るような小さい軽い飛沫だとどうなるのか。

あるいは、複数の場合にどうなるか。三密の条件でクラスターが発生しやすいことはわかっているので、1人の測定値では大丈夫でも、それが複数人重なると危険な閾値になることは想像できます。それはどのような場合か。

それは本実験の限界に「今回の実験は無風のクリーンルーム内という特殊な条件で行ったものである。コンサート会場や演奏場面では、空調や換気、複数の演奏者の相互の影響など、さまざまな要因が加わることに留意し、総合的に感染対策を検討することが望ましい」と記載があります。上演条件や環境が違いすぎるので、すべてのパターンを測定できるものではありません。それは承知の上で、上演の前提として、何か線引きできるような実験方法や、実用的な上演条件を考えられればよいのですが、今のところ思いつきません。

なお客席実験の結果を受けて総論に「マスク着用下であれば『1席あけた着席』でも『連続する着席』でも、飛沫などを介する感染のリスクに大きな差はないことが示唆された」と載せています。これは少なくとも芝居の客席については、私は不賛成です。上演中は静かにしていることが普通のクラシック音楽のコンサートの客席と、笑うこともあり得る芝居の客席とはすんなり比べられません。

あと、連続する客席を認めることによる誤ったメッセージを観客に伝える可能性があります。GoToキャンペーンで旅行して陽性になった人のコメントで「旅行に行こうか迷ったがGoToトラベルが始まったので大丈夫かと思い」というのがありました。そういう0か1かの判断で行動する人は世の中に一定数います。私も芝居以外の分野ではそういう行動をきっとどこかでとっている。観客の判断力を当てにした結果、マスクなしの客やおしゃべりする客を誘発することを懸念します。

何でそんなに心配をするのかというと、「赤鬼」を観たときにいたんですよ、マスクを外してお連れの方と話す老婦人の観客が、客席に。芝居が始まる直前にマスクは着けてはいましたけど。暑い中来場して疲れていたのかもしれませんが、それならロビーで休むなり、マスクを外しても話さないなり、あの時期にわざわざ劇場までやって来る観客にはそういう行動を期待したいじゃないですか。でもいたんですよ。入場時にマスクをチェックされる、上演時にはマスクを着ける、でもその間はマスクを外して話しても構わないと考えてしまう観客が。あるいは新型コロナウィルスの前の「芝居は友達と出かけて、待機時間はおしゃべりするもの」という行動様式が抜けない観客が。連続した客席を認めるとこういう観客がもっと増えると予想します。

上演側は観客を選べませんし、100人を超える利害関係の一致しない人間に、強制力なしで同じ行動は期待できません。少なくとも期待できない前提で運営を考えるべきです。その場合、自由席なら今よりもう少し幅を詰めるのはありだと思いますが、物理的に客席の距離を離しておくのは、興行がつらいところを申し訳ありませんが、感染防止への協力を呼掛けるのに有効な手段になっていると考えます。

報告書を読んで参考になりそうな情報を探していたのですが、むしろ悩みが深くなりました。

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