2021年6月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

« 野次馬するにも体力と見識がいる | トップページ | 新型コロナウィルスの感染者数を睨みながら芝居を観に行こうか迷う »

2021年4月30日 (金)

泣けも笑えもしない落語協会の寄席休業対応

取りあげる前に一息入れようとしたら対応が一転してしまった話題です。まずは情報整理。寄席はどこが正式サイトなのかわからないのですが、発端はここだと思われる上野鈴本演芸場公式のTwitterから始めます。

【4月25日以降の寄席営業について】東京寄席組合(鈴本演芸場・新宿末廣亭・浅草演芸ホール・池袋演芸場)及び一般社団法人落語協会・公益社団法人落語芸術協会にて協議の結果『寄席は社会生活の維持に必要なもの』と判断し『4月25日以降の公演についても予定通り有観客開催』と決定いたしました。
午後4:03 ・ 2021年4月24日

東京都の緊急事態宣言に「(社会生活の維持に必要なものを除く)」と書いてありますけど、これはいわゆるエッセンシャル・ワーカーを指すものでしょう。それが日本できちんと定義されていないのは問題ですが、落語を含めるのはさすがに屁理屈です。

何かもうちょっと理由があるのだろうと調べたら、スポニチAnnexの取材「都内の4つの寄席 感染防止策行い公演継続『社会生活の維持に必要なもの』」が見つかったので載せます。全文引用ですいません。

[2021年4月26日 05:30]

 演芸の灯火は決して消さない。東京都に緊急事態宣言が出された25日、東京寄席組合と落語協会、落語芸術協会は「寄席は社会生活の維持に必要なもの」として、台東区の鈴本演芸場など、都内に4つある寄席での公演を感染防止策を行った上で通常通り継続した。

 人出の抑制を図る宣言の趣旨から批判が上がる一方で「勇気ある決定だ」「娯楽は生活に間違いなく必要」など好意的な意見も多数上がった。この日午前10時半ごろ、台東区の浅草演芸ホールでは、開場を待つファンが入り口前に列をつくった。

 落語関係者によると、最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月以降、客足は遠のき「落語ブームの時と比べると天と地。観客はひどい時で9割くらい減った」という。

 寄席興行は、収益を寄席側と出演者で割ってギャラを払うため、客入りが悪いと赤字続きは免れない。それでも寄席を開けるのは、若手を育成し、文化を守るためだ。寄席組合は「寄席は戦争も乗り越えて現代まで続いてきた。それは生きるために必要だからではないか」と、24日午前に公演続行を決めた。

 新宿区の新宿末広亭では、真山由光代表取締役社長が取材に応じ「(寄席の)文化を守ろうという気概はある。おごりかもしれないけど」と使命感から決断。「経営も本当にぎりぎりの状態。やればやるだけ赤字で、やらなくても収入は0。それでも支援はいまだにない。このまま支援がないと、近いうちに日本から寄席はなくなる」と行政への怒りも口にした。

 演芸場は都の「無観客開催」の要請対象に含まれたが「無観客でやったとして(プロ野球のように)放映料をもらえることもない。要請はあり得ないし、理不尽」と憤った。毎日楽屋で顔を合わせる芸人に思いをはせ「この人たちのためにも粘らなきゃと、気持ちを立て直してやっている」と語った。

 豊島区の池袋演芸場の河村謙支配人は「最初の緊急事態宣言の時に3カ月ほど閉めたが意味があったのか」と提起。「たくさん取材も来るし、本当にいいのかなという気持ちも強い」としつつ「あとは来るか来ないかはお客さんの判断」と覚悟の表情。出演者の一人は帰り際「出られることだけでありがたい」と感謝を語った。

やればやるだけ赤字だから、木戸銭が目的ではない。なのに継続する。取材から読取れる理由は以下の3点です。

・若手を育成し、文化を守る
・無観客でやったとして放映料をもらえることもない
・最初の緊急事態宣言の時に3カ月ほど閉めたが意味があったのか

この3点については後でまた触れます。ただしこれだけの理由を挙げたにも関わらず、対応が一転します。上野鈴本演芸場公式のTwitterより。

【5月1日以降の寄席休業について】東京都から演芸場(寄席)に対する『無観客開催要請』は我々の性質上受け入れ困難として有観客開催を継続して参りました。本日改めて都より『休業要請』への打診があり東京寄席組合・両協会で協議の結果『5月1日~11日の営業をやむなく休止』させて頂きます。
午後3:44 ・ 2021年4月28日

この件は落語協会にも「寄席公演休止のお知らせ」が掲載されました。命令に改められたわけではなく、要請のままです。

2021年04月28日

 緊急事態宣言の発出を受け、東京都より演芸場に対して『無観客開催要請』がありました。『休業要請』ではなく『無観客開催要請』のため、演芸場の性質上無観客開催を受け入れることはできず、25日以降有観客開催を継続してまいりました。

 本日改めて東京都より落語協会・落語芸術協会に対し演芸場の『休業要請』があり、両協会及び東京寄席組合との協議の結果、本件受諾し、5月1日~11日まで寄席定席公演を休止させて頂きます。

【公演休止】
5月上席:鈴本演芸場、浅草演芸ホール
5月11日:鈴本演芸場、末廣亭、池袋演芸場

皆様には、ご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

こちらはスポーツ報知「東京都内の4寄席が5月1日からついに休業『お金が欲しいから休むんじゃない』協力金は拒否」から引用します。

2021年4月29日 6時0分スポーツ報知

 25日に発令された緊急事態宣言後も興行を行ってきた東京都内の4寄席(上野・鈴本演芸場、新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場)が5月1日から11日まで休業することを決断した。28日に落語協会(落協)、落語芸術協会(芸協)と4寄席が発表した。

 この日、東京都の関係者が新宿の芸協事務局を訪れ、感染拡大抑制のため“休業要請”を行った。両協会が協議し、寄席の席亭に打診し休業が決まった。

 当初「演芸場」への要請は「無観客開催(社会生活の維持に必要なものを除く)」だった。寄席は大衆娯楽と伝統芸能を担い、かつ芸人の修業の場で「社会生活に必要なもの」と判断。無観客開催は不可能のため、感染防止対策を徹底して“有観客”興行を行っていた。

 寄席の決断を支持する声が上がるなど反響を呼び注目を集めた。この日、都関係者が「無観客開催」が出来ない場合は休業を要請すると説明し、混乱を招いたことを謝罪。

 今までの一方的な通告に態度を硬化させていた両協会と4寄席は「本日改めて東京都より『休業要請』としての打診があり、東京寄席組合及び両協会で協議の結果、5月1~11日の営業をやむなく休止させていただくことといたしました」などとコメントした。休業要請を受けると都から1日2万円の協力金を支給されるが「お金が欲しいから休むんじゃない」(関係者)と“拒否”したという。

5月1日から休業なのは、たしか寄席は上席、中席、下席で出演者が変わるから、混乱を避けて切りのいいところから、でしょう。

ここまで「コロナ」と一言も出てきていません。後で触れます。まずは3つの理由に戻って私の意見です。

「若手を育成し、文化を守る」について。3点挙がった理由のうち、これが一番理解できました。落語には「つ離れ」という言葉があります。春風亭昇太のときに聞いたのかな。1つ、2つ・・・で9つまでは「つ」が付くから客入りが一桁、10以上で「つ」が付かないから客入り10人以上、を指します。こんな言葉があるくらい閑古鳥が鳴いていたのがちょっと前の落語界です。それでも続けてきた人が今日の人気者に育ちました。たとえ観客が一桁でも人前で話すことに意義がある、これが理由で上演続行を主張するなら、筋が通っていました。

次の「無観客でやったとして放映料をもらえることもない」について。これは異議ありです。いまどきは自分たちでオンライン配信する、少なくとも組むパートナーを探して自分たちが主導するべきです。試してみたものの効果がなかったなら話は別ですが、試したのでしょうか。

オンライン配信に興味がない私ですが、検索したら「」というサイトが見つかりました。ここに載っているだけでもいろいろあります。寄席がオンライン配信をして何悪かろうというものです。その準備が間に合っていない、協力してほしいと訴えるなら、落語はファンも多いでしょうから、今回の休業には間に合わなくともパートナーは見つかるはずです。こういう商売の展開はいま全世界で求められていて、寄席だって同じです。

ちなみに上記の「噺」に載っていた中に文春落語オンラインがありました。5月1日に「 柳家喬太郎独演会Vol.15 怪談牡丹灯籠 連続口演第2話」が予定されています。チケットは税込1100円ですが、こんな説明がされています。

皆さまのおかげで「文春落語オンライン」が この5月で1周年を迎えます。
のべ15,000人の方にご視聴いただきました、本当にありがとうございます。

税別にしても、単純計算で1年で1億5千万円の売上です。これはチケット会社だったり配信パートナーだったり、通常と違う関係者への支払も発生します。ただし寄席が行なえば会場費は不要です。すでに実績があるのだから、いろいろ試してみるべきです。

毎日配信するとネタに困るとか、育成にはむしろ不向きだから前座は避けてみるとか、寄席ごとに喧嘩しないように配信日をずらすとか、チケットの単位を1日にするのか演者ごとにするのか決めるとか、配信のあがりを演者とどうやって分配するかとか、開演時間が厳密であってほしい配信固有の事情と合せられるかとか、オンライン配信の技術的な事情以外に考えることは山積みですが、せめて検討してほしいです。だから無観客でも放映料は入らない、を理由に挙げるのは悪手です。

最後に「最初の緊急事態宣言の時に3カ月ほど閉めたが意味があったのか」について。寄席個別の貢献までは調べようもありませんが、少なくとも緊急事態宣言で増加は抑えられました。緊急事態宣言と解除の日付が入っているNHKのサイト、全国東京のリンクを載せておきます。人の接触が減れば、拡大は防げます。

ちなみに寄席でも、今年の1月に陽性発覚による中止がありました。落語協会の「新型コロナウイルス感染について(第2報)」です。この時期は感染が広がっていたので、クラスターではないかもしれません。一方で東京の保健所は詳細な追跡はあきらめていたはずなので、通り一遍の対応で済ませたかもしれません。詳細不明です。

2021年01月18日

2021年1月18日、定席(鈴本演芸場)公演関係者である当協会所属の前座3名が新型コロナウイルスPCR検査の結果、陽性であることが判明しました。

当協会では昨日1月17日に1名の新型コロナウイルス感染が確認されたことを受け、管轄保健所より濃厚接触には該当しない旨の指示を受けておりましたが、鈴本演芸場楽屋内での前座業務にて協働する前座及びお囃子については当協会の判断にて即時PCR検査の実施を指示しており、本日新たに3名の前座が陽性であったとの連絡を受けました。

当協会は、当該関係者3名がPCR検査の結果、陽性であるとの連絡を受け、管轄保健所に報告の上、鈴本演芸場内の当該関係者業務場所等の消毒を実施しており、引き続き協会員の感染状況の把握に努め、随時公表してまいります。

お客様ならびに関係者の皆さまにはご心配おかけいたしますことを心よりお詫び申し上げます。

詳細については以下の通りです。

1.対象者

一般社団法人落語協会所属 前座3名

2.症状

3名とも無症状。1月17日の公演後、当協会の指示によって最寄りの医療機関を受診。寄席楽屋内では常時手指消毒の実施、マスクを着用して業務に従事しておりましたが、PCR検査を実施した結果、本日陽性であることが判明いたしました。

3.PCR検査実施状況 ※1月21日現在

全検査数⇒18件(うち陽性4件、陰性14件)※1/18結果待ち3名は陰性

4.今後の公演対応について

当協会所属前座の感染・陽性者は合計4名となっております(全員楽屋内での前座業務のみに従事、現在は自宅待機中)。複数名の感染・陽性者が発生している事態を重く受け止め、鈴本演芸場との協議の結果、お客様・出演者・公演関係者全員の安全を最優先し、鈴本演芸場で開催中の正月二之席(昨日より一時中止)・1月下席公演については全面中止いたします。

なお管轄保健所とは適宜連絡を取り合っており、今後保健所からの調査要請等があった場合には全面的に協力し、協会員の感染状況を把握した上で、感染症対策の更なる強化を行い、感染被害拡大の抑止に全力で取り組んでまいります。

なので3つ挙がっていた理由のうち、私が賛成できるのは最初の1つだけ、あとの2つは不賛成です。

そしてそれとは別に私が書こうとしていた最初の意見、「『寄席は社会生活の維持に必要なもの』と判断し『4月25日以降の公演についても予定通り有観客開催』と決定」についてです。

私はこの発表を読んで、ふざけているのか、駆引きの場に東京都を引張りだすための作戦か、判断に迷いました。何でも洒落のめすのもひとつの振舞ですし、不謹慎な笑いは面白いのも事実です。ただし、笑いのプロなら「ここは笑いにしたほうがいい場面か」の判断が正確に読めないといけません。新型コロナウィルスの感染拡大、しかも感染力が強くて大阪では感染者の年齢層も下がっている変異株の流行は、笑いにできるものではありません。今回は、反対するなら理由を挙げて真面目に反対するべき場面です。

だから都の関係者が来た時点で、何か駆引きをするのではないか、あるいは、休業命令を出してみろと真っ向勝負するつもりではないか、と推測していました。

私は、駆引きや勝負の意識なしに政府や自治体を刺激する形で反抗するのは反対です。今回は都の担当者が謝罪しましたが、下手をすると命令どころか強引に休業に持っていかれる可能性があります。「社会生活の維持に必要なもの」について、私はきちんと法律で定義したほうがいいと思いますが、その定義で困る人たちのほうがより多いでしょう。曖昧な表現で通しているのは、悪く言えば怠慢ですが、よく言えば日本風の知恵です。これを逆手に取った政治側から「寄席から問題提起されたのでエッセンシャルワーカーの定義をします、迷惑をこうむって困る人は寄席に文句を言ってください」くらいは出てきてもおかしくありません。そこまで広い範囲のことを気にしていられないというなら、命令が出たら従いますので正式に命令をお願いしますと、一経営者として真っ向勝負です。

そう考えていたら急転直下、直接謝罪してもらってあっさり矛を収めています。謝罪と見せかけての脅迫でもされたのでしょうか。協力金の拒否なんて比較にならない格好悪さです。文化を守るとまで大上段に振りかぶった大義名分はどこにいったのでしょうか。横町の隠居がつむじを曲げていただけにしか見えなくなってしまいました。

私の見るところでは、「文化」関係者が「文化」と使うときは、大半が「自分たちの生活、生計」と言い換えられます。文化の担い手はあくまでも人間なので、その関係者の生活が立ち行かなくなるのは一大事、とはひとつの見方です。ただしそれは、関係者以外が言うことで説得力が出てくるものです。関係者本人が言うのは、たとえは悪いですが、ヒモが金銭をたかっているように聞こえます。その場合は「生活」と言い換えたほうがいいです。新型コロナウィルスで生活に困っているのはお互い様なので、そのほうが、聞き手によほど近いです。

生活が目的なら、オンライン配信もあるでしょうし、落語の知識や能力を生かしたカルチャースクールも考えられますし、選択肢は広がります。寄席は文化だと宣言すると、その瞬間に選択肢が減って、身動きが取れなくなります。そういえば、落語は補助金の対象になっていないのでしょうか。寄席が席を主催するなら、寄席自身が補助金を申請できそうなものですが。あるいはそれを入れても赤字なのでしょうか。

それはさておき、今回の新型コロナウィルス騒動で、「文化」は、少なくとも「文化」という言葉への印象は、「文化」関係者が自分たちで何度も何度も貶めています。もう「文化」は禁句にしたほうがいいです。「文化」を持ちだした瞬間に、みんな発言がおかしくなります

さらに話は戻って前半の経緯引用部分、「コロナ」と一言も出てきませんでした。これは結局、新型コロナウィルスへの対応が当人たちにとっては本筋ではないことを表します。推測ですが、目先の経営のやりくりに忙殺されて、新型コロナウィルスの感染拡大防止協力は2番目以降なのでしょう。民間経営者の優先度としては正しいです。でも新型コロナウィルスは人の接触で広まるものなので、人が集まる機会を減らす、そしてやるなら全部一斉に減らすのは、政治側の対策としてはあり得ます。一番極端なのはロックダウンですが、そこまでいかなくてもNHKのグラフにもある通り、緊急事態宣言で実際に減っています。ならばそこに協力するのは、経営者ではなく一個人としてはあり得る判断です。

結局、国民の大半が共有して合意している新型コロナウィルスの対策と方針がないんですよね。今の私の理解では、ワクチンを一定以上の国民が接種して感染が一定以上広まらなくなるところがゴールです。それまでは人の接触を締めたり緩めたりして時間を稼ぐ。時間稼ぎに失敗したら医療崩壊して、新型コロナウィルスで死ぬ人と後遺症に悩む人が大勢でてくるのと、新型コロナウィルス対応に忙しすぎて他の病気の人が治療を受けられなくて病状を悪化させるのと、両方が出てくる。結果、日常の社会生活全般に悪影響が出る。ワクチンは最近ようやく話が見えてきていますが、なお数か月は必要です。

問題は2つあります。やることなすことチグハグで、どんどん信頼を失っている政治側の言うことを、みんな聞かなくなってきていることがひとつです。新型コロナウィルスによる被害を減らすためには自分たちの行動が一番効いてくる、というのがとにかく厳しい。偉そうに書いている私も3週末連続で東京に行きました。だからゴールデンウィークは東京に遊びに行かないでも耐えられます。

もうひとつは、時間稼ぎで締めている間の生活に耐えられない人と、時間が貴重だから時間稼ぎの方法自体に耐えられない若年層の両者がいて、耐えられない人が想像以上に多いことです。耐えられない人が悲鳴を上げるのは当然で、今回の寄席の話はこちらが理由と私はみなします。ただ、噺でも悲鳴でも、上手下手はあって、今回の悲鳴は下手で泣けも笑えもしませんでした。そして今回、このような中途半端な対応を取ったことで、次からの悲鳴の上げ方はもっと難しくなるでしょう。

« 野次馬するにも体力と見識がいる | トップページ | 新型コロナウィルスの感染者数を睨みながら芝居を観に行こうか迷う »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 野次馬するにも体力と見識がいる | トップページ | 新型コロナウィルスの感染者数を睨みながら芝居を観に行こうか迷う »