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2021年1月13日 (水)

緊急事態舞台芸術ネットワークのプレスリリースは突っ込みどころが多すぎて出さないほうがよかったんじゃないか

プレスリリース(2021.01.07)『一都三県を対象とした緊急事態宣言発出を受けて』」が発表されていました。全文は末尾に記録しておきます。

大前提として、いま緊急事態宣言が出された背景をまとめます。

医療の現状は、(1)感染が急激に広まっているため医療機関が追いつかず、(2)どのくらい追いついていないかというと新型コロナウィルスに感染した人ものの入院できずに自宅待機していたら急変して亡くなる人が出てくるくらいで、(3)追いつかない医療機関が他の病気の担当をしている医者や看護師や入院部屋まで新型コロナウィルス対応に投入したことで普通の怪我や病気の診療まで影響が出ている、(4)それでも追いつかない中で医療関係者が感染して入院中の患者の面倒を見ることにも支障がでかねない、です。

ついでに書くと、大阪では1月9日に基礎疾患のない30代の人が新型コロナウィルスで亡くなっています。海外では第1波のころから10代でも亡くなった人がいます。フランスだったかな。単に死に至る確率が年齢で違うだけで、若ければ死なないわけではありません。

ここまで新型コロナウィルスが広まった原因として、(1)専門家は三密をさらに具体化した5つの場面を挙げており、(2)中でも複数人で飲食したときにマスクを外して会話することで飛沫感染することが原因の具体的な場面として一番目立ち、(3)それで飲食店を来客する客に注意を呼びかけても効果がなく、(4)飲食店で感染した人が一部は症状が出て一部は無症状のまま同じ行動または家庭内で感染を広める、と指摘されました。なので飲食店に特化した補償を用意して一律で営業短縮や自粛をお願いしています。

ただし、感染の原因は会話による飛沫感染なので、もちろん飲食店には限りません。自宅でパーティーをしてマスクなしの会話をしても感染しますし、カラオケでマスクを外して歌っても感染します。そしてマスクなしの芝居の稽古や公演でも感染します。もうリンクするのも面倒なくらいこのブログでは取上げてきました。しかも絶対取りこぼしがあるのでもっと多い。

医療関係者や政治家から見たら、感染者数(陽性者数)が増えることは、原因が何であれ抑えたいわけです。一方で、用意できる補償の元金は限られています。しかも数の多い飲食店にも関わらず、自転車操業が多いのでそれなりの補償を用意しないと営業を控えてもらえません。そこをケチった結果、感染抑制の効果がどこまで変わるかは不明ですが、飲食店以外で営業させろという「業界」なら営業させて補償をケチるという発想が、元金の足りない政治家から出てきてもおかしくありません。

ここまでが私の理解している背景です。その目でプレスリリースに突っ込みを入れます。

「把握する限り、現在まで、劇場内観客席でのクラスター感染は起きておりません*。」

観客では起きていないかもしれませんけど、公演関係者間では多数起きています。

「舞台芸術界も、多くの業界と同様に、大元からの受注で生計を立てる更に『中規模』『小規模』のスタッフ会社やフリーランスの存在があります。」

契約書を結んでおいて中止になったイベントでも大元は予定通り支払うという商慣習に改めることで、スタッフ会社やフリーランスを守る、代わりに大元が補償を受取る、ということを交渉するつもりはありませんか。

「今般の宣言によるイベント開催制限の厳格化についても、真に実効的で必要な制限にとどめるよう政府・自治体にも要請を行って来ました。」

対観客の対策に尽力したことは認めますが、その結果、関係者間の感染を控えるほうが今では真に実効的になりませんか。稽古や演出での対策は取られていますか。

「同時に、政府に対して、現場の困窮と新たに発生する損失への必要な支援を求めてまいります。」

うん、商慣習を改めることで(略)。

「舞台芸術も含めて『文化』は、失ってはいけない人間の『心』そのものであると思っております。」

自分たちで芸術を名乗るのはわかりますが、文化はここでは使わないほうがいい。今の芝居が文化かよ、という突っ込みとか、そもそも文化ってなんだよ、という根源的な問いとは別に、人間がいればそこに文化は勃興します。少なくとも、芝居だけが文化ではないし、新しい文化は今後も次々と生まれてきます。この文章は文化を信じていない人の言葉、文化をダシにした人の言葉に読めます。

「引き続き社会に寄り添いながら、安心安全に「劇場の灯」を灯し続けることに一意専心してまいります。」

結局補償を求めたいのか、公演を続けたいのか、どっちかわかりません。通常通り公演させろ、補償もよこせ、ならさすがに図々しいです。

まあここまではいいです。私が書いた突っ込みは、内情を知らない人間による単なるいちゃもんです。プロだったらそれで商売しているので死活問題でしょう。それであの手この手を訴えるのは不思議ではありません。あるいは緊急事態舞台芸術ネットワークに参加した団体間で意見が対立して集約しきれなかったことによる苦肉の文章かもしれません。

だとしても、だとしても、本当にだとしても。以下の一文はさすがに呆れました。呆れすぎてむしろ興味が湧きました。

「*昨年7月に演劇公演のクラスターとして報道された新宿の事例は、その後の調査報告で来場者参加のゲームイベントであったことが判明しています」

この公演を直接観たわけではありませんけど、まあまあ熱心に調べました。だから出演者と観客とが握手したのは駄目だったとか、そもそも稽古場の段階でクラスターがあったらしいとか、意見はあります。

ただ、演劇は自由度の高い表現を許容しており、むしろ自由度が高すぎて問題になることがしばしばある「業界」だと過去の事例から思っていました。「最初20分お芝居をして、そのあと1時間『人狼ゲーム』。そして最後に歌があるというトータル2時間くらいの舞台」だったとしても、脚本家演出家を立てて稽古して劇場で6日間公演したなら演劇でいいではないですか。それを何ぞやゲームイベントとは。せめて「本件を他山の石にしてさらなる対策に取組んできた結果、その後の公演では対観客のクラスターが抑えられています」くらいの言い回しは思いつかなかったのでしょうか。

いくら高尚なことを言ってきても、文化や芸術と名乗っても、迷惑者と認識した団体にはこの扱いです。村八分どころか村十分です。くさいばっちいあっち行けシッシッ。それとも蓮の花と文化芸術は泥の中からこそきれいに咲くと高尚に言い換えますか。

普段立派な人間でも食い詰めたらどうなるかわからない、文化芸術より食い扶持が大事、の実例を自分たちで体現しています。そうではないというなら、文化芸術に上下をつけて俺たちが上だと宣言しています。新型コロナウィルス騒動が一段落した暁には、ぜひ当事者たちにこの経緯と心境を実演していただきたいです。

劇団の分裂は日本のお家芸なので、この後「あれだって演劇だ」「いやイベントだろ」で喧嘩して緊急事態舞台芸術ネットワークが分裂、なんてことにならないようにご注意を。

いや本当、このプレスリリースで触れないわけにはいかないのはわかります。でもこの記載を誰か止めなかったのか、そもそも気が付かなかったのか。人に観てもらう商売なのになぜ世間の目に対して鈍感なのか。一番気になるのはそこです。

以下プレスリリースの本文です。

報道ご関係各位

一都三県を対象とした緊急事態宣言発出を受けて

2021年1月7日
緊急事態舞台芸術ネットワーク

 このたび菅義偉内閣総理大臣により発出されました「一都三県への緊急事態宣言」を受け、緊急事態舞台芸術ネットワークといたしましても、舞台芸術活動従事者に対して、より徹底した感染対策を講じ、お客様により安心安全な鑑賞環境を提供していただくよう、今一度、呼びかけを図ってまいる所存です。

 国内223の舞台芸術関連団体が参加する当ネットワークでは、昨年5月の発足当初より、感染拡大防止のためのガイドライン作成や周知、各種支援策に関するサポートなどを行ってまいりました。とりわけて、公演における感染対策徹底の呼びかけについては、恐らく各業種でも最も厳しいレベルの対策を取っており、把握する限り、現在まで、劇場内観客席でのクラスター感染は起きておりません*。
 これも、業界全体が常にガイドラインを遵守し、感染予防に努力を傾けてきたこその成果と考えております。なお、イベントにおける感染が低リスクであるという事実については、昨日6日、西村康稔内閣府特命担当大臣が定例会見にて、スーパーコンピューター「富岳」での科学的検証を引かれ、示されている通りです。

 一方で、昨年2月のイベント自粛要請に端を発する、公演延期や中止に伴う金銭的・人的損失そのものは、拡大の一途を辿るばかりです。舞台芸術界も、多くの業界と同様に、大元からの受注で生計を立てる更に「中規模」「小規模」のスタッフ会社やフリーランスの存在があります。公的その他さまざまなご支援には感謝しつつも、いまもって膨大な数の人間が、生活に困窮し続けていることが現状なのです。
 今般の宣言によるイベント開催制限の厳格化についても、真に実効的で必要な制限にとどめるよう政府・自治体にも要請を行って来ました。発出を受けてまずは各項目を精査し、具体的な対応策を検討、構築してまいりますが、同時に、政府に対して、現場の困窮と新たに発生する損失への必要な支援を求めてまいります。

 今、崩壊しかかっている、いかなるところのいかなる人々の日々の営みも、ともに回復されていかなくてはならない、その思いは従前のままです。「密」を避けるがゆえに「鬱」になりつつある社会において、舞台芸術も含めて「文化」は、失ってはいけない人間の「心」そのものであると思っております。舞台芸術の力が多くのお客様の日々に潤いをもたらすと信じ、引き続き社会に寄り添いながら、安心安全に「劇場の灯」を灯し続けることに一意専心してまいります。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 末筆ながら、日夜、新型コロナウイルスと向き合う医療従事者の皆様、そして感染終息に向けてご尽力されておられる皆様お一人おひとりに心から御礼申し上げます。

*昨年7月に演劇公演のクラスターとして報道された新宿の事例は、その後の調査報告で来場者参加のゲームイベントであったことが判明しています。https://www.zenkoubun.jp/info/2020/pdf/0803covid_19.pdf

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