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2021年4月17日 (土)

何となくミスリードっぽいので内容を読んでみたい日経の文化芸術支援金記事(読んでみたらノーリードだった)

日経の有料記事ですが「不要不急とよばれて コロナ時代の芸術」という5回シリーズの記事がありました。

不要不急とよばれて(1) コロナ禍 崖っぷちの芸術界 資金繰り悪化 活動に制限
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(2)ライブで配信、表現革新 演劇「生中継」がひらく未来
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(3)演奏会、手拍子するのは分身ロボット 時空を超えて
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(4)紙の公演チラシ、どこまで必要? 舞台裏のデジタル改革
不要不急とよばれて コロナ時代の芸術(5)文化は単なる娯楽か 見取り図なき支援策からの脱却を

その中の5回目が、ブログのタイトルに取上げたミスリードっぽい記事です。

「要するに6000件、一気に切り捨てたってことですよね?」

3月15日の参院予算委員会、共産党議員の吉良佳子が文部科学相の萩生田光一に詰め寄った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて文化庁が文化・芸術関係者向けに用意した支援金を巡り、5日時点で約8000件あった審議中の案件のうち、1週間で約6000件が不採択になっていたことが判明したためだ。

公開されている冒頭だけ読むと穏やかではありませんが、有料なので全文読めない。うっかり誰かが全文公開していないかと思いましたが見つからなかったので、国会の議事録を探してみたら、ちゃんとテキストで公開されているのですね。日付と衆参と委員会まで特定できると検索早かったです。

この中の発言番号435から下の話ですね。飛び飛びで引用します。(略)記載も省略しますので気になった人は原文にあたってください。

443 吉良よし子
 昨年十二月の締切りまでの間に、申請件数は延べ九万六千三百四件、これまでに交付決定した累計件数は七万九千七百七十一件と伺っていますが、こうして、様々問題はあるものの、多くの文化芸術に携わる人たちの支援につながっていることは大事だと思うんです。ただ、中には、申請しても交付を受けることができなかった、若しくはもう諦めてしまった方がいると聞いています。
 確認したいと思います。文化芸術活動の継続支援事業に申請した人のうち不交付になった件数、そして取下げが行われた件数、両方併せてお答えください。

444 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 文科省としては、文化芸術活動の継続支援事業を実施し、これまで四回にわたり公募を行い、活動をされている実演家や技術スタッフの方々や文化芸術団体に対し、その活動継続や技能向上に向けた積極的な取組への支援を行ってまいりました。
 文化芸術活動の継続支援事業にはこれまで延べ九万六千三百件の件数の申請があって、そのうち、審査に必要な情報について数回の御連絡をさせていただいたところ御回答が得られなかったものなど、不交付決定となった件数は約一万二千件、申請要件に適用しないことなどを御理解され取り下げられた件数は約四千六百件となっております。

445 吉良よし子

○吉良よし子君 不交付が一万二千件、そして取下げが四千六百件なんですけれども、二万件近くが支援が届いていないわけですけど、これ取り下げたのは、制度の対象にならないからではなくて、諦めたからなんですよ。一番の問題は、交付までに時間が掛かり過ぎるからなんです。

447 吉良よし子

○吉良よし子君 十七件。これ、おかしな話なんです。先週の、一週間前の三月五日時点では八千件、不交付、まだ審査案件があったんです。それが一週間でゼロに近くなった、十七件になった。どういうことですか。

448 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 文化庁においては、これまで、毎週金曜日の十四時頃に実施事務局から交付決定の情報をメールで受けて、十七時頃にホームページを更新しています。実施事務局で、これまでは十四時の時点で各個人等への通知基準が、通知準備が整った状態であったため十四時以降の報告を受けていましたが、今回は件数が多く、その後に不交付決定の通知準備が整ったため各個人等に通知することとしましたが、文化庁への報告が遅れたことが原因と承知しております。

449 吉良よし子

○吉良よし子君 いや、そうじゃないです。八千件あったのが一週間で十七件になった。七千件近く一気に、何、交付決定したということですか。どうなったんですか。

452 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 全て交付に決定したんじゃなくて、八千件のうち約六千件が交付決定をしていて、二千件は……(発言する者あり)逆。二千件が交付決定しておりまして、六千件が対象外ということになると思います。

453 吉良よし子

○吉良よし子君 要するに、六千件、この一週間で一気に切り捨てたということですよね。これ、余りにひどい話だと思うんですよ。連絡待ちながら一生懸命慣れない申請作業をしていた文化芸術関係者の皆さんが心を折れながらも頑張っていたのに、六千件一気に不交付決定。
 もうそもそもね、この二月末までに何かやれと、そういうやり方が問題なんですよ。この期間内に新しい公演行うのがどれだけ大変か。持ち出す資金のない若手のアーティストの皆さんは、もうすごい高いハードルで、それでも頑張って申請してみたけど、交付決定がなかなか来ないから諦めると、そういう悪循環になっているんですよ。申請すること自体できなかったという話も聞いています。

455 吉良よし子

○吉良よし子君 違うんです。感染対策なども工夫して様々やっていらっしゃるんですけど、今言っているのは、公演すること自体が大変だ、そういう話なんです。モチベーションの問題もあるし、何より手元に資金がない、もう貯金崩して生活されているというんですよ。やっぱり今を支える給付が必要じゃないか、現場の声なんです。
 使途を問わない給付制度つくってほしい、菅総理、いかがですか。

456 萩生田光一

○国務大臣(萩生田光一君) 先生の熱いお気持ちは分かりますし、我々もその文化を守っていこうという思いはあるんですけれど、その職業だけは給付をするということにやっぱりできないと思います。その一定のルールの中で、国民の皆さんの税金ですから、その特別な文化活動で、我々が会社に勤めている人たちとは違う働き方があるということが分かって、例えばフリーターの人たちへの支援策は昨年講じることができました。
 もちろん文化には様々な形態があること分かっておりますけど、使い勝手のいい給付で、現金渡してくれと言われても、それはなかなか、その人を特定して、なぜその人なのかということを証明するのがすごく難しいと思うからこそ、先ほど申し上げたような一定の条件の中で活動している人に給付をしていきたいと、こう思っているところです。

457 吉良よし子

○吉良よし子君 それでは文化の灯は消えてしまうんです。質の高いパフォーマンスを支えるためには、日々の暮らし、生活を支えることがどうしたって不可欠なんです。

「昨年十二月の締切りまでの間に、申請件数は延べ九万六千三百四件、これまでに交付決定した累計件数は七万九千七百七十一件」と質問した本人が発言していますので、82%に交付されています。支援自体はまずまず機能しているほうだと思います。

そして「先週の、一週間前の三月五日時点では八千件、不交付、まだ審査案件があったんです。それが一週間でゼロに近くなった、十七件になった。どういうことですか。」に対しては「実施事務局で、これまでは十四時の時点で各個人等への通知基準が、通知準備が整った状態であったため十四時以降の報告を受けていましたが、今回は件数が多く、その後に不交付決定の通知準備が整ったため各個人等に通知することとしましたが、文化庁への報告が遅れたことが原因と承知しております。」とあります。なので申請者からはまとめて切捨てのように見えてしまいますが、実際は内部の報告と集計の遅れですね。

記事を読めていませんが、交付済の数字を取上げずに不交付の数字だけを取りあげたのであれば、煽り気味かなと思います。

そのうえで、Twitterで記事説明ないかと思ったので探しました。以下2件が興味深かったです。

KZ78@kz78_b
"混乱の原因は支援が損失補償ではなく、これから実施する事業への「補助金」だったからだ。どんな事業で、どんな経費がいくらかかるのか、事細かに内訳を出す必要がある。" / “新型コロナ: 文化は単なる娯楽か 見取り図なき支援策からの脱却を: 日本経済新聞”

印度洋一郎 Yoichiro Indo@ven12665
この記事の中でほぉと思ったのは、

「日本では文化芸術が産業として分析されていないので、国も業界のどこに金を出せば回るのかがわかっていない」

という指摘。

文化芸術関係の人たちに損失補償を出すとしたら、他の仕事をしている人達への損失補償とどうやって区別するかはとても難しい問題です。だから損失補償ではなく補助金という形にせざるを得ない。それが「我々もその文化を守っていこうという思いはあるんですけれど、その職業だけは給付をするということにやっぱりできないと思います。(略)もちろん文化には様々な形態があること分かっておりますけど、使い勝手のいい給付で、現金渡してくれと言われても、それはなかなか、その人を特定して、なぜその人なのかということを証明するのがすごく難しいと思うからこそ、先ほど申し上げたような一定の条件の中で活動している人に給付をしていきたいと、こう思っているところです。」という答弁になる。野次馬としてよくわかる理屈です。

そのうえで、芝居の世界については以前「新型コロナウィルス騒動で日本の芸術団体は団結していないし演劇業界はぶっちぎりで団結していないことがわかったという話」を書きましたが、そもそも業界が存在していない、という認識です。分析しても頭を抱えてしまうと思います。観光業界のGoToキャンペーンにはいろいろ批判がありましたが、今になって考えてみると、観光地と宿泊施設だけでなく交通や食事や土産その他もろもろ裾野が広いからとにかく客に来てもらう必要がある、そのため客側に来たくなるようなインセンティブを出すことで観光業界全体に金が回る、という分析が済んでいるのでしょうね。

そしてもうひとつ、Twitterで興味深い意見を見かけたので引用します。

あらかわ(荒川)@bay@39dayzero
返信先: @fukuikensakuさん
これに関しては「事業だから助ける、事業として助ける」が単独で成り立ち得るにも関わらず、文化・芸術という質を強く含めたために複雑化させてしまったように感じます。文化・芸術活動は事業で無く、一般人、普段、多数の人、多分野で関われるのに、支援の主張が一部の人の選民意識で目立った。

あらかわ(荒川)@bay@39dayzero
返信先: @39dayzeroさん, @fukuikensakuさん
多様性を掲げながら他分野多分野との関係性を外し単独で優位性が存在するような主張となる「文化・芸術だから助けろ」というのはもはや選民意識、差別意識とも言えるかもしれない、というのは念頭におくべきだと感じます。

私が「不要不急で無駄だからこそ芝居は文化たりうる」で書ききれなかったところがはっきりまとまっています。事業という言葉を使えば、業界の存在しない業界でも扱いようがある。その国からの答えが文化芸術支援金による事業の補助金ですよね。ついでに書くと、損失補償型でも生活費には使えないのがドイツ式であることは「新型コロナウィルスの補償問題で本当にドイツがよかったのか疑問になる記事から転じて文化芸術復興基金の話まで」に書きました。この時期に日本でも「業界」で代表者を立てて陳情した結果、500億円で79771件が補償されたのだから、まずまずの成果ではないですか。

共産党の吉良佳子議員が「使途を問わない給付制度つくってほしい」と求めるのは、議員だから今まだない立法をするのが仕事ですし、発想は共産党だからと言ったらそれまでですが、まあちょっと、他の一般人との兼合いを無視しすぎです。答弁を引出すための駆引きではなく、絶対わざとでしょう。

加えて日経の「不要不急とよばれて」という連載タイトル自体、経済新聞のくせに事業分析の視点も産業分析の視点も足りなくないか、自分たちで一度分析してみたらいいのに、と記事も読まずに放言しておきます。

<2021年5月2日(日)追記>

登録すれば無料で読めるとコメントをもらったので最終回を読んでみました。全文引用するのははばかられるので最後の段落は全文、それ以外は段落ごとに引用を交えて要約してみます。

・申請書類の不備が多発、また応募してもなかなか支援金は支給されなかった、「でも、一番必要なときにお金は届かなかった」(映画制作を手掛ける個人事業主)
・原因は、損失補償でなく、これから実施する事業への補助金という建付けだったためで、「損失を補償しないのは政府方針」(文化庁参事官、梶山正司)
・ドイツは一部遅れもあったが早い場合は2-3日で振込まれた
・1年後の今は「支援金を何に使ったかなどの申告作業に追われていて、大変そう」(ベルリン在住の美術家、塩田千春)
・欧米は手厚い支援策を掲げる
・「文化芸術は主要な産業として認められている」(ニューヨークの演劇ライター、高橋友紀子)
・翻って日本。芸術コーディネーターの米屋尚子は「産業として分析されてこなかったため、国はどこを支援すれば業界が回り出すか全く把握していない」と指摘する。文化庁が用意した21年度の支援策は通称「ARTS for the future!」。何か新しいことを企画すれば補助金を出すという。見取り図のないまま、未来へ向けて金をばらまく。

先にTwitterで引用していた「産業として分析されてこなかったため、国はどこを支援すれば業界が回り出すか全く把握していない」は米屋尚子のコメントでした。この人は「演劇は仕事になるのか?」を書いている人ですね。通して読んでもこれが一番重要な指摘だと私は考えます。

それ以外は、読んでも「バーカ」としか感想が湧いてきませんでした。肝心なところで自社責任の主張がないからです。

一般に、最後の記載が主張になるので、そこから察すれば「見取り図のないまま、未来へ向けて金をばらまく」という文化庁および政府の方針への批判が趣旨です。それでは単に取材対象だった「文化芸術分野」関係者の不満の代弁で終わっています。紙面の都合があってカットされたのかもしれませんが、だったらWebだけでもいいから連載を追加して「ぼくのかんがえたさいきょうのみとりず」を追記すればいいのに。

今回の記事の内容なら、日経の、あるいは記者の文責で以下まで主張や提案を書いてほしいです。

・他の産業を差置いてでも文化芸術分野に損失補償するべきという主張、あるいは他の産業との兼合による適切な文化芸術の損失補償額算出提示、その主張の根拠意見
・文化芸術分野の定義、少なくとも今回損失補填される対象となる人たちの定義
・素早い振込を実現するための納税者番号と銀行口座との紐づけの全国民普及の肯定
・日本でも主要な産業と主張するだけの文化芸術分野の金額、雇用人数の業界規模

この中でも最初の項目、文化芸術分野に損失補償するべきと考えているのかどうか、損失補償するべきならどういう理由でそう主張するのか。ここがはっきりしていないのは駄目です。海外ではそうしている、が理由なら出羽守です。

あと、できれば財源も書いてほしい。元の支援金は「文化庁の年間予算の約半分に相当する509億円を確保した支援金」と書かれているので、これを補助金として要らないから損失補償に回してほしかったのか、別途確保してほしかったのか。

踏込んだ主張や提案が書けないならせめて、米屋尚子のコメントから始めて、それゆえの混乱として各種事例を紹介して、最後に文化庁や政府向けには申請書類や手続きの簡便化や標準化を、文化芸術分野には産業として認めさせるために関係者が業界団体をつくって産業と認めさせるための情報を整備することを、直近の課題提言として締めるほうが建設的です。

そして大元の話。82%の申請は交付されていることにまったく触れていない。18%却下されるのが異常と主張するならそう書けばいい。最初はタイトルに「何となくミスリードっぽい」と書きましたが、読んだ結論は「肝心の主張が欠けてノーリード」です。

産業として認められるために何が必要なのかは私も知りたいです。最低限、このような情報が求められて、このくらいの頻度で更新されて、このような媒体に掲載されて、このような問合せに対応できる団体が必要である、という条件があるはずです。日経らしさで貢献するならそこだと思います。たぶん天下りの問題を避けて通れないと思いますけど、そこも含めて。

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コメント

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>荻野さん

情報ありがとうございます。後で試してみます。

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