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2022年6月30日 (木)

芸術監督蜷川幸雄の発掘仕事と胆力の話

ドライブイン カリフォルニア」で書き忘れたことがあったので追記です。公式サイトで松尾スズキがこんなことを書いています。

「ドライブイン カリフォルニア」三度目の公演である。
今まで再演されたわたしの作品は、
これをふくめて「愛の罰」「ゲームの達人」「ふくすけ」「マシーン日記」「悪霊」
「母を逃がす」「キレイ」「業音」「ニンゲン御破算」今年再演される「命、ギガ長ス」
と・・・・三〇年以上演劇を続けていると、
まあまあやっているなという感じになるわけであるが、
三度以上のものとなると、
「ふくすけ」「マシーン日記」「悪霊」「キレイ」と、四つほど。
ぐっと絞られたラインナップに「ドライブイン」は参入する、
ということは、自分の中でも「好き」
そして、それが許されるということは
「世間的評価がよろしい」ということになるのだろう。
現に、初演を見に来た蜷川幸雄さんのゴーサインをもって、
わたしはシアターコクーンという商業劇場に進出することになった。
いわば、わたしにとって初めての「外の世界に向かって開かれた」作品だといえる。
それに、わたしにしては「悪霊」とともに、
とても珍しい一幕もの(一部幻想的シーンははさまれるが)で、
良くも悪くも、めまぐるしい場面転換で知られる松尾作品の中では異彩を放つ、
わりと落ち着いた「芝居らしい芝居」であって、
松尾初心者の方にも、「あ、今、自分は何を見せられているのだろうか」という
時間のない入門編として、
いかがでしょうかとおすすめせずにはいられない一品となっております。
初演はみな、背伸びをして大人を演じておりましたが、
再再演ではむしろ大人になりすぎてはいまいかと
不安げな大人計画の面々を生暖かい目で見守ってください。
ゲストの皆さんとの邂逅も、松尾は楽しみでなりません。
では、その日まで、みなさん、お達者で。

松尾スズキ

この中の「初演を見に来た蜷川幸雄さんのゴーサインをもって、わたしはシアターコクーンという商業劇場に進出することになった」のくだりに注目です。

蜷川幸雄がシアターコクーンの芸術監督を務めた時期は1999年からです。シアターコクーンのサイトによると以下の通りです。

シアターコクーンでは、開館時から芸術監督を務めた串田和美氏の任期が96年で満了した後、99年より演出家の蜷川幸雄氏(~16年)が就任。2020年からは、作家・演出家・俳優の松尾スズキ氏が芸術監督に就任しました。

ちなみに1998年にはさいたま芸術劇場の芸術監督にも就任しています。この辺の経緯わからないのですが、串田和美が辞めて次の芸術監督を蜷川幸雄が打診された。さいたま芸術劇場の芸術監督もあるから時期はずらしてもらうとして、ラインナップが重ならないようにする必要がある。さいたま芸術劇場はシェイクスピアで話題を呼んで、シアターコクーンはそれ以外で話題を呼ぼうと、新鮮味を出せる若手を探したのでしょう。

もちろん蜷川幸雄がひとりで検討したわけはないでしょうが、面白いという話が挙がって自分で足を運んで観に行った。「ドライブイン カリフォルニア」初演は1996年12月、目いっぱい入れて定員294人のシアターサンモールです。同じ年の7月に岸田國士賞受賞の「ファンキー!」が本多劇場で上演されていますが、岸田國士賞の発表は年明けなのでまだ受賞は決まっていません。本多劇場はおそらく1994年の「愛の罰」とまだ2回だけです。大人計画の公式記録によればこのころは上演ペースが年に5-8本と狂っていますが1回あたりの公演日数は長くて2週間です。冒頭の通り松尾スズキにまだ商業劇場の経験はありません。

それでも自分の目で確かめて、3年半後の上演にゴーサインを出した。1996年当時だと61歳くらいでしょうか、並々ならぬ行動力と決断力です。ラインナップを決めるにあたって、そういう発掘作業を行なっていた。これぞ芸術監督という仕事です。その成果が2000年6月の「キレイ」です。私の松尾スズキ初見作でもあります。

芸術監督の似た仕事だと、新国立劇場は国内国外の既存脚本を使って、演出家を呼ぶ企画が多いです。演出家探しには熱心ですが、演劇研修所を持っているせいか役者を発掘している印象はありません。東京芸術劇場は、小劇場の劇団を探す芸劇eyesはよい企画だと思いますが、発掘しているというより機会を設けるという形のようです。昔より今のほうが東京芸術劇場は活発化していますが、発掘して推す印象はありません。三鷹市芸術文化センターはMITAKA "Next" Selectionがありますが、あれは発掘よりもSelection、今面白いものを選ぶという印象が強いですが、東京芸術劇場よりは推しています。ただしオファーから上演まで1年後とかそのくらいのスパンです。

そう考えていくと、その人の商業演劇の初の1本を任せるという決断、なかなかできるものではありません。

芸術監督の仕事の一端をのぞき見ることができた、という話でした。

<2022年7月2日(土)追記>

タイトルを更新し忘れていたので更新。

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