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2021年4月17日 (土)

何となくミスリードっぽいので内容を読んでみたい日経の文化芸術支援金記事

日経の有料記事ですが「不要不急とよばれて コロナ時代の芸術」という5回シリーズの記事がありました。

不要不急とよばれて(1) コロナ禍 崖っぷちの芸術界 資金繰り悪化 活動に制限
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(2)ライブで配信、表現革新 演劇「生中継」がひらく未来
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(3)演奏会、手拍子するのは分身ロボット 時空を超えて
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(4)紙の公演チラシ、どこまで必要? 舞台裏のデジタル改革
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(5)文化は単なる娯楽か 見取り図なき支援策からの脱却を

その中の5回目が、ブログのタイトルに取上げたミスリードっぽい記事です。

「要するに6000件、一気に切り捨てたってことですよね?」

3月15日の参院予算委員会、共産党議員の吉良佳子が文部科学相の萩生田光一に詰め寄った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて文化庁が文化・芸術関係者向けに用意した支援金を巡り、5日時点で約8000件あった審議中の案件のうち、1週間で約6000件が不採択になっていたことが判明したためだ。

公開されている冒頭だけ読むと穏やかではありませんが、有料なので全文読めない。うっかり誰かが全文公開していないかと思いましたが見つからなかったので、国会の議事録を探してみたら、ちゃんとテキストで公開されているのですね。日付と衆参と委員会まで特定できると検索早かったです。

この中の発言番号435から下の話ですね。飛び飛びで引用します。(略)記載も省略しますので気になった人は原文にあたってください。

443 吉良よし子
 昨年十二月の締切りまでの間に、申請件数は延べ九万六千三百四件、これまでに交付決定した累計件数は七万九千七百七十一件と伺っていますが、こうして、様々問題はあるものの、多くの文化芸術に携わる人たちの支援につながっていることは大事だと思うんです。ただ、中には、申請しても交付を受けることができなかった、若しくはもう諦めてしまった方がいると聞いています。
 確認したいと思います。文化芸術活動の継続支援事業に申請した人のうち不交付になった件数、そして取下げが行われた件数、両方併せてお答えください。

444 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 文科省としては、文化芸術活動の継続支援事業を実施し、これまで四回にわたり公募を行い、活動をされている実演家や技術スタッフの方々や文化芸術団体に対し、その活動継続や技能向上に向けた積極的な取組への支援を行ってまいりました。
 文化芸術活動の継続支援事業にはこれまで延べ九万六千三百件の件数の申請があって、そのうち、審査に必要な情報について数回の御連絡をさせていただいたところ御回答が得られなかったものなど、不交付決定となった件数は約一万二千件、申請要件に適用しないことなどを御理解され取り下げられた件数は約四千六百件となっております。

445 吉良よし子

○吉良よし子君 不交付が一万二千件、そして取下げが四千六百件なんですけれども、二万件近くが支援が届いていないわけですけど、これ取り下げたのは、制度の対象にならないからではなくて、諦めたからなんですよ。一番の問題は、交付までに時間が掛かり過ぎるからなんです。

447 吉良よし子

○吉良よし子君 十七件。これ、おかしな話なんです。先週の、一週間前の三月五日時点では八千件、不交付、まだ審査案件があったんです。それが一週間でゼロに近くなった、十七件になった。どういうことですか。

448 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 文化庁においては、これまで、毎週金曜日の十四時頃に実施事務局から交付決定の情報をメールで受けて、十七時頃にホームページを更新しています。実施事務局で、これまでは十四時の時点で各個人等への通知基準が、通知準備が整った状態であったため十四時以降の報告を受けていましたが、今回は件数が多く、その後に不交付決定の通知準備が整ったため各個人等に通知することとしましたが、文化庁への報告が遅れたことが原因と承知しております。

449 吉良よし子

○吉良よし子君 いや、そうじゃないです。八千件あったのが一週間で十七件になった。七千件近く一気に、何、交付決定したということですか。どうなったんですか。

452 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 全て交付に決定したんじゃなくて、八千件のうち約六千件が交付決定をしていて、二千件は……(発言する者あり)逆。二千件が交付決定しておりまして、六千件が対象外ということになると思います。

453 吉良よし子

○吉良よし子君 要するに、六千件、この一週間で一気に切り捨てたということですよね。これ、余りにひどい話だと思うんですよ。連絡待ちながら一生懸命慣れない申請作業をしていた文化芸術関係者の皆さんが心を折れながらも頑張っていたのに、六千件一気に不交付決定。
 もうそもそもね、この二月末までに何かやれと、そういうやり方が問題なんですよ。この期間内に新しい公演行うのがどれだけ大変か。持ち出す資金のない若手のアーティストの皆さんは、もうすごい高いハードルで、それでも頑張って申請してみたけど、交付決定がなかなか来ないから諦めると、そういう悪循環になっているんですよ。申請すること自体できなかったという話も聞いています。

455 吉良よし子

○吉良よし子君 違うんです。感染対策なども工夫して様々やっていらっしゃるんですけど、今言っているのは、公演すること自体が大変だ、そういう話なんです。モチベーションの問題もあるし、何より手元に資金がない、もう貯金崩して生活されているというんですよ。やっぱり今を支える給付が必要じゃないか、現場の声なんです。
 使途を問わない給付制度つくってほしい、菅総理、いかがですか。

456 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 先生の熱いお気持ちは分かりますし、我々もその文化を守っていこうという思いはあるんですけれど、その職業だけは給付をするということにやっぱりできないと思います。その一定のルールの中で、国民の皆さんの税金ですから、その特別な文化活動で、我々が会社に勤めている人たちとは違う働き方があるということが分かって、例えばフリーターの人たちへの支援策は昨年講じることができました。
 もちろん文化には様々な形態があること分かっておりますけど、使い勝手のいい給付で、現金渡してくれと言われても、それはなかなか、その人を特定して、なぜその人なのかということを証明するのがすごく難しいと思うからこそ、先ほど申し上げたような一定の条件の中で活動している人に給付をしていきたいと、こう思っているところです。

457 吉良よし子

○吉良よし子君 それでは文化の灯は消えてしまうんです。質の高いパフォーマンスを支えるためには、日々の暮らし、生活を支えることがどうしたって不可欠なんです。

「昨年十二月の締切りまでの間に、申請件数は延べ九万六千三百四件、これまでに交付決定した累計件数は七万九千七百七十一件」と質問した本人が発言していますので、82%に交付されています。支援自体はまずまず機能しているほうだと思います。

そして「先週の、一週間前の三月五日時点では八千件、不交付、まだ審査案件があったんです。それが一週間でゼロに近くなった、十七件になった。どういうことですか。」に対しては「実施事務局で、これまでは十四時の時点で各個人等への通知基準が、通知準備が整った状態であったため十四時以降の報告を受けていましたが、今回は件数が多く、その後に不交付決定の通知準備が整ったため各個人等に通知することとしましたが、文化庁への報告が遅れたことが原因と承知しております。」とあります。なので申請者からはまとめて切捨てのように見えてしまいますが、実際は内部の報告と集計の遅れですね。

記事を読めていませんが、交付済の数字を取上げずに不交付の数字だけを取りあげたのであれば、煽り気味かなと思います。

そのうえで、Twitterで記事説明ないかと思ったので探しました。以下2件が興味深かったです。

KZ78@kz78_b
"混乱の原因は支援が損失補償ではなく、これから実施する事業への「補助金」だったからだ。どんな事業で、どんな経費がいくらかかるのか、事細かに内訳を出す必要がある。" / “新型コロナ: 文化は単なる娯楽か 見取り図なき支援策からの脱却を: 日本経済新聞”

印度洋一郎 Yoichiro Indo@ven12665
この記事の中でほぉと思ったのは、

「日本では文化芸術が産業として分析されていないので、国も業界のどこに金を出せば回るのかがわかっていない」

という指摘。

文化芸術関係の人たちに損失補償を出すとしたら、他の仕事をしている人達への損失補償とどうやって区別するかはとても難しい問題です。だから損失補償ではなく補助金という形にせざるを得ない。それが「我々もその文化を守っていこうという思いはあるんですけれど、その職業だけは給付をするということにやっぱりできないと思います。(略)もちろん文化には様々な形態があること分かっておりますけど、使い勝手のいい給付で、現金渡してくれと言われても、それはなかなか、その人を特定して、なぜその人なのかということを証明するのがすごく難しいと思うからこそ、先ほど申し上げたような一定の条件の中で活動している人に給付をしていきたいと、こう思っているところです。」という答弁になる。野次馬としてよくわかる理屈です。

そのうえで、芝居の世界については以前「新型コロナウィルス騒動で日本の芸術団体は団結していないし演劇業界はぶっちぎりで団結していないことがわかったという話」を書きましたが、そもそも業界が存在していない、という認識です。分析しても頭を抱えてしまうと思います。観光業界のGoToキャンペーンにはいろいろ批判がありましたが、今になって考えてみると、観光地と宿泊施設だけでなく交通や食事や土産その他もろもろ裾野が広いからとにかく客に来てもらう必要がある、そのため客側に来たくなるようなインセンティブを出すことで観光業界全体に金が回る、という分析が済んでいるのでしょうね。

そしてもうひとつ、Twitterで興味深い意見を見かけたので引用します。

あらかわ(荒川)@bay@39dayzero
返信先: @fukuikensakuさん
これに関しては「事業だから助ける、事業として助ける」が単独で成り立ち得るにも関わらず、文化・芸術という質を強く含めたために複雑化させてしまったように感じます。文化・芸術活動は事業で無く、一般人、普段、多数の人、多分野で関われるのに、支援の主張が一部の人の選民意識で目立った。

あらかわ(荒川)@bay@39dayzero
返信先: @39dayzeroさん, @fukuikensakuさん
多様性を掲げながら他分野多分野との関係性を外し単独で優位性が存在するような主張となる「文化・芸術だから助けろ」というのはもはや選民意識、差別意識とも言えるかもしれない、というのは念頭におくべきだと感じます。

私が「不要不急で無駄だからこそ芝居は文化たりうる」で書ききれなかったところがはっきりまとまっています。事業という言葉を使えば、業界の存在しない業界でも扱いようがある。その国からの答えが文化芸術支援金による事業の補助金ですよね。ついでに書くと、損失補償型でも生活費には使えないのがドイツ式であることは「新型コロナウィルスの補償問題で本当にドイツがよかったのか疑問になる記事から転じて文化芸術復興基金の話まで」に書きました。この時期に日本でも「業界」で代表者を立てて陳情した結果、500億円で79771件が補償されたのだから、まずまずの成果ではないですか。

共産党の吉良佳子議員が「使途を問わない給付制度つくってほしい」と求めるのは、議員だから今まだない立法をするのが仕事ですし、発想は共産党だからと言ったらそれまでですが、まあちょっと、他の一般人との兼合いを無視しすぎです。答弁を引出すための駆引きではなく、絶対わざとでしょう。

加えて日経の「不要不急とよばれて」という連載タイトル自体、経済新聞のくせに事業分析の視点も産業分析の視点も足りなくないか、自分たちで一度分析してみたらいいのに、と記事も読まずに放言しておきます。

2021年4月14日 (水)

渋谷で公演を控えて新型コロナウィルス2件

最初にシアターコクーン「【重要】『シブヤデアイマショウ』出演者 新型コロナウイルス感染に関するお知らせ」より。山本耕史が陽性です。

シアターコクーン公演『シブヤデアイマショウ』(4月18日~25日)の日替わりゲストとして出演予定の山本耕史さんにつきまして、PCR検査の結果、陽性であることが4月12日(月)に判明し、新型コロナウイルスへの感染が確認されました。現在、ご本人に症状は出ておりませんが、療養を優先いただくため、本公演は降板することとなりました。

公演を楽しみにしてくださっているお客様には多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしますことを心よりお詫び申し上げます。このたびの降板に伴う払い戻し方法の詳細は決定次第、ホームページ等でご案内いたします。なお、稽古場へは合流前でしたため、他出演者やスタッフとの接触はございません。

ゲスト出演を予定しておりました4月23日(金)および25日(日)の公演は山本耕史さんに代わり、大野拓朗さんが出演いたします。

弊社におきましては引き続き新型コロナウイルス感染症対策を徹底し、お客様、出演者、運営スタッフならびに従業員の健康と安全の確保に努めてまいります。

2021年4月13日
東急文化村

個人的には日替わりゲストだとずいぶん遅い稽古参加だなという感想です。が、本人無症状、かつショー形式の舞台への日替わりゲストなので公演への影響は避けられた、と影響を抑えられているのは何よりです。

もう一方はPARCO劇場「『月とシネマ』開幕延期及び一部公演中止のお知らせ (4月13日20時公開)」より。こちらは貫地谷しほりが体調不良を伴う陽性です。

PARCO劇場オープニング・シリーズ「月とシネマ -The Film on the Moon Cinema- 」につきまして、4月17日(土)の初日に向け、キャスト・スタッフ一同準備を進めて参りました。

稽古中より感染対策を徹底し、4月7日(水)に実施したPCR検査では全員陰性を確認しておりましたが、4月10日(土)、出演者の貫地谷しほりさんが体調不良となり、再度PCR検査を行いましたところ、新型コロナウイルス陽性を確認いたしました。
なお、それを受けて改めて4月12日(月)にキャスト・スタッフ全員のPCR検査を行い、貫地谷さんを除く全員の陰性を確認いたしております。

この状況を受け、貫地谷しほりさんの回復をお待ちすると共に、他キャスト・スタッフにつきましては陰性を確認できておりますものの濃厚接触者と認定される可能性がございますこと、ならびに公演の準備状況などを鑑みまして、4月17日(土)の開幕は延期、4月28日(水)までの公演を中止とさせていただきます。4月30日(金)以降の開催につきましては、改めまして発表させていただきます。

4月17日(土)~28日(水)のチケットをお持ちのお客様には払い戻しを承ります。詳細は改めてPARCO STAGE公式サイト、及び公式SNS等にてご案内させていただきますので、お手元のチケットは無くさずにお持ちくださいませ。

この度は舞台をお待ちのお客様にはご迷惑をお掛けいたしまして大変恐縮ではございますが、今後のご案内をお待ちくださいますよう、何卒お願い申し上げます。

PARCO劇場

前半半分の日程が中止になるという打撃です。そうは言っても6人しか出ない芝居で初日1週間前で代打も難しいし、他の役者やスタッフに感染してクラスターにでもなったら目も当てられないので、妥当な判断です。中止続きでPARCO劇場の関係者もだいぶ中止慣れしてきたのではないかと不謹慎な想像をしてしまいます。

何より本人の体調が心配です。体調不良まで明記するような発表は少なかったので、まずは無事に快復してほしいです。

田中れいな降板の理由がわからないので勝手に推測する

とりあえず日刊スポーツ「田中れいな舞台降板『制作側との考え方の相違』、代役は浜浦彩乃が務める[2021年4月9日14時37分]」より。

元モーニング娘。田中れいな(31)が、出演予定だった舞台「剣が君-残桜の舞-再演」の降板を発表した。理由は「公演を健全かつ円滑に進めるにあたって舞台制作側との考え方の相違が生じた為」とした。

田中の所属事務所は9日、公式サイトで「出演を予定しておりました、舞台『剣が君-残桜の舞-再演』におきまして、このたび、公演を健全かつ円滑に進めるにあたって、舞台制作側との考え方の相違が生じた為、両社協議の結果、大変遺憾ではございますが、事務所の判断で降板することといたしました」と報告した。また、田中が演じる予定だった香夜役は、浜浦彩乃が務めることが同舞台の公式サイトで発表された。

この「剣が君」は、元はゲームの舞台化なのかな。今回は2021年6月2日から6月6日までスペース・ゼロで9ステージの上演ですけど、再演です。初演が2020年7月8日から7月12日までシアター1010で9ステージでした。初演に田中れいなが出演していて、同役で出る予定のところ、降板になりました。

田中れいなの所属事務所の発表しか出てこなくて、どこの記事も似たり寄ったりで続報が全然ありません。そんな中、唯一多少踏込んだ記事が東スポに載っていました。「元モー娘・田中れいな 舞台降板真相 客入れ人数めぐり意見相違か

いったいなぜ降板することになったのか? 田中の所属事務所は「公演を健全かつ円滑に進めるにあたって、舞台制作側との考え方の相違が生じた」としている。芸能関係者は「ズバリ、新型コロナ対策の部分でしょうね」と具体的に説明。

 同舞台も当然、コロナ対策を取る予定だが、田中やハロプロメンバーが所属している事務所は業界の中でも特に厳しい対策をしていることで有名だ。

「タレントに接するマネジャーやスタッフは公演直前には、PCR検査が会社の方針で義務付けられている。社内会議でも、たとえ出席者全員が会社にいたとしても、ズームでお互いに隔離された状況で密にならないようにしている。公演もキャパの2分の1を厳守。そのかいあって、現役ハロプロメンバーからコロナ感染者はまだ出ていない」(前同)

 今回の降板劇も観客数の部分に関して相違があったものとみられている。「最初から事務所と制作側が綿密に話し合っていれば避けられた降板。田中はあおりを食った形」(前同)。まだまだコロナは芸能界に大きな影響を与えている。

客席をフルで埋めるか、減らして公演するか。ステージ数が同じでもキャパの減った会場では制作側はフルで行きたいところだろうとは想像に難くない。

ところでこの再演の発表がいつかというと、3月11日なんですよね。とりあえずステージナタリーのリンクを貼っておきますが、公式のTwitterでも同日でした。1か月経たずに破綻しています。

おそらく、初演の感触がよかったので即座に再演を決めて、1年前の時点で田中れいなを含む主要メンバーのスケジュールを押さえていたのでしょう。そして座席配分は制作側の管轄でしょう。だから制作側が全席販売しようとして、後から気が付いた事務所が待ったをかけて、どちらも譲らないから事務所が蹴ったのだと推測します。

客席数を減らしたほうが新型コロナウィルス対策としては有効だと私も考えます。が、この件は事務所側が確認不十分なまま放置した結果を、力関係から事務所側が威張った文面で発表した、が実態ではないでしょうか。再演発表から1か月しないで降板は、さすがにあんまりです。1年前の時期ならいざ知らず、この時期に自社タレント出演で客席数制限なり他の新型コロナウィルス対策なりを求めるなら事前に制作側と協議するべきで、折合いがつかないなら再演告知前に降板するべきでしょう。

調べると初演もごたついて降板騒動があり、それは新型コロナウィルス対策で制作側の対応に憤ってのことのようでした。が、今回はそれとは別だと考えます。事務所側が、担当者が芝居に不慣れだったか、たまたま異動や何かに紛れて見落とされていたか、そのあたりだと思います。

まあ全部推測なんですけど、まさか楽屋割りでもめたってこともないでしょうし、再演発表から1か月しないで降板して、事務所いばるなよとは思いました。

2021年4月12日 (月)

新型コロナウィルスの最中に芝居を観るにいたった雑感

書いておきます。後で読み返すと自分でも面白いかもしれないので、どちらかというと自分用です。

前提。1年が限界でした。この間に東京に行ったのは芝居を観たときの2回だけです。日常品以外の買物は通販多用、外食はほぼ孤食でがんばりました。休みの日にうっかりすると一歩も外出しないで終わってしまうような日々でした。結構真面目に我慢していましたけど、仕事のストレスも重なって、遊びで外出しないと危ないという状態になったのが一番の動機です。

ワクチンがどうなるかと思っていたけど、医療関係者もいつ打てるかわからない現状、ちょっと先が見通せません。新型コロナウィルスに臨んで医療関係者が一生懸命頑張ってくれていることは知ってはいますけど、堪忍してください。感染して医者にかかるほど重症化したら一番苦しむのは私なので。ワクチン入手と接種手配は国や地方自治体の話なので医療関係者に恨みはありません念のため。

で、一人で出かけるならいいだろうという心境になりました。GWの長期連休に感染からの重症化が重なると危ないので、2週間の余裕を見て、出かける日程は昨日までのつもりです。本当は前倒しで出かけるつもりだったのが遅れてしまったのが悔やまれます。

その外出候補に芝居も含まれていました。新型コロナウィルス前には一番時間を使っていた趣味なので、私としては当然の選択肢です。ただ、芝居でいろいろ気になることがあったので、それを確かめたいのもありました。

・楽しめるかどうか

これが確かめたかった一番ですね。結果、芝居がはまった場合、楽しめました。ただ、観ている間はいいのですが、観終わってからの余韻が長続きしない。深いところをほぐしてくれないというか。

疲れているとか、歳をとったとか、環境が厳しいとか、こちら側の理由も多いのですが。ここが一番言葉にしたいのに、上手くできません。

・今のうちに観たい

これも条件として大事です。観たかったことはいくつかあります。

まず役者。野田秀樹が「足跡姫」を書く動機になった「肉体の芸術ってつらいね…。そのすべてが消えちゃうんだもの」という勘三郎への三津五郎の弔辞ではありませんが、観ておいたほうがいい人は気にかけたほうがいい、と自分がおっさんになったので思うようになりました。

それが直近だと小劇場系では木野花、商業系では仁左衛門でした。結果、両名とも元気そうだったので一安心です。ところがそのつもりなく観た白鸚が文字通り息も絶え絶えでした。会えるうちに会うこともかなわないのが新型コロナウィルスですが、観られるうちに観ておくのも大事です。

次が芝居。これはもう一度観ておきたいのと、観たことのないものを観ておきたいというのと、両方含まれます。ここが迷うところです。全部観られたわけではないので、具体的にどれだというのは省略。本当は今週末も出かけたかった。

そして上演対策や上演状況の確認。このブログで散々取上げてきた話題です。ここまで大きい劇場でしか観ていませんが、だいたい、似たような対策に収まっています。本当は小規模劇場の芝居も観たうえで論ずるべきところですが、そちらは純粋に空間の狭さから二の足を踏んでいます。

観た範囲で思ったのは、大きな(大勢の)劇場では対策が粗くなるし、密な客席が会話を生みだすのはどうしようもありません。劇団☆新感線の客席が一番ざわついていたのがちょっとショックでした。定員の50%より少しは上げてもいいでしょうし、大きい劇場では完全千鳥格子の座席の代わりに横に続きの席を用意して多少なりとも集客しやすいようにすることを検証してもいいと思います。厳密には上演団体と演目と座席構成と客層の4つの組合せだと思いますが、満席は会話を誘発しがち、というのは検証してほしいです。誰もしないでしょうけど。制作側からすれば客席制限なんてとんでもないでしょうし、商売を考えたらそれは当然なのですが、私は今回の数本の観劇経験で、客席制限には会話を抑止する効果があると考えます。

あと客としては、水分補給はよくても、劇場内がロビーを含めて飲食が禁止になったのが地味に痛手です。時間が半端だから、あるいは店舗での飲食を極力避けたいから、コンビニでおにぎりを買って休憩時間に食べる、という手段が取れません。今回一番気を使ったのが昼食夕食ですが、これは時間帯と店次第でした。食事時を外してすいているタイミングを狙うか、牛丼のように最初から一人客がほとんどの店に入るか。食事メインでも酒が飲める店は、特に夕食の時間帯は、どう見ても家族連れではない数人以上の団体客が来るので、避けたほうがいいです。

ちなみに都心の人手ですが、渋谷新宿池袋は新型コロナウィルスどこ吹く風というくらい以前と同等の人出でした。銀座は、混んでいる割に以前より空いて見えるのはなぜだと考えたら、あれは外国人観光客がいなくなった分ですね。渋谷新宿池袋より銀座のほうが外国人観光客依存が高かったんだなと今更気が付きました。

・観られなくなる可能性

最後がこれです。一番の可能性はワクチン接種が間に合わずに新型コロナウィルスがまた大流行して上演中止レベルまで追いこまれる可能性です。今の流行とワクチンの遅れから、あり得ると思っています。制作側には対策十分だから上演させろという闘争スタイルではなく、中止するなら従うから明示的な条件を示してくれという交渉スタイルを今から準備しておいてほしいです。あと、オリンピックが中止になったら内心はともかく闘争スタイルはやめて上演中止または延期に舵を切ってください。これも十分あり得ると思っています。

飲食店のグローバルダイニングの社長が都知事に質問状を書いて話題になりました。中止なら法的根拠に基づいて国や自治体の権限で明確に中止しろ、自粛要請なら断る、というあれはアリだと思います。逆に言うと、あのくらいしっかりとした声明文を今のうちに用意しておいてほしいです。

それとは別に、中国による台湾侵攻で戦争が起きる可能性も気になってきました。関連記事を目にすることが増えてきています。台湾周辺の海上ルートが使えないと日本は干上がるので、これは他人事では済みません。戦争中でも芝居は上演されるべきだ、とかではなく、石油が輸入されないから発電できずに劇場使えません、稽古場も営業停止します、とかそういうレベルの話です。嫌でも日本も戦わざるをえないケースです。

面子を大事にする中国のことなので、個人的には冬季北京オリンピックが終わるまではないと踏んでいますが、でもそのあとがどうなるか。何より、新型コロナウィルスですら感覚がずれてきたのに、そんな状態で芝居を普通に観られるとは思えません。まだ個人的にはマシな状態、世間も通常上演モードのうちに、観ておいたほうがいいという考えです。

で、最後に、首都圏地震で観られなくなるという可能性が残っているのですが、これはもう考えてもしょうがないので、まずは生き延びろ、という話です。

こんなことを書いている時点で疲れているのかなと自分で思わないでもないのですが、後から読み返して自分でどう思うか、見ものです。

2021年4月11日 (日)

松竹製作「四月大歌舞伎 第三部 桜姫東文章 上の巻」歌舞伎座

<2021年4月10日(土)夜>

僧侶である清玄と稚児の白菊丸が江ノ島で心中を図るが、先に飛込んだ白菊丸の後を追えずに清玄が生き残ってしまう。17年後、高僧となった清玄は、不幸が続く名家の17歳の娘である桜姫の出家の相談に呼ばれる。生まれつき左手が開かない桜姫に清玄一行が読経すると左手が開くが、そこで出てきたのは心中のときに白菊丸と交わした香箱で、清玄は白菊丸の生まれ変わりが桜姫だと信じる。そこに、桜姫との縁組を求める悪五郎が言い寄るが、とんでもないことと女中に断られたため、何とかするために悪党の権助を桜姫への使いに立てる。

下の巻は6月公演にお預けで、今回は上の巻として前半。この後、権助が実は桜姫を以前強姦していたが、そのときのことを桜姫は忘れられず権助を思い続けて出家を待つ身なのに不義を働き、その相手が清玄だと誤解される、と続く。上の巻の展開だけ見たら桜姫はさっさと首をはねてもいいくらいの身勝手な役で、そこを納得させるのが役者の腕の見せ所だけど、玉三郎が頑張った。

というか、上の巻だけを観た範囲では筋を追ってもしょうがない。それより、権助と桜姫の不義の場面、玉三郎と仁左衛門の色気が全開で、70歳以上でここまでできる歌舞伎役者やばい。仁左衛門は清玄と権助の二役だけど、悪い権助のほうがいろいろ似合っていた。

実はいろいろあって冒頭の数分を見逃したので心中で飛込むまでのやり取りを聞き逃したのだけど、まあしょうがない。なんか荒唐無稽な雰囲気があるので、続編の下の巻に期待。新型コロナウィルス対策メモは第一部に書いたので省略。

松竹製作「四月大歌舞伎 第一部」歌舞伎座

<2021年4月10日(土)朝>

帝に献上する刀を打つよう命じられた刀匠だがそれだけの技量を持つ相槌を打つ相方がおらず稲荷明神に祈りをささげると童子が現れて「小鍛冶」。鎌倉の頼朝から逃れるべく奥州を目指す義経一行が安宅の関所で見とがめられて切抜けるために弁慶の一世一代「勧進帳」。

小鍛冶。素直に踊りを楽しめばよし。中車の刀匠と猿之助の童子実は稲荷明神もいいけど、間に出てきた弟子の中で、ネタ台詞を言っていた若木色というか緑の着物を着ていたのは猿弥であっているか。短い時間だったけど、踊りが上手かったというか、所作がはまっていた。なぜかと考えるに、決して悪口ではないのだけど、体型バランスが旧世代の日本人に近いからだと思われる。日本の踊りの振付は、当時の日本人の体型バランスできれいに見えるように作られたとどこかで読んだことがあるけど、納得。

鳴物が、ダルダルのダウンチューニングから始まって、増し締めしながら弾くという珍しいスタイル。動きもあったからあれは狙ったもので、緩い弦の音で不安な心持を表そうとしたのかと推測。

勧進帳。今回は白鸚の弁慶に幸四郎の富樫のA日程。白鸚が最初の出番で花道から出てまだ台詞を言わないで立っただけの瞬間から呼吸が荒い。声もおとなしめで勧進帳の読みあげが終わった瞬間に拍手が出せない。最後、呼吸を整えるための息の荒さが劇場に響いて、飛び六方がよれよれだった。幸四郎が明朗な台詞だった分だけ余計に目立つ。今回の出来を純粋に評すれば荒事の代表格の弁慶役として擁護の余地はない。

休憩タイミングを含めていろいろ段取りが整っていたから多分体調ではなく体力の問題。自分の席からは見えなかったけど、音から推測するに途中で汗拭きや水分補給だけでなく酸素補給もしていたかもしれない。弁慶はそもそも気力体力が求められる役で、さらに衣装はものすごい重たくて着て立つだけでも大変らしいから、それで舞台に出られるだけ同年代の一般人よりは元気だと思うけど、半月前に吉右衛門が倒れたばかりなので、途中で倒れないか観ていてはらはらし通しだった。弁慶はこれ限りの演じ収めになるはずなので白鸚贔屓の人は観に行っておくことを勧める。

そのほか新型コロナウィルス対策メモ。場内混雑をつくらないようにイヤホンガイドを入場するより前に劇場外で借りて返すシステム。自力もぎり、検温、消毒で入場。飲食は最低限の水分補給を除いて場内禁止で食事処も営業していない。パンフレット以外の物販は全部なしで、1階の土産物屋はチケットなしで外に開放して外から入るようにしている。ロビーの椅子は間隔を空けられるところは2席空けて距離確保。男子トイレも小便器はひとつ飛ばし。スタッフはマスクにフェイスガード。席は最前列と、花道脇は列によって3-4席空けて、他は千鳥格子を基本に一部は2人並びの席も用意、桟敷席も1人。まあまあ入っていたけど空席もあり。さすがに1人だけだけど、話すときにマスクを外す人を遠くに発見、年寄りは小声で話そうとするとマスクを外してしまう模様。退場時は後方から整列退場。

場内はスタッフは注意事項を書いた案内板を掲示、説明は主にアナウンス。COCOAを推奨するというアナウンスがあったけど、その後で携帯電話の電源をお切りくださいとのアナウンスもあり。それは駄目じゃないか

2021年4月 6日 (火)

芝居を観てマンガを読んでパロディあるいは文化の関連性と炭鉱のカナリアに関する雑感

思うところがあって芝居を観始めていますけど、それは別途まとめるとして。

まずはこの前の劇団☆新感線「月影花之丞大逆転」の話から。パロディが多すぎて拾えた自信がありません。メインとなる劇中劇はアルプスの少女ハイジだし、月影花之丞はガラスの仮面が元だし(実は読んだことがない)、インターポールの刑事で伝わるのはルパン三世が広めたものだし。オープニングは座頭市かな、悪代官を倒すという時代劇のお約束あっての短時間劇中劇です。さらに宇宙人にUFOというテンプレートは出元がわからないくらい古いです。アイドル関係のネタは拾いきれません。

もともと新感線の路線のひとつですが、前提となる元ネタが共有されていてこそのパロディです。元ネタと書くとちょっと意味が狭くなってしまいますが、マンガやアニメや映画がこれだけ大勢に熱心に読まれて観られて聞かれて、共有されてきたからこそのパロディです。風刺というと現実の政治や社会が対象ですが、今回は徹底的にサブカルが対象です。それでパロディが成立するには、それだけサブカルの土壌が豊かであることが求められます。

その次の日に読んだのが「葬送のフリーレン」というマンガです。まだ連載中で4巻までしか出ていませんけど、マンガ大賞1位になったという記事を見かけて買いました。魔王を倒した勇者一行のうち、人間のメンバーが亡くなった後に一番長命なエルフが、メンバーの弟子を連れて、過去の闘いの跡をたどるという話です。少年マンガだと闘いメインに傾いてしまうのが常なのでその弊に陥らずに全うしてほしいと願っていますが、それはさておき。

そもそも勇者の一行が魔王を倒すという内容自体がロールプレイングゲームの定番で、テレビゲームだと元はウィザードリィくらいまでさかのぼりますが(ボードゲームは割愛)、このテンプレートが日本の人口に膾炙したのはやっぱりドラゴンクエストやファイナルファンタジーですよね。エルフとドワーフは、元は指輪物語あたりが出所だと思いますけど(実は読んだことがない)、耳のとがったエルフはロードス島戦記が広めたと言われています(ロードス島戦記の関係者がボードゲームに熱中していたという話は略)。そして中世ヨーロッパくらいの国と科学力の世界に魔物がいて魔法がある。こういう世界観が一定以上の人口に膾炙した結果、後日譚という物語を作る人がでてきて、しかも最初の1、2話で説明が済んで話が進んでしまう。パロディではありませんが、やっぱりサブカルの土壌が豊かであることが必要であり、豊かだったことの証明です。こちらは元ネタはヨーロッパの小説やゲームですが、それが日本で加工されてサブカルとして広まった、ゲームからマンガへの流れとなります。

浮世絵がヨーロッパの画家に影響を与えたという美術の話を持ちだすまでもなく、いわゆる文化と呼ばれているものは、それがメインカルチャーであれサブカルチャーであれ、互いに影響しあうものです。リアルタイムに影響を受ける者もあり、発掘された過去作に影響を受ける者もあり、蓄積された「常識」に影響を受けることもあり、それらに反発する形で影響を受けることもあり。他の分野だと思いつくところでは科学分野でニュートンの「巨人の肩の上(過去の先人の業績)に乗っていたから」という言葉もあります。影響は様々ですが、影響はあって当たり前です。マンガも今様になっている話を以前書きましたが、日本のサブカル分野は広くて深くて、今でも広がっています。

ここで話は新感線に戻ります。今回の芝居は新型コロナウィルス対策のためにいつもより少人数短時間という縛りがありました。結果、新型コロナウィルスのコの字もない内容でした。そもそもが無茶苦茶な設定の芝居なので新型コロナウィルスが出てこなくたっていいですし、新型コロナウィルスに触れるといろいろ面倒なので触れないというのは上演側からする当たり前の気遣いです。さらに言えば、ポリティカリーコレクトに触れそうな相手役いじりもありませんでしたし、貧乏苦労の話は劇団員(自分たち)の話に絡めることで、上手に回収していました。いろいろ縛りが多い中でお笑いを成立させるには、パロディしかなかったのかなと後から思います。

そこからさらに一段上がって、いのうえ歌舞伎ではなくネタ芝居のお笑い一辺倒に走ったところが、上演側の制作レベルでの勘なのかなと思いました。よくできていましたし、私も楽しみましたけど、それでもあんなに客席が盛上がるとは思いませんでした。あのスタンディングオベーションは、面倒なことを言わずに笑いたい客からの、面倒なしに笑わせてくれた上演側に対する賛辞だったと、強引ですが言えなくもありません。炭鉱のカナリアとはやや違いますが、今の客席から求められているものを実現した点で、的確な嗅覚だったと思います。

そして「葬送のフリーレン」の話。このマンガが面白いのは、勇者の偉業があちこちで忘れ去られていることを当事者が目の当たりにすることです。しかも同属のエルフが出てきて、自分たちも過去の別の勇者の偉業を知らないことが匂わされています。そういう展開に対して、「身の上を話してくれれば褒めてあげますよ」という場面が出てくる。この、過去の闘いの跡をたどる、しかも結構忘れ去られている、だから私が褒めてあげる、という設定と展開。これを読んだときに、これが今の日本人(主語が大きい)が求めているものだなと思いました。

ちょっと元本が思い出せませんのでうろ覚えですけど、一生懸命頑張るのがよいという考えが広まるのは、江戸初期くらいの仏教かなにかの信仰までさかのぼる、山本七平が書いていました。その時は極楽往生が目的だったはずですけど、極楽が信じられなくなって、無目的にあるいは不足な報酬で一生懸命頑張ることを強要されすぎて、現世で頭を撫でて褒めてもらわないともたないくらい世の中が疲れているのを、漫画家の無意識が拾ったのかなと考えます。こういう話が日本だと、巨大なサブカルの土壌に乗っかって産まれてくる。これも一種の炭鉱のカナリアです。

で、この褒めてほしいという場面と、頭を撫でる場面がマンガにあるのですが、芝居で「キレイ」を思い出しました。ひょっとしたらマンガの作者も観たんじゃないかというくらいしっくりくる。2019年版の戯曲本より。

ケガレ「ハリコナ」
ハリコナ・ハリコナB「何?」
ケガレ「いつでもこんな風にあたしに花を見せてくれる?」
ハリコナ「うん」
ケガレ「じゃあ、あんたと結婚したら、未来のあたしは好きなときに花が見れるんだ」
ハリコナ「う、うん、まあ。ちょっと疲れるけど、これ」
ケガレ「おばさんのケガレは幸せかな」
ハリコナ「きっと、きっと」
ケガレ「あたし、なんでかな・・・思うんだ。こんな世の中じゃ未来の私は大変だろうな、って。未来の、おばさんになった私はなんかもうグダグダになってへたりこんでんじゃないかなって。だから、この辺に未来のあたしがいるとするじゃない? (ミソギの所に行く)あたしはね、よしよし、って、してやるんだ(ミソギの頭を撫でる)」
ハリコナB「なんだい」
ミソギ「花を咲かせて」
ハリコナB「・・・無茶言っちゃいけない」
ミソギ「(涙ぐんで)花が見たいの」
ハリコナB「わかるだろ。・・・できないんだ」
ミソギ「そうね(へたりこむ)」
ケガレ「未来のあたし、よしよし、へたりこんでも、とりあえず。よしよしってしてやるよ、って。・・・この辺かな」
ハリコナ「へへ」
ケガレ「あ?」
ハリコナ「なんでもない」
ミソギ「・・・覚えてる? 昔ね、あたし、未来の自分の頭を撫でたの、あんたの横で」
ハリコナB「え?」
ミソギ「こんなふうにへたりこんだ私を、よしよしって、撫でたのよ」

まさか20年越しのロングパスがマンガとつながってこの場面が刺さるとは思ってもいませんでした。初演は少女監禁事件が東京公演中に起きて何の予告だと騒ぎになりましたが、いま炭鉱のカナリアと呼ぶなら、監禁よりこの場面のほうがふさわしい。初演を観に行った20年前の自分の頭を撫でてやりたいし、撫でてほしい。よしよし。

2021年4月 4日 (日)

劇団☆新感線「月影花之丞大逆転」東京建物BrilliaHALL

<2021年4月3日(土)夜>

強烈な個性を持つ月影花之丞が運営する劇団。契約を餌に無理やり出演させられている保険の営業員、共演者キラーすぎて共演NGになったところを拾われた女優など出自は様々。そしてベテラン役者が、実は月影花之丞の暗殺を依頼された証拠を残さないことで有名な殺し屋だった。暗殺を阻止するためと殺し屋を逮捕するため、インターポールの捜査官が入団志望としてオーディションにやってくる。

あらすじを書くのも野暮なネタ尽くし路線に歌も交えての一本。下ネタなしでお色気は西野七瀬の笑顔のみという健全さはおポンチ路線とは言い難い。かつ、どことなく物語としての芯を感じさせる。劇団というシチュエーションのためか、ネタの合間に演劇熱をひそませている気配は、脚本がいのうえひでのりでなく中島かずきだからか。

それはそれとして「稽古中の劇中劇」と合間の「劇団員の悩み」という料理のしやすいシチュエーションを元に、ネタと歌とチャンバラで盛りだくさん。有名どころが多いとはいえマンガアニメも坂道系音楽も取りこんで、観る側の「教養」が試される。全部拾えた自信はないけど知らなくても楽しめる。セルフパロディの受けから察するに観慣れたファンの多い回だった模様。東京千秋楽前ということもあり仕上がり上々。

役者は阿部サダヲが引張って、新感線メンバーが支えて、若いゲストが華とネタを添えて、木野花が持っていったイメージ。劇場の広さに負けないテンションが通して全員にあった。今回気が付いたのは、少人数だったためか古田新太以外の新感線メンバーが全場面を通じて上手かったこと。長くやっているのは伊達ではない。3人組で妙に身体の切れが良かったのは保坂エマであっているか。

そして木野花。まじめにやってもとても上手な人だけど、この広い劇場であんな衣装ででたらめな台詞を言って、ネタらしさともっともらしさを両立させて聞こえるのが本当に不思議。キャリアのなせる技というより、荒唐無稽な芝居を大量に体験してきた人の芸か。荒唐無稽が身の回りに満ちていたある一定以上の世代で絶える芸という予感がする。

映像を含めて手間のかかっていそうなスタッフワークも含めて、これぞ新感線という1本だった。そして感心したのはコロナのコの字もなかったこと。このご時世に新作でまったく触らずにネタで2時間通したのは見事。途中から素直に楽しめた。楽しんだ客席からは堂々のスタンディングオベーション。こういうの楽しみにしていた客の多さが伝わる。

この後大阪公演が4月14日から5月10日まで予定されているけど、今の大阪の新型コロナウィルス感染状況でいけるのか、それは心配。

そのほか新型コロナウィルス対策メモ。入場前にチケットの半券の裏に名前と電話番号を記入して一番最初に記入有無確認(記入場所あり)。検温、手指消毒の後で自力もぎり。チラシや配役表は配布なしで、配役表はWeb参照。スタッフはマスクにフェイスガード、客席最前列がどうなっていたかは見逃し。開演前の注意はアナウンスに加えてスタッフがボードを持って案内するも、会話控えめにとの注意はあまり効果なし。マスクをしている人ばかりではあるけど、開演前はそれなりにざわついている。今回1階で観たけど1階は満席、2階3階は半分のはずだけど遅く行ったため未確認。終演後は列ごとの整列退場。ロビーの飲食を禁止する代わりに、咳防止に自席で飲物を飲めるようにしている。ロビーの椅子は使えない。

前2公演と比べて思ったのは、大きい劇場なら対策も万全に取れると言いたいところだけど、大きすぎる劇場だと客も多くて取れる対策に限度がある。この劇場だとフルなら1300人、2階3階が半分だとしても1000人、ぎりぎりに来る人も一定数以上になる。足裏消毒とか最前列フェイスガードとか、対策を思いついてもどこまで実現可能か、微妙。でも足裏消毒はあってもよかったと思う。自分の足元に荷物を置いている人を結構見かけたので(奥の席に後から客が入るときに手前で座っていた人が荷物を引上げることが多い)。

さらに話は変わってこの劇場、近年建設の都内民間劇場の常として、客席数に対してロビーが狭い。時間がなくて確認できていないけど劇場内階段もそこまで広くなかった模様。受付階の外と地上階の間は広い階段があるけど、その分だけ人が滞留できる平たいスペースが足りないから階段で足を滑らせたら危ない。新しいから耐震性は高いのかもしれないけど、次に行ったときは早めに着いて避難経路を確認しておきたい。

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