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2022年6月13日 (月)

National Theatre Live 2021「リーマン・トリロジー」

<2022年6月11日(土)夜>

19世紀半ば、ドイツからアメリカに移民してきたヘンリー・リーマンと、後を追ってやってきた2人の弟。南部に店を構えて、生地を扱う店から綿を農場から工場に売る卸に、さらにニューヨークに進出して綿取引を手がけたところから商売を広げて金融機関になり、21世紀に破綻するまでのリーマン一族とリーマン・ブラザーズの経営を描く。

舞台収録を映画館の鑑賞に堪えるように映像化したNational Theatre Live。知っていたけど観たのは初めて。2019年にロンドンで上演されたものだけど、芝居の面白さと映像化の上手さと、両方にびっくりした。

そもそも書籍が日本語翻訳されて、面白いらしいと評判を見かけたのが「リーマン・トリロジー」を知った最初。本屋で手に取ったら2段組みで辞書みたいな分厚さ、しかも全部3行ずつ書いてあって、トリロジーだからそういう形式なのか、さすがに無理だとその時は手を引いた。そのあとでNational Theatre Liveがあるのを知ったけど、観に行ける範囲の上映は終わったあと。さらに評判を見かけてうわーもったいないと思っていたら今回リバイバル上演ということでようやく観られた。「トニー賞ノミネート記念」らしい。

今回の特別上映は、ブロードウェイ版「リーマン・トリロジー」に出演したアダム・ゴドリー、サイモン・ラッセル・ビール、エイドリアン・レスターの3人が今年、それぞれにトニー賞の主演男優賞にノミネートされたことを記念して行われるもの。なおこのたび上映されるのはロンドンで上演されたオリジナル版となり、レスター役をベン・マイルズが演じている。

それで知ったのは、原作はイタリアのラジオドラマで9時間あったということ。そりゃ2段組みで辞書みたいな分厚さになる。そこから芝居用に再構築しても、1幕1時間強、2回休憩を挟んで3時間40分の超大作になるのはしょうがない。

で、舞台美術があって役者がいて、芝居っぽい場面も当然あるけど、どちらかというと動きながら詩を朗読していると表現したほうが近い。創業者である3人兄弟がアメリカに移民してきたところから始まる3世代を3幕で描く壮大な物語で、そういうところもトリロジーなんだろうけど、これをおっさん3人だけで演じるのがまたすごい。

ひとり複数役が特別に珍しいというわけでもないけど、とにかく常に誰かがしゃべっている。しかも一度台詞担当になると長い。なのに普通に見えて、こちらも普通に観ていられる。途中でようやく、これはハイレベルすぎて普通に見えるんだと気が付く始末。芝居っ気が混じっても朗読要素が多いので、よほど台詞をしっかり言えないとこの長時間は持たない。日本だと橋爪功クラス。それが3人。

これで描かれる話が、やっぱり面白い。生地から日用品に取扱いを増やす、火事になった農園を助ける代わりに収穫される綿で支払を求める、綿のまま取引するのが儲かるなら他の農園にも取引を広げる、と機を見るに敏な商売人の魂。なのに、というかだからこそ、耳元を冷たい風が吹いて自分の時代が終わったことを悟ってしまい次世代に席を譲る時。その代替わりを経て堅実な現物商売から金融取引に移行する過程。「我々にとっての小麦は金です」とかしびれる台詞。物語の強度に役者のレベルがつりあって、それを生かす最低限の美術と音楽。字幕も字数短く抑えて読みやすかったけど、英語がわかる人が観たらもっと楽しかったんだろうなと思うとちょっと悔しい。

映像化の違和感が全然ないところもすごかった。テレビで舞台映像を観るときにいつも残念なのが音声で、ホールの遠くから録音している感じが劇場とは違いすぎるところ。これが今回、劇場で生の役者を観ているのと同じくらい違和感がなかった。実際には劇場よりもクリアで、音声の録音がクリアなのは理由のひとつ。だけど、おそらく役者ごとに録音した音声を、場面ごとに役者のいる位置から聴こえるように音声の位置を合せていたんじゃないかな。テレビよりも映画館だから合せやすいだろうとは思うけど、そこまでやったらその分の手間は当然かかっているわけで、どうだったんだろう。少なくとも臨場感のある音声だった。ほとんど意識しないで聴ける音声はすごい。

上映時間が普通の映画の倍のせいか、入場券が3000円だったけど、惜しくない。やればここまでできるんだぜとハイレベルな仕事ぶりを見せられて堪能した1本。大満足。

<2022年6月14日(火)追記>

全面改訂。

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