劇団☆新感線「月影花之丞大逆転」東京建物BrilliaHALL
<2021年4月3日(土)夜>
強烈な個性を持つ月影花之丞が運営する劇団。契約を餌に無理やり出演させられている保険の営業員、共演者キラーすぎて共演NGになったところを拾われた女優など出自は様々。そしてベテラン役者が、実は月影花之丞の暗殺を依頼された証拠を残さないことで有名な殺し屋だった。暗殺を阻止するためと殺し屋を逮捕するため、インターポールの捜査官が入団志望としてオーディションにやってくる。
あらすじを書くのも野暮なネタ尽くし路線に歌も交えての一本。下ネタなしでお色気は西野七瀬の笑顔のみという健全さはおポンチ路線とは言い難い。かつ、どことなく物語としての芯を感じさせる。劇団というシチュエーションのためか、ネタの合間に演劇熱をひそませている気配は、脚本がいのうえひでのりでなく中島かずきだからか。
それはそれとして「稽古中の劇中劇」と合間の「劇団員の悩み」という料理のしやすいシチュエーションを元に、ネタと歌とチャンバラで盛りだくさん。有名どころが多いとはいえマンガアニメも坂道系音楽も取りこんで、観る側の「教養」が試される。全部拾えた自信はないけど知らなくても楽しめる。セルフパロディの受けから察するに観慣れたファンの多い回だった模様。東京千秋楽前ということもあり仕上がり上々。
役者は阿部サダヲが引張って、新感線メンバーが支えて、若いゲストが華とネタを添えて、木野花が持っていったイメージ。劇場の広さに負けないテンションが通して全員にあった。今回気が付いたのは、少人数だったためか古田新太以外の新感線メンバーが全場面を通じて上手かったこと。長くやっているのは伊達ではない。3人組で妙に身体の切れが良かったのは保坂エマであっているか。
そして木野花。まじめにやってもとても上手な人だけど、この広い劇場であんな衣装ででたらめな台詞を言って、ネタらしさともっともらしさを両立させて聞こえるのが本当に不思議。キャリアのなせる技というより、荒唐無稽な芝居を大量に体験してきた人の芸か。荒唐無稽が身の回りに満ちていたある一定以上の世代で絶える芸という予感がする。
映像を含めて手間のかかっていそうなスタッフワークも含めて、これぞ新感線という1本だった。そして感心したのはコロナのコの字もなかったこと。このご時世に新作でまったく触らずにネタで2時間通したのは見事。途中から素直に楽しめた。楽しんだ客席からは堂々のスタンディングオベーション。こういうの楽しみにしていた客の多さが伝わる。
この後大阪公演が4月14日から5月10日まで予定されているけど、今の大阪の新型コロナウィルス感染状況でいけるのか、それは心配。
そのほか新型コロナウィルス対策メモ。入場前にチケットの半券の裏に名前と電話番号を記入して一番最初に記入有無確認(記入場所あり)。検温、手指消毒の後で自力もぎり。チラシや配役表は配布なしで、配役表はWeb参照。スタッフはマスクにフェイスガード、客席最前列がどうなっていたかは見逃し。開演前の注意はアナウンスに加えてスタッフがボードを持って案内するも、会話控えめにとの注意はあまり効果なし。マスクをしている人ばかりではあるけど、開演前はそれなりにざわついている。今回1階で観たけど1階は満席、2階3階は半分のはずだけど遅く行ったため未確認。終演後は列ごとの整列退場。ロビーの飲食を禁止する代わりに、咳防止に自席で飲物を飲めるようにしている。ロビーの椅子は使えない。
前2公演と比べて思ったのは、大きい劇場なら対策も万全に取れると言いたいところだけど、大きすぎる劇場だと客も多くて取れる対策に限度がある。この劇場だとフルなら1300人、2階3階が半分だとしても1000人、ぎりぎりに来る人も一定数以上になる。足裏消毒とか最前列フェイスガードとか、対策を思いついてもどこまで実現可能か、微妙。でも足裏消毒はあってもよかったと思う。自分の足元に荷物を置いている人を結構見かけたので(奥の席に後から客が入るときに手前で座っていた人が荷物を引上げることが多い)。
さらに話は変わってこの劇場、近年建設の都内民間劇場の常として、客席数に対してロビーが狭い。時間がなくて確認できていないけど劇場内階段もそこまで広くなかった模様。受付階の外と地上階の間は広い階段があるけど、その分だけ人が滞留できる平たいスペースが足りないから階段で足を滑らせたら危ない。新しいから耐震性は高いのかもしれないけど、次に行ったときは早めに着いて避難経路を確認しておきたい。
<2021年4月30日(金)追記>
緊急事態宣言のため4月26日の公演を持って終了となりました。
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