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2020年12月20日 (日)

東京で額面年収650万円の4人家族では芝居を観る余裕はない

東京地方労働組合評議会を略して東京地評と呼ぶそうですが、そこが興味深い試算をしていました。東京で練馬に夫婦と子供2人の4人家族で済む場合、最低でも額面650万円が必要という試算です。同じ試算に八王子に済む場合も載っていますが、ほぼ家賃の差額なので、練馬の金額で書きます。

個別の項目の妥当性は「30代東京の子育て世帯は年収650万円必要という労働組合調査が妙に納得感高い」という説明をしているサイトを見つけました。タイトルの通り、そんなに荒唐無稽な試算でもない、という内容です。ざっと読んだ感じ、私もそんなに無茶な計算はしていないと判断します。

注意しないといけないのは、教養娯楽費のカテゴリーはテレビやパソコンが入っていて、全額そちらに回るものではないことです。それらしい項目だと映画その他で1人1か月2000円、本は家族全体で1か月1000円、テレビゲームがソフト込みで家族全体で1か月に直すと約700円です。本とテレビゲームを1人当たりに直すと425円です。映画と足して切りのいいところ2500円にしましょう。

そしてその他のカテゴリーに小遣いが入っています。子供は世代によって幅がありますが、夫婦の小遣いは1人1か月6000円です。

これらを足すと、1か月で何とかなる金額は8500円です。これで芝居を観られるか。観られませんね。子供の年齢によっては出かけるときにどこかに預ける必要もありますが、そこはとりあえず置くとしても、金銭的につらい。

子供がいなければ大幅に変わりますが、でもそれは、子育てが難しいほど収入が低い可能性もあるわけです。余裕があるとは限りません。ならば稼ぎが多ければよいかというと、中途半端に多ければ出費も増えるでしょうし、もっと多ければそれはそれで娯楽の選択肢が広まって芝居が選ばれる可能性が少なくなります。旅行の回数が増えるとか、何なら海外で芝居を観てしまうとか。

とにかく、1本8000円の芝居なんてこのモデルの人たちには論外です。かといって、それより安いラインで玉石混合に挑むのは慣れていないと見極められない。つまり、芝居はファミリー層にまったく向いていない娯楽ということです。

そこを無理やり芝居に向けるにはどうするか。わかりにくいとか上演時間が告知されないとか、そういう内容に関する話は一切無視して、芝居をほとんど、あるいは全く観たことがなくて金銭的に娯楽費が厳しい人たちにどうするか。

とりあえず思いついたのは、毎月芝居100円の日を作ることです。1000円ではありません。ワンコインで500円でもありません。宣伝費込みで100円です。そもそも交通費や前後で外食することも考えたら負担はもっと増えますので。100円渡り鳥を作らないように、その地域のその日のその時間帯の芝居を一斉に100円にする。文化庁の補助金を細かく割りふらないで全部突っ込む。チケット販売も第一希望から第五希望まで設けて一本化して、転売屋の懸念を減らす。一般客が参戦するのは我慢を呼掛けるけど最悪あきらめる。それを12か月続けて、とにかく年に1本は観た人の数を増やす。その日にあたるか当たらないかでもめると困るので、対象は1か月以上のロングランをしている公演とする。大規模公演が得するじゃないかというなら、一度も芝居を観たことのない素人が最初に観る一本として公演期間1か月未満の芝居はふさわしくないと却下する。東京贔屓と言われたら他の大都市圏でも検討するけど最初は集中投下しないと効果がわからないので中規模都市以下は却下する。

補助金の扱いの難しさとは別に、その地域の芝居全部で足並みを揃えないといけない難しさもあります。どちらかというと足並みを揃えるほうが難しいかもしれません。1本観たからと言って継続的な観客になるとも限りません。

ただ、冒頭の試算がマジョリティとは言いませんが、東京に核家族で住むための家計の厳しさは非常に伝わりました。それなら100円デーくらいやらないと、家計の厳しい人たちには一度も観てもらえないだろうな、他の施策でどれだけがんばっても接点が作れないなら観客を増やせないだろうな、というのが、冒頭の試算を読んだ私の感想です。

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